異世界転生の特典はメガンテでした   作:連鎖爆撃

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Side 神様

【それを売るなんて】ヒキヲタをドラクエの世界に転生させたら太陽の石を売り払いやがったwww【とんでもない】 
(続き)

541 名前:以下、名無しにかわりまして神様がお送りします
これ何て無理ゲ?

542 名前:以下、名無しにかわりまして神様がお送りします
>541
嘘みたいだろ。初代の世界なんだぜ。これで。

543 名前:以下、名無しにかわりまして神様がお送りします
竜王じゃなくてRYUUOUだったってわけか

544 名前:以下、名無しにかわりまして神様がお送りします
それでもそれでもおっさんなら何とかしてくれる

545 名前:以下、名無しにかわりまして神様がお送りします
竜王「ドラゴラム(物理)」

見事に腹筋を持ってかれたわwww
さすがラスボス

546 名前:以下、名無しにかわりまして神様がお送りします
勇者も腹筋を()()()()()()()()

合掌。

* * *

569 名前:以下、名無しにかわりまして神様がお送りします
それで?
最後、勇者は何を目掛けて剣を投げてたん?


その者青き衣をまといて金色の野に降り立つべし

Side 竜王

 

目の前に転がる勇者を見て、少し疑問に思う。

コイツは結局、何の特典を持っていたのだ?

 

だが、まぁいい。

 

死体が棺へとなって帰還しないことは僥倖だ。

コイツのパーティメンバーがまだ階下で戦っていることを意味している。

 

何度も来られるのは面倒極まりない。

コイツの体は、氷漬けにして城の地下にでも封印しておくべきだな。

 

初代勇者と同じ末路を辿らせてやる。

 

 

 

ふと、気がつく。

 

ほんのりと、勇者の体が光っている。

 

………いや、違う。

窓からの日差しが、勇者の体を照らしているのか。

 

あまりヒヤヒヤさせるな。

特典で、“死んだら、即時復活する”能力でも持っているのかと思ったぞ。

 

流石に、あのようなプレイヤーと連戦など、考えるだけで気が重いからな。

 

………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの位置に、日差しなど差したか?

 

 

 

バッ、と後ろを振り返る。

 

 

 

天井に近い窓のうちの1つ。

その窓の周囲の壁が崩れ、そこにあるはずの“棺”が消えていた。

 

十年間放置していた、“ロトの勇者”の棺が。

 

壊れた壁に、走る一本のヒビ。

そのヒビは、窓枠の下、短剣のささったところから伸びていた。

 

 

 

背筋を冷たいものが走った。

 

 

 

いや、落ち着け。

前回の戦いは、俺が()に勝った。

奴は何らかの準備をしてから乗り込んでくるはず。

まだ、身を隠す時間は十分にあるはずだ―――!

 

 

 

 らん らら……

 

竜王の耳に、何者かの歌う声が飛び込んできた。

 

 ◆ ◆  ◆   ◆

 

Side 兵隊長

 

ボウズ、スマン。

そっちに行けんかもしれん。

 

死神の騎士 Lv.99★ ♂

HP/MP:2000/0

現在装備 

頭:死神の兜

胴:死神の鎧

武器:ロトの剣

盾:死神の盾

 

目の前の“竜王軍最強”の魔物に、俺はまだ傷ひとつつけられちゃいねぇ。

 

後ろで部下たちも足止めを食らっている。

さっさと勇者の加勢に行きたいところではあるが……。

 

兵隊長 Lv.99★ ♂

HP/MP:82(410)/0

現在装備 

頭:なし

上:黒いシャツ

下:アーマー

武器:なし

盾:なし

 

ククッ、と笑いが漏れてしまう。

 

ボウズじゃないが、“こんなの無茶苦茶だ”と言いたくなるな。

 

まさか、《兜割り》で《ロトの鎧》が砕かれるかよ。

 

さぁて、どうしますかね?

 

特注の剣は、最初の一合で折られちまって。

鎧はなし。

体力はわずか。

さらに、相手は伝説級の武器を持っていやがる。

 

 

 

野郎共、心配すんじゃねぇ。

 

俺は、ゴーレムを素手で殴り殺したんだぞ?

Lv.4()5()の時にな。

 

今なら、ギリギリ、コイツでもいけるんじゃねぇか?

