異世界転生の特典はメガンテでした 作:連鎖爆撃
「ふざけるなぁぁぁぁ!勝手にフラグ立ててんじゃねぇぇぇ!甘々しやがってぇぇぇぇ!R-18シーンに突入しないならアクションシーンにサッサと進めやァァァ!」
「(何でこんなワガママな人が神様やってんだろ?)」
息を潜める。
……焦るな。殺意を抑えろ。
自分にそう、言い聞かせる。
ゴールドマンが近づいてくる。草むらに潜んでいる俺には気づいていない。
城の剣術指南のおっさんの言葉が思い浮かんでくる。
――――――よいか、重要なのは剣速などではない。剣が相手に届くその瞬間まで、相手に殺意を気取られないことだ。これを極めるだけでも十分な意味がある。
――――――まぁ、信じろ。俺にもできたんだから、お前にもできるさ。
ニカッと、想像の中でおっさんが笑った。
いい笑顔しやがって。絶対ミスるわけにはイカンな。最期に思い出す笑顔があのおっさんとか絶対嫌だわ。
彼我の距離、後8m。
7m
5m
4m
2m
……今だ。
スゥ……
息を一つ吐き、草むらから飛び出す。
まだ、気が付かれていない。奴の正面に飛び出したにもかかわらずだ。
右手の剣をゴールドマンの体の中心に突き出す。
まだ、気づかれていない。
剣が突き刺さる。
まだ、気づかれていない。
硬い感触が手に伝わってくる。金属音。
ダメージが通ったのがわかる。
まだ、気づかれていない。
―――よし!
そこで気を抜いてしまった。
ほぅ、と呼吸してしまう。
そして、ゴールドマンに気が付かれてしまった。
だが、余裕だね!急所に会心の一撃を決めた後だ。このまま剣をひねれば、お前はバラバラだね!
……あれ?
……剣がかなり軽くなっている気がする。
右手の剣を視線をやる。……あ、剣折れてるや。
「ウガァァァァ!」
ゴールドマンが腕を振り上げる。
「メガンテ」
「ウガァァァァ!」
煙をあげるゴールドマンを背にして、薬草の丸薬と水薬を飲み込む。
うん、やっぱ俺は剣に向いてないわ
◆ ◆ ◆ ◆
ラダトーム城下町の武器屋に剣を持っていく。剣を引き取ってもらい、新しい剣を買うためだ。
折れた剣を見せるとおやじに睨まれた。剣を折った状況について包み隠さず話す。
「で、剣をダメにしたと?」
「うん、だからもっと良いやつを売ってくれ」
「馬鹿野郎!《どうのつるぎ》を折るようなやつが《はがねのつるぎ》を使いこなせるわけが無いだろうが!強い分、あちらの方が折れやすいんだぞ!」
「……やっぱ?」
「もう、この店の敷居を跨ぐんじゃねぇ!」
武器屋のおやじに叩き出される。
まぁ、明日になったらケロッとしてるだろ。明日また来よ。
なんだかんだ、いつもいいのを売ってくれるしな。
今現在、俺は剣で戦う道を模索していた。
今更ながら、《メガンテ》を主軸とした戦い方に危うさを感じたのだ。
ある程度Lvは上げた。フィールドを駆けずり回っているうち筋力も大分ついた。
そろそろ、剣を使ってもある程度戦えるんじゃね?とか思ってしまったのもある。
けど、現実はそう甘くない。
人間に比べて、魔物たちというのは強大な存在だ。
それに比べ、人間の手で作られる道具の脆さよ。
ぶっちゃけ、戦闘の中で剣を取り落とすことをしなくても、剣の方から勝手にポキポキ折れていくのだ。
そこで、重要になってくるのが剣術……平たく言えば、《特技》である。
極めれば、剣を痛めずに相手だけにダメージを通すことができる。
うん、俺、物理技一個も持ってないですよ?
Lvを上げても、俺が物理技を覚えることができるとはとてもじゃないが思えない。
っていうか、ここ初代の世界だろ?物理技の特技とかあんのかよ?
で、調べたらあった。っていうか、ラダトーム城の兵隊長のおっさんが剣術指南とかいう肩書を持っていた。
《火炎斬り》《真空斬り》さらに《疾風突き》。今の所、おっさんが使える技のうち見せてもらったのはここまでだ。俺が真似ようとしていたのは《疾風突き》である。
失敗して剣は折れちまったけどな!
……うーん、俺やっぱ勇者っぽくねぇわ。っていうか、おっさん無茶苦茶強そうだったんですけど、なんでおっさんが勇者じゃないんですかね?
剣も無いし、今日は城に帰って城の予備の剣でおっさんに稽古つけてもらってよ。
あ、ついでに剣を借りパクするのもありだな。
……っていうか、剣で戦おうとしてたら序盤で詰んでたんかい。
転生してから6ヶ月。
今更、メガンテを特典にしてくれた神様に感謝しているところである。
……いや、やっぱオカシイわ。剣から炎とか風とか出るわけないじゃん。
おっさんなら「その観念がイカンのだ」とか言い出すところだけどな。
本編で触れられない設定
13.物理技
魔力を必要としない特技。基本的に~斬りという名の特技は発動に剣を必要とする。
この世界では魔法効果を乗せる剣技でもMPを消費しないが、つまりMPを消費しないで魔法と同じ効果を再現するということなので、下手な魔法技より敷居が高い。