ストックが尽きて書き溜めしていました。
……予定程進んでいないのが現状なので今度の投稿は多分2週間後になるでしょうが。
サブタイの通り、吉井編二日目はこれで終わりです。
anotherstory 八雲藍 side
「紫様? その手は一体……」
「問題ないわ。 気にしないで」
そう言って強がってみせる紫様ですが、吉井の拳を受け止めたその手には少しだけ痣が……
「だけど予想以上に強力な能力ね」
「あの吉井君の”異常を正常に戻す程度の能力”がですか? でも能力名だけを聞く限りですと、なにも紫様に対して直接ダメージを与えるような能力だとは思えないのですが?」
「ええ、確かに”直接”私の手にダメージを与えた訳では無いわ。 正確にはあの子の能力によって私の手に込めていた”妖力”の流れが変わった事によるものなのよ」
「流れ?」
「ええ、あの子の能力は一言で言うなら一種のパワーバランス調整の能力なのよ。 例えばこの幻想郷をこの現世から隔離している結界。 これを消してしまえばこの妖怪にとっての楽園は消滅し、幻想郷に住む妖怪たちや人里の人間達は否が応でも現世にはじき出されてしまうわ」
「そうなったら我々妖怪達は様々な大義名分を突きつけられた後、外の世界の人間達と戦争に発展してしまうでしょう……」
生物として絶対の力を持つ妖怪の存在を忌み嫌う人間共…… 特に己の保身しか考えない政治関係者は妖怪の虐殺をためらいも無く実行するでしょうね。
「そう言った世界を崩壊させうる力や異能に対しては吉井君の能力では打ち消す事は絶対に出来ない」
「では、なぜ紫様の手を守ろうとする力を弾く事が出来たのですか?」
そう、紫様のいう通りなら、あくまで誰かを守ったり支えたりする力に対して吉井の能力は無力であるという事になるはず?
「それも簡単な事よ。 あの時の私は手に込めた妖力を吉井君の拳を逆に握り潰す為の”攻撃”に転ずることが出来る様にしていたからよ」
え? ”攻撃”?
「さっきも言った通り、あの子の能力は誰かを守ろうとしたり支えようとしたりする力に対しては殆ど…… いえ、全くと言っていい程に力を発揮しないわ。 でも、”誰かを傷付ける”、”呪いの様に対象の何かに対して制限を掛ける”。 そう言った攻撃的な力や対象を阻害する事を前提とした力に対しては絶対の力を発揮する」
「なるほど、確かにその能力は今の我らにとって非常に欲しい能力ですね。 外の世界から入り込んだ”オカルトボール”によって揺らがされている結界に対して強引ですが安定化させることが出来る……」
「それによって行き場が狭まったオカルトボールの力をたどり、すべてのボールを見つけて破壊する。 それが私達の当初の計画だった……」
しかし、そこから計算外な事態が起こってしまう…… そう、吉井を回収しようとした際にあのバカ共が訳の分からない事を言いながら発狂。 本気で吉井を殺す気なのか、武器を持って紫様の胸元で抱かれている吉井に襲い掛かって来た……
その珍奇な行動に驚いた紫様がとっさにスキマに吉井君を投げてしまった結果、移動先の設定を一切行っておらず、結果として何十分とスキマの中をさまよい続けた末にたどり着いた先が月の都……
「もう、既に計画が破綻しているような気が……」
すでに流れは最悪…… 吉井の回収に失敗し、月の都の連中も巻き込んでしまい、向こうの都合で抵抗してきた結果、更に関係の無い他人を巻き込んでの追い込み。
ヘタを売ったら第三次月面戦争に突入しかねない勢いですよ……
「もう、月の都の者達には土下座でもなんでもして吉井君を……」
「絶対にイヤ! 吉井君”個人”に頭を下げるならいいけれど、寄りにもよってあの綿月姉妹を相手に土下座なんてもう二度とやりたくないわ!」
あの時縛り上げられた時の恨みをまだ引き摺っているんですか……
確かにあの時の奇襲時に奴らから縛られて3週間くらいは縄の跡が体中に残って、風呂に入るときは見れた物ではありませんでしたが……
「でもどうする気ですか? 紫様の話の通りですと、悪意を持って能力などを使ってしまうと吉井君の能力によって無効化されてしまうのでしょう? だとしたら我々ではどうしようも無いのでは?
