番外編、お楽しみいただけたらこちらもうれしいです。
第13回東方project人気投票の結果後の月の都。
その中心にある政務室での事だった……
「なんで…… 私は月の皆の為に戦ってきたのに…… なんで、日夜月の警備隊長としての仕事をして、やりたくもない玉兎の皆の鬼教官なんてやっている私を支持しないのよ!?」
綿月依姫:88位→89位
「依姫は二桁の順位なだけましよ…… 私なんて……」
綿月豊姫:103位キープ
「失礼しまーす…… おわっ!?」
吉井明久:東方キャラではないため対象外
「なんか依姫様が凄く落ち込んでいる!?」
清蘭:93位→85位
「キシャアアアアアアァァァァァ!!」
「うわっ!? 依姫様がなんかトチ狂ってる!? 阿修羅みたいですごく怖いんですけど!?」
鈴瑚:87位→90位
『…鎮圧』
稀神サグメ:14位→21位
玉符「烏合の二重呪」
「痛い痛い痛い!! ちょっ!? サグメ、あなた何するのよ!!」
『興奮気味だったから?』
「それだけでかなり強いスペルカードを使ったって言うの!?」
「サグメさん…… さすがにそれはやりすぎだよ。 めっ!」
『つーん……』
「あ、サグメ様が落ち込んだ」
ええぇぇぇ…… いや、体育座りでいじけているサグメさんもかわいいけど?
でもその辺にいる罪のないアリさんをプチプチ潰すのはやめてあげようよ……
「それで、なんで依姫様はそんなに落ち込んでいるんですか?」
「……はい、これ」
依姫さんが鈴瑚さんに渡したのは何かの書類が入っている封筒。
その中に入っていた書類に書かれていたのは先ほど示した人気投票の結果を示すランキング表だった。
「どうせ私なんて価値のない不人気キャラなのよ……」
『気にしないで。 私もランキングが落ちている。 月の皆の評価が悪いのはみんな一緒なんだからそう落ち込まずに……』
「祇園様……」
依姫さんが床に剣を刺した途端、僕とサグメさんの周りを囲う様に大量の刀が突き出てきた。
……なんで、僕も巻き込まれているんだろう?
『ちょっ! なんで!?』
「……月の住民の中でダントツの高順位だから」
『ただの妬みじゃないの!? それだけで刀の檻に閉じ込めないでよ!!』
「そんな事をするから人気が下がったんじゃないの?」
「くっ、なに? そんなに寡黙っ娘が好きなの!? ドジっ子属性・寡黙・筆談トーク・運命操作なんてミステリアス要素満載なキャラがみんな大好きな訳!?」
「いや…ドジっ子属性は二次創作が勝手に生み出した妄想の産物なんじゃ……」
「はぁ? だったらその二次創作とやらの世界に連れて行きなさいよ! その妄想の産物とやらを滅茶苦茶にしたうえで私の事についてアピールしまくってや……」
だめだ…… 依姫さん、過度なストレスでいろいろとおかしくなってる……
ここしばらく忙しそうだったからなぁ…… 謎の侵略者対策とか、ヤンデレめいた事を言って襲うようになってきている女の子の捕縛とか、騒ぎを起こしまくる豊姫さんや僕への説教とか……
『そう、擦れないで…… なんでも順位の高さにこだわるものじゃない。 あなたへのその一票は……依姫、あなたの事を想う人達が一つ一つ…愛・思いやり・気遣い・優しさ・感謝・お礼としての気持ちを込めて贈ってくれた物。
それは大切な事よ? あなたが必要だって言ってくれる人たちが720人もいる…… そこまで必要としてくれる人たちがいるなんてとてもうれしい事じゃないかしら?』
「「……サグメ様」」
サグメさん、いいコメントだなぁ……
刀の檻に閉じ込められながら書き込む事でもないと思うけど。
『誰が人気で誰が不人気だとかそんな不毛な言い争いなんてやめるべきだと思う。 私達はただ投票してくれたみんなに”選んでくれてありがとう”って感謝の言葉を伝えてあげるだけでいい。
そもそも今のいる場所はそんなに不満なの? 175人もの立候補者の中で真ん中の順位にいるあなたよりもはるかに票が入らなかった人たちは一体どんな気持ちでいるのかしら? そんな中でも真ん中にいて、無難に普通に”仕方が無い”で割り切って、乗り切ってみるのも…… 悪くはないんじゃないかしら?』
