文月学園に戻った明久達の話が長くなるようだったら”現代入り”のタグも入れておくべきかなぁ?
ではどうぞ!
「……貴方は誰?」
職員室に到着し、扉を開けた時だった。
中に入って電気を付けてみると、そこに居たのは謎の黒髪の女の子。
「まって豊姫さん!」
危ない…… 一体何処から出したのか、先程から何度か見せていた扇のような物を開いて何かをしでかそうとしていたから……
普通なら扇を開いたくらいで警戒なんてしないんだけど、幻想郷の妖怪の話を聞いたり、月の都での能力を使っている綿月姉妹の二人を見ていたらさすがにね……
「ぼ、僕の名前は吉井明久! 後ろの二人は”綿月豊姫”さんと”稀神サグメ”さんです!」
とにかくココは大人しく自己紹介から始めよう。
とにかく話をつなげないと、即乱闘に発展しそうな気がするし……
「吉井くん、あなた今までどこに居たのよ! 今、あなたの事で大騒ぎになっているのよ!?」
少し離れた所から秀吉に似てる人も乱入してきた。
物凄い慌ててるけど一体どういうことなんだろう?
って、サグメさんもこっそりと手に変な光を集めないでよ…… なんか嫌な力しか感じないんだけど……
「ゆうこ、あなたも落ち着く…… 私は”霧島翔子”。 あなたの友人である坂本雄二の友達……」
「全く、霧島さんも少しは危機感を持って下さいよ…… あたしの名前は”木下優子”」
「木下さんの事は秀吉から聞いているよ。 確か、秀吉の”お兄さま”…… ブベッ!!」
「吉井く~ん? ちょっと”お姉さん”、聞きたいことが、あるんだけどなぁ~?」
ちょっ、スカートを穿いているのにわざと性別を間違えたコッチが悪いけど、拳を構えながら近寄ってきてもただの脅迫でしかないって!?
「へぇ…… 的確に撃ち抜かれた拳ね。 とてもキレも良いし、拳に体重も乗せている、まさしく一閃必中と言える完璧な一発だったわ。 それじゃあ不意打ちとはいえ吉井くんが避けられないのも無理はないかしら?」
あれ? サグメさんが普通にしゃべっているけどなんで? いや、朝何があったのか思いっきり絶叫していたし、無言である理由があったんだろうけどさ……
「単刀直入に言うわ。 ……って、あれ?」
え? 木下さんが僕の胸倉に掴もうとしてるのにその手が勝手に外れていく……
わざと外している訳じゃないみたいだし……
「優子、とにかく落ち着く…… とにかく、ここにいても仕方が無い。 3人共ついてきて……」
どこか怪しく思える彼女の行動だったが、もしかしたら何かの情報を得られるかもしれないと思った僕らは素直に彼女の後ろについて行く事に……
「Aクラスの教室?」
「そう…… 二年の方の鍵をこっそりと回収(強奪)してきた……」
「ええ、貴方達が何者かに誘拐されたってニュースが昨日の夜速報で流れて、外ではちょっとした騒ぎになっているの」
「しかも屋上で謎の爆発事件も発生したってニュースも流れてしまった事がきっかけでしばらく学園も休校になっている……」
「だけど、アタシと霧島さんはなにかおかしいって思う所があって、それを確かめたくて学園に侵入したって訳」
「二人して不法侵入? 木下さん、超が付くほどの優等生だって話を聞いていたけど……」
「あたしがいくら優等生だったとしても愚弟が行方不明なんて事になったら流石に心配するわよ? それともあたしが愚弟の事で心配しているからって家で大人しく待っている弱い女だって秀吉から聞かされていたかしら?」
「いや、犯人に関節技で手足を砕いて秀吉を奪還するような人だって聞いて…… ごめんなさい、お願いしますから関節を外そうとしないで!」
「ちっ、あと0.3秒で骨まで逝けたのに……」
凄い…… さっき触れようとした一瞬で腕がちぎれるかと思ったよ……
木下さん、なにか格闘技でもやってたのかな?