月の都に直接潜入しようにも穢れを感知されてたたき出されるのが目に見えていますし、今回の交渉の件で西行寺様にかなり無理を言って妖夢を引っ張って来ましたから、もうこれ以上はムリを言えないですし……」
今回の一件は幽々子様もかなり難色を示されていたんですよね……
どうにか沖縄名物の紅芋タルト2万円分と完熟マンゴーを10キロ、ちんすこう3万円分とラフテー(沖縄風豚の煮物)を30人前、そして今後30年分ほど紫様独自のルートで食料を支援し続けると言う条件でなんとか増援を漕ぎ付けたという経緯がある以上、もう白玉楼のお二人にも当分無茶な頼みは言えそうにありません……
「ええ、もう私達ではどうしようも無いかもしれないわね。 ”私達”では……」
そう言ってスキマの窓を展開する紫様。 あの交渉の時に使ったスキマですが、使おうとしたタイミングが悪すぎたんです。
その窓の先に映るものは、先程と同じく吉井の友人達。
それぞれ別の場所に落ちて行ったようですが、各自どうにか生き残っているようですが…… って、まさか!?
「なら彼らを上手く利用してみればどうかしら? あの子の友達が月の都での友達を相手に戦う事になるなんてなった時、吉井君はどう反応するかしら?」
「紫様、さすが卑怯です。 スキマババア呼ばわりは伊達では…… あっ、ちょっ紫様、関節はそっちにはまがらな…… アアアアアアアアア!!」
酷いです紫様! そんな腕を捻ったら流石の妖怪でもキツ…… 痛い痛い痛い! そこまで捻ったら本当にシャレにならなあああああああぁぁぁぁぁ……
another story 八雲藍side end
「ハァ~…… ようやく僕の家に着いた」
結局あのババア、何をしたかったんだろう? あんな平和的な光景を見せられて何をどうしたら要求を呑むと思ったのかな? あんな計算高い人にも……人?にもミスの一つや二つはあるけど……
あの話し合いの後、急いで僕の家に向かって行ったのだが、その間に何度もチンピラやヤクザ紛いな連中に喧嘩を売られ続ける事態に見舞われる。
大半は清蘭さんが杵でボコボコに叩きのめしたり、サグメさんが上手く捌きながら関節技をいくつも極めて撃退したりしたから大した問題じゃないけど……
僕もサグメさんの足手まといにならないように何か格闘技でもやってみようかな?
テコンドーみたいな足技中心のやつとか?
「吉井~? ココがアンタの家なの?」
清蘭さんが指さす先には僕の住むマンション。
いつの間にか到着していたみたいだ。
「あら? 結構大きいじゃないの。 こんなに大きい家に一人で住まわせるなんて実は結構な金持ちだったりするのかしら?」
「いや…… その建物はマンションって言うんだけど、箱の全体が大きいだけで、実際にはそれぞれ住民に合わせて部屋が区切られているんだよ……」
「ああ、私ら玉兎の住んでる寮みたいな感じな訳ね」
なんだ、月の都にも似た感じの住み場所もあるんだ……
……豊姫さん、わざと言ってないよね?