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」
稀神サグメ:前回(第12回)の人気投票初出馬でありながらも堂々の14位。 今回(第13回)の人気投票でも21位の快挙。
票数も月の都の住民の中で次点の清蘭が774票の中、彼女は3674票と大きな差をつけている。
ベストパートナー部門においてもドレミーとのコンビで20位に入っており、月の都の住民の中ではぶっちぎりのトップであると言ってもいいだろう……
凶弾「スピードストライク」
月見酒「ルナティックセプテンバー」
『え!? なんで清蘭と鈴瑚のふたりまで……』
「いや! なんで僕までええええええぇぇぇ!!」
少年少女戦闘中……
『落ち着いたかしら?』
「「「申し訳ありませんでした!」」」
あの後、急にキレた皆を止めるためにサグメさんを閉じ込めている刀の檻を僕の手で破壊した後、二人で暴走する皆をねじ伏せた。(ほとんどやったのはサグメさんだけど……)
真っ先にスペルカードを使った清蘭は鈴瑚さんが右腕を極められ、追撃の頭突きで身動きが取れなくなったのと同時に投げ飛ばされた先に誘導されてそのまま叩き付けられて気絶。
豊姫さんはサグメさんとの、実質ただの喧嘩ですべての攻撃を捌かれ、膝折りで転ばされながら顔面パンチ。 さらにそこから右腕を極められた後で投げ飛ばされて倒された。
依姫さんは豊姫さんの攻撃が捌かれた際にそのままぶつかってしまって倒れこんだところで僕が押さえつけている。
具体的に言うと神様を呼べないようにするために、特殊な組糸で縛り上げながら僕が上に乗っかって首筋を掴んでいるだけなんだけど。
最も当の本人は「人気投票の力は戦闘力にまで影響するのか……」などと言いながら本気で悔しがっているだけだ。
「しっかし、なんで依姫ってこんなにも人気が無いのかしら?」
「原作でも屈指のチート級能力持ちで、月の使者のリーダーとかプライドが高くて生真面目なしっかり者属性持ちとか、若干ツンデレとか天然が入ってたりとそれなりのキャラはしているはずなのに……」
本当になんで人気でないんだろうね?
いや、こんな人気投票の事自体知らなかった僕が言うセリフではないけどさ?
『とりあえず神の力で”ドーン”って感じで決着をつけようとするのをやめた方が……』
「そんな事をしたら私の個性がなくなるだろうが!!」
『そこは建前でも”警備隊長として必死だった”とか言っておけばいいのに……』
なるほど…… 強すぎるって言うのも難儀なものなんだね。
って、サグメさん、いったい何の事を言っているの?
『前に紅白の巫女とか白黒の魔法使いとか、吸血鬼の女の子と言う訳の分からない集団が攻めて来た時に滅茶苦茶やったって聞いてる』
「こっちだって攻め入られた側なんだから正当防衛みたいなものでしょ? だったらむしろ……」
『だからと言って神様から授かった特典をまるで最初から自分の力であるかのような演出はしない方がよかった。 どうにか剣術や普通の弾幕で立ち回って勝って見せていたらもう少しは違った結果になったかもしれない』
「えっと…… つまりどういう事?」
『分かりづらいかもしれないけど、要は地上と月の都とはまるで世界観が違うって事。 あなたたちの世界で仲間を集めて軍団同士で戦術戦を繰り広げている中、私達みたいな神クラスの化け物が乱入してきてすべてを吹っ飛ばしてしまう的な……』
ええ…… 本気を出したサグメさん達ってそんなに強かったの?
それは確かに強いって言ったら強いんだろうけど、そんな勝ち方をしたところで呆れられて終わりというか……
例えるなら剣術中心のバトル漫画の世界に核ミサイルを持ち込んで天才剣士達を皆殺しにしてもその世界で名高い天才剣士達が弱いとも思えないし、核ミサイルを持ち込んだ馬鹿が凄いとは思わないって事かな?
