◆それは生きている   作:まほれべぜろ

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今時神も信じてないとか(苦笑)

 あの謎の貝を持ったゴブリンを倒した後、俺達はそのゴブリン達が屯していた小部屋へと向かった。

 敵の集団を倒した後、そいつらのアジトを漁って、食料や武器等を奪うのはネフィア荒らしの基本なのである。

 

 「うーん、結構狭いですし、余り物は置いてなさそうですね」

 (だが、何もないってことも無いと思うんだよな。俺が覗いた時には、隅に集まって何かしてたようだし)

 「それってこっちの方ですか?といっても、めぼしいものは……っと、何だか台みたいなものがありますね」

 

 オーディに言われて、ゴブリンが集まっていた辺りの、地面付近を見てみる。

 すると、そこには確かに、四角い台座のようなものがあった。

 それはあまり大きなものではなく、手作り感あふれる凹凸面をしている。

 この洞窟では少し浮くような真っ白な代物で、隅の方には何かをひっかけるような鈎状の出っ張りが付いていた。

 

 (確かに何かあるな。あまり大きくないし、目につく場所にないから気付かなかった)

 「これ、何なんでしょう?何だかあったかい感じがしますけど」

 (んー、思い当たるのは……あっ、祭壇とかか?謎の貝があったし、ここ置いて祈りの場として使ってたのかも)

 「?謎の貝って、あのペンダントのことですよね、それと祈りの場と何の関係があるんですか?」

 (ああ、お前は謎の貝について詳しく知ら、いや、聞いてなかったんだったな。あの貝には、神の声を聴く手助けをする力があるんだ。だから、この祭壇に置いて、ゴブリンが集まって礼拝でもしてたんじゃないかと思ったんだ)

 「そういう事ですか。でも、神様の声なんて本当に聞こえるんですか?すぐには信じられないんですけど」

 

 オーディは、何やら訝しげな様子だ。

 この世界だと、神様って身近な存在だし、スッと受け入れられるものかと思ってたから少し予想外である。

 

 (んー、俺も詳しくは知らんけどな。そんなに気になるなら装備してみたらいいんじゃないのか?鎖が切れてるから戦闘には使えないだろうけど、手で押さえておけば身に着けることはできるだろう)

 「まあ、そうですね。こんな感じでしょうか」

 

 そういって、オーディは謎の貝の鎖部分を持ち、首からぶら下げる。

 

 (どうだ、何かこう、どこからか声が聞こえたりとかはしないか?)

 「ええっと……いえ、特になさそうですね。いつも通り剣さんの声だけです」

 (そうかー、まあいつだって聞こえるようなものじゃないのかもな。そうだ!オーディって、どの神の信者なんだ?)

 「私ですか?いえ、どの神様も信じてはいませんけど。強いていうなら、無のエイスと言うところになるでしょうか」

 (……マジで?)

 「マジです」

 

 なるほど、これは盲点だった。

 ゲームだと大体の人間は神を信じているような様子だったし、ゲームをしていても神を信仰しない理由がなかったから、オーディが無神論者に近い無のエイス信者みたいな存在だと思わなかった。

 しかし、多分ゲームと同様に、この世界でも何かしらの神を信じたほうが、何かと得だろうな。

 ここはちょっと誘導しておくとするか。

 

 (ああ、そいつは気付かなかった。だが、なんで神を信じていないんだ?この世界って実際に神様がいるだろうに、信じない理由ってのは思いつかないんだが)

 「いえ、神様の存在を信じていないってわけじゃないんです。ただ、その神様が助けてくれるっていうのが信じられないんです。私が苦しいとき、手を差し伸べてくれる人なんていませんでした。なのに、皆神様はいつだって自分を見てくれていて、困ったときには力を貸してくれるんだって言ってます。私は、そんな都合がいい存在がいるなんて、思えないんです」

 

 ああ、なるほど。

 つまり、不細工時代に神様が助けてくれなかったから、何で私を助けてくれなかったのかって、不信感を持ってるわけだ。

 

 (オーディ、神様ってのはお前の言う通り、都合のいい存在なんかじゃないだろうな。だが、お前に対して手を差し伸べてくれることもあるとは思うぞ)

