◆それは生きている   作:まほれべぜろ

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死が軽い世界だと、脅しも過激になってくな

 大使館への襲撃により『ミッドナイトを照らす炎』団の名は、

 ノースティリス中で知られるようになった。

 

 白昼堂々と行われた力任せの略奪は、力なき市民たちの恐怖を煽る。

 積極的に噂を広めたこともあり、もはや『ミッドナイトを照らす炎』団を知らない者の方が少ないだろう。

 

 また、同じく略奪を生業とする者たちにとっての、憧れともなった。

 ジェイクが広く仲間を募ったこともあって、今や団員の数は15人に膨れ上がり、

 さらに3つの盗賊団が傘下に加わりたいと申し出てきて、これを受け入れた。

 

 傘下に加わった盗賊団は、ジェイクが大規模な襲撃をする際、

 呼びつけて共に戦わせる代わりに、分け前を渡すこととなっている。

 

 彼らを加えれば、盗賊団はいまや30人近い勢力となっており、

 もはや村の1つくらいならば、単独の勢力で落とせるレベルだ。

 辺鄙な村を襲撃したところで、大した収益にもならないのでやらないだろうが。

 

 団員の数は、これ以上増えてもジェイクが直接指揮を取る事が難しい。*1

 

 

 なので、これからは別の盗賊団を傘下に加えていく方針だ。

 頭数を増やすことで暴力の威圧による影響力を高める。

 そして、ゆくゆくはセビリスを抑えて、ダルフィのトップに立つのだ。

 

 

 

 大使館襲撃からしばらくして。

 ジェイクは活動拠点を、パルミアのスラムから、ダルフィの一角にある建物へと戻した。

 

 この拠点はもともと盗賊団の持ち物だったのだが、

 近頃はセビリスの影響を避けるために、使っていなかったらしい。

 

 ジェイクはダルフィにおいて、野心を隠すことはしなかったので、

 ダルフィの実権を狙うセビリスにとって、邪魔な存在と認識されかねなかった。

 

 以前のジェイク達5人の実力でも、セビリスの手勢だけを追い返すことは訳ないだろう。

 

 だが、セビリスが周りを焚きつけて、袋叩きにしようとしたら話は別だ。

 短期間でダルフィを掌握したセビリスの手腕*2によって、

 再起不能になるまでミンチにされる、もしくはそれ以上の処置を可能性があった。

 

 そのため、下手にセビリスに目を付けられないように、パルミアを活動拠点としていたのだ。

 

 

 

 しかし、今の『ミッドナイトを照らす炎』団は、ノースティリス有数の力を持っている。

 例えセビリスがこっちを疎ましく思ったとしても、簡単に排除できるような戦力は用意できない。

 名が売れてる盗賊団と戦うってのに、腰が引ける奴らも多いだろうしな。

 

 ならばダルフィで活動しても問題ない。

 

 そして、セビリスを押し込めることが出来る戦力を集めるため、

 傘下の盗賊団を増やしたいならば、ダルフィで行った方が効率が良い。

 だから、拠点の場所をパルミアからダルフィへと戻したわけだ。

 

 ダルフィでは、盗賊団が昼間から練り歩いてるからな。

 盗賊団同士でコミュニケーションをとるなら、この町が一番だ。

 

 最近のジェイクは、有力そうな盗賊団を見かける度に、俺たちと手を組まないかと誘っている。

 反応はまちまちだが、少なくともこちらを馬鹿にするような態度はほとんど見ない。

 これも、盗賊団の名が巷に広まっている証拠だろう。

 

 当然ながら、耳聡いセビリス側がこの動きを把握していない訳がない。

 

 セビリスは、以前にも増して積極的に活動するようになったと専らの噂だ。

 盗賊ギルドのメンバーに自分の手勢を増やしたり、

 ブラックマーケットから多くの武器を買い取っていると聞く。

 

 今までは、セビリスに対抗できるような勢力は、ダルフィに存在しなかった。

 だが、ジェイクが現れた事によって、急いで地盤を固める必要がある、とセビリスも判断したのだろう。

 と、この前ダルフィの盗賊ギルド職員が話していた。

 

 今のところ、セビリスとジェイクの間で直接の争いごとは起きていない。

 だが、酒場ではいつ、どちらが仕掛けるのか、と話題に上がることもしばしばだ。

 

 こうして、直接関わりのない人間達が知ることになるレベルで、

 ダルフィにて二勢力による拡張争いが勃発した訳だ。

 

 

 

「俺たちは泣く子も黙る『ミッドナイトを照らす炎』団!

