やはり俺が炎術士なのはまちがっている。 作:世間で言うジョージさん
あまり描写がないですが、
そこは脳内補完でお願いします!
あれから1週間が経った。
その間、色々な事が判明した。魔導具の事を調べに、平塚先生宅に行ったり、由比ヶ浜の風神の訓練をしたり、その時に異常な数の錐の所持に通報しようかと思ったり、お互いの連絡先を交換したり(アドレス帳のギネスが更新)、まぁ色々とあった。
判明した事は、魔導具は色々と種類があり、いずれも使用には術者の精神を消耗するので、多用は出来ない事だ。これは俺の八竜にも言える事だが、無尽蔵に使える訳ではなく、精神をガリガリと消耗する。使用する八竜との相性にもよるのだが、俺は暑苦しい熱血タイプの八竜とは、すこぶる相性が悪いらしい。爽やかイケメンタイプもだ。決して、やっかみや僻みではない。うん、そうだよ?
放課後になると俺達は部室に集まる。ちゃんと部活動もしている。それに、出来る限り単独で行動しないようにしている。用心に越した事はない。校内での戦闘があったばかりだ。どこも安全とは言えないだろうからな。そして、あとは由比ヶ浜を待つだけとなった。
「やっはろー!今日は依頼者を連れてきたよ!」
「あの、戸塚彩加です。奉仕部にお願いがあってきました。ここに来たら、願いを叶えてくれると聞いたんだけどお願いしてもいいですか?」
なんと!由比ヶ浜が可愛い(非ビッチ)依頼者を連れてきたよ!そういえば、コイツはトップカーストの一員だったな。そりゃコミュ力も高ぇわ。畏れ入ったぜ、リア充(ビッチ)め!
「こんにちは、戸塚くん。私は部長の、雪ノ下雪乃です。先程の、『願いを叶える』というのは少し違うわね。私たちは依頼者の『願いを叶えるサポート』をするのよ。それでもいいかしら?」
「そっかぁ…そうだよね。うん、それでもいい!お願いします!」
うんうん。我が部の理念どおりだな。サポートなら出来るぞ?戸塚くん。ん?戸塚くん?え、何?男なの??この見た目で???
「八幡くん、あの、あまりそういう眼で見るのは失礼だと思うのだけれど。」
「え~!ヒッキー最低っ!キモいしっ!」
姫には俺の考えてた事がお見通しのようだ。それと姫はともかく、なんでお前にまでディすられてんだ?まぁ濡れ衣じゃないけど。
「あの、依頼を言ってもいいかな?」
流れを変えるチャンス!
この子、天使や!
「由比ヶ浜が騒がしくてすまん。依頼内容を言ってくれ。」
「むー。ヒッキーのバカ!」
依頼内容はこうだ。
テニス部がやる気がないらしい。やる気にさせる為に自身の実力を向上させて、周りに刺激を与えて部を活性化させる。そんな感じらしい。テニス部の内情を知らんが、そんな事で周りが触発されるとは思えない。
「そのやり方では駄目だと思うぞ。強くなった戸塚に『こいつに任せとこう』とか、強者に依存する考えになるんじゃないのか?」
「そうね。その可能性も否定できないわね。それでも強くなりたいのかしら?」
「うん。それでもいいよ。僕はテニスが好きだから。もっと強くなりたいんだ。だから、お願いできるかな?」
戸塚はそれでもテニスの上達を望むのか。なら、俺の方針は決まったな。我らが部長兼姫の決定次第だが。
「わかりました。この依頼は奉仕部で正式に受けさせてもらいます。」
「ありがとう!雪ノ下さん、由比ヶ浜さん、比企谷くん。」
こうして戸塚の依頼を受けて、トレーニングが始まった。余談だが、戸塚も俺と同じクラスらしく、あとで由比ヶ浜から最低と言われたのは、また別の話だ。
