バカと幻想と舌禍の女神   作:閻魔刀

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最近暑くなって来たのを境に炭酸抜きコーラとスポーツドリンクを良く飲むようになった閻魔刀です。
本当に暑くなってきて熱中症が怖いですね。

そんな中、今回もお楽しみいただけたらと思います。


バカとストーカーと逃走タイム

 20××年 15:30 文月学園から出て15分……

 

「え? あれって……」

「綿月豊姫じゃない? ほら……」

「わ…マジだ。 写メ撮らせてもらおうかな?」

 

「待てや! この糞アマ!」

「大人しくお縄にちょうだいされろやああ!!」

 

『……有名人も大変』

「なにのんきな事を言ってるのサグメさん! とにかく走って!!」

 

 外に出てからも僕らは街のチンピラや即席の賞金稼ぎと化した住民たちに追われていた。

 皆してバットのような簡単な武器を持ちだしたり、スマホで撮影しようと追いかけて来るものだから始末に負えず、時折豊姫さんのテレポートを使いながらギリギリの所で逃げている。

 

《……繰り返します。 絶対にテロリストを見つけてもその場で捕縛しようとせずに警察に連絡する等の節度ある行動をお願いします》

「綿月豊姫、テメェだよ! コラァ!!」

「くそっ、あいつ等に先を越されるな。 急げ急げ!!」

「「十億ウウウウ!!」」

 

 うわっ、ジープみたいな車まで持ち出して追いかけてくる奴らまで現れた!!

 さっきからニュースのアナウンサーがなにか言ってるけどガン無視で追いかけて来るし!!

 こんなのからどうやって逃げろって言うんだよ!?

 

「うわっ、マジだ。 綿月豊姫だぁ……」

「ああ……あの女、あんなに美人さんなのになんか悪者なんだろ? ニュースで見たぜ」

 

 くっ、これが情報化社会ってやつの弊害なのか……

 昨日まで全く名前も知られていなかった人の情報がたった一日悪者として流されただけでもうここまでの事に発展するなんて……

 

「オラアアアアア!!」

「くっ……」

 

 サグメさんを目掛けてバイクに乗りながらバットで殴りかかって来たヤンキーを横から突き飛ばす。

 それと同時にサグメさんがバイクを奪い取り、バイク片手に追いかけて来た車に投げつけた。

 

 見当違いな方向に飛んで行ったが……

 

「「うわあああああああ!!」」

 

 いきなりバイクを投げ飛ばそうとしたサグメさんに驚いた敵は大慌てで車から飛び降りて逃げ出した。

 幸か不幸か、運転手を失ったからか?その車は一気に減速し、ガードレールにその車体をこすりつけ続けながらも僕らの目の前で停止した。

 

「よし、この車を奪って逃げよう!」

『吉井君、使い方が分かるの?』

「実際に運転した事は無いけどね!」

 

 無免許運転だけど知った事か! ここまでの大暴れに発展する位に警察の機能がマヒしているのならもうルールもへったくれもないよ!!

 と、いう訳で豊姫さんを後ろの席に乗せ、サグメさんを前の席に乗せた後で僕が運転する事に。

 ……本当に大丈夫だよね? 一応レースゲームで何度かイメトレしたことがあるし?

 たしか右がアクセルで左がブレーキだったはず……

 

 

「オ、オレの車が!!」

「くそっ、絶対に逃すな!!」

 

「あははは! ほらほら、鬼さんこちらー」

 

 中のエンジンなどは傷ついていなかったようで、かなりの速度が出てくれた。

 今、時速80キロと言った所だと思う……

 

「よし、逃げ切れたぞ!」

『豊姫、今後はどうする? どうにかして清蘭と鈴瑚の二人と合流したいけど……』

「分かってるわよ…… あのスキマ妖怪のやつ、とんでもない事をしてくれたわね」

「あ、やっぱり八雲さん達がなにかやったの?」

 

 って、いうかそれぐらいしか考えられないよね? あの妖怪のコネがどれだけ凄いのかは分からないけど、一人の人間を指名手配にしたり誘拐しても隠ぺい出来たりすることを考えたらとんでもないパイプがつながっているんじゃ……