鎧も壊れて身軽になったことだ。

ここは1つ、景気良く行ってやろうじゃねぇか。

 

 

 

兵隊長が構えをとって、ステップを刻み始めた。

《身躱し脚》。かつての勇者の一人に教わった技だ。

 

部下たちがざわめくのが聞こえた。

 

「まさか、はじめる気か……ボクシングを…!」

 

 

 

兵隊長は拳を上げたまま、前傾姿勢で死神の騎士の懐に飛び込んだ。

 

捨て身とも取れる突進に、死神の騎士は一瞬反応が遅れる。

 

 

 

その一瞬が命取りだった。

 

盾を手で押しのけ、ガラ空きになった、死神の騎士のボディに。

 

兵隊長は、《爆裂拳》を叩き込んだ。

 

全身の、全霊で。

 

 ◆ ◆  ◆   ◆

 

Side ???

 

「不吉を…届けに来たぜ!」

 

ちょっとテンション高めなのは仕方ないって!

 

10年ぶりのシャバだぜ?空気ウマー!!!

 

 

 

今俺が立っているのは、竜王の城の最上階、玉座の間を見下ろす窓、その窓枠にである。

 

 

 

いよぉ、竜王ちゃん、元気にしてた―!

 

してたよね―!

してたんだろオラァ!

 

おっといけない、BE COOL…BE COOL……。

 

いやぁ、それにしてもまいったわー、目覚めたらフラグ全部回収されてんじゃん。

 

もう、俺に仕事なくね?竜王ちゃんをいじめるぐらいしか仕事残ってなくね?

 

うわー、そこに転がってる勇者くんもっと空気読んでほしいわー。

 

あれだぜ?ゴルスラ、ゴルスラ、ゴルスラに《魔神斬り》覚えさせて竜王とメタメタメタメタァ!とかメタル祭りぃ!とかやるつもりだったのに、今さらそんなことしてもさぁ!

俺の方が空気読んでないみたいじゃん!下手にシリアスな空気持ち込みやがってよぉ!

 

……ま、いい許す!

助けてもらったからな。

命だけは許してやるよ!

既 に 死 ん で い る け ど な !

 

まさに外道!

 

………いや、やっぱ許せんわ。

これで俺を狙ってきたんだっけ?お、《どくばり》じゃん!

 

はい、パース!……ち、頭を外したか。

 

お?竜王ちゃんなんか文句あるわけ?

死体蹴りはやめろ?

 

ハハハ

 

お前いつから俺に口答えできるほど偉くなったわけ?

 

もういいわ。

 

――――――《マダンテ》

 

 

「ふ、ふざけるなぁぁぁぁぁ!マ、《マジックバリアーーーーー》!」

 

竜王が大掛かりな魔法障壁を発動させる。

暴走した魔力の大爆発が、竜王城の揺るがした。

 

 ◆ ◆  ◆   ◆

 

Side 兵隊長

 

ギリギリのところで死神の騎士を沈めるのと同時。

 

城が揺れた。

 

衝撃は……上からか!?

 

ボウズ、そっちは大丈夫なのか!

 

 ◆ ◆  ◆   ◆

 

Side 竜王

 

ふざけるなよ!?

なんだ開幕《マダンテ》って!?

初っ端MP全消費って正気か!?

お前、物理職じゃないだろうが!!

 

《モンスターマスター》だろうが!!

 

ロトの勇者 Lv.9 ♂

HP/MP:150/0(999)

現在装備 

頭:なし

胴:つなぎ

武器:なし

盾:なし

特技:

《ギガデイン》《ビッグバン》《グランドクロス》《ジゴスパーク》《マダンテ》《くちぶえ》

(※システムによる閲覧規制)

スキル:

モンスターマスター:魔物と心を通わせることができる。また、配合を行えるようになる。

メタルボディ(呪文系によるダメージを無効にする)

(※システムによる閲覧規制)

 

「てれるぜ!」

 

褒めとらんわ!

 

「ハハハ、そうカッカすんなって!これでもう俺は窓に引っかからないわけじゃん?」

 

ああ、そうだな!今お前が天井をすべて吹き飛ばしたからな!

 

お前マジ調子乗んなよ?

今からお前をもう一回倒して、今度は城の地下に封印するからな!?

 

「ああー、それたぶん無理だわ」

 

はぁ、何抜かしてんだゴラァ!

お前もうMP0だろがぁ!

 

ロクに準備しないで飛んできたろ!

《エルフの飲み薬》持ってんのかよぉ!