トレーニングの内容は過酷だった。意外に姫はスパルタ思考だった。朝、昼、夕と基礎の徹底だ。どうやら戸塚は筋力、体力共に壊滅的だったらしい。そんな戸塚も2週間が経った頃には見違えるような動きになっていた。だが、順調に思える時にこそ、気をつけなければならない。
その日の昼休みにそれは起こった。
「痛っ!」
「比企谷くん、大丈夫?」
「少し足を捻ったみたいだ。少し休んでれば問題ない。」
「八幡くん、保健室へ冷却スプレーを貰いに行ってくるわ。少し休憩にしましょう。」
そして、姫は保健室へ。由比ヶ浜と戸塚と俺は休憩をとることにした。
地べたに座り込んで談笑していたら、テニスコートに入ってくる一団を確認した。うちのクラスのトップカースト達だ。
「結衣~楽しそうな事してんじゃん。あーしらもまぜろし。」
クラスの炎の女王、三浦がお出ました。コイツは傲慢で奔放で覇王だ。横目で由比ヶ浜を見ると、顔色が少し青ざめていた。
「悪いが、この時間帯は戸塚の依頼に則り、奉仕部が正式に許可を得て使用している。他を当たってくれないか?」
俺の正論なぞ、どこ吹く風と言わんばかりに今度は葉山が詰め寄ってくる。
「まぁまぁ、皆で楽しく使えばいいじゃないか。」
「話を聞いていたのか?この時間帯は戸塚の訓練の為に使ってるんだ。使いたいなら他を当たってくれないか?」
空気が変わる。
一触即発というやつだ。
「なら、俺達と君達でテニス勝負をしよう。勝った方が戸塚くんにテニスも教える。彼も強い人から教われるし、どうかな?」
「あ!それいい!男女ミックスでやるし!あーし、超やる気出てきたし~。」
「隼人くん、マジ、パネェ~わ!優美子もマジ、天才じゃね?」
頭の悪そうな奴らから賛同の声が上がる。よく考えたらこの場にいるのは、俺と戸塚を除けば、全て葉山のグループなのだ。由比ヶ浜もバツが悪そうにしている。戸塚だけならシングルスでの勝ち目もあったかもしれない。しかし、現状は女性陣は由比ヶ浜のみ。由比ヶ浜は萎縮しているし、俺は足を捻った直後で十分なパフォーマンスを発揮できない。そんな八方手詰まりの状態で、意外な人物が口火をきった。
「隼人くん、あたしとサイちゃんでやるよ。ヒッキーは休んでてね?」
「結衣~アンタはこっち側だし。早くコッチ来るし!」
炎の女王が静かにお怒りだ。それでも由比ヶ浜は尚も畳み掛ける。
「あたしも今は奉仕部の一員として来てるからさ、そっちには行けないんだ。ゴメンね?」
「はぁ?結衣~?あーしは、アンタにコッチに来いって言ってんだけど?」
「もうあたし決めたんだ。だから謝らないよ、優美子。」
「ま、まぁまぁ。それじゃ、結衣も優美子も入れたら始めれるし、楽しくやろうか。」
葉山が由比ヶ浜と三浦による、ハブとマングースの決戦を穏便に運ぼうと試合を促していた。俺はこないだの一件で成長した由比ヶ浜の意思を尊重したくなった。戸塚の意思の確認をとるとオーケーが出た。さぁ、あとは戦うだけだ!俺は何もやってないけど。
「ヒッキー。あたしだって奉仕部の一員なんだからね!ちゃんと見ててね!」
もうそこには、人の顔色を伺い、周りに迎合するだけの由比ヶ浜は居なくなっていた。そこに居るのは、自分の本心や本音を偽らない事を始めたばかりの女の子だ。まだ自分の足で立ったばかりのヒヨコみたいな危なっかしさと、風神をその腕に宿す、俺の自慢の友達だ!
ついに由比ヶ浜さんは戦います。
次回はテニス勝負の決着予定です!