DOG DAYS DUAL-BRAVER   作:天木武

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Episode 7 交錯する戦場 後編

 

 

『つ、ついに始まりました! 本日最大の見物と言っていいでしょう、勇者対元勇者の戦いです! 閣下、どう見ますか!?』

『……見事じゃな』

『……は?』

『今のソウヤのフェイクじゃ。最初にベールにタレミミを撃たせ、次撃のソウヤの一撃をシンクに向ける、と見せかけて再びタレミミを撃つ。あの一射、奴の得意の紋章砲『サイクロン・アロー』じゃな。かつてはワシの紋章砲『魔神旋光破』と打ち消しあった、点で撃ち抜く狙い済ました一射じゃ、シンクへの挨拶代わりの一撃と誰もが思ったじゃろう。

 じゃが実際の狙いはタレミミだった。結果、隊長の足が止まったことで部隊の足も止まる。そこに遊撃隊が突撃、隊のアドバンテージを得た状態で自身はシンクとの戦いに集中する。……一歩間違えれば卑怯と罵られかねない方法じゃが、自分はシンクを狙うものだという先入観をうまく使った方法とも言えるじゃろうな』

 

 部隊への突撃の指示を出しつつ、ベールはレオの冷静な解説を聞いて苦笑を浮かべていた。ごもっともな解説、まさに模範解答であった。

 ベール自身、ソウヤからは「エクレールを狙え、俺は時間差で撃つ」とだけ言われていた。だからソウヤはてっきりシンクを狙うものだとばかり思っていた。が、標的の直前で彼の矢は軌道を変え、連続でエクレールを狙った。あれだけの出力のある紋章砲の軌道を変更するとは、まさに輝力制御に長ける彼ならではだろう。

 しかしその一射に呆気にとられていたベールに次にかけられた言葉は「畳み掛けろ、俺はシンクをやる」というものだった。意味を問いただそうとするより早く、彼を乗せたヴィットは得意の脚力によって猛スピードでシンクへと迫っていく。もう1度エクレールを見たところで、ベールはようやくソウヤの真意に気づいた。今レオが言ったとおり、相手の足を止めさせ、こちらの有利を得た状態を作り出したのだ。

 彼らしい、とベールは思っていた。自身の戦いと自軍の勝利と、同等に見ている彼の判断である。せっかく作ってもらったこの状況を使わない手はない。何より、紋章砲一発分の輝力を自身の相手ではなく自分たちのために撃ってくれたのだ、それを無駄には出来ない。

 

「悪いけどエクレちゃん……覚悟してくださいね!」

 

 ようやく立ち上がったエクレールに狙いを定め、ベールは第二射を放った。

 

 

 

 

 

 シールドで矢を防御した時の爆発から、シンクは次の手を読めていた。結果的にエクレールを狙った一射目の「サイクロン・アロー」とは違い自分に向けられたのは爆発によって多数の敵を薙ぎ払う「スマッシャー・ボルト」だ。対集団戦においてソウヤがよく用いる紋章砲だが、1対1においては着弾と同時に爆発する性質を生かし、今のように煙幕代わりに使われることが多い。事実、過去に何度もその方法を取られたこともあって、シンクにとって大上段からの一撃を盾で逸らすこと自体は容易だった。

 が、彼の怖いところはここからだ。身体強化の紋章術によるサポートを受け、ソウヤはその振り下ろした勢いをそのままに、体を捻りつつ右足の後ろかかとによる上段回し蹴りへと移行してくる。剣と体術。それこそがソウヤの近接戦における戦闘スタイルだ。

 

「パラディオン!」

 

 シンクの声に呼応して、左手の盾が一瞬で消えて右手に得意の長尺棒が生まれる。上体を屈めつつ棒の腹で蹴りの軌道を僅かに逸らし、シンクも転げるようにセルクルから飛び降りた。ソウヤのヴィットは既に主の戦いの邪魔にならないよう、離れたところに待機している。

 

「まさかエクレを狙うとは思わなかったよ」

 

