・・・あ~、この宴会はいったい」
あの激闘からボク達はユクモ村に帰還した。ある程度の距離があるので、着くころには夜になっていた。
普段は細々と明かりが灯っているはずだが、この時は違っていた。
村の彼方此方には提灯が飾られており、射的や食べ物を売る屋台がズラリと通りに並んでいた。
そして村人達はアイルーが太鼓で演奏しているのに合わせて踊っていたり、酔い過ぎて足取りが覚束ない男性、
走り回る子供達。ああ、村長さんまでも大きな盃を仰いでいる・・・。
人波に揉まれながらも村長の下に辿り着いたボクとレアスさん。嵐龍さんはポーチの中に納まっている。
村長さんがぷは~っと盃を置いて、辺りを見回すようにしていると、目が合った。
その瞬間、パアァッと顔が喜びを表し、ボク達に声を掛けてくる。
「まあ、ハンターさん!お待ちしておりましたの!」
「は、はぁ・・・この祭りはいったい」
「村が救われたこと、そして・・・英雄さんを出迎えるために、ですのよ!!」
村長さんが言うと、周りの村人達が集まってきて、よくやったな!と背中をバンバン叩きながら褒めてきたり、
自慢の料理を薦めてきた。
レアスさんにも人だかりが出来て、若干・・・かなり煩そうな顔をしていた。
「貴方のおかげで、皆が村を放棄することは無くなりました・・・本当に、ありがとうございます」
深々と頭を下げる村長さん。
そんな風にされると、こっちが困ってしまうのだが。
「ああ、頭を上げてください!え~と、すいませんマイルームに戻りますから!!」
「あ、ハンターさん!」
人だかりの中を潜り抜けながらマイルームに戻る。色々と整理しなければならない事があるのだから・・・。
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「ふ~・・・さて、どこから整理したら」
『それは俺の事からやるのが良いだろう。まずはこの状態についてだ』
ベットに腰掛けて、正面の机にある、綺麗な玉と話す。
この玉・・・龍玉には嵐龍さんが入っている・・・というよりも、龍玉そのものが嵐龍さんなのだ。
「とはいっても・・・レアスさんも龍玉になる事は知らなかったみたいだし・・・」
『それはそうだろう、俺も知らなかったからな。もう少し袋の中を整理してくれ。かなり苦しかったぞ』
「そ、それについては申し訳ないです・・・」
レアスさんの事は村に帰還中に嵐龍さんに説明していた。まあ、その際にレアスさんが古龍という事実もボクが知ることになったが。
その本人、レアスさんの反応は。
「今更か・・・なんというか、その妙な鈍感には呆れるものだな」
と、ため息をされながら言われてしまった。
まあ、そんな事はあまり否定できないのが余計に哀しくなってきたのだが・・・。
『いくら俺の大きさが変われるとはいえ、あまり乱雑な所に入れないで欲しいものだ・・・そもそも・・・』
嵐龍さんがクドクドと文句を言いながら、コロコロと転がっていく。
机から落ちそうにならないか不安だが、それは彼も分かっているのか、戻っていくのだ。
今の龍玉の大きさは、最初の手に取った大きさより、かなり小さくなっていた。
本人の意思で変わることができるらしく、今は親指と人差し指で摘めるほどの小さな玉となっていた。
おかげで、ポーチの中にすんなり入れることができたが。
『・・・まあ良い。とりあえず、これからはどうするんだ?』
「う~ん・・・そうですね。ここには余り長居はしない方が良いかと思います。ですので、明日の夜明け前に次の村に出発しようと思います。」