「って、僕が驚いている一瞬で何が起こっているの!?」
さっきの仕返しと言わんばかりにサグメさんが木下さんのスカートに手を掛けて思いっきり投げ飛ばす。
木下さんは慣性に逆らえずに一回転したが、そのタイミングに合わせてサグメさんのローキックが木下さんの足下に叩き込まれる。
その結果、木下さんは更に変な角度で地面に叩き付けられて悶絶してしまう。
空中で何回転もした木下さんのスカートの中身(ネコが可愛い黄色パンツ)が見え、意外と眼福……
って、こんな事考えている場合じゃない!!
「ちょっ、サグメさんもストップ! 喧嘩している場合じゃないって!!」
「吉井くん、ちょっと待ってて。 あなたをを傷付けようとしたこの男みたいな女にトドメまで刺せるから……」
「いやいやいや、とにかくやめてあげて…… 木下さんも凄い悶絶してるんだし……」
サグメさんが庇ってくれていたのは嬉しかったけど、正直な話やり過ぎだよ……
「あわわわわ……」
ほら…… さっきまで気丈にふるまっていた木下さんが顔真っ青にしながら震えているし……
なんか僕がすごく睨まれているけど…… うん、気のせいだよね!!
「木下さん、ごめんね……」
「……吉井くん、あたしのパンツ見たでしょ?」
「み、見てないよ?」
「そ、そう…… ならいいわ」
良かった…… パンツ見ていないか危惧していただけみたいだ。
まあ、普通に考えて素直にいう訳ないんだけどね?
可愛い猫がかかれていた黄色のパンツだったなんて言える訳が……
「因みにあたしのパンツの色は?」
「可愛い猫がデザインされた黄色のパンツ…… ブベラッ! アベシッ!! モペロォォォッ!!」
「ちゃっかり見てんじゃないのよ! 今すぐ忘れなさい! 頭ぶっ叩きまくって記憶から消し去ってやるんだから!!」
「ちょっ! 木下さん、さっき乱暴して仕返しされそうになった事を忘れ……」
『吉井くん、今回は貴方が悪いから素直に反省して?』
「サグメさあああああああん!!」
流石にサグメさんと言えど女子のパンツを覗いている男を庇う気までは無いようだ。
何度も木下さんに踏みつけられている間、サグメさんが豊姫さんにメモを見せていたが、その内容は何故か『吉井くんはああいう可愛いパンツが好きなのかな?』って書かれていたような気がしたが、それを気にしていられるほど今の僕にそんな余裕は全くなかった……
「うう…… 痛いよぉ……」
『吉井くん? さっきひんやりした倉庫みたいなのから氷を取って来たよ?』
「ありがとうサグメさん」
サグメさんの膝枕の上で大人しく氷嚢を木下さんから叩かれた所に当てる事に……
こんな調子で大丈夫なのかなぁ……
「あ、あの……」
『何、木下さん?』
「……ゴメン、何でもない」
……何を言いたかったんだろう?
なにかに対して申し訳なさそうにしていたけど、さっきの事に関しては謝ってもらった後だし……
「……吉井、この後聞きたいことがある。 ……さっきの職員室で二年Aクラスの鍵を取って来ってあるから、その中で話をしたい」
そう言った霧島さんが見せたのは豪華な装飾が施されているキーホルダーが付いたカギである。
”ディンプルキー”と呼ばれている今の所、ピッキングされたっていう話を聞かない最高クラスの鍵を使っているあたり、噂通りの豪華な教室なのだろう……
「……私のクラスの皆と吉井を心配している皆も来る事になってる。 警察の人にも連絡するからココで休むといい」
彼女が扉を開けてくれた教室の中に入る。
室内の電気を付けた先に見えた部屋はうかつなホテルよりも贅沢な教室だった。
各机には座り心地の良いリクライニングシートと最新型ノートPCが置かれており、机も普通の勉強机の何倍も広い特別な物が置かれている。
奥には市立の図書館並の資料や最新の問題集などが置かれ、黒板としての役割も果たすと思われる超大型ディスプレイが特に目立っていた。
教室の後ろには簡単な冷凍食品やお菓子が入った大型冷蔵庫と何十種類ものドリンクが飲み放題の大型ドリンクバーが完備されていて、無性に喉が渇いてくる。
「霧島さん、皆の飲み物取って来る?」
「吉井くん、今でも使えるとは限らないじゃないのよ……」
いや、確かに木下さんの言う通りなんだけどさ……
「それでも使えたらなぁ~」って思いたくなるのが真情じゃないか!!
