「ここが・・・ポッケ村!」
「ほう、雪に包まれたこのような場所に・・・」
暫く歩いて、ボク達はやっと目的地に着いた。
周りには雪が厚く積もり、しかし緑が息づいて人々も寒さに負けじと強く生きているという雰囲気が感じられた。
ポッケ村。
ここは降雪地帯にある小さくひっそりある村。
ユクモ村から何日も掛けてやっとの思いでたどり着けて、ボクは嬉しかった。
入り口から暫く歩いていると、屋根の上で雪を落としている人がちらほらと。
「すいませ~ん!!村長さんはいらっしゃいますか~!?」
「ん、おお!村長ならあそこの焚き火の近くにいるよ!」
ボクは感謝の礼をして、村の人が屋根の上から指差してくれた方角に歩いていく。
レアスさんは村に入った瞬間、「何かあるな・・・しばし離れるぞ」と神妙な顔でさっさとどこかに行ってしまった。
嵐龍はボクのポーチの中から風景を見ているようで、『ほう・・・このような地に人間がいるのか』とぽそりと呟いていた。
「こら、シル!待ちなさい!」
「や~だ~!!今日も雪山草を採りに行く~!!」
「駄目だ、今の雪山は危険だから行くんじゃない!」
「い~や~!!!!!」
小さい家から女の子が飛び出していこうとしたが、直ぐに父親と思う人に捕まった。
まだ8、9歳の小さな女の子だ。親に捕まってもジタバタと暴れて意地でも行こうとしているが、流石に大人の力には勝てず、家の中に連れていかれた。
(今の雪山が危険って・・・どういうことだろう?)
すこし歩いて、焚き火の近くにいる老人を見つけた。多分、あの人が村長だと思いボクは声を掛けた。
「すみません、もしかして貴方が・・・村長さんですか?」
「おお、いかにもその通り。このババがポッケ村の村長だよ。お前さんは・・・」
「あ・・・えと、一応ハンターやりながらの旅人です」
「ふーむ・・・」
村長さんはじっくりボクを観察するように見てくる。
なんだか居心地が悪くてジッとしてるのが少し辛かった。
「ふむ。狩人を兼ねた旅人さんかい。よくココまで来たね。宿はあそこの家を使っていいよ」
村長さんは小さな手で少し坂を上ったところにある一軒家を指差す。
「あそこはここの狩人の家なんだけど、しばらく留守にしているからね、空き家状態なんだ。少し掃除すれば使えるようになるはずだよ」
「あ、ありがとうございます!」
「小さい村だけど、ゆっくりしていっておくれ」
ボクは村長さんと別れて宿のところに向かう。
そういえば、レアスさんどこにいったんだろう?
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「・・・こんなところにあるとはな」
其処はポッケ村の農場の奥にある雪や氷が壁一面に張り、少しだけ日が差す狭くて小さい洞窟。
そして日に当たるように地面から悠々と立つ1本の大剣が立っていた。
「忌々しい・・・我が同胞の亡骸から作られた物があるとはな」
レアスが険しい顔つきで剣に手を伸ばすと、僅かに振動が剣から発せられた。
「憎悪を抱きながら未だに生きているのか・・・人間とは恐ろしい物よ。此処まで憎んでいるというのに、それから武器を作り、また狩るのだからな・・・」
レアスはぽそりと呟く。白い吐息がフッと消え、口から僅かに炎が漏れ出す。
「やはり・・・滅ぼすべきであろう・・・人間は・・・」
金色の瞳の奥から憎しみの炎がゆらゆらと、しかし尚も燃え上がるように。
その声は大気を震わせ尊厳に満ちたように響く。
だが、すぐにその場の雰囲気をかき消すように人間が入ってきた。
「レアスさーん!ご飯ですよーー!!!」
「・・・どこまでも阿呆な小僧だな・・・」
ハァ・・・とさっきとまでは打って変わって普通の声に戻る。
「貴様らの憎悪は、貴様らで抱いていけ。我は我の憎悪で燃やす。絶対にな」
剣に背を向けてスタスタと歩いていくレアス。