 「でも、だったらどうして、今まで一度も助けてくれなかったんですか!町の皆が言ってるように慈悲深くて傍にいる存在だなんて思えません」

 (そりゃあ、お前が今まで神を信じていなかったからだろう。神様の力だって、無限大ってわけじゃあない。自分の信者を先に助けるのは当然さ。もし、自分の信者たちが全く助けを必要としてなかったら、お前のことも助ける余裕もあったかもな)

 「うー、そんなこと言ったってぇ~」

 

 ん~、これは道理とかではなく、単純に悔しいやら悲しいやらで、信じる気になれないのかね。

 やっぱり、何かしらの神を信じておいた方がいいと思うんだが。

 ちょっと、無理くりにでも説得してみるか。

 

 (オーディ、お前今まで神様が自分のを助けてくれなかったからって、拗ねてるんじゃないのか?だとしたら、これまでの事は忘れて、神様に縋ってみたらいいと思うぞ。前に言っただろ、過去の嫌な事は忘れて、この先のいい事だけを考えるって奴さ。神様に、私の事を見守って下さい、って頼みに行けばいい)

 「剣さん……、分かりました!私、神様信じちゃいます!」

 (おう、それがいいと思うぞ)

 オーディは決心がついたようで、握りこぶしを作って、むん!と高らかに宣言をした。

 上手くいったようで良かった。やっぱり、信仰のボーナスが有ると無いとでは違うだろうからな。

 

 (それじゃあ早速、改宗しに行くか?この小部屋には、もう何もないみたいだしな)

 「今からですか?改宗っていうと、神々の休戦地ですよね?うーん、今2月の後半で、雪も大分降るだろうし、大丈夫かなあ」

 

 オーディは、少し渋っているようだ。

 まあ確かに、2月ってことはまだまだ雪が降るし、寒い時期だろうからな。行きたくない気持ちはわかる。

 だが、時間をおいて、オーディの気が変わったりしたら、それはちょっと面倒だな。

 出来れば、早めに出発してしまいたいが。

 

 (まあ、大丈夫じゃないか?ヴェルニースでしっかり食料やら買い込んでいけば、雪が降っても早々死んだりはしないだろう。道中で、休戦地に居る神々について話してやるよ、どの神を信じるかも決めなきゃだしな)

 「うーん、雪もそうなんですけど……。でも、あんまり気にしてもしょうがないのも確かですね。それじゃあ洞窟を出て、ヴェルニースで準備をしましょうか」

 

 雪もそうだけど……何だ?

 いや、それよりオーディもいい感じに乗り気になってくれた。

 俺も、この勢いを殺さないようにしよう。

 

 (よし、じゃあ出るとしよう。ヴェルニースで謎の貝を直すのを、忘れないようにしないとな)

 「はい、それと巻物の鑑定もですね。神託って奴だといいなあ」

 (そうだな、ハズレのやつじゃないと良いな、特に鑑定の巻物とか!)

 「鑑定ってハズレなんですか?」

 

 

 

 

 

 さて、オーディとヴェルニースに寄った後、俺達は予定通り神々の休戦地に出発した。

 ちなみに鑑定した巻物の中身はテレポートの巻物とかいう、微妙な奴だった。

 だが、別に落ち込んだりしたわけでもない、いざという時の時間稼ぎに使えるし、今はそれ以上に、神を信仰しに行くという、重要な目的もあるからな。

 道中大雪が降ったり、血吸いのダメージを回復したりでなかなか時間を取られたが、帰りを考えても余裕がある量の食料を持って、休戦地にたどり着くことができた。

 

 (うん、問題なくここまで来ることができたな)

 「わあ、とっても綺麗な所ですねぇ。何か神秘的ってやつです!あ、剣さんが言った通り、狼さん達がいる。こんにちはー!」

 

 確かに、オーディの言う通り休戦地には、神聖な美しさというものがあった。

 辺り一面、美しい白色の石材を使っており、神々の恩恵のおかげか、全体的にキラキラとした光に満ち溢れている。周囲が雪で囲まれていることもあって、視界全てが白と言う、神聖な色で埋め尽くされる勢いだ。

 神殿を構成する柱も、繊細そうに見える細工が施されており、この場所の格式と言うものを高く感じさせる。

 俺には芸術的な方面の教養は無いので、詳しい事については、よく分からないのだが。

 

 (何だか、神がいるって場所だって納得できる感じだわ。それでオーディ、どの神様にするのかはもう決めているのか?)