「……水道も電気もまだ使える。 ……私は自分でコーヒーでも入れる」
「そ、そうですか…… なら吉井くん、アタシはドクペ持って来てくれるかしら?」
「私とサグメは適当でいいわ。 何があるか分からないし」
そ、それも当然だよね……
サグメさんと豊姫さんはこの世界で動くのは初めてなんだし。
だったらジンジャエールでも持っていくかな?
月の都のジュースもすごくおいしそうなのが多かったけど、炭酸飲料は無かったはずだから多分驚くだろうなぁ~。
「……取り敢えず本題。 ……吉井くんが無事に戻ってきてくれて良かった」
「と、取り敢えず何がどうなっているのか教えてほしいんだけど…… 誘拐とか何がどうなっているのかがさっぱりで……」
「「……え?」」
なんで木下さんと霧島さんの二人が驚いているんだろう?
困ったような顔をして見つめ合った二人は何かを話してから僕に新聞を渡してくれた。
「付箋をしてあるからそのページの記事を読んでみて?」
「新聞? えーっと……」
『吉井くん、なんて書いてあるの』
「……そんな」
その内容を読んでみて僕は驚愕することしかできなかった。
《文月学園にて誘拐事件発生! 屋上にて謎の爆発も》
これ、昨日僕らと紫さん達が大騒ぎした時の事じゃないか……
だけど、本当に驚いたのはこの見出しじゃない。
その後に書かれた内容である。
《吉井明久・坂本雄二・土屋康太・木下秀吉の誘拐事件と無差別爆破テロの容疑者としてテロ組織”月の都”のリーダーである”綿月依姫”と”綿月豊姫”を緊急対策として国際指名手配にする》
その文面の上には綿月姉妹の特徴を正確に捉えた似顔絵が書き込まれており(ただしその顔はかなり悪人面にされてしまっているが……)、内容も”懸賞金が20億に相当する金額を掛ける”・”吉井明久の誘拐を目撃した3人も証拠隠滅の目的で暴行を加えて誘拐した”など、彼女らを極端に貶める目的で書かれたとしか思えない記事となっている。
「こんなひどい内容の情報を一体誰が……」
その質問を終える前に教室の扉が乱暴に開かれた。
霧島さんの話も合わせて考えると、彼女が呼んだクラスメイトと思うが実際に誰なのかは全く分からない。
何故なら……
「……え?」
「……!? なに…これ…」
『吉井くんの……顔の”お面”…?』
サグメさんがコメントした通り、急に入り込んできた男女は全員僕の顔をコピーしたお面をかぶってんだから……
正直自分の笑顔のお面集団がぞろぞろと寄って来る姿と言うのは、吐き気がするくらいに気持ち悪い……
「……吉井、素直に答えて。 ……雄二はドコ?」
「霧島さんには悪いけど、全く知らな……」
言葉を続けることが出来なかった。 本当に知らないと答えようとしたとたんに霧島さんが作りたてで熱いコーヒーが入ったカップを叩き付けて来たからだ。
「吉井くん!?」
「動かないで!!」
「……木下さん?」
僕を心配してくれた豊姫さんが駆け寄ってくるが、木下さんが急に僕の腕を逆にひねって押さえつける。
そのせいで豊姫さんもうかつには動けない。
「もしこんな誘拐事件が無ければ普通に秀吉が無邪気でバカな笑顔を向けて帰って来るはずだったのよ。
アタシが勝手にあいつのコスメとか使った事で渋い顔をされたり、アタシだけダイエットしている一方で無神経な態度の秀吉とご飯を食べたり、男らしさにうじうじと言っている秀吉を新しい関節技の実験台にしたり……」
いや、最後のちょっとおかしい気が……
って、木下さんが強くなった理由って秀吉だったの!?