『ほう・・・案外淡白なのだな。英雄様よ?』
にやりと笑ったような気がしたが、玉の状態ではそれが見て取れない。
だが、そんな英雄とか言われても、ピンと来ないのが本心だ。
「ボクはただ、貴方を救いたかったからだけですからね・・・」
『お前はそう思っていても、他人から見れば救世主みたいなのだよ。住処を捨てずに住んだのだからな』
その言葉に、少しずきりと心が痛む。
最初は嵐龍を討伐しにきたのだ。村人達を守りたいと。狩猟するために行ったのだから。
『誰もが思うものだ。特に人間はな・・・。害があるものは駆除すべきだと』
嵐龍さんの声が、語りかけるように話してくる。
『誰もが幸せに、安全に、平和にしたい。それは生物が思うことは1度はあるのだ・・・。それを理由にして動くことは、やる者にとって正論であり、正義だ。だが・・・やられる者は、それを悪だなんだと見てしまう』
「・・・でも、ボクは最初は貴方を」
『間違っていない。間違っている。それを考えるのはお前自身だ。他の奴の判断に任せるな』
「あ・・・」
『お前は少し女々しすぎる。というか、気持ち悪いぐらいにな』
「そ、そんな・・・」
『だから・・・これからはお前が考え、お前が動くのだ。自分の正しい事をするために』
肩を落としかけたが、嵐龍さんの言葉を聞いて思い出した。
あの時の思い、やりたい事、それがやっと見つかったのだ。それは、
『正しいとは、世界中の人間が認めるとは思えないだろう。むしろ、賛同する者はいないかもしれんが・・・』
「だけど・・・それをボクはやりたい。後悔は・・・したくないです!」
『・・・少なくとも、ほんの少しは男らしくなったな』
嵐龍さんの雰囲気が和らいでいくような気がする。とても嬉しそうにも感じ取れるようにも思えた。
『あと・・・お前のやりたい事に賛同する者は一人は増えたぞ?』
「え・・・?誰ですか??」
『ふん、何を隠そう、この俺だ!!あの時から協力するつもりだったが、改めて手伝わせてもらうぞ・・・友よ』
思わず、絶句してしまう。あの古龍、嵐龍に認めてもらえたうえに、協力してくれると・・・。
しかも、今・・・ボクの事を「友」と呼んでくれた・・・。
思わず玉を抱きしめてしまい、さらには頬ずりまでしてしまうボクであった。
「ありがとう嵐龍さん!!!!!!!」
『ぬわあああああ!!!やめろ、でないと辛いから!暑いから!あと頬でスリスリするな!!』
「・・・だって、とても嬉しいんですもん。我慢しろってのが無理です」
憧れの古龍に友と言われたボクにとっては、天国に昇るかと思うほど、歓喜したのだ。
他から見れば、独り言で小さい玉にスリスリする気持ち悪い人に見えてるだろうが、そんな事はどうでも良かった。
『ま、まあとにかく・・・次の村を決めたらどうだ?』
「はっ!そ、そうですね・・・え~と次は」
平静を取り戻して、机に地図を開く。その上をコロコロと転がる嵐龍さん。地図を見るためにコロコロ動かしては止まって、また動き出す。
『ふ~む・・・現在はここだから・・・次に行くとしたら・・・』
「はい、大体この二箇所ですが、ボクは・・・」
友とこれからの行く先を語り合う。これがとても楽しく、長い時間が経っていた事に気付くのはもう少し後だった。
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「な、なんなのよ・・・これ・・・・」
声を発した女性は村の現状に驚く。
「うわ・・・これは・・・」
その後ろに大柄な男がのそりと現れ、思わず鼻を摘まんでしまう・・・。
