◆それは生きている   作:まほれべぜろ

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ここからが書きたかったやつです!


4章 永遠のお姫様
この主とメイドだけで、盗賊団と同じくらいの属性が詰め込まれてる気がする


「さあ、ここが私達の拠点よ!」

 

 夜も更け、モンスター達も寝静まった頃合い。

 新たな持ち主であるリーシャを迎えた俺は、ルミエストの近郊にある彼女の本拠へ到着した。

 

 見るからにテンションが高いリーシャは、鞘から俺を抜き放って、そのまま拠点へと向ける。

 格好をつける為か、はたまた俺が見やすくする為だったのかは不明だが、

 何にしても、俺の目にハッキリと彼女の拠点が目に入った。

 

 

 なるほど、リーシャが誇らしげにするのも頷ける。

 

 リーシャが(俺を)向けた先にあったのは、湖に面した木製の館だ、

 ちょっとしたペンション程度の大きさはあるように見える。

 

 ダークブラウンの木材と、赤い装飾で彩られたその館は、

 月明かりと窓から溢れる光に照らされ、妖しさと美しさを兼ね備えていた。

 

 

 家主の拘りを感じる、その館を見た感想は「ああ、リーシャが好きそうな奴だ」であった。

 この館に辿り着くまで、まだ3日程度の付き合いでしかないが、その位は既に察せる。

 

 移動中の彼女は、その身に纏う金色の鎧に泥が付こうものなら、

 例え野良モンスターの襲撃中であろうと拭き落とす。

 だというのに、モンスターを倒した返り血は、顔に付こうが気にする素振りも見せないのだ。

 

 俺がその理由を尋ねて帰ってきた答えは、

 「血は私を美しく見せるから」であった。

 

 結局その血は、彼女が身に着けている生きた武器が、少しずつ吸い取り食事としていた。

 だが、血が落ちるまでの間に出会った行商人は、いずれもギョッとした様子であった。

 彼女の異名が鮮血プリンセスになった理由が、推し量れるというものだ。

 

 

 まあ、アレだ。

 たぶん高貴な(金色や)ヴァンパイア(黒色、赤色の)に憧れる、思春期(カッコイイ)的な感じのものが好みなのだ、我が主は。

 

 そして……

 

 何を隠そう!俺も!そういうの!好きなのである!

 

 

 

 木製のドアを開けて彼女が帰宅を告げると、館の奥からメイドが一人現れた。

 足首まで届く藍色のロングスカートと、白のフリルが付いたメイド服に身を包み、

 少しくすんだ銀髪は、後ろで団子状にまとめられている。

 

 そして、そんなオーソドックスなメイドスタイルを塗りつぶすほど、

 前髪が伸びっぱなしの為、目元が見えないのが印象的だった。

 メイドがそんな事でいいのかという疑問面で。

 

 

 リーシャは慣れた様子でメイドに荷物を渡すと、そのまま館の奥へと進んでいく。

 

 館の内装は彼女の鎧と同じく、絢爛豪華という言葉が相応しいものだ。

 

 金の刺繡が施されたレッドカーペット。

 廊下にズラリと並べられた、奇跡のような品質の武器と防具の数々。

 そして寝室には、ダブルどころか4人は寝れそうな、巨大ベッドが置かれている。

 

 俺には家具の良し悪しなど分からないが、この家に金が掛かっていることは分かる。

 どれもリーシャが選び抜き、或いは勝ち取ってこの家へと持ち帰ったのだろう。

 

 その後も一通り、リーシャは俺と共に館の中を練り歩いたのだった。

 

 

 

 さて我が主様は、恐らく本来の用途とされる人数では、使われないであろう、

 流しテーブル*1の上座に陣取り、ワインを嗜んでおられる。

 

 眼を閉じて澄まし顔で、さも一人の時間を楽しんでいるかのように見せているが、

 俺は気づいている、彼女の爪先がソワソワと上下している事実に。

 

 彼女が"何か"を待ち構えているのは明らか、だが自分から動くつもりは無いようだ。

 ならば従僕たる俺としては、それに応えねばなるまい。

 

 

(我が主よ)

「!!ッ、……何かしら?」

 