「あいつが一晩居ないだけでこんなにもさみしい思いをするなんて思わなかった……
二日前に『アンタが居ない方が意外と楽だったりして?』なんて言わなければよかった…… 秀吉が一晩居なくなっただけでこんなにさみしい思いをするなんて思ってなかった。 いなくなってようやく分かったのよ… どれだけ仲が悪くてもアタシは秀吉のお姉ちゃんなんだって。 なのに……」
「……木下さん」
『何を言っているの? 私達は誘拐なんて真似はしていない』
困惑の色が隠せないサグメさん。
豊姫さんも一体何のことなのか訳が分からずに、顔を伏している木下さんの言葉に困惑するばかりだ。
「なんでアンタはそこの誘拐女と一緒になってヘラヘラと笑いながら普通に帰って来てるのよ!? なんで秀吉じゃなくてアンタなのよ!! アタシの秀吉をどこにやったのよ! アタシの秀吉を返せ! さもないと……」
「……優子、その吉井も誘拐された側だから人質にはならない」
「……チッ」
お面集団もたじろぐほどの怒声に僕らはどう言葉を掛けていいのかが分からなかったが、霧島さんの説得?もあって木下さんは僕の腕を離してくれた。
けど、一体なんであの二人が誘拐犯って話になっているんだ?
あの時雄二達は来ていなかったはず…… この誘拐の話と僕たちの件は全く関係の無い別件なのか?
それともあのスキマババアの工作? この世界で豊姫さん達を動けないようにする為に雄二達まで巻き込んで犯人に仕立て上げたのか?
結局それぞれの事件のつながりが分からない以上は考えても無駄だ……
「……さっきから真剣に考え込んでいるけど、実は何か知っている?」
少し手前の位置から霧島さんが僕を見ていたみたいだ。
その眼は僕や豊姫さん達を品定めをしようとしているように細めている。
その隠せていない殺気に染まりながらもすべてを見定めようとする瞳に耐えきれなかった僕はつい目を背けてしまう。
「……失礼、私も相当気が立っているみたい。 ……私の婚約者がいきなり酷い目にあわされていると思うとつい冷静でいられなくて」
謝罪を口にした霧島さんだけど、本当の意味では和らいでいない。
その証拠にその手には前に襲い掛かって来た異端審問会の皆が持っていた大鎌を拾ってきているし……
「……火で炙り、水で犯し、刃で切り裂いて、土に沈める。 ……犯人にはそれくらいの事はしないと何の返礼にもならないと思う。 ……吉井くんには失礼だと思うけど、本当に何も知らない?」
「本当に何も知らないって…… まあ、屋上の爆破に関しては八雲さんがやった事だってことぐらいしか知らないけど……」
ハッキリ言って本当にこれしか知らないんだよね……
そこから助けてくれたのが豊姫さんと依姫さんだったわけだし……
「……コレを見てもまだ言える?」
そう言って霧島さんが大型ディスプレイを起動させ、DVDをプレイヤーの中に入れる。
「え? なんで依姫さんが……」
映像が編集され、あたかも依姫さんが屋上を爆破したかのように見せている映像だった。
いくつもの火柱が校舎の屋上を薙ぎ払い、その後に残ったのは傷ついたふりをしている八雲さん達だけ……
本当はこの展開の後にあの妖怪たちが膨大な弾幕を放って来たんだけど、その辺に関しては完全にカットされてしまっている。
その映像の悪質さに僕は困惑しながらもこう言い返すことしかできなかった。
「本当に僕はなにも知らない。 豊姫さんと依姫さんの二人は僕を助けたんだ! その事実はこの場では僕と豊姫さんだけしか知らないけど、それは本当の事なんだ!!」
「……そう。 ……あくまでそこの誘拐犯を庇う。 ……雄二と友達を傷付けたくはなかった」
なんで…… なんで誰も信じてくれないんだ!