「とにかく中に入るわよ。 吉井、さっさと部屋に案内しなさいよ」
清蘭さんに急かされて案内する僕。
「取り敢えずカギを開けるけど、万が一の事を考えて皆少し下がっててもらってもいいかな?」
あの永遠の乙女気取り甘党紅茶変態キモストーカー痴女スキマババアが何かしらの手を打っててもおかしくはない……
鍵を回した途端に爆発とかしてサグメさんとかが怪我なんてしたらたまったものじゃない……
ゆっくりと、落ち着いて…… 鍵を開けた。
「よし! どうやらあの妖怪は僕の家には何も仕込んでないみたいだ!」
another story 八雲紫side
「……動きますかね? あの子達、仲がいいのか悪いのかよく分からない所がありますけど?」
「大丈夫よ。 なんだかんだ言ってもあの子達は吉井君を見捨てられない。 吉井くんの事を観察していればそれくらいの事は分かるのよ」
特にあの土屋とか言う小柄な少年。 あの子は特に言動に反して情に熱い所があるわ。
ムッツリスケベな性癖と盗撮癖のせいで気が付くのに時間がかかったけど。
あの子も吉井君ほどではないけど充分な英雄体質たりうる器を持っている。
発現した能力の関係上、この異変における解決力はゼロに等しいけれど、あの子の素直じゃない純粋さと心の根底にある熱意は月の都の住民と絶対に気が合うわ。
しかも、吉井君と違って相手と対話して解決しようとする能力も高いし、それを駆使するか力で解決するかどうかの切り替えもあの3人の中では一番早い。
まさかあのワガママお嬢様に狂気の塊をねじ込んでグチャグチャにかきまぜた末にすべてを台無しにしたかのような存在でしかないフランドールスカーレットを相手に戦うことなく逆に味方に付けるなんて外の人間どころか幻想郷の誰にも出来ない史上初の快挙。
それを上手く利用できれば、この世界の新たな主人公格として吉井君にぶつける事だって出来るかもしれない。
「そうと決まったら明日の朝一で動くわよ。 藍、橙に連絡して今日は休むように言いなさい。 私も今日は着替えて休むから藍もスペルカードのデッキ編成を終えたらすぐに休むようにしなさい」
「え? すぐに動くのではないのですか?」
「本当はすぐに動きたいのだけれど、坂本君がいる地底に藍が行ける様にするためには一度地霊殿に連絡を入れておかないといけないし、土屋君の方は橙のコンディションをベストにしておかないと万が一戦いになった時に厳しいわ。 秀吉君の方についてはほぼ安全な上に今は博麗神社に最も近い場所にいるから霊夢に連絡を取ってコンビを組めば大丈夫よ」
あの天人と竜宮の使いのコンビの戦闘力なら戦う事になっても万全になった私と霊夢とコンビを組めば絶対に勝てる。
そうと決まったら早速地霊殿や霊夢の所に連絡を入れて今日はもう休みましょう。
「そう言えば紫様?」
「あら、何かしら?」
「先日、一度吉井君の家に侵入した時があったじゃないですか?」
「ええ、たしかスペルカードを使ったとたんに逃げられたから吉井君の家に逃げたんじゃ?って思って家の中に侵入たわね。
その際に中の風呂場やベッドを勝手に使ったけど、その事かしら?」
吉井君の部屋にあるベッド、結構寝心地良かったわ~♡
冷蔵庫に食料品が一切なかった事とシャワーが水しか出ないのには驚いたけど……
もうちょっとまともな生活を送りなさいよ。 吉井くんとの取引の材料になる何かが無いかと家探しをしていたら銀行の通帳が出て来たけど……
毎月生活費として口座に15万も入っているなら十分マトモな生活ができるじゃないのよ。
「あの時の着替えはどうなさったのですか?」
「たしか…… あの後、部屋の中にあったハンガーを使って下着を干して、ついでに帽子も…… あ!!」
another story 八雲紫side end
皆を家の中に招き入れてリビングへのドアを開け放つ。
その瞬間に僕らの視界に入って来た物……
「「・・・・・・・・・・・・なにこれ?」」
紫色の女性用の下着、”ブラジャー”と”パンツ”がリビング内にて干されていた。
「まさか…… いや、そんな流石に…… でも姉さんならあり得るのか?」
皆にはまだ言ってなかったと思うけど、実は僕には度し難い程に変態な姉がいる。
昨日の事であのスキマババアが色々やってたとは言っても外国にいる僕の親たちが即座に動けるだろうか?
姉さんの規格外過ぎる異常性なら一日で日本に帰ってきて僕に関しての手掛かりを探し求めて家を荒らすくらい造作もなさそうだけど……
とにかくこんな僕が変態と思われてしまいそうな物なんて即刻排除しないと!
そう思った僕はその下着を外に出も投げ捨てようと手に取ろうとした……
『ダメだよ吉井君……』
「え? なにが?」
『あのブラ、吉井君のサイズに合っていない…… 女装用にしても詰め物がいくつも必要に』
「「「サグメ様(ちゃん)何がなんでも認めない気ね!?」」」
「僕に女装趣味はないよ!?」
え? 何!? 僕は今サグメさんから女装趣味のある変態だと思われているの!?
