刻の召喚士   作:jnsto

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第33話「通り魔」

「ありえない!!!」

「…あ?ケチつけるのか?」

「次のカードは7の筈だ、何をした!貴様!!」

 

赤いお姉さんが荒声を上げる。まあそりゃそうだろうな。自分が覚えていた筈のカードの並びが違っていたんだから。

 

「カードを先に覚えるのは反則って言わなかったか?」

「そんなことはどうでもいい!何をした!!」

 

あらこのお姉さん、顔も赤くなって本気で怒ってらっしゃる。

 

「そういうのいいから。早くシィルを解放してくれ。なんだったら勝ち金も要らないから。俺は勝った、あんたは負けた。それだけのことだ」

「貴様…!」

 

シィルの周りの炎が取り払われる。あ、寝てる。温かかったって言ってたもんな。そのまま女は自分が羽織っていた着ていたコートや持っていた財布をテーブルの上に投げ捨てた。あ、これギルドカードかな?結構かっこいいデザインだな。…どこぞのファンクラブ会員証に似てる理由は何故かはわからないけれど。

 

「私を愚弄する気か貴様。全て持っていけ!」

「いやいいよ。あんたもこいつらが無くなったら困るだろ?」

 

ギルドカードってこういう風になってるんだな。…お、Aランク。上位じゃん。やばい相手に喧嘩売ってしまったかな…まあいいか。

 

「ひとつ貸しにしておくよ"ハムリン"?」

「っ!…私をその名で呼ぶんじゃない!!!」

 

ギルドカードにはハンニバルなんていう仰々しい名前ではなく、"ハムリン"という可愛らしい響きの言葉が書かれていた。なんだ、赤くなってたのはさっきからだけどそういう可愛い表情も出来るんじゃないか。

 

 

 

 

「リッカ、もうただの悪役だよ…」

「…絶対敵に回したくないわね、リッカリンは」

「俺をその名で呼ぶんじゃない!!!」

 

 

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 

 

「じゃあ僕たちは宿舎に戻るよ…リッカ、あんまり無茶するなよ…?」

「ちゃんと、寄り道せずに家に帰りなさいね!ココも心配してる筈よ!」

「ああ、わかってるって。悪かったな」

「本当にね…」

 

ギルドから離れた俺達はそれぞれの帰路に着き始めていた。ラークとリティナは騎士団の宿舎へ。俺は王都にある母さんと父さんが住んでいる家へ。もう既に8時を回っている。一応指輪の念信で今から帰るとココには伝えておいたが心配しているだろう。シィルも俺の服の中ですっかり眠ってしまっている。飲み屋街を抜けたのか、人もまばらだ。

 

「じゃあリッカ。またな」

「おやすみなさいリッカ。しばらくは家で大人しくしてなさいね!」

「へいへい…じゃあな。おやすみ」

 

 

確かに今日は色々あって疲れたしとっとと帰って風呂はいって寝よう。ココが浪費した分も取り戻したし結果としては上々だ。もう死んだように布団に入ってまどろみに埋まって行きたい

 

 

 

 

行きたいんだ、俺は。

 

「探したぞ!精霊使い!!!」

「なんだよハムリン…俺はもうあんたに用事はないぞ…」

 

もう人は全く居ない。魔法を使った外灯も少なくなってきた路地裏でピンク髪の変な女が奇声を上げていた。さっきの赤いドレスとは違って茶色のロングコートを着ている。

 

「やっと見つけた…」

「そうか、見つかって良かったな。じゃ、俺帰るから」

 

「待て!私を貴様の奴隷にしてくれ!」

 

…何をいってるんだこいつは…さっきのブラックジャックで頭がショートして気が狂ったか…?

因みにさっきのブラックジャックの種は割とシンプルだ。聖剣を召喚する前の台詞を思い出して欲しい。

 

『さあ問題はここからだ』

 

そう、"さあもんだい"、"さあもん"、"召喚(サモン)"。ここで俺は、前のゲームから召喚石(ボックス)に隠し持っていた1から10の数字の中から2を取り出した。で、聖剣に視線を集中させている間にトランプの山の上にその2のカードを置いておいた。

 

この女はカードを全部覚えていたみたいだが、そうなったらそんなもの関係ない。"全部覚える"のではなく、たとえば出たカードを"全部数える"だったらこのイカサマにも気付いたかもしれないな。数える、で言えば2のカードはほとんど場に出ていなかった。可能性で言えば2が出る可能性は限りなく高い。21が揃う可能性は高かったんだ。まあ、それでも俺がイカサマしたから結果的に勝っていたんだけど。

 

 

「え、嫌だよ。なんでそうなるんだよ。お前明らかに地雷じゃん。女の子に踏んでくれって言われるのはやぶさかではないけど、火傷じゃ済まなそうなお前だけは勘弁だわ」

「待て、信用できないのはわかっている!先刻あんなことがあったんだ、仕方ないだろう…だが、これをみてくれ!!!」

 

そういうとピンク色の変態はコートをおおっぴらに広げて自分の肢体を俺に見せつけてきた。

 

 

 

 

真っ裸だ。

 

 

 

 

「奴隷が好きなんだろ!半亜人(デミ)ではないが、私もそれなりのものをもっているつもりだ!なんなら今日から相手をしてもいい!」

 

『ナニ?ウルサイヨー…』

 

シィルが服から顔を出す。そのまま興味の対象を見つけたのか、全裸マンのところに飛んでいった。

 

『ドレイ モン? ワタシト オナジ ダネ!』

 

『ワタシ ノ カラダ ハ リッカ ノ モノ ?』

 

 

 

 

"私の体はリッカの物"

 

 

「へ…」

「へ…?」

 

 

 

 

「変態だあああああああああああ!!!!」

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