 

「…あ、吉井のやつね?」

「よし、運よく見つけられたわ!」

 

 あれからすこし速度を抑えて走っていたんだけど、走ってから1・2分の所で急に聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「跳び付け~!」

 

 ……と、思ってから数秒後に謎の衝撃と誰かが飛び乗ったかのような轟音。

 

「やっほー、吉井君?」

「驚いたわよ。 あの建物に残っていたはずのサグメ様とアンタが変なのに乗って走っているんだからとっさの判断で合流したけど、一体何がどうなってる訳?」

 

 一体何があったのか、学園の外にまで出歩いていた清蘭さんと鈴瑚さんが車に飛び乗ったようだ……

 多分ニュースを見ていなかったであろう、清蘭さんと鈴瑚さんに事情を説明する事にした。

 

「「ええぇ~……」」

 

 二人共反応に困って引き攣った笑顔しか向ける事が出来ていなかった……

 

「でも、それってなんかおかしくない?」

「う~ん…… 学園の中だったらこのレベルの騒ぎは日常なんだけど……」

「「吉井くん、今までよく生きていられたね!?」」

「まあ、さすがに街中でこんなことになるなんて思っていな……」

 

 清蘭さんたちが合流してから数分、危なっかしい運転を繰り返しながらも着実に僕の家に近づいていることを感じていたその時だった。

 

 ……パァンッ!! ガガガガガガガガガ……と言う音と共に急に車がバランスを崩す……

 

「ちょ… ちょちょちょ………!?」

「あわわわわ!!」

 

 

 どうにか車を横に寄せて止める事が出来たけど…… 一体何がどうなって……

 とにかくこの車が使い物にならないと判断して大急ぎで降りる事に。

 

「知ってた? 今、吉井明久のアカウントから”つぶやき機能”を使ってお前らの状況がリアルタイムで”実況されてる”って事によ?」

 

 そう言われて驚く僕の目の前にスマホを投げつける男の姿がそこにはあった。

 そのスマホを拾った僕は大慌てでSNSサイトのアカウントを確認する。

 真っ先にその男のつぶやき機能のページを確認すると、かなりの回数で更新されていた。

 しかもその内容が「今文月学園の中にいるよ」「外に出たぞ。 豊姫達と一緒に脱出だ~!」「いま車を奪った。 北に向かって県道沿いに移動中」など、この世界に戻って来てからの僕らの状況を逐一伝える為の物である。

 

「おかげで待ち伏せも超カンタン!! ようこそ、賞金首の皆様?」

「僕らを歓迎する気でいるって言うならその危ない連中と武器を全部下げてもいいんじゃないかな?」

「賞金ぶら下げた女がそこにいるのにそんな事するわけないじゃないか、よーし―くん?」

 

 いつの間にか学園で遭遇した人数以上の…… ヘタしたら3ケタは下らないだろうチンピラ集団が僕らを囲んでしまっている。

 

 

『吉井君、また逃げる?』

「ダメ、人数が多すぎる。 どうにか隙を作らないと脱出すら不可能だよ……」

「ボクはこのチーム”チェイン・ドラゴン・ライトニング”のリーダーで…… ”イサシン”って言います。 キミ達の最後を写真に収め、賞金を手に英雄となる者でぇ~す!!」

 

 なるほど、 今ニュースで悪人呼ばわりされ、ネットでも大炎上中の豊姫さんが相手なら何の罪悪感も無く襲えるって訳だ……

 

「全員でかかりなさい! 始末はボクがやります。 まずはあの吉井って奴を行動不能にさせるんですよゥ!!」

「「オオオオオオオ!!」」

 

 リーダーの指示で皆して突撃を掛けて来る。

 

「清蘭!」

「ええ、鈴瑚!!」

 

 

弾符「イーグルシューティング」!!

兎符「ストロベリーダンゴ」!!

