バカは死ななきゃ治らない   作:しろねこパンチ

1 / 7
episode1

僕は独りだった。

 

家では出来のいい姉と比べられ、学校では友達に騙され裏切られるのが当たり前だった。だから僕は努力した。皆に認められるように、皆に求めてもらえるように。でもその努力は無駄だった。いくら勉強が出来てもカンニングだと言われ、いくらスポーツが出来てもズルをしたと疑われた。

 

『お前なんかがこんな点数取れるわけないだろ!』

 

『俺がお前に負けるなんてありえない!』

 

『イカサマすんじゃねぇよ!』

 

毎日毎日、罵倒と暴力を浴びせられ、相談に乗ってくる教師も生徒全員にシラを切られれば止めざるを得ず、その後はまた暴力の嵐。

 

僕は諦めてしまった。クソッタレな現実に生きるのを諦め、ゲームにのめり込んだ。

 

『ナーヴギア』と『ソードアート・オンライン』

 

これが僕の全てだ。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「ついに今日か・・・」

 

僕こと吉井明久は自室のベッドの端に腰掛け、思い耽っていた。日々の出費を極限まで減らし、念願叶って買うことのできたVRMMOのソードアート・オンラインがついに今日からサービスが開始される。CBT(クローズドベータテスト)にも当選し、数ヶ月前から正式サービスの開始を楽しみにしていた。

 

「そろそろ時間か」

 

現在11時58分、12時からサービスが開始される。ヘッドギア型のナーヴギアを被りベッドに横になる。あと1分、時計の針は思いに反してなかなか進まない。

あと10秒・・・5.4.3.2.1

 

「・・・リンクスタート!」

 

キーワードを口に出すと意識が引きずり込まれるような感覚が襲う。

 

《welcome to sword art online》

 

またこの世界で生きていける。

 

《浮遊城アインクラッド》

第一層から第百層まで階層が別れており各層には階層主と呼ばれるボスがいる。これらを全て倒してゲームクリアとなる。ベータテストの1ヵ月では9層までが限界だったが

 

「今度こそ全部倒してクリアしてやる」

 

決意を新たにして第一層スタートポイント、《始まりの街》を駆ける。まずは武器の新調だ。初期装備のブロンズダガーでは《ホルンカ》までが限界だ。普通にやったら《ホルンカ》で買い替えるんだけど僕はベータの時に《始まりの街》で掘り出し物を見つけている。街の外れに古ぼけた小さな小屋がありその小屋の地下に商人NPCがいるのだ。そこでは強化すれば2層の終わりまで使える装備が手に入るのだ。しかしその装備等は一品限定で1人しか購入出来ないのだ。だから僕は急いでその商人の元へ向かっている。

 

「アキじゃないか!」

 

突然前に使っていたプレイヤーネームを呼ばれて思わず止まって辺りを見渡す。数メートル離れたところで二人のプレイヤーのうち片方がこちらに手を振っている。

 

「・・・キリト?」

「よかった、覚えててくれたんだな」

 

近付いてくるのは僕と同じベータテストに当選したキリトだ。片手剣を主武器として恐ろしいほど反応速度が早い化け物だ。

 

「誰が化け物だ!アキのほうがよっぽど化け物じゃないか!」

 

あれ?僕声に出してないはずなのにどうしてばれたんだろうか。もしかして新しいスキルが実装されたんだろうか・・・

 

「いやアキは全部顔に出るから丸分かりだよ」

 

なんだって!?僕のポーカーフェイスを見破るなんて、キリト、恐ろしい子!

 

「これからどこにいくんだ、そっちに何かあったっけ?」

「武器を買いに行こうと思ってね。掘り出し物を見つけてたんだ」

「そんなの知らないぞ!?クソ、始まりの街はだいたい探してたのに!」

 

キリトとの会話に花を咲かせているとキリトの後ろにいたプレイヤーが入ってきた。

 

「なあキリト俺にも紹介してくれよ」

「悪い悪い、こいつはクライン、初心者(ニュービー)でレクチャーを頼まれたんだ」

「クラインだ、よろしくなアキ!」

「よろしくクライン。それと《アキ》は前のプレイヤーネームだよ」

「そうなのか、今は何てんだ?」

「《ジャック》だよ」

 

 

 

「ぐへぇぇぇぇ!」

 

クラインの叫び声をBGMに始まりの街周辺の草原に出現するフレンジーボアを狩る。クラインの一撃は軽々と避けられ逆に一撃を入れられる。

 

「クッソ、動くんじゃねぇ!」

「訓練用のカカシじゃないんだぞ、動くに決まってんだろ」

「違うよクライン、勢いとか気合いとかじゃなくてモーションが大事なんだ。少しタメを作って解放する感じかな」

「タメ、タメか」

 

クラインは方に曲刀を右肩にに担ぐように構えると刀身が輝き出した。

 

「うおりゃぁぁぁぉぁぁぁ!」

 

曲刀基本スキル《リーパー》が発動しフレンジーボアのHPを全損させる。

 

「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁ!」

「初勝利おめでとう。でもあいつは他のゲームじゃスライム相当だけどな」

「何ぃ!俺はてっきり中ボスクラスかと」

「あんなのが中ボスならこのゲームぬる過ぎだよ・・・」

 

仮に中ボスがフィールドにホイホイポップしたとしたら難易度ルナティックどころの騒ぎじゃないな。

 

「二人共もっと続ける?」

「僕は続けるつもりだよ」

「たりめぇよ、と言いたいところだが5時にピッツァを頼んでんだ。一旦落ちるぜ」

 

「用意周到だな、俺は妹が準備してるはずだからもうしばらくだな」

「キキキキリトの妹さんっていくつ?」

「キリトって妹がいるんだ、僕は姉がいるよ」

「何ぃ!ジャック!紹介してくれよ」

「止めといた方がいいと思うけど・・・にしてもピザか、食べたいなぁ、最近水と塩と砂糖しか食べてなかったからなぁ」

「それは人間としてどうなんだ・・・」

 

しょうがないじゃないか!ナーヴギアとSAO買うのに食費を削るしか無かったんだから!

 

「ジャックって変なヤツだな、それじゃ俺は落ちる・・・ぜ?」

「どうしたログアウトの仕方忘れたか?」

「ああ忘れちまったみたいだログアウトボタンが見つけらんねぇ」

「マジかよ最初のウインドウの一番下にあ・・・ないな」

「だろ?どうしたんだ、バグか?」

「ログアウト出来ないバグなら全員強制ログアウトさせるのが普通だ。GMコールは?」

「やってるけど反応がないよ」

 

僕のウインドウにもログアウトボタンが無く、直ぐにGMコールをしているが全く反応がない。

 

すると始まりの街の大鐘楼が鳴り出し僕らは青い光に包まれた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。