よくあるRPGものだった。
けれど聞いた事ないタイトルだ。
安かった割には案外面白い、やり込み要素がある。
そのゲームにすぐはまった。
夜中までゲームして、さすがに睡魔が襲ってきた。
起きたらまた、やろうかな。
ああ、ねみーや。
おやすみなさい。
………よ、ねぇ…………ねぇ、って、ば!!
ドスッ。
「いってぇ!!!」
突如、鈍い痛みが身体に走った。
地震で家具が落ちてきたかどうか知らないが、寝起きの頭の回らない俺には十分すぎるダメージだ。
慌てて飛び起きると、
自分の知らない風景が広がっていた。
「………は???」
「ちょっと!起きるの遅すぎ、みんな待ってるよ!?早く支度して!」
「おう、わかっ……うん?なんの話?」
「まだ寝ぼけてるよこいつ…旅の続き!狼神(おおかみ)倒すって言ったの誰!?」
「すまん意味が…まずここはどこだ、そして貴方は誰ですか。」
目の前の女性はぽかんとした目でこちらを見てくる。
知らないものは知らないんだから質問して何が悪い、状況判断くらいさせて欲しい。
暫くの沈黙を破ったのは、女性の方だった。
「……インパ、もしかして記憶喪失とか…?」
「は?いや、それはないと…、」
寝る前までは自分の部屋に居たし、ましてや頭を強打した覚えも全くない、というかなんで俺の名前知ってんの。と言おうとしたところで俺は口を噤んだ。
よく考えてみろ。この状況を理解するためにも、記憶喪失ということにして一から色々説明してもらえば、何かしらはわかるのではないだろうか。
そうやってしばし思考を巡らせた後、俺は嘘か本当か曖昧な言葉を口に出した。
イン「…俺がなぜここにいるのか、分からない。記憶喪失、なのかもしれない、な。」
「ま…まじか……みんな、大変な事になった!!!」
そう言って家の外へ出て行ってしまった。
…とりあえず、まずここが何処か見ておこう。
ここは、木の小屋か?旅がなんたらとか言っていたから、恐らく宿屋だろうか。
だが、何故俺がこんなところに…
そう思っていると、小屋の扉が勢いよく開いた。
「インパ、緊急会議開くから来て。」
イン「お、おう?」
まあ、行くしかないだろうな。
「みんな、連れてきたよ。はい、ここ座って?」
イン「お、おう。」
「…ほんとに記憶喪失?いつもと変わらないように見えるけど。」
「だって本人がそう言ってるし…。」
外へ出ると、さきほどの女性に加えて女性が2人。どうやら俺は俗に言う「ハーレム状態」らしい。
「とりあえず、自分の名前と私たちの名前、分かりますか。インパクトさん?」
イン「名前は、インパクト。それ以外の事は…。」
「僕の事覚えてない?」
イン「さっきも言ったけど、全く分からない。すまん。」
「そっか。」
見てわかるくらいしょげている。本当に分からないのに、とても罪悪感にかられる。
では旅を続行するためにも、一から説明した方がいいですね。と言ったのはロングでストレートヘアの女の子だった。
咲月「私は咲月(さつき)、こっちの二つ結びがこゆきさん、茶髪の方が誘(いざない)さんです。」
こゆ「こっちからしたら初対面じゃないけど、まあよろしくー。」
イン「よろしく。んで、俺らは何の目的でこんなところにいるんだ?さっき旅とかオオカミ?とか言ってたけど。」
俺はその「オオカミ」という単語に既視感を感じていた。最近どこかで聞いたことあったような、なかったような。
誘「僕たちはインパの「この大陸を守りてぇ!」っていう発言から、この大陸を支配してる…って言ってもいいくらいの力を持ってる【狼神】を倒しに行く旅に出てるんだよ。」
咲月「まだ莫大な被害は出ていませんが、狼神が出現してから、大陸の各地で暴走した人間が見られたりするようになったんです。」
イン「俺そんなこと言ったのか………って、狼神……やっぱどっかで…、」
こゆ「何、なんか思い出した!?」
確か昨日耳にしたような。
テレビか?だがテレビと言っても昨日はあの買ってきたゲームしかやっ、て………
イン「それか!!!」
咲月「どれですか。」
昨日買ってきたゲーム。
あのRPGのラスボスの名前、それが【狼神】。
つまり。全くもって信じられないことだが。
俺はゲームの世界に入ってしまったらしい。