 「それが、まだなんですよね。剣さんのオススメは、オパートス様か、ルルウィ様でしたっけ?」

 (オーディへのオススメと言うか、冒険者に向いている神様がだな。オパートスはお前の防御力を高めて、斬り合いに強くしてくれるだろうし、ルルウィは速さを高めて、戦いやすくしてくれる。戦闘の事だけを考えるなら、この神々が有力だろうな)

 「でも、そのお二方とはあまり気が合わなそうなんですよね……。特に、ルルウィ様はとっても怖そうです」

 (ま、そうかもしれんな。そういう事なら、イツパロトルとマニもキツイだろう。どちらも敬虔さを求めるタイプの神だからな。そうなると、癒しの神ジュア、収穫の神クミロミ、幸運の神エヘカトルの、どれかになるだろうかね)

 「うーん、どうすればいいんでしょう。今まで神様とはご縁がなかったわけだし、イメージが湧いてこないです」

 (一度信仰したら、気軽に信じる神を変えられるもんじゃないからな。納得いくまで悩めばいいだろう)

 「そうですね、狼さん達にも話を聞いてみようかなあ」

 (いいんじゃないか?こんなところに住んでるんだし、きっと色々詳しいだろう)

 

 

 

 

 

 「ど、どうしよう、全然決まりません!」

 (いや、まあうん。どの宗教に入るかって話なんだから、悩むのは仕方ないと思うぞ?)

 

 神々の旧戦地についてからほぼ1日が経ったが、オーディはまだどの神を信じるか、決められていないようだ。

 この先、どんな神を信じるかと聞かれて、すぐ答えられるような奴は少ないだろうし、こうなるのも当然だとは思う。

 だが、流石にこのままって訳にもいかんだろうな。なんとか決まればいいんだが。

 

 (焦っても決まるようなもんじゃあないだろう、落ち着けって)

 「でも、日が変わって、月も跨いじゃいましたし……もうそろそろ決めておきたいです」

 (と言っても、急いで決めても悔いが残るだろうからなあ、こういうのは自分で決めるべきだろうから、俺からも余り口出ししにくいし)

 「だからって、私一人じゃあこういうの全く分からないですよぉ。剣さんだって、自分が信者という訳じゃないから分からないかもですけど……」

 (んん?いや、俺は信じている神様いるぞ?)

 「へ?え、えええええええええええええええ!?」

 

 オーディは、身体を大きく仰け反らせて自らの驚きを表現している。

 よくよく自らの感情を表に出していく奴だ。

 

 「剣さん信じている神様いらっしゃったんですか!」

 (おう、だからって、別段祈ったり何かしているわけじゃあないけどな)

 「ち、ちなみにどの神様を信じていらっしゃるんですか?」

 (幸運の神エヘカトルだな。もう解説をしたと思うが、運、魅力を上げてくれる神だ)

 「そうなんですか。私、剣さんのイメージ的に、もっとこう、厳格で神様~って感じの方を信じているのかと思いました」

 (イツパロトルとかか?いや、俺としても、エヘカトルってイメージはないだろう、とは思うけどな。だが、ちょっとした縁ってやつがあったのさ)

 「縁、ですか?それってどういう……」

 

 あー、改めてあの時のことを説明するとなると、ちょっと言いにくいことが多い事件だったな。

 まあ適当に言っときゃ大丈夫だろ。

 

 (俺がまだ宝箱に入ってた時のことなんだが、一人で暇だからってウダウダしてた時、急にエヘ様の声がしたのさ。あ、エヘ様ってのはエヘカトルの事な。で、まあ適当に話とかしたんだが、大分盛り上がってな。その場で信者にしてもらったのさ)