 リーシャはグラスをテーブルへとゆっくり置き、何でもなさそうに俺の言葉を待つ。

 爪先は、ピンと上を向いた状態で静止している。

 

(屋敷、見させて貰った)

「……そうね、ご感想は?」

(美しく、それでいて洗練されているな)

「あら、それは光栄ね。具体的にはどの辺りが気に入ったのかしら?」

 

 食いついては来た、しかしまだ求める物には程遠いようだ。

 爪先は地面へと帰還したが、未だ飛躍の時を待っている。

 

(まず外観だが、黒と赤を基調とした館が月明かりに照らされることで、

 我が主の美しさと残忍さを想起させ、見る者の畏れを呼び覚ます。

 湖に館が映る配置なのも高ポイントだな、やはり湖には洋館が反射していなくては)

「……ええ、そうでしょう?」

 

 フフンと笑い、リーシャは優雅に髪をかき上げた。

 爪先は、交互にステップを踏み、宙と地面を往復し始めた。

 

 プレゼンとしては落第物である、見る者へ主観を押し付けるばかりの感想。

 拙いおべっかにも似たそれは、だがリーシャの心へは届いているようだ。

 

(黄金の(カーペット)に据えられた、上質な装備。

 これで家主の"格"が分かるというもの。

 招かれた客人は、我が主に平伏し仰ぎ見る他は無いだろうな)

「…ええ。そうでしょう、そうでしょう!」

 

 もはや上機嫌である事を隠そうとせず、口元を緩めてワインを呷るリーシャ。

 爪先は天を仰ぎながら、左右へも揺れ始めた。

 

 今、『実際に招かれた客がどう感じるか』は重要でないのだ。

 大切なのは『招かれた客にどう感じてほしいか』その欲望である。

 

 

 

(ところでこの長机、こんなにデカい意味はあるのか?

 残忍さで有名な冒険者の家、それもこんな辺境のルミエストに建てられた館だ。

 わざわざ訪れるような客、そういないだろう)

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 リーシャの顔が無表情になる。

 静かに足を揃え、生来の鋭い目つきが俺を貫いた。

 

(さっき見たベッドもそうだ、この家に住むのは我が主とメイドのみ。

 寝る時は一人なのだろう?アレほど大きなベッドである必要はなさそうに見える)

「…………、ええそうね。今の所、あのベッドを二人以上で使ったことは無いわ」

(つまり特に必要なく、あのサイズで置かれている訳か)

 

 2人の間をひと時の沈黙が流れていった。

 

 

 

 俺は、昔からよく相手の気持ちを汲み取れない奴だと言われる。

 小学校の通知表でそう指摘されたのだから、筋金入りだ。

 そんな俺だから、今リーシャの事をヤバいレベルで怒らせているのかもしれない。

 

 

 だがそれでも、俺は思ったことを口に出し続けたのだった。

 

 それは、リーシャのあの鋭い眼差しは怒りから来るものではなく、

 ()()()()()()()()()()()()()()()()だと感じたからか。

 それとも、運命を感じた、新しいこのご主人様と俺に、

 同じ物を素晴らしいと思う、共通点があるのではないかと、期待したからか。

 

 

(他人に畏れられるが故に友を持たない我が主は、

 ただ独りでこの長大な机を用い、食事をするわけだ)

「!!」

 

 リーシャの目の色が変わる、興奮のあまり口元からギリ、と食いしばる音が聞こえる。

 

(そんな姿を見れば余人は、)

 

 だが、俺の言葉が止まる事はない。

 

 

 

(……その在り方故、孤高であり続けるしかない姫君を幻視してしまうだろうなぁ?)

 

「ッッッッッ!!!そうなのよ!!!!!」

 

 瞬間、リーシャは興奮を抑えきれず、両手をついて前のめりに立ち上がった。

 今や爪先は地の底を指し示し、踵の代わりに全体重を支える役割を担っている。

 

「あなた分かってるじゃない!そうよ、これは必要だからワザと大きな家具を買ってるの!

 なのにウチのメイドと来たら、やれ「無駄遣いはよせ」だの「掃除が大変だ」だの!

