やはり俺が炎術士なのはまちがっている。   作:世間で言うジョージさん

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なかなか進まない~。
とゆーわけで、更新スピード上げていきます。





第16話 決着と真実

 

 

 

状況を整理しよう。影法師の策略により、由比ヶ浜は感情を利用されて、魔導具によって間接的に操られて暴走してしまった。これを止める手立ては、魔導具を外すか、破壊するしかないと思われる。本当に外部に連絡がとれないかスマホを見てみると、圏外表示になっていた。姫は気絶しているし、風も徐々にその範囲を拡げ、強くなってきている。時間的猶予は全く無かった。

 

 

「クソ!何か…何か手はないのか?」

 

 

由比ヶ浜を観察してみて解ったことがある。俺は一つの仮説をたてる。魔導具の構造だが、あの水晶のような物が光ると風が強くなっていた気がする。金属の部分は関係ないだろう。そうなると、やはりあの水晶球が怪しい。おそらく核になっている部分ではないだろうか?仮に金属部分も破壊するとなると、俺の火力では由比ヶ浜の腕ごと吹き飛ばしかねない。

 

 

「やるしかないか…」

 

 

もう迷ってる時間もない。

俺は八竜の中で、この状況に一番適した火竜を選択する。

 

 

「竜の炎、参式。焔群!」

 

 

 

俺の腕に炎の鞭が巻き付く。

その炎の鞭を右腕に纏い、暴風を纏う由比ヶ浜へと迫る。由比ヶ浜は苦悶の表情を浮かべ、ポツリと一言だけ俺に訴えかけてきた。

 

 

「助けて…ヒッキー……」

 

 

暴風が吹き荒れ、全てを切り刻む鎌鼬のギリギリ圏外まで駆け寄り、炎の鞭で魔導具の核に狙いをつける。

 

 

 

「今、楽にしてやるぞ。由比ヶ浜ぁ!」

 

 

 

炎の鞭は暴風をものともせず、その魔導具の核を打ち砕いた。突如として風は治まり始める。由比ヶ浜は床に倒れ伏せ、俺は駆け寄って意識の確認をした。息はしているようで、軽い呼吸音が聞こえてきた。意識はないようで、よく見ると体のあちこちに切り傷があった。多分、暴走した自身の能力に傷ついたのだろう。

 

 

「おい!しっかりしろ!」

 

 

数度、頬を叩く。が、意識は全く戻らない。とりあえずこのままにはしておけないので、保健室へ連れて行くしかないか?と、考えていたところで姫の声が聞こえてきた。

 

 

「ぅう、八幡くん…あれからどうなったのかしら?」

 

 

姫は目覚めると、こちらの様子に気付いたようで、由比ヶ浜の元へとやってきた。

俺は今までの状況を説明しようとした。もちろん、影法師の件は伏せてだ。いや、謎の女扱いで通してしまおうか?そのほうが由比ヶ浜との話も上手く脚色できるだろう。とにかく今は由比ヶ浜の治療が優先だ。

 

 

「事情は後で話す。由比ヶ浜が怪我をしてるんだ。保健室へ行こう。」

 

 

「由比ヶ浜さん…可哀想に…今、治してあげるわ。」

 

 

姫は例の如く由比ヶ浜を抱き締めると、ペカーっと光を放ち、みるみる傷を治していった。テンパってたから忘れてたけど、姫は傷ならどんな傷でも治せるんだった。俺も抱き締めて治してほしい。あくまで治療の一環としてだよ?邪な気持ちは持ち合わせていない。たぶん。

 

 

 

「八幡くん。傷は治ったのだけれど、念のため保健室へ連れて行きましょう。」

 

「姫っ!じ、実は俺も怪我をしたんだ。治してもらってもいいかな?」

 

 

ドキドキしながら抱き締めてHold Me!とか思ってたら、患部に優しく手を当てて治してくれた。ちっくしょう!!!!

そんな俺の内心を悟られたのか、姫から蔑むような視線を受けた。え?俺、顔に出てた??

