「・・・本当に、ボクがやるのか」
ベースキャンプで呟く。天気は悪天候。風がビュービューと吹いてくる。白い稲妻が雲の中で光る。
そんな場所にいるのは、嵐龍を狩る。そして村を救うという目的で来たのだ。
今更引くことはできない。もし逃げたら、あの村人達が犠牲になる・・・。
だが、本当に殺す必要があるのか・・・?
そんな気持ちが、ボクの狩りに対することを迷わせる。村で救うと決めた。覚悟をした・・・。
なのに、未だにそれが拭えていない。否、古龍を殺したくないのだろう。それが一番の原因だ。
二つの思惑が、ボクを葛藤させる。
どうすればいい。どうすればいいんだ。
「おい、早く行かぬか」
凛とした声が聞こえてきた。アイテムボックスの上に座る女性、レアスさんだ。
暇をしているのか、足をぷらぷらとさせている。
「ボクは・・・・どうすれば良いんですか?」
「言っただろう。この戦いで、貴様は答えを見つけると。貴様が新たな答えをだ」
冷たく、突き放すような言い方で心が揺らぐ。
ああ、見つけれるのだろうか。この戦いで。この戦い、ボクが新しい答えを。
「我は適当な場所で観戦するとしよう。貴様の戦いを見届けるためにな」
そう言うと、レアスさんは歩き出す。この人は元が龍なのだ。どこか安全な場所に行くのだろう。
そのまま振り返らずにどこかに行ってしまった。
その場に取り残されたのはボクただ一人。誰も、いない。
「・・・行くしか、ないか」
最早諦めのような思いで、ナルガヘルムを被り直す。そしてナルガ一式の装備が正しいかチェックする。
これはあの時の迅竜の遺体で製作された防具だ。それは鎧とは思えない柔らかくて軽い、だが並大抵以上の強度を誇る。
そして、ボクが戦いに使う武器を改めて見る。
ヒドゥンブレイズ。それは迅竜の素材で作られた大剣だ。属性等は無いが、斬れ味はかなり良く、一部のハンターに人気の物だ。
本来はブレイズブレイド等の派生から作られるはずだが、工房のおじいさんが「嵐龍を狩るハンターさんにはこれぐらいサービスさせてくれや!」と言ってくれた。工房の貯蓄していた素材で何とか作れたんだそうだ。
ボクは礼を言おうとしたが、「それなら、村を救ってくれたらそれで、貸し借り無しだ!!」と豪快に言った。
ヒドゥンブレイズを担ぎ、狩場に向かって、1歩1歩、歩き出す。
未だに、迷いを残したまま。
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その場所は霊峰。その場所は聖なる場所。ユクモ村よりも山奥にある、もっとも高い山の頂上。
そして風が吹き荒れる。稲妻は酷くなる一方。
だが、ボクの目を引いたのは、雲が、渦を巻いていたのだ。そしてその中心に何かがいる。
すると渦が地面に向かって細く、長く伸びてくる。そして、地面に到達した瞬間、強風が巻き起こった。
思わず身体が持っていかれそうになり、近くにあったバリスタ砲に掴まる。
風が強すぎて目が開けられない。一体何が起こっているのかわからない。
突然、風が止んだ。だが、代わりに周りの空気が一変していることに気付いた。
目を少しずつ開けていく。
純白の大きな身体、大きく伸びる2本の角。だが、地面に足が着いていない。浮いている。
そう、浮いていた。
無意識に、ボクは呟いてしまう。
「嵐龍・・・アマツマガツチ!」
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「ほう、ついに対面したか」
霊峰より離れた位置の場所で、黒髪の女性は言う。その顔は、これからの展開を面白そうに期待している、笑顔だ。
「貴様の戦い、そして答え・・・。どんな物か見せてくれ。人間よ」
その女性・・・レアスは、期待をしている楽しそうな声で呟く。
そして彼女はまた腕組をして、その様子を見続ける。
これから始まる、少年の戦いを。成長を。新たな答えを。確かめるために。
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ゆっくりと、ボクはヒドゥンブレイズを両手で構える。
嵐龍との距離は充分あるが、一体どんな行動をしてくるのか分からない古龍に対して警戒をしておく。
だが、それとはまったく真逆の展開が起きる。
『お前は・・・狩人か。ふん、俺を狩ろうとするとは、いい度胸だ』
頭の中に突然響いてきた声。あまりの突然の出来事に固まってしまう。
声の主は、ボク以外にはレアスさんが遠くにいると思うが、今はどこ探しても、目の前にしかいない。
そう、嵐龍の声だ。
『俺の縄張りに入るとはな・・・しかも一人でか!無謀だな!人間!!』
まるで嗤うかの様に嵐龍の声が聞こえてくる。その言葉でボクはハッとする。そうだ、ボクには龍の言葉が分かるのだ。なぜ迅竜では聞こえなかったのか不思議に思っていたが、嵐龍の事で忘れていた。
(言葉が分かるなら・・・!)