 私のお金を何に使おうが勝手だし、大変でも掃除するのがアンタの仕事でしょうが!」

 

 

 これまで演じていた、残忍で高貴な館の主人としてのロールをかなぐり捨てて、

 堰を切ったように、この館の拘りについて力説し始めるリーシャ。

 どうやら、今までに趣味の理解者がいなかったらしく、相当に語りたかったようだ。

 

「失礼いたしますお嬢様、追加のワインをお持ちしました」

 

 息まくリーシャに対して丁度、と言うタイミングで、

 先ほど彼女を出迎えた銀髪のメイドが、飲み干されたワインの補充へとやってくる。

 

「出たわねメイド。ふふ、これまではアンタにデカい顔をさせていたけれど、これからは二対一よ。

 これからは思うがままに、家具を買い替えてやるんだから」

「おや、お嬢様が今まで、思うがままに振舞わなかった事があったとは。

 驚きのあまり、私の心臓が飛び出すかと思いました」

「アンタ、ゴーレムだから心臓ないでしょうが!」

 

 どうやら、このメイドはゴーレムらしい。

 言われてみれば、手と腕のつなぎ目に、球体の関節らしき物が存在している。

 

「それだけ突拍子もないという事でしょう。

 只でさえ、使い道の無い巨大な家具を、持て余しているというのに。

 この前など、無駄に2つ目のベッドを買おうとしていたではないですか」

「あれは、アンタ用の奴だって言ったでしょうが、無駄じゃないわよ!」

「ゴーレムである私に、豪奢なベッドなど不要です。

 結局、この家の管理は全て私がやるのですから、

 掃除の手間が増える分、むしろ邪魔になるとさえ言えます」

 

 なるほど、この巨大な家は全て、このメイド一人に整備されているらしい。

 まだ仕事ぶりを見たわけではないが、相当優秀であると見込まれる。

 

「あーもう!昔からそうやって、自分のモノ持たないんだから!

 言っとくけど、自分の配下にロクな報酬を与えてないって知られて、恥をかくのは私なのよ!」

「私はお嬢様の一族に仕えるべく、生み出されたゴーレムです。

 報酬を欲しない相手に手厚く遇しては、

 お嬢様の目指す残酷な淑女とやらに、差し障るのではないですか?」

「敵には容赦しないけど、仕える者への報酬は惜しまないスタイルでやってるからいいのよ!」

 

 昔から、一族に仕える。

 この辺りのワードから察するに、どうやらリーシャが生まれる前から、

 彼女の家系に仕えていたようだ。

 慇懃な態度も、小さい頃から面倒を見ていたからなのだろう。

 

 

 ふむ……。

 

 

 

 銀髪メカクレ幼馴染系有能メイドゴーレム(球体関節)…ってコト!?

 

 おいおい、属性盛りすぎだろう。

 

 新たな我が主もかなりの属性持ちだってのに、

 このままじゃ、キャラを食われかねないレベルだ。

 

 

 

「さて、落ち着いたところで、私の目的について話しておこうかしら」

 

 と、メイドインパクトに俺が呑まれている間に、向こうでは話がついていたらしい。

 銀髪メイドは既に、別の仕事へと戻ったようだった。

 

 リーシャは改めて席に着き、不敵な顔で朗々と語る。

 先ほどまでの趣味にはしゃぐ様子とは違い、今度は獲物を狙うような興奮を抱えて。

 

(目的か、ただ生活の為に冒険者をやってるんじゃないって訳だ)

「ええそうよ、野望と言ってもいいわね」

 

 そう言ってリーシャは、かつてないほどに口角を上げる。

 

「私の目的はシンプルよ。

 誰よりも美しく、誰よりも強くなって、未来永劫に語り継がれるような英雄になるの」

(そりゃあ……凄いな)

「あら、歯切れが悪いわね。言っておくけど私の実力はノースティリスでも上位よ?」

 

 気のない返事になったのは、そんなの不可能だと思ったからではない。

 むしろ、叶えられる範疇にあると思っている。

 

 幾ら弱体化した後で、不意打ちをだったとは言え、

 単騎でジェイクの盗賊団『ミッドナイトを照らす炎』を容易に壊滅させたのは、尋常ではない。

 40を越しているそのレベル、生きている武器に愛される特異なフィートは、

 英雄の器たりえるだろう。

 