いや、まあこんな女子高生みたいな服を着て(それ以前にこれまで皆も僕の服装に関してスルーしていたよね?)、しかも家にはこんな下着があったら何も否定できないけど……
「サグメさん、念の為に言っておくけど、これは僕のじゃなくて……」
「藍はそっちを頼むわ!」
パシッ!←八雲紫が慌てた顔で下着を回収していく音
「「あのスキマ妖怪、一度ココに来てたんだ!?」」
いやいやいや! あのババア何してくれてんだよ、なんて嫌がらせだ!
「紫様、帽子の回収も完了しました!」
「よくやったわ! バレる前に早く帰って来て!」
もうバレてるよ! 今度は僕の部屋だな! 住居不法侵入で警察に突き出してやる!
ムッツリーニが部屋に置き忘れて行ったスタンロッドを片手に部屋に突入するぞ!!
「八雲紫、確保オオオオオぉぉぉ……おぉ?」
「紫様ぁ~、助けてくださ~い……」
ジタバタ! ←尻尾がつっかえててスキマの先に進めずにいる藍。
「マズいです! 吉井に見つかりました!」
「くっ、こんな時にだけ勘のいい子ね! 藍、ちょっと待ってなさい! 少しだけスキマを広げるからその瞬間に……」
……ここでかるく仕返しの一つくらいしてもいいよね?
突指「千年殺し(ただのカンチョー)」
ブスッ!! ←スタンロッドのカンチョーがクリティカルヒットする音
「んほおおおおおおおおぉぉぉ!?」
「藍、大丈夫! 今あなた乙女にあるまじき顔してるわよ!? と、とにかく急いで回収するから!」
うわっ、なんかすごい奇声あげちゃってるよ!? 一体どんな顔してたんだろ?
多分、乙女にあるまじき顔って言っていたからせっかくの美女が台無しになる程に酷い顔だったんだろうけど……
「逃がすかアアアアアア!!」
ジタバタと暴れている藍さんを人質として確保するべく、彼女の”尻尾”の内の一本を掴んでどうにか捕まえようとした。
「痛い痛い痛い痛い!! 吉井、離せ! その手を離せぇ!!」
「ぷげらっ!?」
が、結局藍さんの足で股間を蹴られてしまった僕は悶絶、手を離してしまう。
その隙を付いてスキマを拡張させたスキマ妖怪の迅速な行動によって藍さんもスキマの向こうへと逃げられてしまった。
「吉井、股間を抑えて一体何やってんの?」
「不法侵入者の捕獲」
「一人で無茶するんじゃないの! 万が一相手が刃物を持ってたらどうする気だったのよ?」
だって……相手が逃げていきそうだったし、部屋の構造に詳しいのは僕だけだし……
それに藍さん達なら妖怪としての力に自信を持っているみたいだったし、刃物を使う心配も無かったかもとか考えて……
「と、とにかくあのスキマ妖怪も帰って行ったみたいだし、すぐにでも荷物を纏めましょう」
豊姫さんがバッグを取り出してくれる。
……それどこから持って来たの?
「取り敢えず準備を終わらせたらすぐにでも出ましょう。 またスキマ妖怪共がここに戻って来た時に備えて罠を仕込んでおきたいし……」
「豊姫さんやめて下さい。 家族が来た時に巻き添えになる展開しか思い浮かびません!」
「……それもそうね。 清蘭・鈴瑚、罠張りは中止してこっち手伝ってもらってもいいかしら?」
「「了解です」」
……もう行動してたの?
あらかた僕達が外に出るのと同時に起動するタイプなんだろうけどさ。
『……この小さい小説本、面白い』
「成る程、死んでしまったらやり直しをしないといけない……って、結構キツいんじゃ…… 死ぬ痛みの記憶もハッキリと残したまま過去に戻されてやり直しさせられるんですよね?」
『どうやらそうみたい。 "蓬莱の薬"による不死身より辛い思いを繰り返す事になる』
「信頼している仲間が目の前で殺された上に自身も見事に惨殺されたり、絶望しながら生かされた後でやり直しなんてさせられる訳ですからね~」
鈴瑚さんにサグメさーん? それ秀吉が置いて行ったままの”Re:ゼロか〇始める〇世界生〇”なんですけど!