豊姫さん達がいい人達だってことはこの中では僕が一番よく知っているのに……
なんで被害者である僕の証言を誰も信じてくれないんだ!
「霧島さ~ん、もういいっしょ? ココはあの女を捕まえて、正式に指名手配になった後で賞金と引き換えに引き渡すまで拷問の二つ三つキメて置けば十分っしょ?」
「そうっすね。 どうせ吉井って奴もあの女に篭絡でもされて変に感化されてるってだけでしょうし? その辺の洗脳とかに関してはあの人に任せておけばいいっしょ?」
さっきから扉の前で立ちふさがるばかりで何もしてこなかったお面集団の内の数人が前に出て来た。
どうやら全員が霧島さんの言葉や正義感で駆け付けた訳では無いようだ……
「吉井くん、お願い…… あなたが秀吉や霧島さんの婚約者を救えると言うのなら全部話して?」
ここに至ってもあくまで木下さんは僕を弟を見つけて助ける為の鍵だと信じてくれている。
これまで僕の事と僕の周り位しか考えられなかった僕の小ささを思い知らされてしまう。
けど…… 僕には本当に何の事なのかが全く分からないんだ……
「……ゴメン」
「そう…… もういいわ」
そう言った木下さんは僕の腕を掴もうとする。
今度は僕を保護する名目であの集団の中に放り込もうとしているんだろう……
「約束は守る主義なのよ」
ただし、サグメさんの言葉と共に木下さんの手は僕からわずかにそれてしまい、それと同時に木下さんの脇腹に蹴りを叩き込んで弾き飛ばす。
「くっ、どうやら説得は無駄だったみたいね。 サグメちゃん、手筈通りにお願い!」
「スペルカード! 玉符「烏合の呪」」
豊姫さんはどうやらこうなる展開を予測していたみたいだね……
サグメさんが呪文のような物を唱えた途端に玉のような何かが大量に召喚される。
その玉から夥しい数の札のような弾幕が乱射されて行き、お面集団はなす術も無く倒されていく……
お面被っているだけとはいえ、僕の顔の集団が吹っ飛んでいく光景と言うのはかなり不気味だ……
「吉井君、急いで逃げるわよ!」
先に外に出ていた豊姫さんが僕を能力で取り寄せてくれたみたいだ。
僕が瞬間移動してサグメさんにお姫様抱っこされて逃げ出していく光景に霧島さん達も呆然としてしまっている……
「…………はっ! 吉井君、待ちなさい!!」
「……逃がさない」
霧島さんが装備を金属バットに切り替えて追いかけて来る。
木下さんも僕を今の行動で完全に敵と認識したのか、刺又(さすまた)と呼ばれる捕獲道具を装備して残ったお面集団を率いる様に追いかけて来る。
「ちょっ……吉井君、貴方はいつもこんな生活をしていたの!?」
「いや、流石にこれはやり過ぎだよ! ……まあ、今回は来ていないみたいだけど”異端審問会”って名乗る連中から言いがかり付けられて襲い掛かられたりなんかは当たり前かな? 友達を売って囮にしたり、逆に売られたり、一日中逃げ回って罠に嵌めて追いかけてきた奴ら全員を峰落としで窓から突き落としたり、峰刺しと称してナイフで刺したり、峰叩きで壁に何度も顔面を叩き付けたりしている程度だよ!」
「『十分酷いわよ!! なに、貴方平気で友達を売ったりしていたの!?』」
「うん、さっき霧島さんが言っていた雄二っていう僕の事を馬鹿にして楽しんでいる親友なんだけど、僕が女子と話していたって異端審問会の連中に密告して刺客が差し向けられたりとか当たり前だったよ!
僕も雄二がきれいなお姉さんと一緒になってデートしていたって教えてあげたりしていたからお互いさまだけどね!!」
「『本当にその雄二って言う子と親友同士なのか不思議なんですけど!?』」
とにかくこの異常事態を清蘭さんと鈴瑚さんの二人に連絡しないと……
でも僕のお面集団がどんどん増えてきているみたいでなかなか外に出られない……
どうやって脱出するべきなんだろう……
『吉井くん…… ちょっと……』
サグメさんが僕のほっぺをつつきながらメモを見せてくれる。
どうやら考えがあるみたいだけど…… 一体何をする気なんだろう?
