刻の召喚士   作:jnsto

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第27話「朝焼丿星」

ふと目が覚める。窓の外を見てもまだ夜は明けていないようだ。

 

うえ、飲みすぎたか。酔いは覚めたが喉が痛い。竜車から降りて夕飯を食べていた筈だが…何故かまた竜車の中に入っている。目覚めない俺達を御者さんが中に入れてくれたのだろうか。だとしたら凄く申し訳ないな。御者さんも結構飲んでいた筈なんだけど。一言も話さなかったけど。

 

まあこのくらいのやさしめの揺れは逆に心地良いな。

 

「起きたの、リッカ」

「…ああ。リティナも生きてたのか。」

 

反対側の扉部分に寄りかかって座っていたリティナと目が合う。ココとラークはまだアルコールにうなされているのか、小さめのイビキをかきながら眠っているようだ。俺の膝の上ではシィル…妖精が眠っている。

 

この勝手に袋の中に入ってきた妖精はシィルという名らしい。俺がアレクサンダーに刺された後、一番最初に話しかけてくれた妖精だ。他の妖精達は妖精王のクレイに連れられて、他の安全な森に行ったと言っていた。でもこの子はクレイにお願いして俺についてくることにしたらしい。…まあ奴隷という立場は本来そうあるものなんだけど、何故この子は俺に付いてきたんだろうか。今度聞いてみよう。

 

「リティナ酒強いのな」

「あんたこそ。酔ってる振りし騒いでたの知ってるんだからね」

「フリでもないんだけどな。そういうリティナは酔ってないのにラークを脱がせようとしてたってことだよな?」

「…………ついさっきまでは酔ってたのよ。…それ以上可笑しなこと言ったらぶっころすわよ」

「俺は何度お前に殺されればいいんだよ…」

 

暗いから良くわからないけど赤くなってる気がする。まあ思春期だもんな、そういうものにも興味がある年頃だろう。お兄ちゃん、ちゃんとわかってるからな。ラークには上半身裸でトレーニングするように助言しておくな。

 

「……ん?……ああ、竜車の中か…………リッカに酒樽に入れられてたのは夢か……」

「ひどい夢だな」

「……起きたのね、ラークも」

「……ああ、酷い夢だったよ。………上半身裸で騒いでいた気もするんだけど…それも夢、だよな?」

「それは現実だ」

「それも夢よ」

「………もういい。忘れる。気にしないことにする」

 

皆酔いから覚めるのが早いな。…まさか魔力による身体能力の向上は酔いにも効くのか。凄いな魔力。飲み会の前には魔力補充しておくのがこの世界のルールやもしれん。

 

「カレー…カレー………カレーは飲み物………」

「こいつは今どこにいるんだろうな」

「カレー樽の中とか?」

「そんな樽聞いた事ないよ、リティナ」

「………リッカ君で出汁をとって………」

「殺す気か」

 

足を軽く蹴っておいた。

 

「いたっ!何するの!大人しく出汁になりなよ!……あれ?出汁?」

「ココ、今俺のことを出汁っていったか?」

「え…いやあ…そんなことないよ…」

「こっちを見ろよ。ちゃんと目を合わせろよ」

 

そんなどうでもいい話をしていた。とりとめのない話。何を話していたかも思い出せないような。でもそれが堪らなく面白い。なんかこう、修学旅行の夜みたいな。

 

 

 

 

「………綺麗ね」

「…ん?……ああ。そうだな」

 

夜が明けようとしている。まだ日は上がってこないが、地上から空へグラデーションが徐々に色濃く変化していっている。まだ月や星も見える。だけどそれはもう夜とも言えず、朝とも言えず。

 

「…パーティの名前をきめましょう」

「パーティの名前?」

「ええ。ワタシ達は一年間王国騎士団で修行するけど、また会った時。ワタシ達でパーティを組んで、世界を旅するの」

「あ、言ってなかったけど俺ちょっと王都行ったら旅に出るつもりなんだ」

「…は?」

 

3人から一斉に目線を向けられる。多分ココとラークからは"まだ話してなかったのか"という意味が込められている視線だろう。リティナからは"そんなこと聞いてない"ってところか。すまん。話すの忘れてた。

 

「………いいわ。今度本当のこと聞くから。あんたが本当のこと言ってなかったのなんてお見通しよ」

「あほの子かと思ってたのに」

「…何か言ったかしら?」

「…いえ…」

 

なんだかんだ皆にばれてるな。…そんなに嘘下手なのか、俺。

 

「旅に出るなら、いえ、旅に出るからこそパーティの名前を決めましょう。ワタシたちが戻ってくる場所の名前。それさえあれば、例え遠く離れていようと再会できる。そんな気がするの」

「リティナは繋がりを持っておきたいんだよ。僕も賛成かな。決めようよ。僕たちの名前」

「…いいと思うよボクも。そういうの、なんか憧れる」

 

「…そうだな」

 

外をみる。消え去っていきそうな月と星。でもその月と星は、見えなくなっているだけでそこにはずっと存在している。離れても続く絆っていうのはそんなもんなんじゃないか?あの星達も傍にはいない。そしてすぐに見えなくなってしまう。でも確かに、そこに居る。

 

「………朝焼丿星、とかどうだ?今見ているこの景色そのものだけど」

「…いいんじゃない?今日は私たちが旅を始めた記念の日ですもの。今見ている光景が、ワタシ達の始まりよ」

「うん、いいと思う。その響き」

「じゃあボク達は今日から"朝焼丿星"だね」

 

 

俺達は戻る場所を決めた。だから、何があっても俺達は、ここに戻ってくる。でもそれは決して退化なんかじゃない。いつかその場所に、最高の姿で集まれることを誓って。

 

 

 

 

 

 

 

 

…とかなんとか言いつつ、内心俺は焦っていた。実はちょっとボケたつもりだった。"朝焼丿星(モーニングスター)"。なんかごつごつして痛そうだよね。俺達の戻る場所はそんなちょっと人には言いづらい言葉になってしまっていた。笑いをこらえるのに精一杯だった。

 

ごめん。でもちょっと面白そうだからそのままにしておこう。

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