今度会った時に帰す予定の本なんだから、流石のサグメさん達でも勝手に触らないで欲しい物なんですけどー?
「あ、このかぐや姫って蓬莱山様にそっくりね。 当時の姫だった事もそうだし……」
豊姫さんも!? その童話本も秀吉が今度演劇でかぐや姫役をやるからって言って買い込んでいた本だよ!
間違えて同じ出版社の本を2冊も買ったらしいから一冊は僕がもらったけど!
「あれ? 豊姫さん、さっきかぐや姫がどうこうって言っていたけど、かぐや姫にそっくりな人があの都に住んでいるの?」
そう言えば、確かかぐや姫って話の最後には月に帰って行ったんだっけ?
もしあれが実話だったら今もそのかぐや姫さんは月でお姫様か王女様的な地位についている事になるのかな?
「いえ、数千年程前までは私と依姫の姉弟子のような……いえ、当時お師匠様が彼女の教育係でもあったから単に姉弟子と言うだけでは無いお方だったのだけれど、今から1200年程前にある罪で地上に追放されたの」
そのお姫様って罪人なのか…… だとしたら違うかもしれないね。
だってこのかぐや姫は話の通りなら月に帰っている描写もあるから、何をしたのかは知らないけど外に追い出されるような罪人が実は冤罪でしたって話でもない限りは簡単に月に帰るなんて出来ないだろうし……
「ここからは私達も又聞きで聞いた話だけど、追放された後の地上での話がこのかぐや姫の話にそっくりなのよ。 ただ、最後の方は完全に違っているけど」
「へ? どゆこと??」
まあ、かぐや姫本人じゃないなら色々違っている所もあるだろうけど……
又聞きの話なら伝えた人が都合よく嘘を付いて誤魔化した可能性もあるし……
「当時の私達の上司と月人の使者、および兵士達と地上での現地協力者も合わせて総勢950名を相手に裏切った私の師匠と共に話を伝えた二人の兵士を除いて皆殺し。
地上で世話になった老夫婦を国外に手引きした後に逃走。 そのままつい2年前まで誰にも見つからずに逃亡生活を送って見せたのよ」
「うん、少なくともこの本で伝わっているかぐや姫とは全然似ても似つかないことだけは分かったよ」
そのお師匠さん強すぎでしょ……
依姫さんと豊姫さんのお師匠さんって言うからには相当強いんだろうけど、兵士950人をたった一人で、しかもお姫様を守りながらの戦いなのにもかかわらず逆に軍隊を壊滅させてみせるって……
「いや、実際に倒した人数が多かったのは蓬莱山様らしいけど……」
「え?」
「あ、私も当時の資料を見ました。 凄くパワフルな攻撃をして来たらしいですよね?」
『ええ、軽く地面を掘っただけで土ダルマが完成され、その中に何人もの兵士を閉じ込めて圧殺して見せたとか、ジャンピングアッパーで殴られた相手が全員空中で10~20回転ぐらいさせてから地面に叩きつけたとか、この建物の屋上並みに大きな一枚板を音速に匹敵しうる速さで投げ飛ばした、なんて話もある位』
なにその怪力女? どんなゴリラなの?
いや、ゴリラでもそんな真似は出来ないだろうけどさ……
「八意様はそれ以上の力を持つ上にサグメちゃんがあの木下ちゃんって子に使った"捌き"も完璧に使いこなしてみせるのよ?
多分力に関しては蓬莱山様の前で見せるようなことはしないでしょうけど……」
うわぉ…… その怪力って月の世界において上の地位に着く為には必須なのかな?
って言うか、そのお師匠様紫さん同様、化け物すら超越してるんじゃ?
「最後にこう書かれてましたよ? "893人殺しの蓬莱山"には手を出すなって」
『当時生かされた2人も未だにイスに座るだけで震え、トンカチを見ただけで発狂する位のトラウマを植え付けられたられたのをきっかけに仕事を辞めさせられたって』
とうとう極道みたいな二つ名まで付いちゃってるよ……
最強の力に加えてトンカチがどうこうって話から察して、平気で拷問までやるその危険な思考回路……
どう考えても犯罪者です。 しかも更生の余地を疑うレベルの……
「って実際の所、蓬莱山様の話はもういいでしょう。 この話を続けてたら吉井君の中でのかぐや姫のイメージが屈折してしまうわ」
もう充分歪んでるよ!