その顔には、憎しみは忘れずとも、一人の人間に向けるいつもの傲慢な自信に満ち溢れたようだった。
(だが、あの鎧・・・やはり奴はよく見ておかねばな)
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少年達がゆっくりと過ごし、村の人々まで灯りを消して眠った頃、その影はコソコソと動いていた。
息を潜めるように、音を立てないようソレは動く。
ソレは袋から取り出した赤い色の液体が入った瓶を取り出し、コクリコクリと飲む。
「うぅ~・・・からいぃ・・・」
飲みきれなかったのか、瓶に蓋をして袋に戻し、また動き出す。
ソレは村の出口・・・雪山の方に向かって、ゆっくりと歩いていく。
空から月明かりがソレを闇の中から照らし出す。
それは少年達が最初に見かけた、あの小さい少女だった。
服装は寒さに耐えるように分厚い印象を持たせるコートを着ていた。フードもしっかりと被り、手袋もしている。
懐から地図を出し、×印が描かれている所を見て、またすぐに仕舞う。
「お母さん・・・!」
少女・・・シルはゆっくりと、しかし確実に雪山に向かって歩いていく。
雲が月を包み、また暗闇が、シルを隠していった。
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「うん・・・なんだ・・・?」
朝日が差し込み、その眩しさで目を開ける。
ベッドに視線を向けるとレアスさんが静かに寝息を立てて寝ていた。
夜でまたお酒を飲んでいたから深い眠りなのだろう。
そしてボクはまたベッドを占領されたので床に寝ることになったのだ。
ゆっくりと身体を解しながらボクは顔を水で洗いに行こうとして、異変に気付く。
(村の空気が張り詰めている・・・?何かあったのかな?)
『起きたか友よ、何やら村で何か起きたようだぞ。朝からこの調子だ』
「嵐龍さん・・・。とりあえず村長さんの所にいって見ましょうか」
『待て。友よ・・・昨日まで着ていた鎧はどこに置いたのだ?』
「え・・・あれ!?」
違和感に気付いて部屋の中をグルリと見回し、ボックスの中を一生懸命に漁ってみたが、あの鎧が見つからない。
「嘘・・・まさか盗まれた!?」
『それは無いだろう。俺や黒龍が居たのだ。お前以外の者が入ってきたら即座に気付くだろう』
「それじゃあ・・・いったいどこ・・・ん?」
その時、胸に何かが付いている感じがして、服を脱いで視線を降ろし、確認してみると・・・。
「うぇ・・・!?な、何だコレ・・・」
丁度胸の中央にだろうか、あの鎧の真ん中にあった円形に凹んだ所がそのまま残っていた。
恐る恐る震える指で触ったら一瞬カチリと音を立てたら、窪みの所から皮膚を這うように何かが広がっていく。
「うわっ!うわあ!??」
『おい、大丈夫か!?なんだそれは!?』
痛みは全く感じず、皮膚の上に何かが形成されていくのが感じられた。
ズズズと広がっていた何かはボクの身体や手足の先まで完全に包むと、そこからパキパキと今度は金属のような音を立てて変わって・・・変形していく。
肩の後ろからは布のような物がズズズと形成されていく。
そして昨日と同じようなあまり重みを感じさせない、白銀色の鎧と、昨日まで無かったはずの首辺りをグルリと囲み、脚の下まで届くほどの長い黒色のマントがあった。そしてあの動かなかった兜は丁度背中辺りでマントに埋もれる感じで有った。
『・・・友よ、一体お前は』
「ごめん・・・ボクにも分かんない・・・。と、とりあえず村長さんの所に行こう!」
戸惑いながらも急いで軽い仕度をして嵐龍さんをポーチの中に隠し、走って村長さんの所に向かった。
そこで聞いたのは、昨日見たあの小さい女の子・・・シルちゃんが勝手に抜き出して雪山の方に行ってしまったのだろうという、話しだった。