「あらあら・・・面白い事を私抜きでやるなんて・・・♪」
横から顔をのぞかせる銀髪で片目が隠れた女性が口に手を当てながら楽しそうに呟く。
「・・・・・・想像を絶する」
顔を面で隠した男が淡々と、しかし動揺を隠しきれていない口調で言う。
「なんで・・・」
赤髪を後ろで一つに結い上げたポニーテールの女性が天に向かって叫ぶ。
「なんで村人が二日酔いで大勢ぶっ倒れてるのよおおおぉぉぉぉおおおおおお!!!!!!!!!!!!」
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「ご、ごめんなさいね、ちょっとはしゃぎ過ぎてしまいまして・・・うぷっ」
「ああ良いからじっとしていてください!」
未だに吐き気が収まらない村長を介抱する赤髪の女性・・・彼女が4人組のリーダーである、テミス。
「テミス、酒樽とかそこらへんを掃除したから他を頼んだぞ」
「ああ、ありがとうトール」
酒樽やら何やらを担いでいる屈強な大男、力自慢のトール。
「・・・テミス」
「うわぁ!?だから気配消して後ろに立たないでよ!カルマ!!」
「・・・すまん。そんなに影が薄いか・・・」
忍・天シリーズの面を付けている本当に東方の国に伝わるという忍者かと思う者、カルマ。
「あらあらぁ~♪カルマちゃんを虐めるのはダメよテミス~♪」
「別に虐めてないし、最後のは自虐だから!あと貴女も手伝いなさいよリサ!!」
「はいはい、情報収集行ってきま~す♪」
「いや介抱の方を手伝いなさいよぉ!!」
片目を長い銀髪で隠れているこの女性、パーティの中で唯一のガンナーで弓の名手、リサ。
この4人組、彼女らこそが先にユクモ村にいたベテランパーティなのだ。
「うぅ・・・あの方と飲み比べをするんじゃありませんでした・・・」
「はい?あの方??」
未だに吐き気が収まらずにいる村長の呟きに、テミスは聞き逃さなかった。
村長はゆっくりと理由を話していく。
単純に纏めると、古龍による村の危機をある狩人さんが救ってくれ、その祝いとして今まで一番の宴を開催したのだ。その祝いの中、狩人はそそくさと旅館の中に戻ったが、付き添いと思われる女性が豪快な飲みっぷりをしていた。自然と飲み比べ大会(賞金は1万ゼニー)が開催。村長も参加しており、決勝戦でその女性と競ったのだという。
「人生の中で、あんなに飲んだのは久しぶりでしたわ・・・うぇっぷ」
「ああ、ゆっくりお水を飲んでいてください!」
村にある天然水を注いだ飲み物を渡すと、テミスはぐるりと村を見回した。
(・・・古龍を倒した狩人、まだいるのかしら)
古龍を倒した。
それは狩人の中でも、特に腕が立つ者でも成し得ない、いわば偉業である。
それを自分達が不在、しかも一人でという事も聞いて、関心を持たずにはいられなかった。
(まだ・・・旅館にいるの?)
まだ朝早く村に到着して、その時には人とすれ違った事はないと記憶していた。
それなら未だに旅館で泊まっているのではないか、そう思ったテミスはツカツカと防具の擦れ合う音を鳴らしながら歩いていく。
「ここがあの狩人の泊まっている旅館ね・・・」
ゆっくりと入り口から入ろうとしたテミスの耳に届いたのは、ドタドタと階段を下りてくる足音だ。
「ほら、さっさと行くぞ!いつまで我を待たせるのだ!!」
「ま、待ってくださいよぉ!!!」
(わ・・・我?ってやばっ!!)
近づいてくる女性の呼び方がすこし気になったが、こちらに近づいてくるので咄嗟に茂みに隠れるテミス。
(って・・・なんで隠れてるのよ私ぃ!?別に変なことするワケじゃないのに!!)