 開いた間合いでの睨み合いの状態で、自身の調子を確かめるように棒状のパラディオンをクルクルと回しつつ、シンクは口を開く。

 

「お前だけを狙え、なんて決まりはないからな。文句あるか?」

 

 着地後、ソウヤは剣状のエクスマキナを左手へと持ち替えた。彼特有の戦闘スタイル、あえて利き腕と逆の手に剣を持つことで防御に使い、反撃に右の徒手と両脚の蹴りを使う方法だ。

 

「ははっ、ごもっとも。てっきり僕を狙ってくると思ってたから意外だっただけ」

「そこを利用させてもらったってだけだ。それ以上の文句は後で聞いてやる。……敗者の言葉に耳を傾けるのも、勝者の義務だろうからな!」

 

 挑発の言葉と共にソウヤが踏み込む。それに対してシンクは牽制代わりにパラディオンを突き出した。まるでそれが来るのを読んでいたかのように身を横へと逸らして攻撃を避ける。

 いや、実際ソウヤはそれを読んでいた。かつての戦いの経験から、まず牽制にこれが来ることは読める。ソウヤの得物は剣と体術、あるいは弓。一方のシンクは長尺棒。一騎打ちにおいて弓を主軸に据えないソウヤはより踏み込まなければならない。そうなると先手はリーチに分があるシンクに取られる。そこでとんでくるのが牽制の突きであった。

 

 なぜ弓を主軸に据えないのか。一対一において弓という武器は基本的に不利だからだった。一撃で勝負をつけられるならまだしも、基本的に距離を詰められれば圧倒的に劣勢となる。相手の接近に合わせて距離を離しつつ戦う、というのも厳しい。迫る相手に対し、狙いをつけながら距離を空けるというのは速度が出ないために距離を詰められやすい。無論、紋章術によって速度を補うことは出来る。が、それでも狙いを定めるのは難しい。紋章術のサポートがあればその狙いについても不可能ではないことだが、たとえ定められて命中したとして、先に述べたとおり一撃で勝負をつけられなければ結局次弾までの時間から距離を詰めきられることとなる。

 よってソウヤは一対一の状況において、「接近される前に一撃の下に相手を撃ち抜く」という思想よりも「接近戦に不得手な武器を捨てて他の武器によってあえて接近戦を仕掛ける」というスタイルを取っていた。現実主義の彼らしいといえばらしい発想である。「一撃で仕留める」というのはある種ギャンブルだ。相手の防御や回避によって初撃で撃ち損じた場合、圧倒的不利に陥る。強力な紋章砲は体へのフィードバックも大きい。輝力のコントロールは長けている彼とて、強力な紋章砲を放った後の反動は抑えきれるものではなく、決め損ねた場合は不利にさらに拍車をかける形となる。

 さらにはガウルが得意とし、他にも使い手の多い「輝力武装」を彼は用いようとしなかった。自身の身体能力を補うために輝力を使うソウヤの場合、その生命線でもある輝力を大量に消費してしまう輝力武装はスタイルに合わないと判断したからだった。

 しかしその戦闘スタイル、悪く言ってしまえば「場当たり的」な戦い方は彼が言うところの「非力」に他ならない。不幸なことに彼はレオのようなパワーもシンクのようなスピードも持ち合わせていない。加えて得意武器の弓が一騎打ちに不向きという状況。突出している部分といえば輝力の扱いに定評があるという程度。ソウヤはその助けをもってなんとかここまで戦い抜いてきた。自身のスタイルを嘆きたくはない。嘆いて変えようとしたところで、周囲の天賦の才を持つ連中には及ぶはずもない。だったら、慣れているスタイルを貫き通して、足りない部分は頭と輝力と小手先の技術でカバーすればいい。それこそが、「器用貧乏」と自嘲する彼の戦い方だった。

 

 そんな彼が頼れるものは自身の頭脳である。シンクの牽制の突きをかわした時点で次の行動を予測。多いのは一旦パラディオンを引いての再度の突き、あるいは突いた状態からの横薙ぎだ。もしくはソウヤが自分の距離に持っていくのを嫌うかのように間合いを空けてくるか。