 

 

 清蘭さんと鈴瑚さんの二人がサグメさんの時の様にカードを掲げて呪文のような物を宣言した途端、清蘭さんからはうろこのような弾の弾幕、鈴瑚さんからはこれまでに比べてたら小さい代わりにかなり高速の弾を四方八方に飛ばしている。

 

「ウェ~イ。 ネットでも大炎上中のテロリスト、月の都のリーダー綿月ちゃんの公開処刑動画を生放送中~」

「コメントすげぇ…… オレらすでに有名になれんじゃん」

「この生放送、別の動画サイトに投稿するわ。 広告料も一気に稼げそうだし?」

 

 外野も集まりだして大騒ぎになりだす。

 これ以上構っていられない以上、ここはサグメさん達を連れて逃げるべきだ!

 

 

「くたばれぇぇ!!」

 

 そう思ってサグメさんの手を握ろうとしていた瞬間、豊姫さんの様子を確認したけど……笑顔?

 って、なんで豊姫さん笑って……!?

 

「……!? じぶんから…頭を!?」

 

 僕どころかみんな理解できていなかったようで、困惑でその場の全員が固まってしまう。

 

「はぁ~…… どんなものかわざと喰らってみたけど…… 全然違うわよ」

 

 キレてるのだろうか…… 信じられない事に全く無傷の豊姫さんは金属バットで殴り掛かった男から逆にバットを奪い取って……

 

「こうよ……」

 

 ガン!……とも、グチャ!……ともとれるワケの分からない音と共にバットで飛ばされた男は空中で何回転も繰り返した末に数メートル先で気絶した……

 

「……え? ちょ……」

「これ、死…ん……?」

 

 味方であるはずの僕らも全く声が出なかった。

 あれだけ温厚で優しくて…… 少なくとも戦闘に関してはあまり得意そうではない豊姫さんがバットを使ったとは言え、大の男を何メートルも殴り飛ばしたと言う光景に清蘭さん達どころかサグメさんまで反応に困っている。

 

「うおぉぉぉぉいっ!? シャレになんねぇ!」

「血…すげえ出て……」

「おい、だれか救急車を…… ゲボッ!!」

 

 とにかくチャンスだと思い、僕も彼らが持っていた鈍器を一つ奪って豊姫さんがやったように殴り飛ばす。

 相手が普通の人間相手だったら殴るなんて出来ないんだけど、今回は賞金目当ての外道集団が相手……

 遠慮する理由なんて全くない!!

 

「こ、こいつらマジでイカレてやがる……」

「さっきから変な魔法みたいな弾を乱射してきやがるし…… もう訳分かんねぇよ!」

「何やってるんだ、相手は俺達よりも遥かに少ないんだぞ! 全員でかかれば余裕で……」

 

 その言葉が続くことは無かった……

 業を煮やした豊姫さんが、さっきから使おうとしていた扇を開いて軽く扇いだとたんにすべての勝負が付いてしまったからだ……

 

 

「う…ううっ……」

 

 豊姫さんが扇を扇いだとたん、リーダーを除いた全員が吹っ飛ばされた。 豊姫さん曰く「その気になればこの辺り一帯の穢れごとまとめて、敵を消滅させることも出来る」らしいが……

 すでに残っているのは敵のリーダーと数名の手下のみ…… だが彼らも完全に戦意喪失しており、完全におびえてしまっている。

 

「わ、分かった。 オレらはお前らから手を引く! その……イサシンさんに誘われていただけで……」

「有名になれるチャンスだとか言われて…… 10億円山分けとかって…… だからっ……」

 

「ああっ、お前ら!? ざっけんなよ!!何ビビってんだ! さっきのトリックだってそうそう何度も使える筈がねぇに決まってる。 残った全員でかかればヨユーだろ!?」

「じ…じゃあまずはイサシンさんが先陣切れよ……」

「そ…そうだよ行けよ」

「はぁっ? 頼れるリーダーがいきなり最前線はってどうするよ? こういうのはまずおまえら奴隷からかかるもので……」

 

 ここで敵のリーダーの器が知れてしまった……

 この男は何かの危機に相対した時、絶対に命を張れないタイプ。

 部下を平気で見捨てて自分だけでも助かろうとする最低なリーダーだ……

 

「ふざけんなこの糞野郎! お前のせいで!!」

「リーダー語るならもっとリーダーらしくしろよこのヘタレが!!」

 