心の中で自分を責めていると、声の持ち主だと思われる二人が出てきた。
一人は女性。もう一人は男性・・・いや、15辺りの男子だと見て分かった。
女性は自分よりも背が高いのではないのか、テミスがそう思うほど背が高く、艶やかでサラッと風に靡く黒のロングヘアー。服装は黒のマントだけ。そして同じ女のテミスが見ても美人と思うほどの美貌と金色の瞳。
代わって男子の方はあまり背は高くは無い、恐らくテミスよりは少しだけ低い感じだろうか。
髪も黒という特徴しかないし、服装も女性と同じ黒のマント。あまり目立つ人ではなかった。
(わぁ~・・・女の人とても美人・・・。あの子は・・・見たまんま少年て感じね)
テミスは自分の中で気になったのはもちろん前者の女性である。
何よりも、頬に傷痕らしき物があるため、生傷が絶えないハンターをしているのではないかという憶測もあったからだ。
(う~ん・・・でも武器は?持っていないみたいだし・・・)
「ほれ急がぬか!次の目的地に行くぞ!!」
「いや、まだ目的地教えてないはずなんですが!?」
「そんな細かいことはせん!貴様が我を連れて行くのだ!!」
「えぇ~!?」
(あらぁ~・・・少年くん、頑張ってね)
心の中で手を合わせて少年のこれから幸運に恵まれることを願うテミスであった。
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「テミスちゃ~ん♪情報集めれなかったよぉ・・・」
「こっちも、結局例の狩人さんには会えなかったからね・・・って、少しは成果出しなさいよリサ!」
「てへっ☆」
「いい年した女がそれするのは些か限度あるわよ・・・」
リサの謝罪?にため息を吐きながらも無事に村人達を介抱したテミス達。
4人はこれからの事を話し合うため、一旦集会所に集まっていた。
「さて・・・これからどうするんだ?」
「観測所の連絡を待つのぉ?」
「う~ん・・・それもアリなんだけど・・・」
リサの提案に妥協するのもいいが、観測所だけでは全ての古龍を24時間監視できるわけではない。
この村で連絡を待っていては、いざ何かがあったときには動くことができない。テミスはそう考えていた。
「・・・ならば、動くしかあるまい」
「ん~・・・まぁ、カルマの言う通りね。待っていては仕方がないし、他の村へ行きましょう」
「あら、それじゃあ決まりね♪」
「うん、俺も異論はないぞ」
それぞれ4人が頷く。普通はもっと時間が掛かるはずなのだが、この4人は付き合いが長く、一緒に死線を潜り抜けてきた仲間達だ。故に、決めるのは最早2分程度だ。
「それじゃあ・・・1時間後に村の入り口に集合。出発準備しててね」
それぞれがこくりと頷く。そしてそれぞれが準備のためにバラバラに散る。
リサはナルガSシリーズの点検や弓の調整、トールはレウスSシリーズの修復、ハンマーの選択、
カルマは双剣の手入れぐらいだろう。
長く付き合ってからはそれぞれやることが分かってくるのは不思議なことだと、テミスは思う。
「さて・・・私も準備しなきゃな」
・・・・・・・・・・
ガシャリと音を立てる防具、ディノSシリーズのサイズの最終調整、そして古龍を殺すための武器の手入れをしなくてはならない。
「絶対・・・古龍だけは倒さなくちゃ」
その瞳には、揺ぎ無い信念のような決意の炎が燃え上がっていた。
お久しぶりです、0.1tトラックです。
前回から大きく更新が遅れてしまい、申し訳ありません。
今年から色々と新生活が始まりましたので中々執筆が進みませんでした。
今回は4人組、オリジナルキャラクター達です。
何よりも悩んだのが名前と防具で・・・これだけで何週間掛かったことか。
補足となってしまいますが、この4人は観測所からもっとも信頼されている「古龍討伐パーティ」です。この設定さえもオリジナルですので、ご了承下さい。
さて、次回ですが、少年君とレアスさんはまた新たな村に着きます。
そこではまた古龍と、もう一体のモンスターに出会ってしまうことになります。
次のお話は私好みのモンスターと展開になってしまいますので、それでも宜しければ、次回をお楽しみにしていてください。
それでは、ここまで読んでくださった読者様、ありがとうございました。
あと、お気に入り数がなんと70突破しました・・・。ありがとうございます。