ボクは意を決して、腹の底から声を出す。
「嵐龍さん!なぜ村を襲うんですか!!!ボクは貴方の言葉が分かります!!答えてください!」
『・・・何!?』
嵐龍の動きが止まる。どうやらこちらの事を驚いたようだった。
『な、なぜお前は俺の言葉が分かる!』
「それはボクに特別な力があるからです!さあ、ボクの質問に答えてください!!」
嵐龍の問いにボクは嘘偽りなく答え返した。次は向こうが答え返してもらう番だ。
『俺が、人間共の住処を襲う?フン、そんな思惑は更々無いわ!!』
「え、じゃ、じゃあなぜ」
『知らん!大方、俺の力で被害が其処に来たのだろう?俺は自由に生き、縄張りを守ることしかしておらんわ』
襲う気持ちなど無い。この事を聞けた時、ボクは少しの希望を持つことができた。なぜなら、上手く交渉したら、どこかに行って、被害が無くなるかもしれない!
そんな甘い考えが通るはずがない。冷静に考えたら可能性はゼロなのだが、希望に縋り付くボクには無理だった。
「なら、このまま移動してくれませんか!?それだけで村が助かるんです!」
『・・・断る』
「な、なんで!?」
『俺は俺で生きているのだ。誰の指図も受けん。ましてや』
嵐龍の目が鋭くなり、怒りを思わせる声で語る。
はい
『人間、お前は俺の縄張りに侵入ったのだ・・・それは死で償ってもらう』
「そ、そん・・・な・・・」
『それでも、解決したくば・・・。俺を狩ってみろ!!』
嵐龍の咆哮が轟く。空気を震わせ、風が一気に強く吹いてきた。戦いの合図と言わんばかりに。
(なんで・・・!?なんで・・・結局)
嵐龍が突進をしてくる。もう距離は相当詰められていた。
(結局、狩るしかないのか・・・!?)
歯軋りをして、ボクは横に回避する。防具が軽いおかげでいつもより大きく回避距離が伸びた。
すぐ傍を嵐龍がゴウと音を立てて通り過ぎる。
あのまま受けていたらと想像したら悪寒がする。
最早、選択肢は一つ以外無いと思い、ボクは、大剣を強く握り締めて、嵐龍に向かって走り出す。
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嵐龍との戦闘を始めて、どれくらい時が経ったのだろうか。
ポーチにある回復薬はあと数個くらいだろう。閃光玉もまだあるが、早々と使うわけにはいかない。
嵐龍の方にも、大分ダメージは与えれただろう。あちこちにある白い膜の部分はボロボロだ。
自然と嵐龍の方も息が上がっているようだ。自分でもたった一人で、それも古龍とは初戦闘でだ。
いつもより力が湧いてくる感覚がする。それは龍の加護とか祝福の能力に寄るのか分からない。
だけど、ここまで闘えるのは最早普通ではない。そんな事を考えていたら、嵐龍の声が頭の中に響く。
『お前・・・普通ではないな。一人でここまで俺を傷つけたのは初めてだ』
「あまり、良い気分じゃないんですけどね・・・本当に」
気分は良くないどころではない。最悪だ。なぜ大好きな古龍と血を流し合い、どちらかが死ぬまでやらなければならないのか。
嵐龍を斬り付ける度にそう感じた。村を救う。確かにとても大きな責務だ。だが、それでも・・・。
『不思議な人間だな・・・だが、俺はもう容赦はせん!』
嵐龍が一際大きく高い咆哮をすると、身体に赤い斑点のようなものが広がる。純白のような膜などがやや黒くなっているようにも見える。
全力で目の前の敵を排除する。その意思が嵐龍の瞳を、威圧を感じただけで分かるほど。
ボクはゆっくりと大剣を構え直す。だが、手に力が入らない。
ボクは、命の危険を目の前にして、未だに迷っていた。
お疲れ様です。0.1tトラックです。
第5話前編、いかがだったでしょうか?
なるべく近いうちに後編が投稿できるように頑張ります。
さて、今回の主人公は迷いまくりです。
村であんなに決意していたのは、大好きな古龍を手にかけるのがとても嫌っていることだからです。
有害だから排除する。それは大人であるハンターなら簡単に割り切れるでしょう。
ですが、主人公は優しい性格の少年とも言える人物です。
それが簡単に割り切れるとは思えず、このようになりました。
あと、一人で闘えてるのは主人公補正とかだと思ってください・・・。展開が無理やりですみません。
次回の後編で戦いは決着するはず・・・です。彼がどんな答えと、どんな最後になるのか。
では、ここまで読んでくださった読者様、ありがとうございました。