 「そうだったんですかー。凄いですね剣さん、神様と話したことがあるなんて」

 (いやいや、多分こっちの世界ではよくあることだと思うぞ。で、その後ちょっと幸運を頂いて別れたんだ。だから、俺も神様の恩恵とか受けてることになるのかね)

 「へー、幸運って、どういう事があったんですか?」

 (ああ、宝箱で暇してたから、すぐにでも持ち主に会えるようにってして貰ったのさ。実際一時間もしないうちに拾われたしな)

 「え、それって……」

 (おう、お前のことだな。そっからはこれと言って何もないけど……どうした?オーディ)

 

 オーディは、何やら俯いて無言で立っている。

 俺が何度か呼びかけると、ようやく顔を上げてまた話しかけてきたが、その顔は何だか、泣きそうなように見える。また何か地雷があったのかね。

 

 (どうかしたのか?何か様子が変だが)

 「いえ、さっきのお話しですけど、だとしたら私が剣さんを手に入れられたのは、エヘカトル様のおかげなんですね。そのおかげで今こうして冒険者生活ができてるのに、さっきまで勝手なことばかり言ってしまったのが悲しくて……」

 (あー、確かにそうだな。だけど、気にすることないだろ。その幸運は俺に向けられたものだし、オーディが気付くはずもないんだから、お前が気に病む必要はないさ)

 「だとしても、です。剣さん、私決めました!エヘカトル様の信者になることにします!」

 (それはいいけど、本当にこのことで決めていいのか?)

 「いいんです。神様が私に、あなたを届けてくれていた、ってだけで十分です」

 

 オーディはそう言うと、エヘカトルの祭壇へと近づいていく

 そして、祭壇の前で俺の事を両手に持って掲げ、大きな声で叫ぶ。

 

 「エヘカトル様ー!<<永遠の孤独>>さんと、私の事を会わせてくれて、ありがとうございましたー!私、とっても嬉しかったですー!どうか私も、エヘカトル様の信者にしてくださーい!」

 

 おおう、久しぶりに出たなその中二ワード<<永遠の孤独>>。

 と、そんなことよりオーディの方か。

 見た所、何か変化が起こったようには見えないが、んん?

 

 俺がオーディに注目している間に、天から一筋の光が降りて来ていた。

 その光はオーディの事を包み込み、辺り一面を眩く照らす。

 そして、その光の元から、聞き覚えがある声が聞こえてきた。

 

 『わ~い、信じてくれてありがと。ありがと!うみみやぁ!これからよろしくね!』

 

 間違いない、あの時と同じ、エヘカトル様の声だ。

 こうして、しっかり新しい信者の所に出向くなんて、サービス精神旺盛だな。

 

 「は、初めましてエヘカトルさま、お会いできてこーえーです!」

 (落ち着けオーディ、緊張でなんか呂律が回ってないぞ)

 「は、はい!いきなり変なこと言ってすみませんでした!」

 『大丈夫!君の事は知ってるよ!頑張り屋さんだね。だね!』

 「え、えっと、私の事ご存知なん、ですか?」

 『もちろんだよ!これからは私と一緒だからね。だからね!』

 「はい……はいっ!ありがとうございます!」

 『私への供物は、たらばがにでいいからね。からね!それじゃあ、私は他の皆の事見てくるから、バイバイだよ!』

 

 その一言を最後に、天からの光は途切れて、エヘカトルの声も聞こえなくなった。

 中心に立っていたオーディは、放心したように上を向いて立っている。

 

 (いやー、相変わらずハイテンションな人だった、なあ、オーディ。……オーディ?)

 「剣さん、エヘカトル様、私のこと知ってるって仰ってました」

 (ああ、確かに言ってたな)

 「私の事、見ててくださった人がいたんですね……。気持ち悪くて、皆に嫌われていた私の事を、ずっと見守って下さってたんだ……っ!」

 

 そう言うと、オーディは泣き出してしまった。

 ずっと一人で生きてきたからな、最近は俺と一緒に居るとはいえ、母性とかそういうのに飢えていたんだろう。

 で、そういうのを担う役割もある、神様と言う存在が見守ってくれていた事実に、感極まったと言うところか。

 俺とオーディを会わせたのは、俺の為だけじゃなく、オーディを助けるためでもあるかも、とかも思ってるかもな。

 

 まあ、落ち着くまで泣かせておくとしよう。

 オーディのことを知ってたのは、信者の俺の事を見てた時一緒に見えたんじゃないか、とかそういう可能性については流石に言わない。

 普通にそうじゃない可能性もあるし、何よりそうやって空気読まずに発言しちゃって、完全にハブられた小学生時代のトラウマがあるからな!