「「え~、綿月豊姫に稀神サグメ。 お前達は完全に包囲されている。
さっきの手品で外に逃げようとしても無駄です。 人質を解放して大人しく投降しなさい!!」」
色々と逃げ回っていた僕達だったが徐々に逃げ場を失ってしまい、ついにボロボロになっている二年Fクラスの教室にまで追い込まれてしまった。
「よーし、そのまま動くなよ?」
「確実に囲め…… 絶対に変なトリックは使わせるなよ?」
「この女を引き渡せば賞金10億……山分けしても妹の手術代に届く金が手に入る…… 私の命よりも大切な妹が生きられるのよ……」
「山分けした賞金をねーちゃんに渡せば、もうねーちゃんがお金の苦労しなくて済む…… ねーちゃんが夢見たアイドルへの道が開かれるんだ…… その為にも絶対に捕まえてやる!!」
「フヒヒ! このお金で幼女を捕まえて購入した部屋でペロペロしてやるんだ! どこかの部屋でも借りて、その中で一晩中貪り尽くしてやる! 金さえあれば何でも出来るんだよ、アヒャヒャヒャ……」
おい、まじめに囲もうとしている奴らの中に何人かおかしいのが混ざってるんだけど!?
手術代がどうとか、家族の夢がどうとかはまあ重い話だし、参加した動機としては分かるけど……
最後の奴は何を考えてるんだ! こいつだけは絶対に月の都には連れていけないな……
あそこの純真で可愛い(ヤンデレ系美少女も含む)玉兎の皆が汚されたらたまったものじゃないやい!
「フヒヒ…… 良ーく見たらそこの翼生えてるねーちゃんも可愛いなぁ~? これはアレか? 捕まえようとする際についうっかり胸とか尻とか揉んじゃっても、事故で済んじゃう的な展開ですかぁ? ヒャヒャヒャヒャ!!」
この野郎…… 最後のセリフの奴、幼女略取の趣味だけでも許せないのに、その上サグメさんにまで手を出そうってのか?
……決めた。 こいつだけはどんな目にあってでもぶっ殺す……
「あら、遊んでくれるのかしら? どうもありがとう」
って、サグメさああああああん!? ちょっと、なに胸元を強調して誘ってるの!?
そんな事をしちゃったらあの変態野郎が……
「フォアアアアアアアアアアアアアアアア!!
これはもうアレですよね? 誘っちゃってるんですよね!?」
「いや、まあ……軽く遊んでいるっぽいけど……」
「遊び? 火遊び? いや、これは大人のお遊戯に決まってる!!」
「「ほんまもんの変態じゃねーか、流石にひくわー」」
敵ながら隣で後ずさった奴らに同意したいと僕は思った。
「それじゃあ……」
「……終わり。 吉井だけは生かして確保」
「「それ以外は」」
「……最悪死んでも構わない」
「「「よっしゃ、突撃いいいいいい!!」」」
うわああああああ! やっぱりこうなったじゃないか!!
さっきの変態を先頭に全員が武器を構えて突っ込んできたよ!?
このままじゃ変態野郎にサグメさんがR―15の範疇では語りようのない程の変態行為にさらされ、豊姫さんも捕まっていかがわしい事をされてしまうじゃないか!!
ここからどうするって言うのさ!!
「ブベラッ!!」
「…………あ、ごめん」
……って、あれ?
