まあちょっとXXの方をどうするかなって考えてたので・・・。
・・・また、あの時のような白い空間だ。
何となく、そんな風に分かった。嵐龍さんと戦っていた時に途中で感じたのと同じだと。
『あ、また会ったね』
懐かしい声が後ろから聞こえて、ボクは振り向いた。
「お姉ちゃん・・・」
村で出会った頃と全く同じ姿のお姉ちゃんが、そこに立っていた。
『君はまた強くなったね』
「ううん、まだ弱いよ、ボクは」
そうだ、まだボクは弱い。あの時はなぜか突然あんな力を使えたけど、次も使えるとは限らない。
例えある程度は耐える事は出来ても、やはり死ぬ事になるだろう。
『でもね。目標が分かっただけでも凄いよ?そこからさらに友達が出来ちゃうなんて』
「たはは・・・うん、とても嬉しいよ」
そうだ、初めての友達・・・。嵐龍さんと、大好きな古龍と友達になれたのだ。
損得があるとはいえ、ボクの願いに協力してくれると言われた時はすごく飛び上がりたくなるほど嬉しかったのだ。
『・・・ねぇ、君にあげたい物があるんだ』
「え・・・?ボクに?」
『そう、これは・・・とても昔の物なんだけどね、君にならあげてもいいかなって』
お姉ちゃんが微笑みながら両手を前に出すと、掌からポワッと光の玉が現れるとフヨフヨと浮き始めた。
「こ、これは・・・?」
『これはね、ある人が私に預けてきたの・・・死ぬ寸前でね』
「え・・・死ぬ寸前?」
『そう・・・。これはある大昔の戦いで少しだけ作られた物なんだけど、それをその人は使わずにいたの』
大昔。お姉ちゃんが何を言っているのか分からない。だって、見た目が全然・・・。
『ふふ・・・見た目で判断は駄目よ?女の子には秘密がいっぱいあるんだから』
「うっ・・・ごめんなさい・・・」
そうだった・・・。お姉ちゃんは人の心を読むのが凄い得意なんだっけ・・・。
だけど、その人が一体どんな人だったのか、ボクはそれが気になった。
『その人はね、戦いに参加することになったんだけど、それは双方多くの命が失われると分かっていたの』
眼をスッと細め、真剣に話し始めるお姉ちゃん。
『その人は、分かってて参加するしかなかったの。だけど、その人はそれを使わず、戦ったのよ』
「なんで・・・戦ったの?」
『それは、自分の奥さんと子供を守るためよ』
「守るって・・・戦いを終わらせるために?」
『そう・・・そして戦いは終結した。だけど、その人の予想通り多くの命が消えたわ。その人の命も・・・』
お姉ちゃんが淡々と話していく。ボクはそれを聞いていくしかなかった。
『私はその戦いを見ていたのだけど、終わった後に一つの光を見つけたの。そして、私はその人と少しだけ話して、これを預かる事になったの』
ポワポワと浮いていた光の玉がボクに近づいていく。
とても、優しい光だった。
『そして、今が渡す時だと思ったの。それを・・・着てみて』
「え、着るって・・・わ!?」
瞬間、玉が光り輝いてボクの身体を包み込んだ。
頭の中に、何かが流れ込んできた。これは・・・戦いだ。
それは壮絶な戦いだった。人と竜と・・・レアスさんと同じ龍まで戦っていた。
人が走って竜の背中によじ登り、剣を突き刺していく。
竜は倒れたが、他の竜が人を火炎で焼いていく。
酷い・・・酷い・・・。
それしか思えなかった。
龍も戦いに参加した。それは圧倒的で全てを薙ぎ払っていく。
人間達がジリジリと後退していく。このままだと人間の敗北は間違いないだろう。
だけど、ボクの予想は裏切られる事になった。
突如、途轍もなく巨大な・・・龍が現れた。空から降ってきたのだ。それも何体も。
それは所々が鎧で覆われていて、彼方此方がツギハギだらけだ。そして、眼はまるで死んだように見えた。
鎧の龍が爪で容易く竜を切り裂いていく。
数匹の竜の火炎を受けてもまるで痛みを感じずに突き進んでいく。
だが、その足元から何か小さいものが駆けていくのが見えた。
それは、全身を鎧で包んだ人間だった。だけど、何かが違うと直感で分かった。あれは・・・。
あれは、最早人間じゃない。
目が、龍の眼と同じだったのだ。
鎧がバキバキと其々の形を形成していった。
ある者は翼を持ち、そらを飛んでいる。ある者は手足が龍の爪を生やし、敵を切り裂いていく。
あれは、もう・・・。
『もう、人間じゃなくて龍・・・と言いたいんでしょう』
「・・・あれは・・・何なの!?」
『あれはね・・・人を一時的に龍にさせるの。命と引き換えにね』
「命って・・・それじゃああの人達は!?」
『うん・・・死の運命が待っている。それでも戦うしかなかったの。自分達を守るために』
「そんな・・・死んだら・・・死んだら意味がないじゃないか・・・」
