◆それは生きている   作:まほれべぜろ

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お待たせしましたなんてものじゃないですが、最終話です。
待っていてくれた方は、再び目を通してくださった事に感謝します。


エピローグとプロローグ

 

「これで……、よかったのですよね……」

 

 メイドゴーレムが、墓標の前で目を伏せながらポツリと呟く。

 

 

 

 俺達がいる場所はリーシャが埋まる事を選んだ場所、館に隣る池のほとりだ。

 

 リーシャがその命を散らした夜から、まだ1日と経っていない。

 当然ながら埋葬の準備などまったく整っておらず、木製の簡素な墓碑だけが、そこを墓と指し示している。

 

 朝に始めた埋葬がようやく終わったのは、日が暮れ始める頃だ。

 手も足も動かす事が出来ない俺は、メイドが粛々と葬る様を、ただ眺める事しかできなかった。

 メイドは全てを終えてから、燃え尽きたかのように墓の前に立ち尽くし、先の言葉を溢した。

 

(……よかった、なんて言葉は受け入れ難いが、これ以外にはなかった。

あれだけ重度のエーテル病に侵されたまま生き続ける事など、どんなに精神力のある奴でも無理だろう)

 

 共に居た時間こそ短かったが、大きな存在を失ったのは俺も同じだ。

 心から自分の主と認め、最期まで共にあると信じた相手の、余りにも早い喪失。

 

 生きた武器という人でない存在だからこそ、その衝撃は自分そのものが揺さぶられるようだ。

 

 

 だが、俺には未だ使命が残っている。

 リーシャと交わした、彼女を英雄として語り継がせる約束が。

 

 

(メイドさんよ。アンタはこれからどうするか、決めてるのか?)

 

 しかしその前に、まずはメイドの動向を確認するため、身の振り方を彼女へと尋ねる。

 メイドはいつも以上に平坦な声で、淡々と答えた。

 

 

「この館と、お嬢様の墓を守ってまいります。

 私は戦闘用に作られた訳ではないので、レベルも低いまま。

 税金を払う必要はありませんし、館の観光収入があれば暫くはやっていけるでしょう」

 

 その後の事は、これから考えて参ります。

 と、彼女はそう締めくくる。

 

(そうか。リーシャが遺した、この場所を守ってくれるのはありがたい。

 だが、その前に一つ頼まれてくれないか? 

 俺がリーシャとの間に結んだ、最期の約束を果たす為に)

 

 そう言うと、メイドはこちらへと向き直り、

 前髪の向こうの瞳に確かな意思を宿らせ、こちらへ視線を向ける。

 

「正直に言って、お嬢様が埋まる決断をした、最後の一押しとなった。

 その約束については、とても複雑な心境です」

 

 ですが、とメイドは続ける。

 

「全身全霊をもって、望む通りに助けると約束します。

 お嬢様の最後の願い、必ず成し遂げてくださいませ」

 

 

 そういって、メイドは深く一礼をした。

 リーシャの願いを叶えたいと願う気持ちは、俺もメイドも一致している。

 

「とはいえ、あなたの特徴である血吸いがある以上、

 私があなたを使って戦う、と言うのは難しいかもしれませんが……」

(もちろん、そんな事を頼むつもりは無い。俺を抱えて、町へ向かってくれなんてのもナシだ。

 ザナンがまだ、俺達を狙っているかもしれないしな)

 

 奴ら(ザナン)の動向は、全く予想が付かない。

 

 リーシャの生死について、何処まで掴んでいるのか。

 機会があれば、リーシャの強力な武器である、俺の事を取り上げようと狙っているのか。

 そもそも、これ以上にリーシャへ、更なる封じ込めを行ってくる気があったのか。

 

 予想が付かない以上は、リーシャのメイドと知られている彼女に、

 俺を持ち運んでもらうことは、危険だと思って良いだろう。

 

 

(そもそも、俺の持ち主になるよう仕向けたい、

 "原作主人公のスタート地点"が何処なのか、俺にも正確に分かってないからな。

 危険を伴う以上、一定以上の戦闘力がある奴に、手助けを頼む必要がある)

 

「……それは、大丈夫なのですか? 