 しかしシンクの動きはそのどれでもなかった。パラディオンを引くには引いたが、あろうことか()()()()()パラディオンの逆側、すなわち手元の部分による上段への殴打へと移行する。

 

(……誘い込んでやがるな)

 

 一瞬動揺したものの、ソウヤはすぐにその心を落ち着けた。過去に数度こういう展開はあった。自身の距離でなく、あえて相手の距離で戦うというシンクの悪い癖のようなもの。今日はソウヤの復帰戦だ、ならあえてその間合いに踏み込んでやろう、などという目論見だろう。

 

(舐めやがって……!)

 

 ソウヤも受けて立つ。体を屈めて攻撃をかいくぐり、下段への足払い。地面を這うように払われたソウヤの左足は空を切るが、回避によってシンクの体勢がわずかによろめく。ソウヤはそこを見逃さない。軸足にしていた右足で地を蹴り、払ってきた左足と手で体を支えつつの右足による上段蹴りへ。「シャペウジコウロ」と呼ばれるカポエイラの蹴り技、かつて空手を習っていた彼がより蹴り技に特化しようと習った格闘技の蹴りである。

 シンクはそれを左手の手甲で受け止める。トリッキーな動きから放たれる蹴りであるが、過去の戦いからシンクの目はその動きに馴れつつあった。踏みとどまって二撃目同様に今度は中段へとパラディオンを薙ぐ。だが蹴りで屈んでいた姿勢から起き上がったソウヤは、あろうことか「マカーコ」と呼ばれるバク転でその攻撃をやり過ごした。着地と同時に再び右足での上段回し蹴り。シンクは上体を反らしてその蹴りをかわす。

 来る、とシンクは直感した。その読みどおりソウヤが攻勢に入る。かわされた蹴りの勢いをそのままに体を回転させ、左手のエクスマキナで上段を薙ぐ。パラディオンで防御するシンクだが、次いで右足の踏み込みと共に右の拳が腹部に迫るのを確認した。

 

「はあっ!」

 

 気合の声と共にソウヤの右拳が振り抜かれる。すんでのところでシンクは体の間に左腕を割り込ませて防御していた。が、力を込められて放たれた強烈な一撃だ、そのまま数歩後ずさり間合いが開く。

 

「いってて……。本当に1年間のブランク明け? 全然そんなことを感じさせないコンビネーションなんだけど」

 

 腕の痛みを和らげようと左手を振りつつシンクが口を開く。それに対してソウヤは鼻を鳴らすだけで答えとした。

 やはり簡単には事を運ばせてくれない。今日も苦戦するな、とソウヤは先行きを悲観的な目で見つめた。

 

 

 

 

 

 高所からの眺めと入ってくる映像によって戦況が逐一わかる実況席では、その2人の様子に興奮気味な実況を入れていた。

 

「や、やはり凄い! さすがはビスコッティとガレットの名物勝負の一つ、勇者対元勇者! ブランクを全く感じさせないデ・ロワ卿の連続攻撃! そしてそれを捌ききる勇者シンク!」

「ブランクといっても時折ビオレと実戦形式で組み手をしていたようじゃからな。カンが鈍っているということはないじゃろ。身重でなければ喜んでワシが相手をしてやったんじゃが、如何せんそうもいかんしの」

「なるほど! あの近衛隊長相手に訓練していたとあれば、それは納得です! ですが……ビスコッティ側の勇者シンクもかなり調子は良さそうですね。ビスコッティのアナウンサーとしてはどう見ますか、エビータさん?」

「そうですね。私が実況を務めさせていただいた限りで言えば、ここ最近の中では1番キレがあると言ってもいいのではないかと思うのですが。ここはレオ閣下にも意見を伺いたいところですね。いかがでしょう、レオ閣下?」

「……そうじゃな。ワシもここ1年の間のことはわかっていないが、それ以前の戦の様子を思い出しても、かなりいい動きをしていると思う」

 