 そして俺と言う存在は、他のどんな武器よりも高いポテンシャルがあると自負している。

 自己評価の高い俺ではあるが、あのロックが俺に執着していたことから見ても、

 自惚れだけでなく、客観的にも著しく優れた武器なのだろう。

 

 俺を握ったリーシャは、いずれノースティリスで最強の戦士になれる。

 そして、俺の魅力バフを受けて、元々の美貌が更に極まった彼女ならば、

 名を上げるにつれて、勝手にその美しさも噂となる事だろう。

 

 ならば後は、どうやって英雄になるか、だ。

 

 俺はその方法について、断片的に知っている。

 正確に言えば、この世界という舞台において、主人公がどのような道筋をたどったか。

 そしてこの後ノースティリスにおいて、どのような動乱が起きるのか、をだ。

 

 だがそれを伝えるには、俺が転生者であることから話さねばならない。

 それが彼女への返答に詰まった理由だった。

 

 さておき、ひとまずは目標とやらについて、話を進める事にしよう。

 

 

(ちなみに我が主は、どうやってその目標を達成するつもりなんだ?)

「まずは美しくなる所から始めるつもりよ。

 有名になってからじゃ遅いもの。

 私の名が広まる時に、その美しさも伝わるようにしなくちゃあね」

 

 つまりは、魅力上げという事か。

 

「とはいえ、最近は伸び悩んでいるのだけどね。

 あなたの話を武器商人から聞いて、即座に乗ったのは、

 魅力を上昇させる能力をあなたが持ってたから、というのもあるわ」

 

 これだけ美しさが急激に上がったのは、久しぶりよ。

 と、リーシャは上機嫌に語る。

 

(潜在能力……あー、ハーブだとかは確り食べているのか?

 アルローニアだとかは美容によく効くらしいが)

「もちろん、食事には気を使っているわよ。

 ハーブは出来る限り買い集めてる、アルローニアが美容に良いのは有名だしね」

 

 その辺りは抑えているか。

 ゲームでも特に隠されてはいなかったし、この辺りは常識の範囲なのだろう。

 

「それに、食事の際は出来る限り美しい生き物を食べてるわ。

 食べた相手が優れている程、その優れた点を取り入れられるのも有名だもの。

 勿論、その時はメイドに上質な料理を作らせているわ。アイツ昔から料理は得意なのよね」

 

 んー、ここは少しゲームの知識と話が違うな。

 ゲームでは種族によって、経験値が手に入る能力の種類が違っていた。

 それに対して、リーシャは相手の能力値に応じて、経験値が手に入るような物言いをしている。

 

 だが、ここは向こうの話が正しいと思っておこう。

 ゲームをこの世界に、或いはこの世界をゲームに落とし込むにあたって、

 システム的な違いが、この差異として出ている。と思った方が、よさそうな気がする。

 

(すると、普段は魅力の高い相手を狙って、その肉を食べたりだとかしてるのか?)

「そう言う事ね。町の依頼で恋のキューピッド討伐なんかがあれば、積極的に参加するし、

 私は人肉を食べるのに抵抗がないから、街道で出会った行商人が魅力的だったら、

 そのまま襲って肉を持ち帰ったりもするわ。」

 

 おお、蛮族だ……。と感じるのは、転生前の記憶があるからだろうか?

 いや、そういう訳でもないだろう。

 この世界でも鮮血プリンセスとか呼ばれて、恐れられてるし。

 

 この世界での人肉食は、人肉を食べない者にドン引かれるものの、まあ受け入れられている。

 だが、物を奪うためではなく、その肉を食べるために人を襲うのは、

 この世界でも蛮族ポイントが高いと思う。

 

(その……大丈夫なのか?そんな事してたら美しさよりも、野蛮さで有名になりそうだが)

「ああ、流石に外ではこんなこと言わないし、街中ではある程度は自重するから大丈夫よ。

 襲われた行商人だって、積み荷が目的だと思っても、自分の身体(お肉)が目的だとは思わないでしょう?」

(まあ、それはそうか)

 

 そういった事は考えているらしい。

 他人に対してはともかくとして、自分の目標については真摯に考えているようだ。

 

(そう言う事だったら、今まで通りに地道にやっていくのが良いんだろうな。

 俺から気になる事があるとしたら……、

 俺がレベルアップした時の獲得能力は、出来る限り魅力の上昇にした方が良いか)