いや、この"かぐや姫"と"蓬莱山"さんが別人であるかもしれないって事は分かってるつもりなんだけど……
「長話もこれ位にして、吉井君の準備が終わったらすぐに月の都に帰るわよ」
手をパンパン! と豊姫さんが鳴らすのと同時に準備に取り掛かる僕ら。
……せっかくだし、このかぐや姫の本も持っておこうかな?
何かの役に立つかもしれないし?
家にあるもののうち必需品である衣服や、筆記具の幾つかとサグメさんの為に全く使ってないノインちゃんデザインのメモ帳を全部。(サグメさんなら簡単に買えそうだけど、予備として……)
電化製品も幾つか使えると豊姫さんから確認が取れたからスマホの充電器とムッツリーニから格安で貰えたタブレット(iP〇d A〇r)も持って行こう。(ムッツリーニは更にスペックの高い新型を買ったらしい)
確か入力した文字をそのまま朗読してくれる音声アプリがあるって言ってたからそれも何かの役に立つかもしれない……
「あ、そうだ…… おーい、清蘭さーん!」
「なに?」
「もし良かったら姉さんが昔使ってた服がある物置部屋があるからそこから適当に服を持って行っていいんじゃ無いかな?」
敢えて下着がどうとは言わないよ?
だって下着がどうとか言ったらまるで僕がバニーガールに他の女の下着を履かせようとする変態みたいじゃ無いか?
「吉井ねぇ、自分でなに言ってるのか自覚あるの?」
「え? どうしたの急に?」
「吉井……本当にこういう時になに言ってんのか自覚が無いのね……」
「え? なに?」
半ば呆れ顔で僕が案内した先の部屋に入っていく清蘭さん。
その中に"おねーちゃんのふく!"と書かれた札がかかっている箱を幾つか適当に取り出す。
「じゃ、選び終わったら呼んでね。 僕らはリビングでニュース見ながら情報収集でもしてるから」
取り出した箱を全部僕の部屋に運び込んだ後、リビングで寛いでいるみんなの元に戻る。
多分サグメさんがやったのだろう。
使い方を教えてないはずのテレビをすでに使いこなし、ニュース番組を見ているようである。
『今外は機動隊とか言う特別な治安維持組織の部隊が出動したって……』
「そ、そうなんだ」
てっきり僕は機動隊の方もあのスキマババアが何かやったと思ってたんだけど……
「ま、流石にこの世界にも治安維持の為の組織位はあるわよね。 これ以上暴れられたら正義を語る組織の威信に関わるし、調査機関的な組織もあるならその手の組織は大抵自分の正義感に酔ってる連中が大半を占めるから、どんな圧力も買収も最終的には無駄に終わる。 この調子なら指名手配の話はともかく、街中で暴徒に襲われる事は無いわね」
どうやら豊姫さんの解説通りのようで、外が徐々に静まり返っていく。
いや、何度か爆発の音が聞こえたから、多分自衛隊が威嚇も兼ねた戦車砲を何発か撃ったんだと思う。
………え? だとしても威嚇目的で砲弾発射はやり過ぎじゃ?