 何処か分からない場所に向かう必要がある、というのもですが、

 外部の人間に手助けを頼むなど」

 

 メイドが、困惑したように問いかける。

 

「人を雇う金銭は、用立てることが出来ます。

 お嬢様の財産はまだ豊富に残っていますし、

 町へ依頼を出すくらいなら、帰還のスクロールですぐに行えます」

「しかし、その相手が信用できるかは別の話です。

 莫大な価値を持つあなたを、持ち逃げしないとも限りませんし、

 そうでなくても、血吸いを行う生きた武器を、好んで運ぶものは少ないでしょう」

 

 彼女の心配は、当然だろう。

 それでも彼女が、杜撰に聞こえる計画をなじる様子がないのは、

 俺がリーシャに無責任な放言をしたりはしないと、信じてくれているからだろうか。

 

(そこは大丈夫だ。まず目的の場所が分からないとは言っても、

 「ヴェルニースから少し北西」にある事までは分かってる)

 

 そして信用できる相手の方にも、俺には心当たりがあるのだ。

 

 冒険者として、野を歩き回れる実力を持ち。

 目の前に魅力的な誘惑があろうとも、それを盗もうとは思わず。

 例え、堪えきれずに血を吸ってしまう可能性があっても、俺を受け入れてくれる。

 

 そんな相手の、心当たりが。

 

 メイドが指名しての依頼を通して、相手の冒険者、

 オーディがこの館を訪れたのは、それからわずか、4日後のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやです! 私はぜっっったいに剣さんを手放したくないです!!!」

(頼むって……、約束したんだって……)

 

 

 

 思ったより、話が拗れた。

 

 主人公などと言った原作知識の説明は避けたせいで、全く前提知識がない上で、

 

『次の持ち主としたい相手がいる』

 

 そんなおかしな話を突然に聞かされたオーディは、

 一か月以上の時間がかかるであろう俺の頼みを、二つ返事で引き受けてくれた。*1

 

 俺を手放したことで、また魅力のステータスが落ちてしまったので、

 顔を隠す為に、フルフェイスの鎧を着ていたのだが、

 それでもハッキリとわかるほどに、喜色満面の返事だった。

 

 

 で、ヴェルニースまで移動してから、お互いにここまで何があったかを伝えあって。

 

 ロックと共に行動したことは、怒りを隠せないながらも飲み込んだ様子で、

 ジェイクと働いた犯罪については、「ダメですよ!」なんてアワアワしながら聞いてたのだが、

 

 リーシャの話になってから、ロックの時に見せていた怒りとは違う、

 名状しがたい不機嫌さのようなものを漂わせ始めたのだ。

 

 

 いや、名状しがたいなんて言いながら、見当はついているのだが。

 他とは違う、ビジネスライクでない信頼関係に対して、思う所があるのだろう。

 

 それから既に一週間が経っているのだが、

 オーディは何度もこうやって俺に対する所有権を主張しだし、

 その度に俺が頼み込んでなだめているのだ。

 

 

「むぅぅー。剣さんってば、そうやってリーシャさんの事ばっかりぃ!」

(お前のとこに帰れないのは悪いけどさぁ! こっちも絶対に約束破れないんだよ! 

 そんで頼める心当たりはオーディだけなんだよ! 

 ロックなんて、マジで当てに出来ないし。ジェイクとか以ての外だし!)

