クロボウと私   作:しろっこ

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大山の開発のことを聞いたら、突然来訪者があって……別れのときは突然にやってきた。

『《第2回》ハーメルン小説コンテスト』『悪意なき嘘』参加作品



第8話<立つ鳥跡を濁さず>(常新2版)

「お主もな……また会おう」

 

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クロボウと私(クロわた)

:第8話<来訪と別れ>(常新2版)

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<<夕方:大山の開発>>

 

私が夕食の準備をしていると、また音も無くからす天狗さんは帰ってきた。どこと無く、昨日よりもまた、精悍さが増しているような、迫力があるぞ。何も言わずにまた玄関横にスッと座ったので、私は新聞を片手に近寄った。

「あの……」

 

だが、私が説明するまでも無く、彼は言った。

「大山の開発のことじゃろ」

 

図星である。やはり読心術か千里眼か?相手は天狗だもんね、私も次第に、ちょっとのことでは驚かなくなってきた。天狗さんは続ける。

「ワシのケガも、それに由来することじゃが、案ずるな。お主を巻き込むつもりはない。この調子なら、明日にはここを発てそうじゃ」

 

「……」

そうなんだ。すべてはお見通しか。でも、ちょっとだけ名残惜しい気もした。そのとき、彼はちょっと表情を変える。何かの気配を感じたようだ。

 

私も気になって聞いてみた。

「何か?」

 

「シッ……恐らく天狗の偵察じゃが、案ずるな。ここは結界を張って居るし、ワシの結界を見破るものは、大山にも数人しか居らん。そういう連中は、自ら偵察に出ることは無いから……」

そう、言い終わるか終わらないうちに、アパートの周りに突風が吹いた。

 

なに?まるで台風か竜巻……経験ないけど。でも天狗さんは、ジッと腕を組んで正面を見詰めている。やがて風が収まると、彼は言った。

「仕方ないやつだ……」

 

<<夕方:来訪者>>

 

彼が言い終わらないうちに、ドアの外に人の気配がした。直ぐに、コンコンとドアをノックされた。

「どなた?」

 

私が聞くと、ドアの外で可愛らしい声がした。

「あの……アズミと申します」

 

消え入るような声音だが、芯は通っている感じで、なぜか私には良く聞こえた。私は思わずカラス天狗さんを見た。

「あの……?」

 

彼は無言で頷(うなづ)いた。私はそっとドアを開けた。そこにはスリムな黒っぽい衣装に、長めの刀を背負っているカラス天狗?多分、女子のカラス天狗だと思うんだけど、通路にひざまづいて、こちらを見上げている。何となく瞳とか全体の雰囲気が女子っぽくて可愛らしいんだけど、その格好はまるで女ニンジャ……クノイチっていうのかな?長い刀が妙に目立っている。

 

彼女は言った。

「クロボウさんがお世話になっているようで、かたじけないです」

 

ふと後ろを見ると、カラス天狗……いや、クロボウさんが立っていた。

「来たのか」

 

「はい……」

彼女は少しうつむいて、恥ずかしそうに答えた。……あれ、ひょっとしてこの人が、クロボウさんの許婚(いいなずけ)って人かな?

 

「誰にも、つけられていないだろうな?」

 

「はい」

 

「お前のことだから大丈夫だとは思うが……念のためじゃ」

そういうと、クロボウさんは、私の肩を軽く叩いた。

 

「僅かばかりの期間じゃったが、世話になった。これにてお暇(いとま)を致す」

 

「まだ完ぺきに直っていないんじゃ……」

私が言うと、彼は言った。

 

「案ずるな。主の言うとおりじゃが、こいつが来たということは、他の追跡者にも遅かれ早かれここが発見される可能性があるということじゃ。だがこいつが補助してくれれば何とか、相手の目をかいくぐって逃げることも出来よう」

 

「はあ……」

良く分からないが、潮時(しおどき)ってことなのだろう。

 

<<最後:宝珠>>

 

「そうじゃ」

クロボウさんは、懐から何かを取り出した。それは透明なガラス玉のような丸い珠だった。野球かテニスボールくらいの、結構大きな珠だ。

 

私は聞いた。

「これは?」

 

「これは宝珠といってな、いろいろ使えるものじゃ。磨いてもよし、見詰めて精神統一してもよし。もし、お主に共鳴する部分があれば、いずれワシとの交信も出来るようになるじゃろう……」

そういって、私にその珠を渡してくれた。ズシリと来た。

 

「では、サラバじゃ……見送りは不要じゃ。連中に見つかるかも知れぬので、誠に申し訳ないが、お主はしばし、この屋内でジッとしておくれ……15分もあれば、ワシらも、かなり離れるから大丈夫じゃ」

 

「あの……」

思わず声が出た。

 

クロボウさんは立ち止まって、振り返る。

「何じゃ?」

 

「お元気で」

あまり芸の無い、別れの言葉だなと思った。

 

「お主もな……また会おう」

そういって彼は出て行った。出掛けにドアの向こうで、あのアズミさんが会釈をした。何となく可愛らしい天狗さんだった。彼らが出て行った後は、特に風も吹かず、静かだった……立つ鳥跡を濁さず。なぜかその言葉が浮かんだ。

 

「はあ~」

急に脱力感が襲ってきた。でも天狗さんは私に「また会おう」って言った。だからきっと、また会えるんだな。

あの宝珠を手にとって見ると……ちょっと落ち着いてきた。そうだね、明日から、ちょっとこれを使えるように、訓練してみようかな?そう思った。

 

窓の外には月が出ていた。月も微笑んでいるような気がした。

 

(完結?)

 




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※これはオリジナル作品です。
『《第2回》ハーメルン小説コンテスト』参加作品です 
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PS:(クロわた)とは、クロボウと私の略です。
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