【オーバーロード】食事処もふキッチン【二次創作】(完結)   作:野神 汰月

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 選挙前に何とか出せ…てると思う(´・ω・`)

 ということで、最終話後編スタートです。


閉店 もふキチが引退するそうです 後編

 現実世界(リアル)のとあるアーコロジー内の大型総合病院、そのVIPルームでリアルのもふキチとの邂逅を終え自身の身内であると知った悟はひとしきり泣いた後少し恥ずかしそうに―――

 

 

 「こんなに号泣したの、両親が亡くなって以来です…恥ずかしいところをお見せしました」

 

 

 と一緒に来た面々に謝罪した。それに対し面々は「大丈夫だ、問題ない」とネタに走ったり(某鳥)「恥ずかしいことは何もない、こういう状況であれば仕方ない」などといって悟を安心させた。

 

 そこに悟が泣きだした直後から部屋を出て飲み物を用意していた輝美が戻ってくる。缶飲料をそれぞれに配り、最後に悟へと手渡す。

 

 

 「どうぞ悟さん。泣いて喉がお渇きでしょう?ゆっくり飲んでくださいまし」

 

 「あ、どうも…ありがとうございます」

 

 

 あまりなれない丁寧語というかお嬢様言葉に戸惑いつつ、悟は缶を受け取る。プルタブを開けるとプシュっという音とともに珈琲のようないい香りが鼻をくすぐった。

 

 この缶コーヒー(モドキ)も如月系の飲料会社の製品だと気づくのにそんなに時間はかからなかった。こういった前時代の…まだ普通に食料や飲み物にあふれていた時代のものは基本的に如月がかかわっていると聞いたことがある。

 

 悟はそれをゆっくりと口に含み、嚥下していく。どうやら糖分と乳質も加わっているようで珈琲(のような)の苦みとまろやかさとほのかな甘みが、飲み込むとさわやかな香りが心を落ち着かせてくれた。

 

 

 「―――さて、儂が言うのもなんだが感動の邂逅の後で申し訳ないが此処に居るみんなに伝えねばならん事がある」

 

 

 それぞれが飲み物に癒されている途中、凰翔が口を開く。その内容は、なんとも悲しいものであった。

 

 ―――儂はもうすぐ逝く。医者の言によればあと一年あるかないかだそうだ…。

 

 

 ※※※

 

 

 また、時が止まった。部屋に再び静寂が訪れる…。

 

 今もふキチさんは…いないと思っていた俺の親族で曾御爺さんである凰翔さんはなんと言った?

 

 もうすぐ逝く…?

 

 余命は一年あるかないか…?

 

 何だろうそれは…。天涯孤独だと思っていた俺に、まだ家族がいたと知れたのに…また、直ぐにお別れだというのか。

 

 あの悲しみをまた俺は味わうことになるのか?両親を失ったときのあの悲しみを―――

 

 

 「こうして入院しているのはただ身体を壊したからではない。ここ一・二年少々脳に負荷をかけ過ぎたようでな…」

 

 

 曾御爺さん…おじいちゃんは静かに話す。見た目は確かに老いてはいるが七、八十歳くらいにしか見えないのに…。いや今のご時世で八十生きれば大往生ではある。それを一〇七歳まで生きてこれただけでも奇跡だ。けれど―――

 

 

 「酷いよ…だったら俺は知らないままでいたかった……またあの悲しみを、喪失感を味わうくらいなら…天涯孤独のままがよかった……っ!!」

 

 

 止まったはずの涙が、また俺の頬を濡らす。

 

 本当にひどい話だ…。もう時間が残されていないんだったらなぜ今になって正体を明かしたのか。

 

 

 「―――そうじゃな、酷い爺ですまん。じゃがどうしてもこれだけはやっておかねばならんかった。」

 

 

 おじいちゃんが、悲しそうに…苦しそうに声をかけてくる。

 

 

 「本当ならば悟君を除いたここの面々にだけ儂のことを話し、お前さんを託す気でいた。寂しくならないように、壊れてしまわないように…」

 

 「だったら!!」

 

 「でもの?儂は逝くが、お前さんにはちゃぁんと身内がおる。ここにおる輝美も悟君の身内じゃ。お前さんにとっては叔母になる。そういうことをきちんと伝えるために、儂はあえてお前さんに悲しみを植え付ける…その傷が、確実にお前さんを孤独から救ってくれるでな」

 

 

 そう言っておじいちゃんはゆっくりと身体を起こして立ち上がると、首元に繋がったインターフェースのケーブルを抜いて俺の元まできて…そっと優しく、けど力強く抱きしめてくれた。