「私が一番最初に、剣さんの事みつけたのにぃ……」

 

 そういって不貞腐れるオーディ。

 共に旅した時の彼女ならば、多少ゴネた後には渋々ながら探索を再開してくれていたが、

 今日はいつも以上にご機嫌ナナメのようだ。

 

 理想は、どうにか最後には納得してもらって、俺を手放してもらうことなのだが……。

 

(……一応だが、オーディ。お前が俺を手放さなかった時にどうするかも、考えてはいたんだ)

「剣さん? それってどういう」

(別に、物騒な話じゃあない。むしろお前にとっては都合のいいだろう話だ)

 

(俺の目的は、持ち主に名声を高めて貰い、その剣である俺の逸話も広めて貰う事だ。

 そして、その相手がお前に探してもらってる場所に来る……はずだ)

「はい、それはもう聞きました。どうしても持ち主にさせたい人がいるから、

 その人に会うために、探してほしい場所があるって」

(ああ。だが、それは必ずしも、俺の目的に必要であるとは限らない。

 可能性は低くなるかもしれないが、お前が持ち主でも、目的は果たせるかもしれないからな)

「!!」

 

 そう、別に持ち手は原作主人公でなくとも、俺の目的は果たしうる。

 

 用は名声さえ掴めればよいのだから、

 レシラムの最奥に潜むゼームを、オーディの手で討ち果たせれば、どうとでもなるだろう。

 

 オーディならきっと、俺と共にある為ならば、レシラムの踏破を本気で目指してくれる。

 そんな予感は、きっと自惚れなどではないだろう。

 

(だが、俺はどうしても万全を期したい。

 理由は伝えられないが、俺は今から会いに行くやつが、

 必ず至上の名声を掴むチャンスを得ると、信じているんだ)

(リーシャとの約束を、俺は必ず果たしたい。

 そのためにオーディ。協力してくれ、頼む)

 

「んんんんぅぅぅぅぅぅ……」

 そういって、兜の奥で渋面をしていそうなオーディ。

 

「……分かってますよう。剣さんの大切な人なんですよね? 

 どうしてもやりたい事なら、私も協力します」

(そういってくれると信じていた。

 感謝する、オーディ)

 

 すこし間をおいて、いつもの様に「はい!」と返事をするオーディ。

 やはり、彼女の誠実さを当てにして、正解だったようだ。

 

 

 

 請負人の同意を得れたところで、さらに探索を進める俺達。

 目的と思われる場所を見つけられたのは、それから4日後だった。

 

「ここが、剣さんが言っていた場所なんですか?」

(おそらくな。ヴェルニースから西北西にかなり離れた場所にあり、

 そこそこの広さがあって、乞食が住処としている。

 これまで、似た条件の場所が一つも見つからなかった以上、まず此処だろう)

 

 これだけ町と離れているとかなり危険なので、他に人が済むような場所は見受けられない。

 きっとココが、ゲームの開始地点。

 主人公がエレアの二人組、ロミアスとラーネイレに出会う洞窟だろう。

 

(確か、ヴェルニースで行われるザナンの皇子による遊説予定は、まだ先だったよな?)

「はい。あと2週間ほど先だったと思います」

(なら間に合ったか。これなら目当ての奴に会えるはず)

 

 そう言って、呼吸もしてないのに胸をなでおろす。

 

(じゃあ、後は手はず通りに頼む。

 ここで隠れて待ち構えていれば、エレアの二人組と、"誰か"が近づいてくる。

 そしたら、その辺にボロボロにした俺をほっぽり出して、どっかへテレポートしてくれ)

「いいですけど、本当にそれで上手く行くんですか?」

(……多分大丈夫だけど、一応で一か月くらいしたら様子見に来てもらっていい? 

 そん時にほっとかれたままなら、オーディで拾っちゃってくれない?)

「はい! もちろんです!」

(うん、声はもうちょい潜めるように頼むね。乞食にバレるから)

 

 

 

 一週間、そこそこの広さを持つ洞窟付近で息を潜めていると、

 はたして彼らはやって来た。

 

 緑髪の男(ロミアス)と、青い髪の女性(ラーネイレ)

 そして彼らに抱えられた、気を失った様子の男(主人公)だ。

 

 それを見ると同時に、オーディは帰還の巻物をコッソリ読み上げる。

(ありがとう、オーディ。久しぶりに会えて楽しかったぞ)

(はい、剣さん。私も嬉しかったです)

 