 そう答えた後で、レオは思わずその目を伏せた。傍らのアナウンサー2人は既に実況を続けており、そんな彼女の様子には気づかない。いや、その前に、彼女がシンクに対してコメントを求められた時に、思わず()()()()()ことにも気づかなかった。記憶を探っている、と思われたからかもしれない。だがそれは違った。

 

(やはり……お前はもうシンクには()()()()のか、ソウヤ……)

 

 心中にそんな思いがよぎる。いつも以上にキレのいいシンクの動きを見てコメントを求められた時に、彼女は休養中に夫が不吉なことを言っていたと思い出した。

 

『もう、俺は今後シンクに勝つことはできないのかもしれないな』

 

 自嘲気味に言ったせいもあって、いつものことだろうと、彼女は「ふざけたことを言っていると張り倒すぞ」と返した。が、彼は再び自嘲気味に笑い、「本気で言っていたとしても張り倒されるのか?」と答えたのだった。

 その時に彼女はようやく気づいたのだ。ソウヤはシンクと自分との間に埋めがたいほどの決定的な差が生まれていることに苦悩している、と。

 考えてみればその兆候はあった。互いに召喚当初は互角以上の戦いを繰り広げており、今も見た目はそう見えるし実力は互角というのが周知である。が、戦績がそれを否定していた。休養前の年にソウヤが挙げた勝利はたったの1勝。その唯一の勝利はシンクが風邪をおして強行参加した時の勝ち星だ。つまり相手の調子が落ちている時でもなければ、もはやソウヤは勝てないというほどにまで追い込まれていた。

 

 では今日のシンクはどうか。先ほど彼女の自らの口から出たとおり、絶好調なのだ。久しぶりの戦で張り切っているのだろう。対してカンを鈍らせないように訓練は怠らなかったとはいえ、正式な、殊に実戦での一騎打ちは1年ぶりのソウヤだ。この差は決定的と言える。

 

(じゃが……ワシはお前を信じるぞ、ソウヤ……)

 

 そんな思いと共に映像の夫に視線を向ける。しかしそんな彼女のささやかな願いとは裏腹、彼は今では攻めあぐねているとわかった。先ほどまでの攻勢から一転、今度は守りに回っている。距離こそ彼の距離を取らせてもらっているが、しかしそれでもなお防戦にまわらざるを得ない。

 すなわち、自分の得意距離を保たずともシンクは十分戦えてしまっているのだ。棒状のパラディオンから繰り出される変幻自在な攻撃を時に剣のエクスマキナで捌き、時に身を翻してかわす。防戦ながらも要所要所で反撃を繰り出し、なんとか押し切られる状況だけは脱している。だが攻勢でも攻め切れずにこの状況、やはり厳しいのかもしれない。

 それでも、とレオは彼を信じていた。勝てない、とレオにだけは泣き言をこぼしてなお、ソウヤは今日の戦いで引こうとしなかった。多少の小細工はあったとはいえ、あえて真っ向からぶつかった。彼には引けない理由があるのだ。元勇者として、ガレット・デ・ロワの姓を名乗る人間として、そして「百獣王の騎士」レオと肩を並べる存在として。さらには「蒼穹の獅子」と呼び、今も自身の戦いを楽しみにしてくれている自国の国民のためにも、彼は戦い続けるだろう。

 「自分は王という器ではない、人の上には立てない」などと言っている夫に対し、レオはそこだけは否定したかった。彼の戦いは見る者の心を動かす。シンクのような華こそないかもしれないが、ストイックに目の前の討つべき獲物だけを見据えて戦う姿は、かつて勇者と呼ばれ、今は「蒼穹の獅子」の二つ名を持つ者のそれとしてふさわしい。王は人の心を惹き動かす。だが裏を返せば人の心を動かすことが出来ねば、王たる資格すらないのだ。なら、彼には資格があるということになる。だから、と、そんな彼を彼女は信じるように画面越しに見つめた。

 

 戦は早くも中盤戦の様相を見せ始めていた。

 

 

 

 

 