 

 泣き止んだと思ったのに、また俺は大声を上げて泣くのだった…。

 

 

 ※※※

 

 

 儂は酷い男じゃ。傷つくのを解っていながら傷つけ、お前は一人ではないと…それだけを伝えるために二度泣かせる。本当にままならんものじゃ。

 

 

 「そういうことで、輝と幹久にはこの子を気にかけてもらうとして…(みな)もゲームの中だけでよいからこの子の側に居てもらいたい」

 

 

 ひ孫のぬくもりを感じながら儂は(みな)に願い乞う。この子が寂しくならないように…せっかくできた爺のせいで悲しみに溺れて壊れてしまわぬように。

 

 …そうじゃ、せっかくだからこれも伝えておこう。そうすれば少しは気がまぎれるかもしれん。

 

 

 「そうそう…儂がYGGDRASILを引退したらアームスヴァルトニル湖のMAPは閉鎖される。今閉鎖準備をしとるからあそこに用があるなら一週間以内に行っといたほうがよいぞ」

 

 

 悟君の頭を優しくなでつつそう言い放つと今まで儂の胸で泣いていたそれがピクリと身体を強張らせて止まる。

 

 お、効果ありかの?

 

 

 「それ…どういうことですか?おじいちゃんがYGGDRASIL引退したら何故あのフィールドが…」

 

 

 うむ、効き目あったようじゃな?ならばこのまま爆弾を落とすとしよう。

 

 

 「実はの?あのフィールドを運営しておるのは儂なんじゃよ―――とある世界級アイテムを使って運営からもぎり取ったんじゃ」

 

 

 少しドヤりながら儂がそういうと、

 

 

 「「「はぁぁぁぁぁっ!?」」」

 

 

 という思った通りの反応を(みな)は返してくれたのじゃった。

 

 

 ※※※

 

 

 全員がもふキチ実はフィールド限定GMショックから立ち直ったころ、彼が話す内容はこうだった。

 

 アルヴヘイムに聳え立つ世界樹の上に成る黄金の果実…それを守護する雄鶏ヴィゾーヴニルを世界級アイテムであるレーヴァテイン(このゲーム内では弩弓である。神話上剣だったり弩弓だったり杖だったりする謎の装備)を使用してはっ斃して(本人談(笑))手に入れたそれを基に運営に交渉したそうだ。

 

 その時には既にフェンリルイベントをクリアしていたらしく、そこで手に入れたとあるアイテムを使用したことでアームスヴァルトニル湖に縁ができた。その為フィールドをゲットすべくあらゆる困難(ソロプレイでは決して達成できないような代物)を潜り抜けそれをなしたらしい…ひと月で。

 

 

 「―――聞いた話ではレーヴァテイン入手クエって確か『グロアの呪文』と『フィヨルスヴィドの歌』系の「運営〇ねカスが!!」とプレイヤーに言わしめたクソクエ三つほどクリアしなきゃいけなかったような…」

 

 

 そう驚愕に顔をゆがめながら語るのはウルベルトこと裕行だった。それにヘロヘロこと淳司も頷き返す。

 

 普段からクソ運営と言われるYGGDRASILの運営が手掛けたクエストの中でも上位に位置する鬼畜クエストを、もふキチ…凰翔はひと月で、しかもソロアタックで成し遂げたとか―――コイツ人間じゃねえと誰もが思っただろう。しかし、更なる驚愕の事実が凰翔の口から語られる。

 

 

 「いやぁ…流石の(自分で言うな)儂でもフェンリル斃してユニーク種族【神を吞み込むもの】に転生しておらんかったらソロでは無理じゃよ」

 

 

 昔( 十人目プラスアルファ フェンリル戦の六名様がご来店しましたの回)ちらりとこぼしたもふキチの種族が今明かされ全員が「ふぁっ!?」と奇声を上げる。

 

 神を呑み込むもの…その種族名が指し示すものはつまりそのままズバリフェンリルイベントでラスボスとして登場し、もふキチが斃したとされるワールドエネミーフェンリルそのものを指す。ということは―――

 

 

 「もふキチさんってワールドエネミーそのものってコトォ!?」

 

 

 叫んだのはもふキチに常にいじられ続けたペロロンチーノこと博嗣だった。

 

 そう、もふキチはフェンリルイベントにてフェンリルを討伐した際、世界級アイテムであるヴァナルガンドを入手しており、それを使用した際獣人族(ライカンスロープ)から【神を呑み込むもの】に種族転生していたのだ。