 オーディは念話でそう言うと、落ちていた武具(呪われた弓)を拾って、代わりに俺を洞窟の床へと放り出す。

 

 

 

 暫くすると、近くから会話が細々と聞こえてきた。

 

「この洞窟……雨をしのぐにはちょうどいいわ。ロミアス、危険がないか奥を調べて来て」

「わかった。ここで待っていろ」

 

 しかし、家主の乞食はグッスリ寝込んでいる様子で、

 この来訪者の存在に、全く気づいて無いようだ。

 

 対して、見た目だけは良くてメチャクチャ性格の悪い、

 少女漫画で『フッ、おもしれー女』とか言ってそうな緑髪のエレア。

 

 すなわちロミアスは、自分たちの休息を邪魔しかねない、この哀れな乞食を容赦なく殺害した。

 

「ふむ。これで安全は確保できたか……おや?」

 

 どうやらロミアスは、近くにいたプチ達と、いかにも呪われた装備()の存在に気が付いたようだ。

 

「ちょうど良い。どうやら、ラーネイレが助けたあの男は、

 全く旅慣れていない様子だったからな。

 ちょっとした教導に、これを使うことにするか」

 

 そういって、ロミアスは俺達を回収して運び出す。

 

「今の音は? ……ロミアス、大丈夫?」

「ああ、問題ない。どうやらこの洞窟は昔、誰かが住んでいたようだな。

 奥を見て来たが、今はもう使われていないようだ」

 

「そう、ならば都合がいいわ。……あら、あなた何を持っているの? 

 ……キャーッ、プチじゃない!」

「こいつらか? 心配する必要はない。以前、人間にペットとして飼われていたのだろう、

 ふふ……私によくなついているようだ」

「うふ! あなたにも優しいところがあるのね。

 ……来て。どうやら怪我人が意識を取り戻したみたいよ」

 

 あっけなく騙される青髪のエレア、ラーラララさん。

 彼女の将来が心配になる。

 

 そうこうしている内に、どうやら二人に運ばれてきた男。主人公の意識が、戻ってきたようだ。

 

「意識が……もう戻ったのか?」

 

 と驚くロミアス。

 

 そこからは俺も知った通りの流れだ。

 

 意識の戻った主人公に、ロミアスは彼が重傷を負って、川辺に倒れていた事。

 彼の同行者、ラーネイレがその傷を癒したこと。

 もしも困っているなら、旅の知識を授ける(チュートリアルを行う)事を伝える。

 

 その申し出を受けた主人公。

 しかし、その内容は『性根が腐っている』としか言えない物だった。

 

 食べてみろと言われた肉は人肉だし、

 偽物の金塊を見つけさせて悦に入る。

 

 加えて、(説明のためとはいえ)呪われた装備をわざわざ用意して、

 解呪の巻物で呪いを解いた後に、その武器でプチ三匹(かたつむりなら詰みかねない敵)と戦わせようとするのだが……。

 

「……どうやら、思ったより強力な呪いだったようだな」

 

 今回、ロミアスが用意した装備と言うのは、

 こんな乞食の住処に、ある筈のない超強力な呪い装備。

 

 つまり俺だ。

 低級な「解呪の巻物」程度では、どうする事も出来ない。

 

「ちょっとロミアス。訓練と称して、呪いの装備を押し付けるのはどうかと思うわよ」

「なに、少しばかり強力な呪いだったようだが、こんな洞窟に打ち捨てられていたものだ。

 その効果など、たかが知れている。

 その証拠に、大して不自由した様子もないだろう」

 

 相棒がミスを犯したことに気付いたラーネイレは、眉をひそめて苦言を呈し、

 それに対してロミアスは楽観的に反論する。

 

 たしかに、主人公に大きな影響は見られないが、それは俺が(ちょっと無理して)血吸いを抑えているからだ。

 

 しかしロミアスは、そんな事を知る由もなく、

 たまたま、解呪への抵抗力が高かっただけだと誤解した。

 

 そして戦闘の練習として放った、3匹のプチを主人公が倒したことで、

 ラーネイレの方も「これなら問題なさそうね」と判断してしまう。

 

