異世界転生の特典はメガンテでした   作:連鎖爆撃

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Side 神様

「見てくれよ、これwww」
「もう、今度は何を作ったんです、神様?」
「転生者の棺が飛行する様子だけを編集してつなげた動画www」
「プッwww ヤ  メ  ロwww」
「フイてんじゃんwww」
「そんなん草生えるわwww」
「opはロトの勇者が窓に刺さるとこからwww」
「ちょっくら他の天使も呼んでくるwww」
「おk www」


それを売るなんてとんでもない。

俺は息を潜めて機会を伺っていた。

 

(……今だ!)

 

ザッ

 

「……ぴぎゃ?」

「メガンテェェェェェェェェ!」

「ピギャァァァァ!」

 

スライムベスの群れがプスプスと煙をあげる。

そして、ゴールドを吐き出して消滅していった。

 

素早くあたりを見回す。

今の音で新たに近づいてきた敵がいないか確認する。

 

……いないか。いや、油断は禁物だ。

 

素早く、丸薬状に丸めた薬草を飲み込み、煮詰めて凝縮させた《魔法の聖水》で喉の奥まで流しこむ。

……張り付いた感じがするが問題ない。ウインドウを確認するとしっかり回復していた。

 

片手に《キメラのつばさ》を握りしめたまま移動を開始する。

 

100m前方に二頭の《ゴールドマン》を確認。

 

……あいつらにメガンテをぶつけ次第、一旦ラダトームに帰還だ。

 

素早く駆ける。気づかれても問題ない。素早さではこちらが上だ。

 

あと80m

あと70m

 

 

あと40m

 

 

あと10m

 

「……?ウガァァァァ!」

 

1体に気づかれた。だがもう射程範囲内だ。

 

約4m。急ブレーキをかけ、草の上を滑りながら呪文を叫ぶ。

 

「メガンテェェェェェ!」

「「ウガァァァァ!」」

 

ゴールドマンの焼死を確認。

ゴールドの回収はしない。欲張って死んでは元も子もないからだ。

 

素早く後ろにキメラの翼を投げる。

 

瞬間、グルっと視点が回転する。

 

 

 

「……ご苦労さまです勇者様。お早いお帰りですね」

「ハハハ、ただいま」

 

 

 

強烈な皮肉をぶつけて来る女僧侶を前に、コミュ症すれすれの俺が気の利いたことなど言えるはずもなく。

しどろもどろとしながら、祝福を与えてもらう。

 

 

 

今の俺はヒットwithメガンテ&アウェイwithキメラの翼を繰り返しつつ経験値稼ぎを繰り返していた。

 

勇者 Lv.17 ♂

HP/MP:77/42

初期装備 

頭:なし

胴:布の服の上に皮の鎧

武器:ダガー

盾:なし

特技:《ギラ》《メガンテ》

特典スキル:

ザオラルガード(ザオラル系の呪文への完全耐性、蘇生アイテムも効かない)

メガンテマスター:メガンテを使っても必ず一回瀕死になる。

 

転移してから3ヶ月。

俺は相も変わらず経験値稼ぎをしていた。

 

 ◆ ◆  ◆   ◆

 

「……《ひみつの鍵》ねぇ」

 

二週間前、俺はLv.15にしてガライの街に到着していた。

 

そして、この問題にぶつかったのだった。

 

「ええ、それが無ければガライの墓には入ることができなんでさぁ」

 

モブの一人が告げる。

俺は今までの自分の行動を振り返っていた。

 

たしか、城の宝箱からパクった奴は城の扉をいくつか開けるのに全部使った覚えがある。

あれ、もう使い切ってるじゃん。

でも秘密の鍵ってどこかで売ってなかったっけ?

 

頭を巡らせ考える。

そういえば、どっか遠い街で売ってたよな……でもそこってリカントロープかなんかが出てきてめっちゃ危険じゃなかったっけ?安全マージン取ってLv.25くらい欲しいな。あれ、詰んでる?

 

ラダトーム城に帰還した後、俺の自室としてあてがわれた部屋で俺はもんもんと悩んでいた。

メガンテさえあれば戦闘は一瞬だ。でも一回の戦闘ごとに《薬草》と《魔法の聖水》を使っているのではとてもじゃないが収入と支出の釣り合いが取れない。

既に初めにもらった費用はそこをついている。

物理戦闘で稼ぐか?答えは否だ。戦闘がリアル路線化している世界でビビらずに剣が振るえるとはとても思えない。

 

……スライムから徐々に慣れていって戦士職にジョブチェンジか?無理無理絶対無理。

 

そこでふと、視界の隅に写り込んだものがあった。

 

《太陽の石》である。

 

小説版ではロトの子孫はコイツに触れて光を消すことで勇者に祭り上げられたアレのことだ。

ゲーム準拠のこの世界では、ロトの子孫が原作ブレイクしたため、触れられずに残っていたのだ。

1ヶ月近く城の周囲から離れずにスライムを狩っていた俺は、もののついでにと城の地下室からこれを回収していたのだ。

 

ちなみに俺はロトの子孫でないため光は消えていない。

 

……正直、今の時点では無用の長物だよな、これ。

 

 

 

………売れねぇかなぁ。

 

 

 

結局俺は、「これを売るなんてとんでもない!」とゴネる道具屋のおやじを説き伏せ、300000Gという高値でこれを引き取らせたのだった。

 

なぁに、あとの事はあとで考えるさ。




本編で触れられない設定

06.戦闘システム
ターン制バトルではなく、まさかのリアル路線。
モンハンみたいにアクションかつ奇襲可。さらに怯みあり。
呪文攻撃でも怯むため先制攻撃の重要さが恐ろしく大きい。

07.アイテム
効き目は速攻。いろいろリアル路線になっていく世界でそこはゲーム通り。あと、戦闘中にキメラの翼が使えるなど、細かい差異がある。キメラの翼の強力さに気づいた主人公はこれが手放せなくなりつつある。

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