 あんなことを言えばすぐに手下でさえすぐに見限るに決まってる。

 仲間割れを起こし、そのリーダーは部下だった人間達によって悲鳴を上げさせられながら姿を消していった。

 

 

 

「……ねぇ、おかしいんじゃない?」

「おかしいって……まあ、豊姫さんがいきなり賞金首にされたり、街中で追われたりとか流石におかしいけれど……」

「わたしが言ってるのはそう言う事じゃなくて、なんでこんな滅茶苦茶な事を皆簡単に信じてるのかって事よ」

 

 清蘭さんの言う通り、仮にいくら豊姫さんが犯罪者扱いされたとは言っても、それがたった一日で……しかも皆して率先的に襲い掛かってその賞金を獲得しようとするなんて真似は雄二でも流石にしない。

 僕のする限りでそんなことをする奴らと言ったら、せいぜい異端審問会のメンバーくらいなものである

 

「…………スキマ妖怪、見ているのでしょう? 出てきなさい」

「いつでもニコニコ、這いよるスキマ妖怪の八雲紫(永遠の17歳)ちゃ~ん……で~す♡」

 

 どこかの邪神のようなポーズを取りながらウインクまでキメてスキマから出て来るのは自称永遠の17歳こと八雲紫……

 さっきの騒ぎの後だとその行動にはウザさとイラつきしか感じない。

 

「ごめんなさいね~♡ なにしろ人手不足な上に私達も追い詰められてるのよ~?」

「どういう事かしら?」

「豊姫さん! 今はのんきに話をしている場合じゃないですって! 速くここから逃げないと……」

「心配しないでも大丈夫よ。 私が”外と内の境界”を操って人払いの結界を張ってるし、吉井君のSNSコメントも”今は”止めてあげているからそうそう人なんて来ないわよ」

 

 あれ? なんでこの妖怪は僕のSNSのアカウントの事を知ってるんだ?

 まさか……ね…?

 

「コメント…… まさか、僕のアカウントを乗っ取って情報を流したのは!」

「あ、その辺の作業をしたのは藍の方よ? あの子、式とか計算とか演算の類は得意だから、外の世界のプログラムなんて簡単に覚えてくれたから助かったわ~」

 

 藍って…… あのキツネみたいなお姉さんの方か……

 あのキツネもどこか凄そうだと思ったけど、まさかこんな事が出来るなんて……

 

 機嫌がいいのか、調子に乗っている紫さんは今回の作戦の全貌をペラペラと聞いてもいないのに喋ってくれた。

 

「実際に情報化社会と化している現代でただ新しく指名手配犯になった人がいるなんて言っても”物騒だな~”位にしか思われず、普通に寄り道をして買い物をする事も貴方達なら可能だったでしょう?」

「うん、別に豊姫さんに僕の家の場所を教えてそのまま瞬間移動すれば姉さんが置いて行った服と化粧品を勝手に使えばほとんど誤魔化せるだろうし……」

「その通りよ、吉井くん。 だから私はここで指名手配の根回しをする前に文月学園にある全オカルトのエネルギーと私自身の能力と全妖力を利用して、ある”強制認識”を全世界に行使したの」

「ちょっ、全世界って……」

 

 もし紫さんの言う事が本当なら、豊姫さんに対する認識はこの街どころか……

 

「これが昨日の日が落ちてすぐに使った私と藍による術の映像よ。 オカルトのエネルギーが増幅する夜になった瞬間に文月学園を起点に全世界のオカルトスポットのエネルギーを共振・増大を繰り返させて、その結果で生まれた絶大なエネルギーを利用して私の能力を使う事で、5分後には幻想郷を含めた全地球に対して効果を発揮する結界を作り上げる事に成功したの」

「なに? この紫って妖怪、実は化け物すら通り越してんじゃないの?」

「しーっ! 鈴瑚、私もそう思ったけど、今は大人しく話を聞きましょうよ……」

 

 いや、僕もその時の紫さんって神様すら超越した存在になったんじゃ…… って思わずにはいられなかったんだけどさ……

 それでも話はきちんと聞こうよ……

 