 戦局が大分進んでいることはガレットの本隊で指揮を取る騎士団長のバナード・サブラージュ将軍も気づいていた。あとは仕掛けどころだ。現在の戦況はほぼ膠着(こうちゃく)状態。一時的には押されていたが、ソウヤ率いる遊撃隊の突撃と勇者対元勇者の戦いが始まってからは全軍の士気が上がり、盛り返すことに成功している。まだ彼が率いる本隊の戦力は温存してある状況だ、何かしらのきっかけがあれば全軍に突撃をかけて押し切れるだろう。

 

 と、策略をめぐらせる彼の傍らにひっそりと近づく1つの黒い影があった。

 

「将軍」

 

 抑揚はないが、どこかかわいらしい声で自分を呼んだ声の主の方へ彼は視線を向ける。

 

「やあ、ノワール。何かあったかい?」

 

 黒のフードつきローブを身に纏い、そのフードを頭からすっぽりと被ったノワールが音もなくバナードの側へと駆け寄り片膝をつく。ローブの下から覗く、先日ソウヤとビスコッティを訪問した際に着ていた騎士服も黒。まさに黒で統一された「闇」のような格好が、諜報部隊の彼女の正装でもあった。

 諜報部隊は平時からも他国の情報収集や要人警護、さらには魔物への対策など任務が絶えない。かといって戦の時は休みかといえばそうでもない。偵察による戦況の情報収集を主としているが、場合によっては急襲から撤退時の殿(しんがり)まで事欠かない。一線で活躍する隊ではないものの、戦況を有利に進めるための裏方の隊であった。

 

「本隊は膠着状態。敵の迂回する隊もありませんので、現在五分五分の状況です。一方遊撃隊の首尾は上々、親衛隊長の騎士エクレールこそ撃破に失敗しましたが、隊相手には確実に押しています。勇者とデ・ロワ卿の一騎打ちは現在はほぼ互角ですが、長期戦は不利なデ・ロワ卿がそろそろ厳しい状態になるかと」

「はは……。君はなかなかに辛辣だな」

「事実を述べているだけです。……でも、本音を言えばソウヤには勝ってほしいけど」

 

 それまでのお仕事モードの堅苦しい喋り方を崩し、後半は表情にも僅かに感情を表してノワールは答えた。

 

「私も同感だね。ソウヤ殿の復帰戦でもあるし、今日は気分よく快勝してくれると個人的にも嬉しいのだが」

「でも難しいかも。ブランク明けだし、今日はシンクも絶好調みたい。それにソウヤ自身が言っていた()()()()()()()まで時間がないから……」

「そうか……。彼からの頼みだ、致し方ないか」

 

 言葉通り、口惜しそうにバナードは呟く。ソウヤは前もってバナードに自身の一騎打ちの時間について話していた。基本的にソウヤの戦い方は紋章術頼り、輝力を使うほど窮地に追い込まれる。そのため長期戦には不向きなのだ。長くなればなるほど、負ける確率が濃厚になる。

 そのため、事が事なら本隊側で何かしら行動を起こしてもらえると助かる、と非常に遠まわしに彼はバナードに援護を嘆願していた。勇者対元勇者という注目の2人なだけに、戦の勝利の鍵となるポイントは非常に高い。彼の敗北はそのままガレットの敗北に繋がりかねない。バナードもそこは心得ている。

 元より、勇猛な者が多くいるせいか「脳筋」などと揶揄されるガレットにおいて、この場にいる将軍と諜報部隊長、それに元勇者の3人は数少ない知略派でもある。一騎打ちでは不利であるかもしれないが、既にソウヤは向こうの勇者と親衛隊長率いる隊の出鼻をくじき、戦局を有利に運んでいる。次はこちらの番だろう、とバナードは不敵に小さく微笑んだ。

 

「では……元勇者の遊撃隊長殿からのご要望だ。少し早いが、そろそろ戦局を終盤戦にもって行くとしよう。ノワール、一緒に来てくれ」

「了解。今本隊に集まっている数は少ないけど、諜報部隊、お供します」

 

 うむ、と頷くと、バナードは声高らかに自軍へ向けて命令を飛ばした。

 

「これよりガレット軍、全軍突撃する!」

 

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