 

 

「ん。どうやらもう出られるみたいだな。」

 

 

 

確認してみたが、ドアも普通に開くし、外では運動系の部活特有の声が聞こえてきた。結界も解けてるみたいで良かった。

 

 

「八幡くん。由比ヶ浜さんを保健室まで連れていきましょう。…その、変なトコロは触らないようにしてね?」

 

 

さっきのやりとりもあって、穴があったら入りたくなる気分になりました。死にたい。いや、死なないけどね。

 

 

 

極力、女性らしい部分を触れないように、おんぶして運んだ。背中に意識がいきそうになるのを必死で堪えた。忍びとは、耐え忍ぶ者なり!本当は姫の視線が痛かったからなのは内緒だ。

 

 

保健室の先生は留守らしく、俺は由比ヶ浜をベッドに寝かせてカーテンを閉めた。女子の寝顔を見てたら怒られると判断したからだ。フッ!俺の学習機能を舐めるなよ?それからベッドの横の椅子に座り、姫に事の顛末を説明した。

 

 

「その女性は何者なのかしら?まさか、私達の秘密を知って狙いを?いえ、それではやり口が…」

 

 

姫が何やら一人で思案し始めた。実際問題、原因は姫で、狙われたのは俺だろう。影法師は俺の戦闘力を測ったのだろう。由比ヶ浜を使った威力偵察みたいなもんだ。それだけに許せない。無関係な人間を巻き込むやり方に怒りを覚えた。

 

 

「ねぇ、八幡くん。この事件は、警察に言ってもまともに取り扱ってもらえないわ。頭がおかしいと思われてしまうもの。」

 

 

「あぁ、同感だ。それに、由比ヶ浜は巻き込まれただけだ。もう俺達に関与しなければ被害に遭うこともないと思う。それに、俺達の秘密もあるしな。」

 

 

「そうね。私の治癒の力と、八幡くんの八竜の力は…異端だもの…」

 

 

 

姫は少し悲しそうな顔をしたが、直ぐに笑顔をつくって気丈に振る舞う。

 

 

「でも、もう今は一人じゃない。でしょ?」

 

「応っ!姫は俺の炎で守ってみせまするっ!」

 

 

 

二人の間にまだ不確かだけど、絆のようなモノを感じた。その時まで俺は少し油断をしていた。姫と二人きりじゃなかった。そう、由比ヶ浜が横にいたんだ。

 

 

「今の話は何…?」

 

 

 

ヤバイっ!話を聞かれていた?

 

「ゆ、由比ヶ浜。目が覚めてたのか?」

 

 

「うん…あたし全部覚えているんだ。さっきのこと。二人に迷惑かけちゃったね、ゴメン。けど聞かせてほしいの…」

 

 

由比ヶ浜に真実を聞かせていいものか?こいつは運悪く巻き込まれただけだ。今なら日常にだって戻れるかもしれない。それに、由比ヶ浜は己の内面を曝し、影法師によって想い人への恋慕までも踏みにじられてしまったんだ。真実を知るには酷ってもんだろ!

 

 

「ヒッキー…あの時に言った言葉に嘘はないよ?ヒッキーへの想いも、雪ノ下さんへの醜い心も、全部あたしの本心だよ。だから、本当の事を聞かせてほしいの。」

 

「由比ヶ浜…」

 

「由比ヶ浜さん…」

 

 

俺は姫に目配せを送る。姫は意図を理解すると、軽く首を縦に振り、肯定の意思を示した。意を決して、真実を話す。それが由比ヶ浜の本音を、本心を知った俺の出来る精一杯だ。

 

 

「由比ヶ浜。落ち着いて聞いてほしい。これから話すことは嘘偽りの無い、真実だ。」

 

 

「うん。聞いたからって、もう暴れたりしないから、約束するね。」

 

 

 

魔導具の影響とはいえ、由比ヶ浜は本心を、本音を話してくれた。一部は影法師が語ったのたが、それは置いといて。改めて思い出すと恥ずかしくなるし、気まずいから一旦忘れよう。とにかく、姫にも由比ヶ浜にも、もう嘘をつくのはやめよう。

 

 

それから俺は全ての、俺達の秘密を含む経緯を、全てを二人に話した。二人は驚愕の表情を浮かべていた。姫は何か思い当たる節がある素振りを見せる。

 

 

「影法師…心当たりならあるわ。」

 

「姫、嫌な事なら無理して言わなくてもいいんだぞ?」

 

「いいえ、もし私の推測どうりなら無関係では無いもの。おそらく、その正体は………」

 

 

 

姫は暫し黙りこんだあと、意を決したように告げる。

 

 

 

「雪ノ下陽乃、私の姉よ。」

 

 

 

 




次回はテニスの依頼予定です。

あくまで予定です!

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