 命が惜しけりゃ、積み荷と有り金の半分を置いてきな!」

 

 そんな『ミッドナイトを照らす炎』団の今日の活動は、団員のみでの隊商襲撃である。

 

「わ、分かった。言われたとおりにするから、武器を納めてくれ……」

 

 団員のみと言っても、総出となれば16名だ。

 この人数で襲撃を掛ければ、ほとんどの隊商は戦う事を選ばずに降伏する。

 襲撃者が、有名な大使館襲撃の犯人だという事も、無関係ではないだろう。

 

 最近の隊商襲撃では、まともな戦闘になる事は稀だった。

 

 

 

「くっ、出番だぞお前たち!馬車の積み荷を守れ!」

 

 それでも、抵抗することを選ぶ奴も存在する。

 積み荷を取られれば後がない者、評判の良い用心棒を雇っている者。

 理由は様々だろうが、これまでで一度も積み荷を守りきれた奴はいない。

 

 この世界では死んだ人間が何度でも蘇る。

 ならば、数の暴力の偉大さを最大限まで生かすことが出来る。

 すなわち相手が全員死ぬまで、味方全てが捨て身で戦い続けることが出来るのだ。

 

 強力な集団戦スキルである、鼓舞が入る人数が増えるというのも大きい。

 一度死んでも生き返る『契約』状態が、全員にかかるという事は、

 すなわち16人の命が32個になる訳だからな。*3

 

 こんな状況で一つの隊商風情に、負ける方が難しいという話でもあるな。

 今回も用心棒達を、6人の新入り盗賊団員を犠牲に、殺し尽くすことが出来た。

 

「ま、待ってくれ。分かった、金ならやるから命だけは助けてくれ!」

「遅せぇんだよ、今更そんな虫のいい話がある訳ねぇだろ」

 

 この世界では、死んでも這い上がる事が出来るので何度でも蘇れる。

 だが、死んでもタダであるという訳ではない、能力値の減衰が発生するのだ。

 それを恐れて、完全な負けが分かってから商人が命乞いをするが、そんな物が通るはずもない。

 

 ジェイクは耳を貸さずに、そのまま俺を商人へと突き刺した。

 すかさず、俺は血吸いを発動して、相手から血液を吸い上げていく。

 結果として、商人は血液を殆ど漏らすことなく干からびていき、そしてミンチになった。

 

 盗賊団に加わったばかりのメンバーで生き残った内、

 2人はまだ、俺のコレを見たことが無かったため、

 得体のしれないものを見た恐怖で、慄いた様子である。

 

 うーん、既に何回か別の新入りでもやっているが、これは気分がいい。

 自分だけが持っている力を使って、他人から畏れの視線を受ける。

 これも俺TUEEEの基本であると言えよう、転生オリ主の本懐だ。

 

 商人がミンチになったことで、略奪を止める者はいなくなった。

 俺たち盗賊団は用心棒が死んだ場所や、馬車の荷台から金目の物を集める。

 もちろん、死んだ仲間たちが落とした装備を拾う事も忘れない。

 

 今回の実入りは、ざっとみて20万gp相当といった所だろうか?

 そこそこの金額に見えるが、全員で頭割りすれば1万gp程度であり、

 戦闘で使った消耗品の補充を考えれば、さらに金額は減る。

 

 命がけで戦った報酬として見合っているかは、人それぞれというところだろう。

 俺からしてみたら、少々物足りないというのが本音だ。

 

 戦闘を終えた俺たちは、戦利品と共にダルフィのアジトへと帰った。

 先に戦闘で死んだ団員たちは、既に這い上がって先にアジトへ戻っている。

 

「よし、野郎ども!今日もよく戦った、戦利品の山分けの時間だ!」

「「「ウオォォォォォォォ!」」」

 

 いよいよ報酬の山分けだ、ジェイクの号令に歓声で返事をされる。

 

「まずは、今回の襲撃で死んじまった6人の分だ。売りゃあ、1万5千gpにはなんだろう。

 お前らが死んだときに落とした装備もあるから、自分の分を取ってけ」

 

 ジェイクが言い終わると同時に、喜びの声と共に報酬へと群がっていく。

 だが、その数は5人だけであり、今回の死人の6人に対して一人分少なかった。

 

 その報酬にありつかなかった一人が、おずおずとジェイクへと申し出る。

 新入りでも特に入ったばかりである、中肉中背の若い男だ。

 

 名前は確か、スタンリーとか言ったか。

 レベルは15で、今の盗賊団でも一番低い。

 ジェイクが今31あるから、大体半分ってところだろうな。

 

「あの、ボス。俺、やっぱりこんなに受け取れません。

 今回の襲撃でも一番に死んじまって役に立てなかったし、他の人達と同じ分で充分です」

 