「……どういう事?」

 

 リーシャが不思議そうに、いや、ある程度察したのか、期待した顔で此方へ訪ねてくる。

 

(あー、ロックからそこまで聞いていなかったか。

 俺はレベルアップするときに、ある程度まで方向性を選ぶことが出来る)

 

 具体的には恐らく、名前の巻物で弄れば出てくる範囲のエンチャントなら、選べるのだと思う。

 

(そもそもで獲得できない能力は無理だが、魅力を上げる事ならいつでも選べると思う。

 だから、もし我が主が望むんだったら、レベルアップの能力を全て魅力に回すこともできる)

「なるほどね、私は勿論ありがたい話だけれど、<<永遠の孤独>>あなたはそれでいいわけ?

 魅力の能力は戦闘には直接かかわって来ない。武器としては中途半端になっていくのよ」

(構わない)

 

 間を置かず、自信を持って俺は言いきる。

 

(我が主に握られた瞬間、俺は確信した。

 あなたが俺にとって最上の持ち主だ、それ以上に優先することは無い)

「生きている武器である、あなたの寿命は私よりもきっと長い。

 私が死んで手放した後は、その能力が足を引っ張って、疎まれるかもしれないわよ?」

 

 ああ、確かにそういった面もあるのか。

 俺の感覚としても、何百年も余裕で生きていける気はしているからな。

 だが、

 

(それこそ、無用な心配になると思うがな)

 

 今度は、純粋に不思議そうな顔をリーシャがする。

 

(我が主は、その美しさと強さで、世界に名を響かせるんだからな。

 その英雄が使っていた武器ともなれば、さぞ皆の憧れとなるだろう?

 疎まれる心配よりも、どの程度の力があれば次の主様と認めてやるか、そっちを考える方が有意義だ)

 

「……なるほどね、そう言う事なら受け入れさせて貰うわ。

 その信頼の理由が、私の溢れ出るカリスマではなく、

 私が生まれながらに持つ性質による物なのは、少々不服だけれど」

 

 リーシャは拗ねたような、それでいて少しはにかんだ様子で顔をそらす。

 

 

「とは言え、今後全てを美しさに回すのも考え物よね。

 あなたの力で魅力を引き上げるというのなら、私はあなたを身に付け続けることになる。

 ならば、さらに強くなってもらう必要もあるもの」

(まあ、それはそうだな。

 我が主が振るえば俺の力は著しく増大するとは言え、

 魅力だけを伸ばせば、最終的には足かせとなるだろう)

 

 彼女の性質をゲーム的に表現すれば、

 『生きている武器のフィートによる能力値上昇が~倍になり、

  五感を持つ俺に限れば、追加の属性攻撃を確定で発動できる程、調子が良くなる』

 という感じである、非常に優秀であると言えよう。

 

 だが、それだけだ。

 今の能力のままではいつか「この先の戦いにはついてこれそうもない」となる事だろう。

 

「私が十分だと感じるまでは、魅力を上げ続けて頂戴。

 でもそこからは、その時に必要と感じた能力を得てもらうわ」

(了解した、我が主が望むようにしよう)

 

 堂々と背筋を伸ばし、俺に命令をするリーシャ。

 その意を汲み従う事に、武器の本能として、喜びを感じることが出来るのは幸いだ。

 

 

「んー、でも魅力を上げて貰うとなると、暫くは戦闘能力は据え置きになるのよね」

(まあそうなるな。今のままでも、大概の武器には遅れは取らない、と自負しているが)

「そうかもしれないわ、だけど此処で妥協するつもりもない。

 あなたを強くするために、先行投資をしましょう」

 

 先行投資、か。

 俺はロックが所持していたころに、武器強化の巻物による強化は一般的な限界まで受けている。

 これ以上に武器を強くするとなれば、その手段は

 

「オブシディアン素材の武器は、弱くないけれど一線級ではないわ。

 この私が握るにふさわしい武器とするための、素材槌を手に入れましょう」

 

 素材の変更、だろう。

 

 俺とリーシャによる旅路、その最初の目的は素材槌の入手と相成った。

*1
結婚式とかで使う長い机の奴

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