初雪と   作:片桐 凶

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ある冬の一コマ。寒さも増して雪がチラつき始めた時期の話。


ストーブ

ボォー。

 

鎮守府の駆逐艦寮。玄関から入ってすぐの場所にストーブが置いてある。冬の出撃や遠征で冷えた体をすぐに温められるように寮監であるとある軽巡洋艦が申請したものだ。

 

「暖まる…。」

 

そのストーブの前に初雪の姿はあった。出撃の帰りで海風で冷え波を被った体を暖めている。

 

「動きたくない…。」

 

無傷で勝利した為入梁の順番が後になった為一旦寮に戻ってきたのだが、ストーブの前を通る時にその暖かさにつられ動けなくなってしまった。

 

寮の中は空調が効いており体が暖まった今なら玄関からすぐの此処より部屋の方が暖かいのだが、直接当たる温風に、動こうという気が起きなかった。

 

「艤装外すと寒くなるのはどうにかして欲しいな。」

 

ボォー。

 

変わらずに温風を送り続けるストーブの前で足と手を出しながら呟く。

 

ガチャ、ヒュゥー…、バタン

 

コツコツコツ

 

誰かが帰ってきたのだろうか、ドアの開く音と共に冷気が背中を撫でる。寒さに身を震わせてストーブにあたりながら足音が近づいてくるのを聞きながらぼーっと考えていると

 

「初雪じゃない、あんた私より先に出たのにまだ此処にいたの?」

 

姉妹艦である叢雲だった。今回の出撃で一緒に出撃した上、旗艦であった。提督に報告書を提出していた為、他の艦より遅く戻ってきたのだろう。

 

「体を暖めてた。」

 

「そう、今日は寒かったものね。私も一緒に当たって良い?」

 

「どうぞ。」

 

そう言って一歩横にずれた。元々大人数の駆逐艦の為に用意したものである為大きめのものが置かれている。2人が当たってもまだ余裕があった。

 

「ふぅー…、やっぱり良いわねこれ。」

 

「体が生き返る心地。」

 

「私たちが言うとシャレにならない気がするけど、まあその通りね。」

 

寒さからかしかめられていた顔が緩んでいく。普段から凛とした姿の彼女が力を抜いた表情を見せるのは珍しいなと感じながら話しかける。

 

「明日はどうだって…?」

 

「休みよ。敵の動きに変化が見られたみたい。近々特別海域指定が発令されるだろうって。」

 

「じゃあ休み明けは…遠征?」

 

「そうね、いつも通りなら…ね。」

 

そう言ってため息をひとつ。

 

「今日の敵、どうだった?」

 

「?…潜水艦?」

 

今日の出撃は鎮守府近海の警戒と、資材輸送ルートの巡回、護衛だった。通常の敵艦とも接触はあったが普段よりも潜水艦が多く、結果MVPを初雪が獲得した。

 

「輸送艦と潜水艦が多く確認されてるらしくてね、私達は駆逐艦の主力だから調整と演習以外は出撃制限になるみたい。」

 

「対潜警戒…。」

 

「そういう事、もしかしたら敵輸送作戦なのかもね。」

 

「ふーん…。」

 

よし、そう言って叢雲はストーブに当ててた手を離すと初雪の方を見て言った。

 

「十分に暖まったし、そろそろ行くけどあんたはどうする?」

 

「…ん、私も行く。…ありがとね。」

 

そう言って初雪もストーブの前を離れる。

 

「私も、十分暖まった。」

 

「そう?じゃあ部屋に行きましょう。荷物置いたらお風呂に行きましょうか。入渠施設の方が大きいけど怪我しないと行けないのが難点よね…。」

 

「お風呂も…結構好き。」

 

「私もよ。」

 

ストーブの前から離れても話は続けながら部屋に戻っていった。

 

2人がいなくなった後もストーブはつき続け次に帰ってくる人を待ち続ける。

 

ボォー

 

ボォー

 

外には雪がチラつき、寒さが増している。ストーブの中にいる妖精さんは帰ってきた艦娘を暖めるため今日も頑張る。でも今は離れてく2人に手を振る。小さく振り返してくれる2人に妖精さんはこれからも頑張ろうと決意した。

 

ボォー

 

ボォー




初雪と叢雲と妖精さん。ストーブにあたりながら一緒の時間を過ごした3人。暖かくなったのは体だけなのか…。

装備だけじゃなく施設の妖精さんが居るならこういった日用品の妖精さんも居るんじゃないかって考えました。キャラが初雪と叢雲の理由?好きだからです。
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