 引っ込み思案な奴だな、何でそれで盗賊団に入ろうと思ったんだか。

 そんなスタンリーにジェイクが近づき、ガシリと上から頭を掴む。

 

 自分に比べて非常に大柄なジェイクに掴まれ、

 すわ、殴られるのかと思ったスタンリーは目をつぶったが、ジェイクはそんな彼に目線を合わせる。

 

「ドアホウが、お前は俺みてぇな強い男になりてぇってんで、この盗賊団に入ったんだろう?」

 

 ああ、確かにそんな事を言って盗賊団に入ったんだっけか、興味がないから忘れていた。

 そんなジェイクの言葉に、スタンリーは目を開けてジェイクに目を合わせた。

 

「役に立たなかったんなら、尚更多くの金を取んなくてどうする。

 今回死んで、能力値も下がってんだから貰った金でいい装備を買え。

 そもそも、俺が『死んでもいいからとにかく突っ込め』って指示を出してんだぞ」

 

 そう、この盗賊団の基本的な戦闘スタンスは、バフかけてからガンガン行こうぜ!だ。

 そして双子の魔術師にカーラと、後衛火力は十分足りているので、

 新入りは前衛を多めに採用しており、(遺品)を拾うのは任せて突撃しろと伝えている。

 

「俺は、強く成りてぇって貪欲な奴は好きだぜ。

 だからお前も、申し訳ねぇってならとにかく強ぇ武器でも買って、それで恩を返しな」

 

 コイツみてぇなよ、と言ってジェイクは俺を鞘から抜き放ち、スタンリーに持たせる。

 

「こ、これって確か団長の持ってる、すげぇ生きた武器ってやつでしたっけ?」

「そうだぜ、おら<<エーエン>>何か喋ってみな」

(急にそんな無茶振りされても困るんだが、せめて5秒は心の準備の時間をくれ)

「うわっ、本当に喋った!?大丈夫なんすかコレ、血ぃ吸われるって話っすけど……」

「なぁに、急に吸うのは持ち主の俺の分だけだ、後は吸わせようとしなきゃ平気よ」

 

 慌てるスタンリーに満足したのか、ジェイクはまた上機嫌そうに笑いながら俺を手元に戻す。

 

「ハッハッハ、怯えすぎだろうよスタンリー!」

「うるせぇなビッジ!ちょっと気になっただけだ、ビビっちゃいねぇよ!」

 

 スタンリーがムキになって叫び返すが、その姿も面白いのか団員の半分ほどは既に彼をからかう様子だ。

 彼を中心になって囃し立てるのは、これまた入ったばかりのビッジ。

 調子の良い奴という感じだが、魅力はあるようで、入団すぐにも関わらず団の中心部にいる。

 

「ふむ、そうだな。お前もコイツを味わっとくか?」

 

 そう言うと、ジェイクが今度はビッジの方に俺を差し出す。

 

「おっと面白そうじゃないですか。やらせて下さい、俺はビビんねぇっすけど」

 

 ビッジは口で言う通り、スタンリーとは違い全く気負わない様子で、俺を受け取ろうとする。

 そのタイミングにジェイクが念話で、俺だけに聞こえるように指示を出す。

(<<エーエン>>、俺が刺したらいつも通りに吸え)

(いやだから、早めに言っておいてくれって)

 

 とはいっても、こっちは会話と違って慣れている。

 ビッジが受け取ろうと出した右手を、ジェイクがガッシリと左手で掴んだ。

 驚き、戸惑うビッジ、その右手の指先に、ジェイクが浅く俺を食い込ませる。

 

「ってぇ!おいアンタ、いったい何をッ……!?」

 

 腕を引き戻そうとするビッジに、俺が神経属性の追加攻撃で麻痺させる。

 動けないビッジの腕から、俺は急激に血液を吸い上げていった。

 

「が、がっ!?」

 

 血液が満足に回らないほどに、ガッシリ掴んだジェイクの手。

 そして中の血液を急激に吸い上げる俺。

 この二つのもたらした結果は、まるで老人のように干上がっていくビッジの右手だ。

 

 まるで、この世界にはないホラー映画のような光景に、

 スタンリーを始めとする、本当に最近入ったばかりの者は、

 得体のしれないものを見る、怖気に満ちた視線を送り。

 

 そして、新入りの中でも早めに入ってきた者の視線には、

 恐怖の中にも「また始まった」と残酷なショーを見るような、好奇の感情が入り混じっていた。

 

 なお、元からジェイクの仲間だったカーラと双子は、

 特に気にすることもなく「早く終わんないかな」という視線を送っており、

 チアフーに至っては暇になったのか、こっそり手持ちのチーズを食べ始めていた。

 