「実際の所、全世界に対して使った強制認識の術の内容は人々の異常な情報に対する認識のハードルを引き下げる程度の効果にとどまったんだけど……」

『詳しく言うとどの程度?』

「オカルトを全く信じていない上に疑心暗鬼に陥りやすい位に疑り深い人でも”妖怪っているかも”、”魔法って本当にあるみたい”って思わせる程度ね。 私が今回操った境界は”虚と真に対しての認識の境界”ってところかしら」

「「え? それでも、その程度であんな異常な人数に追われるようなことになるの?」」

『吉井君、清蘭? 少し静かに……』

「スキマ妖怪の言う通りだとしても規模が違うのよ…… 貴方からしてみればそれで十分だったのよね?」

 

 え? 豊姫さん、一体どういうことなの?

 もう僕には理解が出来ない規模の話になって来たんだけど……

 

「まあ、流石に全世界って言うのは広すぎたかもしれないわね…… 国外逃亡なんて真似されても困るからって念入りに仕込んでおいたのだけれど、無駄になってしまいそうね……」

『吉井君、そんな軽い催眠状態になっている中、あのスキマ妖怪は何をしたのか? そこを思い出せたなら後の答えは簡単に出せる筈……』 

「たしか…… え? まさか…… 豊姫さんのニセ情報と僕のSNSのアカウントを使って……」

「ええ、あなたのアカウントの乗っ取りと、ニュースなどを使って豊姫たちの指名手配犯としてのガセネタをばらまいたのよ。 表向きにはあなたの誘拐を実行した誘拐犯としての範疇で流しているのだけれど、興味を示して調べて行けば最終的に綿月姉妹どころか月の都に対して敵意や悪意が向けられるように出来上がっているの」

 

 そして、紫さんは最後にこう言った…… 「あと半年もあれば外の世界の住人の全員が月の都の存在を自明のものとして認識するようになり、犯罪組織として忌み嫌うだろう」……と。

 

「ふざけるな! 今すぐ二人の指名手配を解け!」

「そう、吉井君。 あなたの性格なら絶対にそう言うと思っていたわ。だから……」

 

 そう言ってスキマの扉から出て来た紫さんが前に出て来た時だった……

 

「ちょっと待ちなさいよ!」

「吉井くんに手出しをさせる訳にはいかないかなぁ~?」

 

 清蘭さんと鈴瑚さんが前に出て来て僕を庇ってくれた。

 あれ? 僕のポジションがなんだか悲劇のヒロイン的な感じに……

 

(あの八雲って妖怪は隙だらけ…… 私も外回りをしていた時に団子を限度いっぱいまで食べているから、うまく一撃で気絶させられれば……)

「そうそう、そこの黄色い玉兎さん?」

「なにかなぁ~?」

「流石に私を”一撃”で仕留めるのは豊姫どころか妹の依姫でも無理だから、その案はやめておいた方が良いわよ?」

「「なっ!」」

 

 うそっ! 清蘭さんと鈴瑚さんの間を簡単にすり抜けて……

 

 余裕そうな顔で堂々と両手を開きながら言い切る紫さんの顔に一切の油断は無い。

 そんな紫さんを前に動けずにいる僕は悔しさと焦燥のあまり、つい拳を握りしめてしまう……

 

「あら? 吉井くん、怒っちゃった? ……ああ、私があれだけ挑発したんだから当然よね」

「紫様、やり過ぎです。 まあ私自身、外の世界の人間がどうなろうと知った事ではないのでいくら暴れようとかまわないのですが…… そこの少年はどう思うでしょうか?」

 

 紫さんの隙間から九つのキツネの尻尾を持つ妖怪”八雲藍”さんが出て来た。

 実際、藍さんの言う通り人払いが掛けられているとはいえ、あんな弾幕を乱射できる妖怪達が6人もいるんだ……

 この街が軽い廃墟みたいになるのは容易に想像できてしまう……

 

「紫さんは一体どういうつもりで!」

「そうね…… ”そこ”なのよ。 私は吉井くんを”誘拐”しに来たんじゃないの。 あくまでも”平和的”に、”平等”に”話し合い”をしに来たのよ?」

「はぁ? あんた何言って……」

 