 

 彼は語る。普段はフェンリル討伐にも使用した世界級アイテムであるグレイプニルを装備して通常のプレイヤーと同じになるようセーブして獣人族(ライカンスロープ)の狼種としてゲームをプレイしていたそうだ。その時、職業レベルなど弄りまくれるので普段は生産職の職業レベルで固めてロールプレイしていたと…。そして

 

 

 「リングヴィ中央神殿の週末イベント…あれのフェンリルな、実は儂がやってるんじゃよ」

 

 

 と更に爆弾を投下しててへぺろる凰翔。うん、もふキチだ。普段のもふキチが帰ってきた!!真面目な文章書くの疲れるんだよ…やはりこの作品はこうでなきゃ!!!(おい、作者が作中に躍り出るな)

 

 凰翔のその暴露に悟と餡ころもっちもちこと椛は謎は解けたとばかりに「ああ!!」と叫ぶ。

 

 

 「あの時餡ころもっちもちさんが暴走してたのを見てなんかフェンリルが呆れてるような感じがしたのそういうことだったんだ…」

 

 「私もあのイケわん様がすごく気に入ってしまったのそういうことだったんですね、納得ですぅ♪」

 

 

 椛は少しずれたことを言っていたが、悟があの時感じた違和感は間違いではなかった。いつもみたいな調子でハイテンションな椛に凰翔はまじで一瞬唖然としたのだ。だってこちとらダンジョンイベのラスボスよ?なのに「イケわん様ですぅ♪」とハイテンションかますプレイヤーがいるなんて普通じゃないもの…。

 

 

 「……え、てことはあのクサれイベおじいちゃんが企画運営してたってこと?」

 

 「クサれ…いやまあそうじゃよ。以前突っ込まれたが儂一人でも確かに問題ないんじゃが……」

 

 

 その後続けた凰翔の言葉にさらに面々は呆れることとなる…。

 

 

 「あのハティスコはフェンリルの子供…つまり儂の子供と言って差し支えないわけなんじゃが、出番があまりなくてのう。可哀そうじゃないか…だからプレイヤー相手にはしゃぐあの子たちが可愛くて可愛くて―――親心じゃ、許せ」

 

 

 寿命近いっていうのにお茶目な爺は再びてへぺろするのであった。

 

 

 「…そう、あの子たちは―――全階層のボスたちは儂の子供なんじゃ。悟君のことを除けばそれだけが心残りじゃよ」

 

 

 ぽつりとつぶやいた凰翔のその言葉はギャーギャーと騒ぐ面々にかき消されて誰の耳にも届かなかった。

 

 

 ※※※

 

 

 その後、凰翔の見舞いに何度か足を運んだ現AOGの面々であったが、凰翔からもう見舞いには来るなと言われた。死に逝く爺よりも自分たちのことを優先しろと…。

 

 何故ならば凰翔が入院して数か月後、YGGDRASILのサービス終了が告知されたためだ。凰翔自身も終了を阻止しようと輝美を通して動いたようだがどうにもならなかった。だから最後のその時まで、悟たちが築き上げたものと一緒にいてほしかった。そのための見舞い禁止令だった。

 

 

 

 

 

 そしてついにその時が来る。それは奇しくも凰翔の誕生日で―――

 

 

 

 

 

 彼の命日でもあった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もふキッチンYGGDRASIL編 完




 え~っと…かなり駆け足で、途中はっちゃけましたがこれにてYGGDRASIL編終了です。

 異世界編につきましては別作品年投稿しますので、投稿したらこの作品ページでお知らせとして載せますので引き続きお気に入り登録していていただけると幸いです。


 最初に投稿してから九年と四か月以上…え?九年以上!?

 途中闘病したりネットから隔離されたりで話数にしては時間かかってしまいましたが何とかここまで来ました。

 異世界編は少し書き溜めてから投稿しようと思っておりますのでまた今しばらくお待ちいただくことになるかとは思いますが、暖かい目で待っていて下さるとうれしいです。



 最後に、ここまで読んでいただいてありがとうございました。また時間がかかるかとは思いますがきちんと進めていこうと思いますのでこれからも野神 汰月こと堕猫を応援してください。



 それでは何度もしつこいようですがお付き合いありがとうございます。それではまた次作【異世界】もふキッチン【食事処】でお会いしましょう。See you again,バイバイ(*´Д`)ノシ

もふキッチンを多作品と関係させることは

  • ダメ。オーバーロード一本で
  • いいよ。好きな作品とかかわらせちゃえ!
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