ハガネな使い魔 作:Out Lazy
『頭沸いてんなぁ…………』
さて、状況を整理しよう。
・トラックに轢かれて死んだ
・なんか中途半端に願い叶えられた
・気がついたら何処かにいた
・オマケにロボットになってた←イマココ
うん、整理したら余計に何か分かんなくなった。
「ル、ルイズ! お前なんてモノを召喚したんだ!?」
「し、知らないわよ!? まさかこんなのが出てくるなんて私も思わなかったのよ!!」
お、情報追加。どうやら俺はこのピンク髪の女の子(名前はルイズと言うらしい)に召喚されたらしい。
…………ファンタジーか何かかよアホらしい。夢もここまで来ると笑えてくるよな。
(あは、あっはっは!)
「ギュル、ギュルッギュルッギュル!」
相変わらず、口から出るのは歯車が擦れ合う様な機械音。乾いた笑いならぬ、乾いた駆動音である。
「お、おい…………アレ、笑ってやがる」
「もういやぁ…………なんなのよコレぇ…………」
それはともかく、周囲からコレとかアレ扱いされて、ちょっと泣きそうである。いやまあ、俺だってこんなのが急に現れたらアレとかコレとか言うだろうけどさ。
「ミ、ミスタ・コルベール…………?」
「な、なんだねミス・ヴァリエール?」
「この、新手のゴーレムみたいなモノを、どうしても私の使い魔にしなければならないのでしょうか?」
泣きそうな(というかもう泣いてる)ルイズ少女は、歳がいってるのか、見事な御茶ノ水ヘアを見せつけてくる先生っぽい感じの人に、最後の希望を託すかの様に言った。
「そうですね…………個人的には、研究のしがいがありそうな…………ん”ん”、非常に危険なゴーレムに見えますが、喚び出してしまった以上、もう『サモン・サーヴァント』を使えない。例外はあるにはあるが…………」
「その例外は!?」
「喚び出した使い魔が死んだ時、だね。ミス・ヴァリエール。君はあのゴーレムを壊せる自信はあるかね?」
そこでルイズ少女、俺をもう一度見上げ、顔を真っ青にして首を振り始めた。
「さらに、春の使い魔召喚は神聖な儀式だ。好む、好まざるにかかわらず、喚び出したモノを使い魔とするしかない」
「そう…………ですよね」
ガックリと肩を落とした彼女は、自分を奮い立たせる様に、独り言を呟き始めた。
「まだマシ…………カエルよりはマシ…………というか、いかにも強そうだし、寧ろコレは成功なんじゃないかしら…………そうよ、きっとそう…………」
うん、まあ強そうな気はする。
だって、あの声だけのクソ野郎と会話の流れからして、今の俺は【鋼】なのだろうから。
「あ、あの、聞こえるかしら?」
「ギュル」
恐る恐るといった様子の彼女に、首肯と駆動音で肯定の意を示す。
「あのね…………今から貴方? と契約しようと思うのだけど、私に顔を近付けるか、私を顔の近くまで持っていってもらいたいの」
「ギュ、ギュルル…………」
な、何をするのか…………まあ、使い魔になるのは構わないけど。ほら、なんとなくここは流れに乗っておかないとヤバそうだし。
とりあえず、騎士が姫に跪く様にしゃがみ、剣を持っていない方の手を開いた状態で差し出し、乗る様に促す。
「ギュル」
「ありがとう…………思った以上に、礼儀正しいゴーレムね」
乗ったことを確認し、ゆっくりと顔面の近くまで手を持っていく。
「うん、こうしてみるとやっぱり成功ね。貴方? が来てくれて助かったわ」
「…………!」
近くで見ると、なんだか俺が助けたあの子に似てる気がする。流石に髪の毛はピンクじゃなかったけど。
…………うん、なんだか俺のあの自殺行為が肯定された気分になって、気が幾分か晴れて良くなった。
「じゃあ、いくわよ…………『我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ』」
杖を構えたルイズ少女…………ってか名前長いな。流石ファンタジー。まあそれはともかく、彼女は何事か呪文を唱え…………顔面部の口元に、唇を付けてきた。
…………あー、うん。契約ってキスなのね。人生初のキスなのに、身体がロボットって色々アウトの様な。