「キャアアアアア!!」
「い、今の…… 清蘭さん!?」
もしかして今の音、家の近くで起こったんじゃ……
大慌てで僕らは清蘭さんが服を見ていた部屋に走って行く。
「清蘭さん! 大丈……ブッ!?」
僕らはいろんな意味で驚いていた。
鈴瑚さんは「グッジョブ!」とか言いながら鼻血を吹いて倒れ、サグメさんと豊姫さんは「ハァ!?」的な顔をしながらポカンと口を開けて唖然としている……
僕のリアクションとしてはそんな鈴瑚さんとサグメさん達の反応の中間的な反応である。
付け加えるなら「あ、これ僕殺されるパターンだ………」と絶望もしている位だろう……
「キャーキャー! なにこの下着! まるで私じゃ無いみたーい、ウフフ! しかもコレならシッポの邪魔もしないし、デザインも可愛いし超サイコー! せっかくだからコレも貰って……後はコッチのヒモみたいなのもかなりエロいけど、これはこれでアリかもしれないし? 後なにかしら、前に変なポケットみたいなのが付いてるけど? 変なリモコンのスイッチ入れた途端に凄いブルブル震えてるやつがピッタリ収まりそう…… あ……」
余程気に入っていたのか? 既に何組もの下着を並べて大はしゃぎしながら着替えている清蘭さんの姿だったからだ……
『心配して損した』
「我が人生に一片の悔い無し!」
「いや、鈴瑚ちゃん、少しは悔いなさい!」
女性陣は呆れ果ててリビングに戻っていくだけでいいが、一応唯一の異性である僕はそれでは済まされない……
「キャアアアアア!! このバカ、こっち見るなぁァァァ!!」
「いきなり銃弾は危ないって!?」
清蘭さんが指先から銃弾を乱射してくる。
驚いた僕はどうにか弾を避けようとするが間に合わない。
このままだと銃弾は僕の手を貫くか、めり込んだ末に弾丸が中に残ってしまうか…… どちらにせよ重症だろう……
「「………え?」」
そう思っていたのに清蘭さんが撃ってくる弾丸は全て僕の両手によって砕かれ、無かったかのように霧散して消えていく。
確かになぜか弾ける筈もないのに手を振って弾丸を弾こうなんて真似をしていたけど……
「ちょっ、コレ不可抗力… ま、待って! その杵で一体なにするつもり……」
「シネエエエ! この変態!!」
「もぺろぉぉぉぉぉ!!」
弾が通用しないと認識した(判断と呼べるほど冷静じゃ無い)清蘭さんは、今度は常に持ち歩いている杵を装備して僕をボコボコに叩きのめしにかかって来た……
この後に目覚めたのは翌朝のサグメさんのベッドの中で、月の都に戻ってくるまでの間の事はほとんど覚えていない。
鈴瑚さん曰く、「三途の川がどうこう」とか、「雄二だけ助かろうたってそうは行くもんか!」などと寝言でうなされていたらしい。
そして僕をボコボコにしてくれた清蘭さんは一晩中サグメさんから僕の件に対する始末書を書かされているらしい……
取り合えず、サグメさんに頼んで清蘭さんを解放しよう…… 今回の騒ぎの原因は僕だし、下着姿を覗かれた挙句に延々と始末書を書かされるなんて可哀想だから…… むしろよく僕が牢屋に入れられてないの?
……どうしてこうなった?
サグメさんのフラグも立っているが、その次にフラグ立てまくりですよ清蘭さん?
清蘭「うう……もうお嫁に行けない」
鈴瑚「大丈夫、私が貰ってあげるから!」
この話で明久の能力の詳細ゆかりんにを説明させました。
実の所、この能力はとある魔術の禁書目録の主人公、”上条当麻”の右手をモデルにした上で色々改変した力をこの世界の吉井君の能力として採用しています。
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能力名:異常を正常に戻す程度の能力
使用者:吉井明久
特性:他者を傷付けたりする為の力の異常な流れを無理矢理正常化させることで無効化する事が出来る能力。
ただし、有効なのは完全に他者に対して悪い効果をもたらす要素のある力に対してのみ発揮され、またその”力”の定義も能力や魔法、超能力などと言った超常的な力の事を指しており、純粋な物理現象に対しても力を発揮する事はない。
また、吉井自身にとっての損得に関係無く、自身を含めた誰かを”守る”為の力や一切の”敵意”が無い力に対しては全く反応しないという欠点を持っている。
核となる物を潰さない限り止められない力に対しては一応反応はするが…… 力の元を潰さない限り意味を成さない。
発動条件は力の発動元に対して両手の内どちらかで触れる事。
PS・因みに、下着の種類に関してはとあるラノベを参考にさせていただきました。
とある剣術道場出身の堅物少年が異世界召喚され、召喚された国のお姫様との子供を作ってほしいと依頼されるという「何? このR‐18の規制が入りそうな設定は!!」と思いたくなる内容の作品です。
詳しくは「H×P ひめぱら」を見ていただけたら分かるかと思います。
……ステマにならないですよねコレ?