「なるほど…… 要は世界観が違う戦い方をしたから、支持を得る勝ち方をしていなかったってことですよね?」
『なんかざっくりとした言い方だけど、清蘭の言う通り。 お互いが対等なフィールドで競わなければ、たとえ相手を倒したところでその勝利も勝利とは認めてはもらえない。 勝って当たり前みたいな条件で買ったところでそんな勝利に注目なんて集まらない以上、意味なんてないのよ』
あ、依姫さんがすごくショックを受けてる。 「そんな…… あの時、私はただ兵たちの規範であろうとしただけなのに……」とか思ってるんだろうなぁ……
ちょっと泣きそうになってきてるし……
『綿月姉妹の力に対して制限を設けなかったのは敵キャラとしては最悪。 仮に”神様を呼び出せるのは一日に3回が限度”とか、”別の神様を呼び寄せる為には一度能力を解除して、ある程度の時間をかける必要がある”みたいな条件付きだったならば相手にも勝利の道が見えてきている分、より依姫自身の実力の高さが証明できるし、それならこういった制約があることで”これほどの実力者相手に何度も立ち向かわないといけないのか……”的な心理的な描写の一つでも加えておくだけでパッと見では依姫の圧勝であったとしても接戦だった感が出せる。 それならたとえ多少苦戦したとしても地上の精鋭部隊相手に一人で抑えていられるというだけですでに十分ではあるからね』
サグメさん、徹底的に考察しつつも依姫さんをたたきまくっているなぁ……
もしかしてその時に何かあったのかなぁ?
『”過ぎたるは及ばざるがごとし” モノには限度と言うものがある。 八百万の技とか399万回連戦しても勝てる計算とか、そういうインフレは黄金期少年ジャンプのバトル漫画の中でやっていなさいよ。 私達はあくまで必殺技に限りがある弾幕ゲームキャラなのよ?』
黄金期少年ジャンプって…… サグメさん、少年ジャンプ好きなのかな?
まあ、現代の少年ジャンプでも1京2858兆0519億6763万3865個の能力を使いこなすことが出来るなんてふざけたキャラがいたからそれに比べたら、依姫さんの能力なんて……
「ふええぇぇぇ…… うえええええぇぇぇぇん! サグメちゃん酷いよぉ!! 私だけを責めるのはやめてよぉ…… 私だって月の都を守るために一生懸命がんばってるのに、今回の侵略者相手に一番に立ち向かったのも私なのに、それが逆に人気出ないからダメだって言われたら私もうどうすればいいのよぉぉぉ……」
うわぁ……あの依姫さんが頭抱えてガチ泣きしちゃってるよ……
もうプライドもへったくれもない酷い姿を晒したい放題だ…… その時の事情を全く知らないのにかわいそうになってきたよ……
「さ、サグメさん? もうその辺にしようよ…… なんか依姫さんが凄くかわいそうになってきたんだけど……」
『別に私は責めている訳ではない。 ただ、具体的に何が悪かったのかを一緒になって考察してあげて、今後どうするべきかについての参考になりそうな事を語っているだけで……』
「具体的すぎるダメ出しを淡々と徹底的に傷口をえぐるように語られるくらいなら単純にバカにされる方がましだって!!」
もう、これアレでしょ? とっても普通で常識的な男の娘である僕がなぜバカ扱いされないといけないのかについて高学力組の連中から徹底的な議論を繰り重ね続けられて、その過程で考察の為にと称して僕の恥ずかしい過去を晒されまくっているみたいな感じなんでしょ!?
そんな事になったらもう泣きたくもなるって……
『よしよし、吉井くんは良い子だから大人しくしていようね?』
「なんか子供を諭すような言い方でバカにされてる気がするんだけど?」
「お姉様は桃をよくパクる! 玉兎達は言う事を聞かない!吉井くんはウサギ達をヤンデレ且つ発情期に追い込む! やったらいけないことだからって説教したら嫌われキャラ街道まっしぐら! 私だって、私だってえぇぇぇぇ………」
結局日々のストレスと今回の人気投票、そしてサグメさんの考察という名の"酷評"によって完全にプライドが打ち砕かれた依姫さんを少しでも癒す事で慰めてあげるべく、今日の夕食に僕の得意料理であるパエリアを振るってあげる事にした。
豊姫さんに手伝ってもらい、現代世界に行ってきた後で材料を買い揃え、月の都に戻って鈴瑚さんと料理……
完成したパエリアを依姫さんに食べてもらいながら慰めてあげたらどうにか立ち直ったけど……
今後は依姫さんの前で人気に関しての話は避けようと思った一日だった……
本編を進められないからって作っていた番外編です。
サグメさんの順位が落ちているのに悲しむべきか、下がってもまだ高順位である事実を喜ぶべきか……
皆さんは誰に投票しましたか?