 その後、鍵開けや家具の整理、果ては世界情勢の一部についてまで

 ロミアスは知識を授け、もう十分だろうと、この洞窟を離れる流れとなった。

 

 そして最後の別れになって、また少々原作との差異が生じる。

 

 皮肉屋ながらも、根は善性のエレアであるロミアスは、

 主人公へ、呪いの解呪方について、追加のレクチャーをする。

 

「今回、巻物による解呪は失敗してしまったが、

 専門家に解呪を依頼したならば、まず失敗する事はないだろう」

 

「ここから南東に、ヴェルニースと言う町がある。

 そこの癒し手に解呪を頼むといい。

 少々不都合はあるかもしれないが、そこまで移動する程度ならば問題ないだろう」

 

 そう言ってロミアスは、こちらの不手際もあるからと、

 解呪にかかる分の金銭を手渡しする。

 

「では、我々は出発する。こちらとしても、十分な休息はとれたからな」

「また巡り会う時まで、あなたに風の加護のあらんことを」

 

 そして、別れの言葉を残して、ロミアスとラーネイレは去っていった。

 残されたのは、まだプチとの戦闘での疲労が抜けていない主人公と……、

 

 ロミアス達がいなくなり、交渉を阻むものが無くなった、俺だ。

 

 

 

(さて、初めましてとあいさつをさせて貰おうか。漂流者さんよ)

「!?」

 

 急に声をかけられ、混乱した様子の主人公。

 彼は何処から声が聞こえてきたのかと、キョロキョロ周りへ目を向ける。

 

(ココだよココ、アンタの握ってるこの剣さ)

 

 そうネタ晴らしをすると、今度はしげしげと俺をのぞき込んできた。

 

(まずは自己紹介をさせて貰おうか。

 俺は生きた武器、名は<<永遠の孤独>>と呼んでくれ。

 アンタの名前は……、ラーネイレと会話してるときに聞いたからいいや)

 

 そう言うと、いきなり話しかけてきて、失礼な奴だと主人公は鼻白む。

 

(ああスマンスマン、俺はいつも物言いが失礼になりがちでな。

これ以上に好感度を下げたくないし、早速本題に入ろう)

 

 本題? と訝しむ主人公に、俺はあらかじめ用意しておいた交渉のセリフを伝えていく。

 

(単刀直入に言おう。

 俺は、お前を主として力を振るい、世に名を轟かせたい。

さっきロミアスが言っていた解呪は諦めて、このまま俺を使って貰いたいのさ)

 

 俺がそう言うと、当然ながら主人公は反発する。

 

 アッチの視点では、俺は元乞食の家に落ちていた、

 低品質(ザコ)ながら呪いの強さだけは一人前で、なぜか話すことが出来るだけの珍品だからな。

 

 そんな剣をずっと使っていくなど、欠片も受け入れられない。

 そういうのも自然な事だろう。

 

 まずは、その認識を改めて貰わなければな。

 

(さっき、プチ3匹を倒すにも一苦労する事になったのは、

 俺が意図的に性能を抑えていたからだ。

 あの性悪エレアの目に、俺が留まっちゃあ困るからな)

 

 そういって、俺は抑えていたエンチャントの力を開放する。

 途端、主人公の身体は頑健に、その貌は圧倒的魅力を放つようになった。

 

 これには、主人公の方も俺に力があると認める気になったようだ。

 しかし今度は"なら、町についてから高値で売り飛ばした方が良いんじゃないか? "等と言い出す。

 

(なるほど。確かに俺は高値で売れるだろうな。

 だが俺は、俺に高値を付ける奴じゃなくて、お前に持ち主になって欲しいんだ。

 もしソッチがその気ならば……、その気が無くなるまで、残念ながらこうするしかない)

 

 言いながら、俺は主人公の身体から我慢していた血を、徹底的に吸い始める。

 数秒と立たないうちに、その身体は死の一歩手前まで追い込まれることとなった。

 

 たまらず、降参を申し出る主人公。

 それを聞いて、俺は即座に血吸いを止める。

 

(おお、分かってくれたか! 

