Three Dragons read to the moon 作:鏡夜$
第5章
それからの尸魂界は終始慌しかった。砕蜂達、二番隊席官の面々は、比較的被害も少なかったため、午後には隊舎に帰ることが出来た。
「夜一様、このような粗末な場所ですいません…」
砕蜂が夜一にぞっこんなため、隊士たちはどこかやりづらさを感じていた。
「夜一おばちゃん、おかえり~!」
龍三郎は帰ってきてすぐ夜一に挨拶をしたのだが、砕蜂の鉄拳を呼ぶこととなり、いつもよりはいくらか大人しくしている。
「初めて会うのにこのような言い方も失礼かもしれませんが、四楓院夜一様、おかえりなさいませ」
影人は、まるで何かの儀式のような堅苦しい挨拶をして、夜一の顔を歪めさせる結果となった。
「ほわぁぁ美味しそ~♪」
稀代は龍三郎と一緒に夜一をもてなすためのご馳走に夢中である。
「味見~♪」
龍三郎がご馳走に手を伸ばした…が、その手は料理に触れる前に砕蜂によって、捻られた。
「いっ!?イタタタタタ…ご、ごめんなさい!!」
今回は完全に砕蜂の勝利である。
「ふっ…」
そして満足した様子で微笑むと、夜一の隣へと戻った。そして、夜一の合図で、宴会が始まり、龍三郎や稀代、そしてどこから現れたのか十一番隊副隊長の草鹿やちるらが、一斉に料理に飛び付く…が、それより速いスピードで、主役の夜一がどんどんたいらげていくので、大量の料理番があくせく行き来を繰り返していた。
「美味しい~」
「ね~」
「そうですね~」
~3時間ほど後~
宴が終わると、いつの間にか日が暮れていたらしく、窓からは月光が差し込んでいた。大方の隊士は自室に戻っている。この食堂には、いつもの四人と、夜一しか残っていない。
「や~…いっぱい食べましたね」
「ね~僕もうお腹いっぱい」
稀代と龍三郎は満足した様子で寝転がっている。影人はそれほ眺めつつ、徳利に手を伸ばす。
「お、夕月が酒を飲むなんて珍しいな。」
砕蜂が少し驚いた顔をして言う。
「そうですねぇ…人前で飲むのは10年ぶりぐらいですか…まぁ、このメンツなら、いいでしょう?」
「あぁ、構わん……って、寝てるのか、この二人は。」
「子供は寝るのが一番じゃ。」
「わ!?夜一様!?ご就寝なされたのではなかったのですか!?」
「今、起きたのじゃ。」
寝たかと思っていた夜一が突然現れて、砕蜂は驚きを隠せない。
「ではここからは、大人だけで二次会としますか。」
影人は砕蜂のお猪口に酒を注いだ。砕蜂も夜一のお猪口に注いで、隣に座っている。
「乾杯!」
影人の音頭で、二次会が始まった。すでに夜も更けきっている。
「……ん…ふあぁ…あれ、ぼく寝ちゃったのかぁ…」
「隊長、夜一様、あと、龍三郎も、おはようございます」
「あ?もうすぐ今日の業務も始まるぞ。準備しろよ。」
そういって砕蜂は、夜一の後を追って消えてしまった。昨日の料理や、机などは、料理番によって、一晩のうちにきれいに片づけられ、がらんとした部屋に二人だけが残された。
「影人さん、いませんね」
「あ、ホントだ!いないね…」
「どこへ行かれたのでしょう??」
知らぬ間に影人が消えていることに気付いた二人は、霊絡を頼りに、影人の追跡を開始した。それが自らの運命を捻じ曲げる事態になる事など知る由もなかった。
「ここなはずなんだけど…」
「ここって、立ち入り禁止区域じゃないですか!?」
「あ、あそこ!!何か燃えてる!?」
龍三郎が柵を飛び越えて、立ち入り禁止区域へと進んでいく。少しの躊躇いはあったが、稀代もついていくことにした。
「なぁにぃこれぇ??本みたいだけど…」
やっとのことで消火を終えた二人…いや、龍三郎は見ていただけだが、二人は燃えカスを漁っていた。
「たしかに…なにか文字が書いてありますね。この日付って…」
「80年前の12月10日??なんかあったっけ?って、なんで泣いてるの!?」
「私の…私のお父さまとお母さまが……亡くなられた…日です…」
その場に座り込み、なんとか声を絞り出して話す稀代に、龍三郎はいつになく真面目な顔で話を聞いていた。
「そっか…大変だったんだね…」
龍三郎は泣いている稀代の背中を優しく撫でながら、燃えカスを集めて、文が合うように、床に並べ始めた。
「12月10日 今日は信じられないものを目にした。これが死神として生きていくということなのだろうか?」
そんなタイトルで始まった文書は、新人隊士の日記のようだった。
「………夜も更けかけた頃だ……業務の帰り………森を一人で歩いていた……豪邸で……楽しそうな声が聞こえ…………急に声がやんで…………驚いた…窓から中をのぞいた………窓の中には……………シャンデリア……一つの人影が………人影は夕月影人、その人であった…」
何とか読み取ると、そのような内容であった。
「ええと、この豪邸に副隊長さんがいたのか…」
「そうですね。でも、なんで楽しそうな声が…?一人ではなかなか笑いませんよね。」