それはそうと、左腕部の手の甲から、ギャリギャリと何かが削れる音がしているんだが。痛覚…………みたいなのはない代わりに、感覚的に全身の損耗などが把握できる様になったみたいだ。
削れる音が止んだ頃、身体が急に駆動し始める…………と言っても、勝手に脚が動き回るとかそういうのではなく、内側の歯車が回っていく感覚というか。
「うえっ!? な、何!?」
慌てるルイズ少女を地面に降ろし、立ち上がる。
手の甲に刻まれたその文字。恐らく契約したという証なのだろう。少し、不気味なものを感じつつも、内側からくる衝動に任せながら口を開く。
『闇より深き融炉より出でし─────其は科学の槌が鍛えし玉鋼』
口を突いて出たこの文言…………いまいち、自分でも意味は分かってないが…………この呪文がこの身体を本当の意味で駆動させるのに必要な呪文だということだけは、分かった。
そうこうしている内に、俺の身体はルイズ少女の影の中にズブズブと沈んでいくのだった。
◇◇◇
「な、なんだったの?」
耳障りとも言える、感情のない擦れた様な声を発した、鈍い銀色の金属でできたゴーレム…………ルイズが喚び出した使い魔が、彼女の影の中に沈んでいった。
その大きさが、どうやって小さな少女の影に収まるのだとか、そもそもあのゴーレムは本当にゴーレムなのかだとか…………周囲のトリステイン魔法学院の生徒に先生は色々と知りたい気分になったが、それよりもまず気になったのが。
『あの[ゼロのルイズ]に、あんな使い魔が喚べるなんて!?』
メイジ…………つまり魔法使いの実力を測るには、使い魔を見ろという言葉が、ハルゲキニアと呼ばれるこの世界にはある。
その法則に則ってルイズの実力を見るなら…………特級と言っても差し支えない。人の言葉をよく理解し、放つ魔力も桁違いなあのゴーレムが、どうして弱い様に見えようか。
だがしかし、一方で[ゼロのルイズ]という蔑称の由来…………放つ魔法が、それも魔力があれば誰でも使えるコモン・マジックすら失敗し、爆発させてしまうような落ちこぼれであることも事実。
あの使い魔ゴーレムが弱いのか…………実はルイズは凄いメイジなのか…………どちらも考えられないが、強いて言うならあのゴーレムが、実は見かけだけという方が信じられないその場の生徒達は、『信じられない』という視線と、『もしかして、あいつも実は』という期待の視線を、ルイズに向ける。
そして、そんな視線に晒されたルイズは、居心地が悪そうに身を捩りつつも、少し嬉しそうに頬を緩めた。
それもそのはず、自分が落ちこぼれで、『ゼロ』なことは、他ならぬ自分が理解していた。それなのに、あんな当たりを引けたのだ。最初こそ、理解が追いつかなかった為に焦りもしたが、落ち着いてくると、これはもしや? と思えたし、周囲の反応も、そんな彼女の願望を肯定してくれるものだった。もしかしたら自分には隠された力が…………!? と思ってしまうのも、致し方なしである。
だからだろう、彼女はそんな状況だからこそ、いつもならありえない醜態を晒すことになった。
『あらら、フラフラ状態に逆戻りだぜ』
「ッ!? キャァァァアアアアアッ!!?」
いつの間にか、自分の隣に逆さまの人間の顔が見えてしまった彼女は、思わず腰が抜けて尻を地面にぶつけてしまう。
「な、ななな、なんなのよ!?」
逆さまに見えたのは、それが逆さの状態で漂っていたから。
脚もある、手もある、珍しい黒髪、顔立ちで、見慣れない服装に身を包んだ少年が、透けた状態で急に現れたら、驚くことも無理なきこと。実際、彼女と同じように尻餅をついた生徒は多数いた。
『あーあー、そんなに驚かなくてもいいぜ。そうだな、俺はあのロボット…………いや、ゴーレムって言った方が良いか? の、精霊みたいなもんだからな』
「せ、精霊…………!?」
『おう、そうだとも。名前は…………そうだな、【
この時ルイズは一瞬だけ、あれ程喜んだことを後悔した。
やらせたかったこと
→『主人ルイズ』言わせたかった。
本気で鋼が最強ロボだと思ってんの?
→逆に聞くが、空間操作に時間遡行、果ては異世界渡航出来るロボットがホイホイいて堪るかよ。余談ですが、作者はクアンタ大好き。
あたま沸いてますが、よろしくお願いします。
感想あると嬉しいなぁ…………(ボソッ