やはり俺が炎術士なのはまちがっている。   作:世間で言うジョージさん

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椅子に座ってる時が一番更新しやすい。
横になってたら進まない。
しかし、我が家にはイスがない。


それでわ、どうぞ!


第20話 その名は、材木座義輝

 

 

 

テニス対決から数日が過ぎた。由比ヶ浜はあれ以来、かなり活発になり(元々かも知れんが)、魔導具の扱いも上達していった。俺も炎を使った特訓をしたいが、その性質上なかなか使用可能な場所が無く、慎重に選ばなければならない。山の中だと山火事になったりしたら大変だ。ちなみにあの時の廃工場は、ボヤ騒ぎがあったとかで完全に閉鎖されている。酷い事する奴もいたもんだ。

 

いつも部活動が終わると、由比ヶ浜との特訓だ。そして終わると、姫を家まで送る。これは日課となっている。由比ヶ浜はたまにお泊まりしているようだ。羨ましい…!いや、決して邪な気持ちがあるワケじゃあないよ?うん。

 

 

俺は今日も部室へと向かう。依頼もトラブルもゴメンだなーと考えながら外を見る。特別棟から見る中庭にはリア充共が集まっていた。それを眺めながら廊下を歩いていくと、部室の前で姫と由比ヶ浜が中に入らずにソワソワしていた。

 

 

 

もしかして、影法師が現れたか?俺は急ぎ忍び足で二人に近より小声で声をかける。

 

 

 

「中で何かあったのか?」

 

 

「ひっ!ヒッキー!?」

「きゃ!八幡くん?」

 

 

 

そんなに驚かれるとなんか辛い。姫は部室の前で立ち往生している理由を話してくれた。

 

 

 

「中にね、何か不審者がいるのよ。それで怖くて入れなかったの。」

 

 

姫が言い終わるよりも早く、姫を怖がらせやがって!殺す!と、怒り心頭のまま部室へと入り、中の人物に火薬玉と苦無を投げつけた。

 

 

 

「む?八幡よ!よくぞ来たなって、うぉっ!」

 

 

 

炸裂音と苦無が刺さる音が聞こえた。が、煙が晴れると長机を盾にした男が現れた。長机は所々に焦げ痕を残し、苦無は刺さっていた。男はどうやら無傷らしい。仕方なく竜の炎、肆式の刹那を発動させようとして、「ま、待って!」と言われたのでやめてやった。

 

 

「八幡!我だ!彼の剣豪将軍、材木座義輝だ!」

 

 

「あん?遺言はそれだけか?そんなに短くていいのか?」

 

 

「お、お、落ち着け!ほら、我と主は前世からの因縁で、主従関係にあったではないか!」

 

 

「なら下克上だ。死ね。」

 

 

「ごめんなさい。調子に乗りました。すみません。」

 

 

 

素に戻ったので許してやったが、コイツの名前は材木座義輝。唯一の自慢が馬鹿力だけ。その取り柄も理由はしょーもない。小学生の時に自分は剣豪将軍と勘違いしたらしい。剣の練習とばかりに彼は素振りを始めるのたが、彼の剣のイメージは某FFのクラ○ドの使う大剣だったのだ。似たようなベニヤ板から始め、鉄骨を素振りする頃には馬鹿力が身に付いていたそうだ。ホントどーでもいい。

 

 

「で、うちの部室で何してんだお前。」

 

 

「ふむ。ここは我の願いを叶えてくれると聞いてな。やはり八幡大菩薩の導きか…。」

 

 

 

駄目だコイツ。よし、姫を呼ぼう。俺は安全を確認したので、姫と由比ヶ浜に入っても大丈夫と声をかけた。

 

 

「かなり凄い音がしたんたけど。部室は大丈夫なのかしら?」

 

 

「わっ、ヒッキーけっこー無茶やったね~。」

 

 

 

二人に材木座を紹介すると、姫は例の奉仕部の理念を説いていた。材木座のアホは女子には免疫が無かったので、終始俺の方ばかりを見て話す始末。それに業を煮やした由比ヶ浜が、横から口を出してきた。

 

 

「人と喋る時は、ちゃんと相手の顔を見ないとダメじゃん!」

 

 

「ムハハハ!さような事象は、我にとっては些事にすぎん。」

 

 

「ん~?よくわかんないけど、難しい言葉知ってるんだね。て、違うし!ちゃんと目を見て話してよ。」

 

 

「フハハハ!左様な所作は我にとっては造作も無き事!幾百の時を過ぎようと赤子の手を捻るようなものよ!」

 

 

「いくびゃく?とにかく、赤ちゃんの手は捻ったらダメだよ?」

 

 

 

アホな子代表の由比ヶ浜は、材木座の手を握ってそう言った。由比ヶ浜は小さい子を叱るみたいに「メッ!」とか言ってる。この二人は会話の合わないプロだったのだ。なるほど、俺達がついていけない理由が解った。材木座の発言をアホの子が返すと、無限の広がりを見せる。収拾がつかなくなるけど。しかし、次に材木座から発せられた台詞は、二人のやりとりにおける俺の予想の斜め上へと発展した。

 

 

 

「ほ」

 

 

「ほ?」

 

 

 

 

 

「…惚れた!」

 

 

 

「へ?」

「え?」

「は?」

 

 

 

「お主の真名はなんと言うのだ?」

 

「マナ?えーと、な、名前のことかなー?由比ヶ浜結衣です、けど?」

 

 

「結衣殿か……なんと素晴らしい響きよ!これも八幡大菩薩の導きなのか…!」

 

 

 

 

俺、姫、由比ヶ浜の時は止まっていた。たっぷり5秒後、そして時は動き出す!じゃなくて、展開についていけなかった。

 

 

 

「や、なんとゆーか、大変恐縮ですとゆーか、心中お察ししますとゆーか。」

 

 

 

困った事に、由比ヶ浜も展開についていけてなかった。心中お察ししてどーすんだよ。俺なんて年中誰にも察せられてないぞ。なんだよ、ソレ。言ってて悲しくなってきた。

 

 

 

「ほむん。本来の用件を失念していたようだな。ならば八幡よ、我が依頼聞いてくれるか?」

 

 

「お、おう。」

 

 

 

なんだかんだで押し切られてしまった感があったが、材木座の依頼内容はシンプルだった。自作のラノベを読んで感想を欲しいとのことだ。

 

 

「依頼を受けるか決めるのは俺じゃねーよ。我らが部長、姫様だ。」

 

 

「八幡くん、人前でその、その呼び方はちょっと恥ずかしいのだけれど…」

 

 

 

姫は恥ずかしがっていたが、俺の主君は姫なのだから仕方がない。由比ヶ浜は不機嫌な顔をするし、材木座はキモいしで、踏んだり蹴ったりだ。

 

 

 

「その、材…材……材津くん?その依頼、正式に奉仕部が承ります。」

 

 

「おぉ!ついに我が悲願が叶う時がきたのだな!フハハハ!宜しく頼むぞ!では、また会おう。結衣殿も達者でな!」

 

 

 

 

そうして、奉仕部は材木座の依頼を受けた。由比ヶ浜は先程の材木座からの衝撃の告白に、多少取り乱したまま帰るのであった。

 

 

 

 




材木座くんの登場となります。

彼の活躍に期待して下さい(笑)

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