 

 

 

 十分ほどして、ようやくオーディは落ち着いたようだ。

 まだ少し興奮しているようだが、涙は既に止まっている。

 

 「すみません、剣さん。急に泣き出したりしちゃって」

 (いや、いいさ。それより、例のペンダント、しっかり着けておけよ。どっかで、エヘ様がひょっこり声をかけてくれるかもしれないぞ)

 「はい!ちゃあんと着けてますよ。ふふっ、これで剣さんとおそろいの神様ですね」

 (そうだな。で、この後だがどうするんだ?)

 「そうですねー、特にこのあとやることも思いつかないですし、一回死んじゃいましょうか」

 

 ……What?

 

 (え、オーディ死ぬって、何故?)

 「やだなー、決まってるじゃないですか、この時間帯になるともうそろそろ……って、噂をすれば来ましたね!」

 

 オーディは、そう言って空を見上げる。

 俺も合わせて辺りを見回すと、そこには、ドギツイ色の光を乗せた、気色の悪い風が吹いていた。

 

 これは、そうか!エーテルの風か!そういえば、今は3月の頭、ゲームの中でもエーテルの風が吹いていた時期だ。

 すっかり忘れていた、この身体に影響を及ぼす恐ろしい風の事を。

 エーテルの風は長時間浴びていると、エーテル病という、体に大きな異変が起きる病を引き起こすのだ。

 この異変は大抵の場合、ステータスに悪影響を及ぼす。

 その上、病気が進み、あまりにも異変が多くなると死に至る、というヤバい代物である。

 回避するには、シェルターに入るなりなんなりして、この風をやり過ごさなければならない。

 だが、それとオーディが死ぬのとどう繋がるのだろうか。

 

 (オーディ、死ぬって言ったが、それっていつもの住処に這い上がるためか?そこのシェルターを使うとか)

 「そんなものあるわけないですよー、ただ単に一度死んで、エーテルの風が止まってから這い上がるだけです。ってあれ?剣さんはどうすると思ってたんですか?」

 (正直、忘れてた)

 「ええ!?気をつけなきゃだめですよ!って、剣さんは剣だから、エーテルの風の影響がないのか。それなら忘れてもしょうがない、のかな?」

 

 注意されてしまった。

 だがまあ、エーテルの風とかいう超重要なことを忘れてしまっていたんだから、この忠告は甘んじて受けよう。

 しかし、エーテルの風の回避法、偉く原始的だな!

 まだレベル5じゃないからペナルティはないって事だろうけど、今迄エーテルの風の度に自害してきたのか、それはキツかっただろう。

 

 「じゃあ、私は死体を漁られたりしないよう、雪を掘って、そこに埋まって死にますね。では剣さん、風が止んだら、またお会いしましょう」

 

 そういうと、オーディは自分が潜れるだけの量の雪を掘り、そこに入って軽く雪をかぶった後、自分の身体に剣を突き立てた。

 流石に断末魔の雄たけびは上げたが、彼女は自殺にも慣れているらしく、その一回で見事自分の命を散らし、ミンチになって飛び散った。

 

 このまま、エーテルの風が止むまで待つという訳か。

 ゲームの世界ではできない、この世界ならではの方法だな。

 だが、死亡ペナルティが起きるレベル5からは、この方法も通じないだろう。

 オーディが生き返ったら、次からは町で無料シェルターを借りるよう言っておくか。一人で生きてたアイツの事だから、知らない可能性もあるしな。

 

 しかし、俺この後2、3日は一人でこの雪の中エーテルの風が止むのを待つのか。

 クッソ暇なんだが。

 剣になってからは、割と暇でも耐えられるのがまた悲しい。


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