さっきの変態野郎の頭に変な棒が叩き付けられ、そいつが転んだのをきっかけに皆横着して簡単に転んで行ったよ……
『今よ、豊姫も走って!』
「なっ!? い、いつの間に上に……ブベラッ!!」
「カネカネカネエエェェェ…… プギャ!」
「妹の手術代の為に…… モペロッ!!」
事前に打ち合わせしていたんだろう。 豊姫さんも転んで前衛がひざまづくことによる”足場”を利用して走り抜く。
下の人間達なんて知った事ではない。 誰かの工作に乗っかって襲い掛かってくる以上は”敵”なのだから遠慮なく足場として使わせてもらう。
「くっ、バカ達が先走って…… ちゃんと言う事を聞かないから!」
「……逃げられた。 ……これ以上の追跡はムリ」
霧島さんもいい判断だ。 今の行動でコッチの力が計れなくなった上に踏み台として利用されてけがをした人手もかなりの人数になる。
人数の差をサグメさんの奇抜な発想で引っくり返された以上、この中で追い込みを掛けるチャンスはもうない。
どれだけ悔しくてもここは一度体制を立て直す必要があるんだからここは下がる。
絶対に追撃は掛けられないだろう。
「外に出れたわよ!」
『豊姫、清蘭と鈴瑚の二人は?』
そう言えば、一足先に外に出ると言ってた二人とまだ合流出来てない。
このまま置いて行くわけにもいかない…… できるならこの場で待ってあげたいけど……
「これは……餅つき用の杵(きね)?」
豊姫さんが見つけたのは謎の杵。
少し果物っぽい赤色の何かが付いているけど、これは一体?
『これは清蘭の武器。 弾幕ごっこ以外で戦う時に使っている物』
なっ、まさかあの二人……
「もしかして二人共捕まったの?」
あの二人を信じて別れたけど……
もう一度中に戻るべきだろうか?
『……二人の実力を信じて先に進みましょう』
「サグメさん!? なんで……」
「あの二人の事を信じましょう。 あの二人が心配だからって言ってこっちが捕まったら何の意味も無いのよ?」
「くっ……」
正直納得している訳ではなかった…… 僕としてはこの中にもう一度戻ってあの二人を探し出したい。
でも……
「見つけたぞ!」
「賞金十億! 絶対に手にするぞ!!」
「「『……ダッシュ!』」」
うん、豊姫さんの言うとおりだ!
もし八雲さん達が情報収集目的でこいつらを利用しているならさっきのサグメさんの魔法のような何かも何度も使う訳にもいかないし、ここは逃げの一手だね!
こうして僕らの外の世界における史上最悪な鬼ごっこが幕を開けた。
……雄二達も誘拐されたってどういう事なんだ?
another story 八雲藍side
「藍? これだけやったら流石に捕まえらるわよね?」
「出来るとは思いますが…… 紫様もハッキリ言ってやり過ぎですよ?」
「うふふ…… この作戦をなんて名づけよう…… そうだわ!SNS(スーパーネットストーカー)鬼ごっこ作戦なんてどうかしら?」
「はいはい…… 作戦名なんてどうでもいいですから、予定通りに作業を進めますよ?」
しかし、流石にやり過ぎではないでしょうか? まあ、今回の異変の解決の為にあの小僧の能力が必要になるというのは分かりますが、それだけでこんな対応をしたことはこれまでに無かったのですが……
「ふふふ…… 吉井君、あなたは絶対に連れて来て見せますわ。 私の愛おしい人の息子さん」
「紫様…… いまだに引き摺って……」
……と質問しようとした私に「よろしくねー」と言って紫様はそのままスキマの中に入ってどこかに出かけてしまった。
この様子だと結界に攻撃を仕掛けている輩の方の対応に向かっているのだろう……
「はぁ…… 今日は橙にご飯を作ってもらおうかなぁ……」
八雲藍side end
お読みいただきありがとうございます。
今回サグメさんが使った喧嘩での技は龍が如く4に出て来た「谷村正義」の投げ技ですね。 流石にサグメさんの事を外道にしたくはないのでここで明久君にやめさせましたが、もし明久君が止めなかったらあと数発分ほど叩きのめしてからフェムトファイバーの組紐で縛る予定でした。
……うん、龍が如くの影響が若干出てきていますね。
そう言えばもう一方のSSの方も編集が止まっていましたね……
少しの間だけでも再開させようと思います。
ご意見や感想をお待ちしております!