『そう・・・、でもそうしてまでも人間達は生き残りたかったの。忌まわしき鎧を作ってまでもね』
お姉ちゃんと話しているうちに、双方が退いて行った。
そこに残ったのは、死体だけだった。
誰も生きていなかった。
「こんな・・・こんな戦いって・・・」
『ええ、これで戦いが終結したの。どちらも命を失いすぎたから』
だが、死体の山が少しだけ動いて、一人の人間が出てきた・・・。
「あぁ・・・良かった!まだ生きてい・・・・!?」
安堵した瞬間、その人の身体を見て絶句してしまった。
その人の下半身が無くなっていたのだ。
それでもその人はズリズリと動き、這い出てきた。
そして、胸のポケットからあの光る玉を取り出した。
[あぁ・・・こうなっちまうよなぁ・・・]
その人の声が頭の中に響く。
[止められなかった・・・俺一人じゃ無理だった・・・仲間は全員死んだ・・・俺も]
仰向けになり、空を見上げるその人の目からは、涙が溢れていた。
[あぁ・・・ちくしょう・・・妻も、子も・・・まだ会いたかったなぁ]
[なぁ・・・誰か・・・生きてるなら聞いてくれ・・・]
[俺は・・・この鎧を使いたくなかった。人間が化け物になっちまうから・・・な]
淡々と、だが震える声でその人は空に向かって話しかけている。
[この鎧は、血に塗らしてない・・・俺の思いを一番に込めて作った鎧だ・・・]
[誰かを・・・何かを守るために作った。殺戮のためじゃねぇ・・・守るためだ]
[だから・・・これを・・・守ろうとする誰かに渡してくれ・・・]
[それなら・・・きっと・・・鎧は・・・]
そこでパッと風景は消えた。
「もしかして・・・これが・・・」
『そう・・・彼が言っていた物はそれ・・・君は、守りたいんでしょう?』
気がつくと、あの光景と同じ鎧を、ボクは着ていた。
確かに古龍達を守ったり、戦いを避けられる事を願っている。
だけど・・・。
『ボクに扱いきれるのか・・・本当に・・・って思っているでしょう?』
図星だ。
不安は隠しきれない。本当に。ボクが使えるような人間でもあるのか不安で仕方ない。
だが、震える両手を、お姉ちゃんが握ってくれた。
『大丈夫!君なら大丈夫よ!』
「なんで・・・そこまで・・・」
『だって、私が大丈夫だって思ったから。君なら出来る。そう確信できたから』
目が・・・ぼやけて来た。頬を何か伝って行く。その時にボクは泣いていることに気付いた。
『大丈夫、大丈夫。君なら出来るわ。私が保証する!』
えへんと言わんばかりに胸を張るお姉ちゃん。
・・・ありがとう。
その言葉しか出なかった。
ここまで言われては、不安はまだ残っているがやるしかない。ボクだって男なのだから。
視界が少しだけ狭くなった。気がつくと頭の防具まで付いた様だ。
『うん・・・大丈夫、貴方は殺戮に走ったりしないわ・・・。守るために、動けるの』
周りの空間が段々と消えていく感じがしていくのが分かった。
「もしかして・・・もう・・・・」
『そうね・・・もう起きる時間よ。起きたらいつもの様に、頑張って』
そう微笑んでいるお姉ちゃんが急に遠のいていく。
思わず手を伸ばしたが、もう届かない位置にまで遠くなっていった。
「お姉ちゃん!!」
『ずっと・・・待ってるよ』
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「お姉ちゃん!!!!!って・・・あれ?」
周りをキョロキョロ見回すと、森の中だった。
ああ・・・そうか。村に近づいたから野宿をしていた事を思い出した。
「夢・・・じゃ、ないのか・・・」
自分の身体を見てみると、あの時と同じ鎧が既に装着されていた。
頭の防具はどこにあるのか探ってみると後頭部辺りにあって、まるで固定されているように、なぜか動かす事が出来なかった。
そして気になったのが胸の中央にある窪み・・・その窪みの周りを装飾が少しだけ囲むようにあった。
鎧で気になったのはそれぐらいだろうか・・・。サイズもピッタリと身体に合うようになっていた。
重さもそれほど感じられなくて、軽やかに動けそうだ。
「・・・ん?小僧、やっと起きたか。腹が減ったから食い物を狩ってきた。さあ焼く準備をしろ」
「れ、レアスさん・・・アプトノス1頭丸々ですか・・・」
『俺も豚辺りで良いのではと思ったんだがな・・・ん?友よ、その鎧はいつから?』
「えーと・・・これは・・・その・・・」
なぜか言うのを躊躇ってしまう。その理由は分からないが、なんとなく言いづらかった。
「・・・まあいい。もうすぐ村なのだろう?ならさっさと喰ってすぐに発つぞ」
「あ、はい!」
次の目的地、ポッケ村まであと少しだ。
鎧のイメージは、狂戦士の甲冑をイメージしていただければ嬉しいです。