やっと落ち着いたのか、稀代も燃えカスを覗き込んだ。そして、疑問を呈した。
「あ、たしかに…しかも誰が燃やしたんだろう??」
「この文書に何か秘密でもあるんでしょうか?」
二人は延々と燃えカスの前で語り明かした。いつの間にか、遠くの山には夕焼けがかかっている。
「あ!?今日の業務!!全くやってませんよ!?」
「あ………仕方ない、怒られに行こうか」
「はい…」
稀代は先ほどとは違う涙を浮かべた。案の定数分後には、砕蜂の拳骨を受けた二人…特に稀代が、瀞霊廷中に響くのかと思うほどの大声で泣く結果となった。
「まぁまぁ、私がやっておきましたから。お気になさらず。」
「うぅ…影人さぁ~ん………」
影人も、フォローを入れたが泣きつかれ、困ってしまった。
「やれやれ、可愛いですね、全く。」
「なんかさぁ、影人お兄ちゃんって、稀代ちゃんには甘いよね」
「それは私も感じていた。なぜなんだろうな。」
龍三郎と砕蜂は、影人が稀代を撫でているのを不思議そうに眺めていた。
「あ、そうそう、昨日の帰りに、水菓子を買ってきましたよ。後で切り分けますね。」
「やったぁ!!楽しみだね!」
龍三郎はそう言いつつ少しの不信感を覚えた。この日、影人の任務は、執務室で済むことばかりであった。しかも影人は、暇さえあれば本を読むような読書家である。用事もないのに外に出るようなことはあるだろうか?ならば、今日は何をしていたのだろうか?龍三郎は思いをめぐらした。が、具体的な結論には至らなかったので、保留とした。
「あ、そうそう、隊長サン。少し聞きたいことがあるんだ。こっちきて。」
「む…なんだ?」
龍三郎は、今日見た文書のことを事細かに説明した。
「でさ、稀代ちゃんのお父さん達ってなんで死んじゃったの??」
「それは…私も知らんな。今日の夜にでも大霊書回廊にいくか?」
「うん!隊長サンも一緒だよ!!」
「え……はぁ…」
第6章
もうすっかり夜も更けた頃、龍三郎は砕蜂を引っ張って歩いていた。
「もう私は寝たいのだが…」
「だめ!一緒に見る約束でしょ!!」
「そんな約束はした覚えがないぞ…」
あからさまに眠そうな砕蜂を気にせず、龍三郎は話を続けている。そんな龍三郎を見て砕蜂は、反抗を諦めた。少し経てば寝床に戻れるのだから、早く終わらせてしまおうと考えたのだ。
「ついたぁ…ええと…事件資料事件資料と……」
「ほら、これだろ。あったぞ。80年前の12月10日」
「おぉ!さすが!!で、なんで死んだの?」
「大前田稀ノ進……家に突如として現れた虚により、胸を一突き…だな。稀代以外の家族はこの事件で死に、稀代だけは流魂街の犬吊で発見されたと。」
「ふ~ん…なんか変な事件だね。」
「そうか??」
「だってさ、家でお父さんたちは死んだんだよね?なのにさ、瞬歩もできない3歳の赤ちゃんは流魂街で一人で見つかるなんておかしいでしょ。そんな場所に一人で行くわけないじゃん。」
「そうだが、誰か人が連れて行ったのかもしれないぞ?」
「一家全員殺されたんだよね?それとも虚が運んだっていうの?虚にそんな知能ないよ。」
「たしかに…ならばこの場所にもう一人、稀代を運んだやつがいるってことか?」
「そういうこと。でもそれだと、なんで犬吊かがわかんないんだよね。事件から助けたかったなら、潤林安の方が近いよ?」
「殺すようなもんだぞ。あんなところに赤子一人放置するなんて。」
ここまではなして、二人は顔を見合わせた。恐るべきことに気付いたからだ。
「ま、まさか、そのもう一人は、助ける側ではなく殺す側……」
「お父さんたちを殺しに来て、なんかの理由で、稀代ちゃんを殺せなかった…」
「だから犬吊に放置することで、誰かが殺してくれることを望んだ…そういうことか......しかし、だれがそんなことを…」
「まだわからないけどとにかく、このことは内緒にしよう。」
「あぁ。それに、私たちで稀代を守ろう。殺し損ねた犯人が稀代を殺しに来るかもしれん。」
「うん!決まりだね!!」
そう言って二人は大霊書回廊を出た。遠くの空は明るくなっている。砕蜂は、絶望した様子で龍三郎を見つめていると、あることに気が付いた。
「龍三郎…お前が私を連れてこさせたのってまさか、暗闇が怖かったからか??」
「う.........」
「怖かったんだな?素直に言わないとこのまま瞬歩で帰るぞ。」
「そ、そんなぁ…置いてかないでよぉ…」
「なら認めたらどうだ」
砕蜂はそう言って悪い笑みを浮かべた。自分の睡眠を奪った少しばかりの報復といったところだろうか。
「そうだよ…そとは真っ暗で怖いから隊長さんについてきてもらったの……うぅ…」
よほど恥ずかしかったのか、耳まで真っ赤にさせて、泣きそうになっている。
「そうか」
砕蜂はとても楽しそうに歩き出した。
「あ、まってよ~…」
「知らん。自分で追いついてこい」
意地悪をするかのように、砕蜂は歩くペースを速めた。