 

 

 暫くして、カラカラになった右手をジェイクが離すと、ビッジはヨロヨロと座りこむ。

 どうやら恐怖で、まともに動くことが出来ない様子だ。

 そんな彼の前に、ジェイクは目線を合わせるようにしゃがみこんだ。

 

「なあビッジ、さっきスタンリーに言った話の続きだけどよ。

 俺はお前たちに、とにかく突っ込んで戦えって指示出したんだ。

 なのにお前、遠距離攻撃を織り交ぜて、死なないように立ち回ってたよな?」

「そっ、そんなもん当たり前だろう!?どうせ勝つなら、死なずに勝つに越したことはねぇ!」

 

 ビッジが、理不尽な仕打ち*4と、恐らくそんな目に遭った理由。

 それへの憤りが恐怖を上回ったのか、ジェイクへと言い返す。

 

「そんで、お前の代わりに死んだ奴がいるかもしれねぇだろ」

「それこそ分かんねぇだろう!?」

「分かんねぇなら、決めるのは全部ボスの俺だ。

 テメェが、俺の指示に従わなかった事に変わりはねぇ」

「んな頭おかしい指示だと思う訳ねぇだろ!?」

「まあそうだよな、だから今回の事はこれで仕舞だ。報酬も他の奴らと同じ分を取れ。

 次からは指示通りにやれ、嫌ならこの団を抜けろ。以上だ」

 

 そういって、ジェイクは重症治癒のポーションをビッジの前に置く。

 ビッジは非常に不服そうな表情をしながらも、

 それ以上言い返すことはせず、渡されたポーションを飲んで手を癒し始めた。

 

「よーし、報酬山分けの続きやんぞー。スタンリー、さっさと自分の分とれよ、後がつっかえてっからよ」

 

 ジェイクはそう言うと、ビッジの前を離れる。

 その様子に怒っている様子などは欠片も滲ませず、

 固まっていた他の団員たちも、少々ぎこちないながら山分け作業へと戻っていった。

 

 さて、この一連の見せしめの流れだが、既に何回かこの団で行われている。

 そして!このやり方の原案は!なんと俺である!

 

 とは言っても、カーラが中々新入りが言うこと聞かないって愚痴るから、俺が最初に

『意識があるままに血ぃ全部抜き取って、自分が干からび死ぬとこ見せたら大人しくなるんじゃねぇの?』

 と言った時には、

「お前、自分が血を吸いたいだけじゃねぇだろうな、

 っていうか団の戦力低下になるし、そんな事しても誰もついてくる訳ねぇだろ」

 って事で即却下されたんだがな。

 

 しかし、その後数日してから、"あの"問題児である双子から、

 このまま人数を増やすと団が纏まらないんじゃないか、という進言が出るレベルだったことから、

 ジェイクは俺の案を少し抑え、ある程度の方向を定めて実施することにした。

 

 すなわち「普段は豪快で優しいけど、気まぐれにやべー事をしかねないボス」しぐさである。

 正直、方向を定めなくても、もともとそんな感じの奴だったと俺は認識している。

 

 これにより、盗賊団に加わりたがるような荒くれどもを、

「悍ましいボスの威厳」で縛る事に現状は成功しており、

 しかも俺は「ボスが持っているヤバい剣」としての立ち位置を確立することが出来たのである!(ココ重要)

 

 いやー、いいよね。

 なんかこう、漫画とかで邪悪なオーラ放ってて、触れると体に影響が出る感じの剣。

 転生者としても強い奴ムーブが出来て、俺は満足である。

 

 

 

 その後は、問題なく報酬の山分けを進めることが出来た。

 これまであの見せしめムーブを見たことのなかった新入り達が、

 良くジェイクの言う事を聞くようになって、ビッジ君の血液も役に立てたと喜んでいることだろう。

 

 ちなみに、ビッジ君の血液は可もなく不可もなしという所だった。

 彼はレベル20くらいだから弱くは無いんだけど、あまり才能無い感じなのかもなぁ。

 ステータスがいい奴は、血の味も良いことが多いしね。

*1
元のゲームでも16人が上限だったしな、いくら俺のエンチャントが魅力補正をつけられても、物理的な限界はあるというところだ

*2
ジェイクの嫌う根回しなどの政治力

*3
前にも言ったが、鼓舞の効果量は使用者の魅力によって変化する。つまり、魅力を大幅に上昇させる俺のエンチャント能力がここで活躍できている。斬り合い以外での活躍はあまり望むところではないが、役に立たないよりはマシというものだろう

*4
少なくとも本人視点では

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