「黙りなさい、青兎。 今の吉井くんは、自身が置かれている状況を全く理解できておらず、月の都の兎達の庇護下で良いように振り回れ、ただいたずらに私達に敵愾心を燃やしているただ生意気なだけのガキ。 そんな立場ではどこに付こうともどこかの”勢力は”幸せに終わっても、いいように使われた吉井くん個人は絶対に不幸になるわ」

『そんなこと私がさせない』

 

 あ、サグメさんのコメントのメモをまるで”部外者は黙ってろ”とでも言わんばかりに紫さんが破り捨てた……

 すごいサグメさんが怒ってる…… いつブチギレてもおかしくない…… はっきり言って守られている側のはずの僕でさえ逃げたしたくなるような殺気が出てて、少し漏らしそう……

 

「そんな事態を回避するためにも、あなたは私の話を聞いてみるべきだと思うわ?」

 

 八雲さんが指を鳴らしたと思った瞬間、僕らの足下にスキマが展開され、その中に落とされる。

 豊姫さんも巻き添えを喰らっているが、全く驚いていない彼女はわざと引っ掛かったようにも見える……

 

 

「どうしたのかしら? 遠慮なく座っていいのよ? ここのコーヒーとケーキは私のおごりで良いんだから……」

「こ…こんな誘惑に引っかかってたまるものか!」

「吉井、そう言いたいならアンタのそのヨダレどうにかしなさいよ……」

「吉井くん、凄い目が輝いているね~」

 

 そ、そんなことないもん!(ジュル……)←よだれを拭う音

 僕がこのラ・ペディスのケーキを見てガブリつきたいなんて思っていないんだからねっ!!←ツンデレ?

 

 そう、僕らが紫さんによって連れてこられた場所は文月の街で有数のカフェ”ラ・ペディス”である。

 いきなり落ちて来た僕らの事を気にも留めず、みんな何事も無かったかのように動いている光景はあまりにも不気味に思えてくる……

 僕らが動けずにいるのはその為だ……

 決して目の前の席にある飲み物とケーキやクッキーを我慢している訳じゃないんだ!!←嘘

 

「周りは気にしなくていいわよ? ”虚と真の境界”を操る事でこちら側の事が気にならないようにしてあげているだけであなた達に危害を加えるような細工は一切してないから」

「それをどうやって信じろって言うんだ!」

「信じてくれないと”話し合い”自体が進まないんだけどなぁ~?」

 

 そう言った紫さんが昨日使って見せたカードを36枚程、トランプ感覚でシャッフルして見せる。

 適当に使えばどんな混乱が起こるか分からないという明らかな”脅迫”だよ……

 

「分かったよ…… 座ればいいんでしょ、座れば!」

 

 乱暴に椅子に座る。 こんな不機嫌な気分で食べ物がある席に座る事になるなんて思ってもいなかった……

 

「私達は座らないわよ……」

「どうぞ、ご自由に?」

「なら失礼しまーす!」

「「『鈴瑚(ちゃん)!?』」」

 

 あれ? 鈴瑚さんは座るんだ?

 まあ、どこか安心感はあるからありがたいんだけど、緊張感なさすぎじゃないかなぁ……?

 

 こうして紫さんによる”話し合い”と言う名目の脅迫が始まろうとしている。

 僕はどうするべきなんだろう……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 




先日投稿しようとしたのにパソコンが故障して投稿出来なかったです……
iPadで調べながらいろいろいじくりまわしていたのに、結局メモリーの接続不良と言うオチだったという……
型が5年くらい前のだからなぁ…… 買い替えも検討するべきか?

今時のPCについて念入りに調べて置こう……
せっかくだから自作でハイスペック組んでみましょうか?
MMD動画作れるレベルの奴……

しかし、書いてて思ったんだが…… どうしてこうなった?
ゆかりん悪役にも程があるだろ…… 追い詰められている設定とは言えやり過ぎたか?

アドバイスや感想もお待ちしております。
次回もお楽しみに!
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