『《第2回》ハーメルン小説コンテスト』『悪意なき嘘』参加作品
「人間は一日、何回も食事をするようじゃな」
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クロボウと私(クロわた)
:第6話<寝食の心配>(常新2版)
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<<アパート:晩ごはん>>
泣いてばかりも居られない。夕食の準備をしなきゃ……そこで私は思い出した。
「あの~、晩ごはんは、どうされますか?」
「……」
カラス天狗さんは黙っていた。あれ?ノーコメントなの?
でも、一瞬の間があってから、彼は答えた。
「おお、そうじゃったな」
食べるのかな?そう思ったけど、彼は言った。
「人間は一日、何回も食事をするようじゃな」
「はい」
カラス天狗さんは、腕を組んで少し笑ったような顔をした。
「ワシら天狗は基本的には天宙の”気”を基(もとい)として活動の源(みなもと)とするのじゃ。主の”気持ち”だけでも十分なのじゃ」
「はあ……」
正直、何を言っているのか良く分からない。
私が妖怪オタクとかだったら、そういうことも直ぐに分かったかも知れないが、あいにく私は妖怪系は不得手なジャンルだ。私がそういう話とか絵でも描いていれば、また違ったのだろうけど。
「そうじゃな……基本的に、食事は要らぬが、キレイな水を頂ければ十分じゃ。あとは夜の間だけ、屋内に匿(かくま)って欲しいな……」
それを聞いて私は、布団どうしよう?って思った。寝袋じゃダメかな?いちおう寝袋なら、あるんだけど。
<<アパート:寝床>>
天狗さんの場合、悩むより先に聞いたほうが早そうだ。
「あの……寝床というか、布団とかはどうされますか?」
私が聞くと、天狗さんは、またしても不思議そうな顔をした。だが直ぐに理解したような顔を見せた。
「横になって寝るというやつか?それも心配無用じゃな」
「はあ……」
彼は続ける。
「基本的にワシらは横になって休むということはない。まあ、座禅のような格好をするから、タタミ半畳ほどの場所を貸して下されば良いのじゃ」
え?寝ないんだ。私の疑問を悟ったかのように彼は答えた。
「いや、休むことは休むのじゃが、何と言うかの……瞑想みたいな感じじゃな」
「ふうん……」
瞑想?知り合いの武道やっている人なら、分かるんだろうけど、私には無縁の世界だから、これもチンプンカンプン。彼は続けて言った。
「取りあえず、主の家の中を見せてもらおうか」
「はい」
私は彼を、家の中に案内した。
まず玄関から入る。靴を脱いでもらう……彼は草履をはいていた。改めて、天狗っぽい。細長い廊下を通って居間は一つ。造り付けの机とベッド、衣装ケースがある。
「フム……」
彼は一通り家の中を見回した。ベッドを見て彼は言う。
「主はここで夜、休むのじゃな」
「はい」
「案ずるな、夜はこの部屋には立ち入らぬゆえ。ワシは玄関脇の空いた所で良い」
そう言うと彼は玄関に戻って、ちょうど半畳ほどあるスペースに胡坐(あぐら)をかいた。おお、なぜか仏像か何かの置物のように、妙にマッチしている。玄関脇に彼が座っていると……まるで、魔よけの置物のようで微笑ましい。
私の頬が少し弛んだのだろう。彼は私を見上げて言った。
「どうかしたのか?」
「いえ……」
また”良からぬことを”とか注意されるかと思ったけど、彼は何も言わなかった。ちょっと、ホッとした。
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※これはオリジナル作品です。
『《第2回》ハーメルン小説コンテスト』参加作品です
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PS:(クロわた)とは、クロボウと私の略です。