 なら今から俺とお前は相棒同士だ! 仲良くやっていこうじゃないか)

 

 どの口がと言いたいだろう、苦々しい表情で、主人公は俺の言葉を受け止める。

 そして、悪態交じりに、疑問の言葉を吐き捨てた。

 

(ん? なんでワザワザお前を主に選んだのかって?)

 

 その質問に、俺は大仰に、意味深に、カッコつけて答える。

 英雄譚の始まりなんだ、セリフは幾ら飾り立てても飽き足りない。

 

(今、この大陸は大きな運命のうねりの中にある。

 その最中、俺は神の御手によって、この地へと降り立った)

 

 向こうから分かりはしないが、俺は主人公の目を正面から見据える。

 

(俺にはお前が、その中心で大役を担う事が分かるのさ。

 そして俺は、その物語の中で、永遠に語り継がれる伝説になりたい)

 

 そう言うと、主人公は電波を眺める目で俺を見てきた。

 全く信じている様子はないが、

 それでも血を吸われたお返しがしたいのか、軽口をたたいてくる。

 

(ふむ"それならお前はタカリみたいなもんだな"って? 

 言うじゃあないか、まあ否定はし辛いところだが)

 

 それでも、俺は必ずやり遂げるのだ。

 俺や主人公の認識で、タカリでもなんであっても、

 

 いつか俺が伝説として語り継がれるとき、

 リーシャの名も共にある時が来れば、それでいい。

 

(さあ、出発しようじゃあないか。主さんよ? 

 まだ見ぬ運命が、アンタを待ってるぜ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、未来の吟遊詩人達が、こぞって歌うようになる、

 

 

 珍しい武器を目当てに、執拗に追い回してくる武器商人を、返り討ちにする話も、

 セビリスの失脚後、力によってダルフィを牛耳るようになった盗賊団を、懲らしめる話も、

 何故か先回りして同行してくる、黒猫を連れた戦士と、数多のネフィアを渡り歩く話も、

 

 

 ロミアス達と共闘した、因縁の相手であるサイモアとの決戦も。

 この地に残る、残り二つの混沌の城を制覇するに至る成長も。

 失われたナーク・ドマーラ、その神秘へと近づく旅路も。

 

 

 どれも俺と"二人目に認めた主"との英雄譚として相応しいが、この物語はここで幕引きである。

 

*1
どうやら彼女は、俺と別れてからエヘカトル様に黒猫を賜ったようだが、今回は隠密作業が必要という事で、その間は町で預かってもらうことになった。




ここまで読んで下さり、ありがとうございます。
書いてるうちに何度も「なんか違うかな」とか思っていたら、完結に何年もお待たせしてしまいました。

本作のコンセプトは
『自分勝手な生きた武器が、終生の主を見つけて、その主が死んだ後も忠誠を捧げる』
までの話が書きたい、です。

この後、生きた剣はゲームの主人公と絆を深めて、
リーシャの事は大切に思い続けながらも、次の主の事も大切に思うようになります。
私はそんな主従の関係が好きなんです。

ゲームの主人公が、リーシャに嫉妬したりすると、なお良いですね

読んでいただいた方に、同感して貰えるようなクオリティかは怪しいですが、
少しでも、その魅力が伝わっていたら幸いです。



この後、elonaや同系統の物語をまた書くつもりはありませんが、
一応この作品を完結まで漕ぎつけられたので、いつか別の作品も書けたらと思います。
もし目に留まる機会があり、また読んでいただける事があれば嬉しいです。







それはそれとして、elinaの後継作である、elinのアーリーアクセス始まりましたね。
まだプレイしたことが無い方は、無料の「elona」でも、最新の「elin」でも。
是非DLして、ゴミ箱へダンクして貰えたらと思います。

やりこむゲームとしては、本当におススメです。
ニコニコとかに、色々動画も上がっているので、参考になります。
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