『《第2回》ハーメルン小説コンテスト』『悪意なき嘘』参加作品
「人間でも鍛錬すれば、上がれるぞ」
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クロボウと私(クロわた)
:第4話<優しいココロ>(常新2版)
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<<アパート:モヤモヤ>>
原付で私のアパートまで戻ってくると、アパートの屋根に何かある。よく見たらカラス天狗さんだった。手を広げて何かを受けているような格好をしている。本当に彼は、私以外の人には見えないんだろうか?ちょっと心配になってきた。
きっと霊感の鋭い人には見えたりするんだろう。そう思ったら一つ疑問が湧いた。そもそも私には、霊感なんて無いはずだ。どちらかというと鈍感なのだ。
そういえば学生の頃も、合宿とかで研修センターみたいな所に泊まって、友達が「何か居る!」とか騒いでも私には、まったく感じなかった。肝試しも得意じゃないけど、急に肩が重くなったとか、何かが憑いて来たなんて経験もない。
それがいきなりカラス天狗だ。まあ、あれは幽霊というよりは妖怪なんだろうか?でも、人間に悪さをする感じではない。まあ、いわゆる”ご縁”ってやつかなぁ~。そう思いながら私がアパートの間近まで来ると、カラス天狗さんは私に気付いて見下ろした。人間が屋根の上に乗っていたら大騒ぎだけど、彼は天狗だから、取りあえず安心だろう。でも確か、怪我をして飛べないはずなのに、どうやって上ったんだろう?
そう思っていたら彼は急に屋根から飛び降りてきた。うわっ!マジですか?
でもさすが天狗だ。”落下する”というよりは、まさに”舞い降りる”といった感じで、フワリと降りてきた。私も興味が湧いたので聞いてみた。
「団扇(ウチワ)みたいなの、使わないんですか?」
「ああ、使うこともあるがな、このくらいなら不要じゃ」
「へえ~」
「人間でも鍛錬すれば、簡単に上がれるぞ」
「いえ……」
本当は興味があるが、そんな気分ではない。さっきのモヤモヤがまだ少し尾を引いている。
それは隠して私は聞いた。
「だいぶ回復したんですね」
「そうじゃな。ここは比較的気が強い。山に川、そして大山も見えるからな」
「やっぱり大山って凄いんですか?」
「ああ。かつては人間の寺があったくらいじゃ。あそこは気を練るには良い場所じゃ」
「ふーん」
幽霊を感じないから、”気”っていうのも感じるわけがない。でもカラス天狗さんの品格って言うのかな?”雰囲気”は、何となく感じる。もちろん衣装とか、黒い羽で全身が覆われている姿も大きいとは思うけど。
<<アパート前:私のウソ>>
「ときに、お主」
「はい?」
いきなり質問か?
「心が乱れて居るじゃろう」
「!」
ああ、やっぱり私の気持ちは感じるのだな。
隠しても仕方が無いので私は言った。
「はい、母親にウソをついたのが、何となく……」
「スマンな、ワシが悪い」
「いえ、そんな……」
そうだった、私は彼のためにウソをついたのだった。
「案ずるな。動機が悪くなければ、その行動は丸く収まる。主(ぬし)の行為は、決して悪いものではないから安心するのじゃ」
「はあ」
分かったような、分からないような……。
「そうじゃな……主はワシを助けてくれたじゃろ?」
「はぁ、一応……」
すると彼は、笑ったような顔をした。
「主は優しい心の持ち主じゃ。他人とうまく行かないのも、そのココロゆえじゃ」
「……」
なんか図星というか、慰められたというか……まるでカウセリングみたい。
「あの……これ、車庫に入れてきて良いですか?」
「おお、スマンな、立ち話して」
私は会釈をして、車庫へ進んだ。彼は、少しの間、その場に立っていたが、やがて再び”舞い上がる”ようにして、屋根へ上った。やっぱり天狗だ。結局彼は、夕方まで屋根に居た。
その間、私は部屋の整理や掃除をしていた。敏感そうだから、埃(ホコリ)とかでも文句を言われそうだから。
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※これはオリジナル作品です。
『《第2回》ハーメルン小説コンテスト』参加作品です
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PS:(クロわた)とは、クロボウと私の略です。