 

「竜王ちゃん、BE COOL!素が出ちゃってるよ?」

 

 

 

「あと、後ろから()()()()?」

 

 

 

 トスッ

 

………え?

 

胸に目をやる。

 

黒い刃先が、そこから生えていた。

 

首だけ回して背後を見ると、確かにトドメを刺したはずの勇者が立っていた。

 

 

 

「いやぁ、《精霊の歌》は効き目が遅いのが難点ですなぁ!」

 

 

 

 ◆ ◆  ◆   ◆

 

勇者 Lv.94 ♂

HP/MP:479/458

特典スキル:

ザオラルガード(ザオラル系の呪文への完全耐性、蘇生アイテムも効かない)

メガンテマスター:メガンテを使っても必ず一回瀕死になる。

 

―――――目が覚めると、見知らぬ男と竜王が言い争いをしている光景が目に飛び込んできた。

 

何故俺は生きてる?

あの男は何者だ?

っていうか、つなぎ姿?

 

言動からするに、あのつなぎは“ロトの勇者”か。

 

俺は賭けに勝ったらしい。

約4割の確率で発動する《どくばり》の即死攻撃、これで壁を破壊することに成功し、ロトの勇者を解放した。

 

まだ、竜王には俺が目覚めたことがバレていない。

今のうちに、おっさんたち連れて逃げ出したい気分だが……。

 

 

 

視界の隅に《どくばり》が映る。

 

あれ、壁に刺さってるはずじゃ……。抜けて落ちたのか?

《どくばり》を手に取る。

 

 

 

俺が目覚めたことはまだ、竜王にバレていない。

 

 

 

ゆっくりと、立ち上がる。

 

興奮冷めやらぬ様子で何事か叫ぶ竜王の背後で、俺は呼吸を整えた。

 

そして、俺は一番慣れた剣技を竜王に繰り出す。

 

―――――《疾風突き》

 

 

 トスッ

 

……マジか。

 

もしかして、ボスには効かないんじゃないかとかいう懸念もあったのだが、別段そんなことはなく《どくばり》は竜王の胸を貫いた。

 

振り返る竜王。

 

……なんかスマン。お願いだからそんな恨みがましい目でこっちを見るな。

 

 

 

竜王は膝から崩れ落ち、息絶えた。

そして、その姿を棺へと変える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………こんだけ?

 

「GAME CLEAR! コングラッチレイション!イヤッホォウ!」

 

ロトの勇者がなんかはしゃいでいるが、俺はとてもじゃないが盛り上がれる気分ではなかった。

 

竜王へのトドメが、まさかの不意打ちである。

 

 

 

よし、決めた。

 

俺、勇者辞める。

 

「止めるも何ももう終わりなんだけどな!」

 

いろいろと台無しにした張本人は黙っていなさい。




本編で触れられない設定

35.ザオラルガード
この作品における最大の詐欺要素。その効果はザオラル系の()()への完全耐性、蘇生アイテムも効かない、というもの。
呪文とアイテム以外の蘇生なら受け付けるが、それらの特技が初代の世界観にそぐわないため、縛り要素と化していた。実は抜け道ありというオチ。

36.精霊の歌
初出はⅥか。味方全体を復活させる特技。
ゲーム内では、使用者を2ターン行動不可にしたが、この世界においては単純に蘇生に時間がかかるというデメリットのみで、行動不可にはならない。
発動原理は、祈りを精霊に捧げて、その加護を受けること。
この世界においては、精霊と呼ばれる存在がルビスのみで、ルビスとの交信が可能なロトの勇者のみに許された、蘇生特技の究極奥義である。DQMⅠⅡにおいては踊り系に分類されるため、呪文()()()()。この世界観でもその設定を流用している。

37.身躱し脚、爆裂拳
それぞれ、《みかわしきゃく》(Ⅵ初出)《ばくれつけん》(Ⅵ初出)。
ボクシングでのステップ・フットワーク、連続スマッシュに相当。
兵隊長はボクシングスタイルで戦っても相当強いが拳を痛めるため普段はやらない。
どうやら竜王をぶん殴るために鍛えていたようである。

38.マダンテ
初出はⅥ。ドラクエにおける究極の特技。
作品によって色々扱いが変わる。
MPを全て消費して相手に特大のダメージを与える攻撃技。
純粋な魔力の塊をぶつける爆発技であり、生物にしか効かないメガンテとは一線を画する。

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