刻の召喚士   作:jnsto

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第37話「愚か者」

朝だ。結局3時くらいまで起きてたんだっけかな…なんだかんだ夕飯を食べたり(カレーだった)風呂に入ったりしてたらそんな時間になってしまっていた。因みにちゃんとこの世界にも時計がある。しかも前の世界とほぼ同じ形式だ。流石にデジタルとかはないけど。

 

どんな世界でも時間間隔というものはあまり変わらないのだろうか。前の世界に比べて1秒をどれくらいに感じるかはわからないが、1日は比較的長く感じる。それは子供の頃の方を長く感じるのと同じで、俺にとって新しい経験ばかりだからというのも一因なのだろう。

 

そんなことを考えながら隣に寝ているツインテールじゃなくなった変態を見つめていた。まだコート一枚のままなのかよ。着替えろよこのド変態が。目に毒なので反対側に寝返ってみる。変態じゃない狐っ子もいた。なんでだ。

 

「………違う部屋で寝ていた筈なんだが」

「…ん。朝か。おはよう愛する人。昨日は激しかったな」

「…ツッコミの話だよな?俺は何も手を出してないぞ?」

「もちろん寝相の話だが。何を慌てているんだ?愛する人よ」

 

ええい背中から抱きついてくるな鬱陶しい。こいつわかっててやってやがるな。

 

「…うーん…あさ…?………リッカ君、朝っぱらから浮気?」

「浮気じゃないぞ。なんせ私は愛する人の奴隷だからな。合法的だ」

 

「「……………」」

 

「…俺朝ごはん食べに行きたいんだけど…2人はまだ寝てていいぞ」

「私も行こう愛する人」

「ボクも行くよリッカ君」

 

…もう勝手にしてくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あらおはよう。早いわね。…あんた、その年から遊んでると碌な死に方しないわよ」

 

階段を下ると早速台所に居るお母様からの洗礼を頂いた。一般的には両手に花というのかなこの状態は。俺にはもう重しにしか感じられないが。

 

「おはようございますお母様。ご心配なく、我々は真面目な関係ですので」

「おはようございます。………露出狂が真面目とか」

「何か言ったか小娘?」

「いえ?何も?まな板さん?」

 

左右で火花散らせるのやめてくれないかな。朝っぱらから火傷したくないんだけど。

 

「母さん俺朝ごはん食べたいな」

「………あんたも大概ね。今日は昨日のカレーの残りよ。ココちゃんも来るって聞いてたから張り切りすぎちゃってね。ごめんなさいね」

「マジかよ」

「愛する人のお母様の作ったものだ。勿論美味しく頂こう」

「本当ですか!?」

 

皆で席につく。暖め直したカレーとパン。なるほど、昨日の夜はカレーライスだったけどこういう風なら二食連続カレーというのも存外悪くないかもしれない。日本ではあまりない形式だからちょっとビックリしたけど。15年間この世界で暮らしてこんなのを見たのは初めてだから、実際はうちだけのローカルで今回限りの手抜きメニューなのかもしれない。

 

「朝からカレーなんて夢のようだよ…!」

「夢でもカレー食ってたもんな。俺を出汁にして」

「…なんの話かさっぱり…」

「こっちを見ろよ。ちゃんと目を合わせろよ。…あ、そういえば父さんは?」

 

ここは王都での父さんの家だ。父さんは王都の学校で教鞭をとっている。だが昨日見た覚えがない。今朝もいないというのはどういうことだ…?というか俺が5歳を超えてからまともに会ったことがない気がする。

 

「ああ、あの人また学校に泊まってるみたいよ。あの人の仕事好きにも困ったものだわ」

「リッカ君のお父さんて学校の先生なんだっけ?」

「ああ。歴史を教えてるみたいだな」

「なんと。ちゃんと挨拶しなければな…」

「…リッカ君、今日2人で学校に行かない?もちろんハムリンさんは置いて」

「ハンニバルと呼べ!私をハムリンと呼んでいいのは愛する人だけだ。もし学校に行くなら私もついていくぞ!」

「母さん…助けて…」

「…私の息子はいつからこんなことになったのかしら…いや、あの人もこんなだったわね…血は争えないわ…」

「遠くを見ないで。ちゃんと息子を見て」

 

 

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 

 

「まさか入れないとはな」

「…一応伝染病だからね、仕方ないよ。ありがとね、リッカ君」

 

俺達はココのお母さんのお見舞いのため王都の病院にきていた。でも受付で、その患者さんは隔離病棟で治療されているから面会できないと言われてしまった。本人は元気だしココとも手紙のやり取りをしているみたいだから心配はしていないのだけど。

 

「…母上は病気なのか?」

「…うん、そうなんです。アラハンの悪夢で」

「…酷い事件だったらしいな。いち早い回復を願おう」

「…うん。ありがとうハンニバルさん。お父様への挨拶は私たちだけで行くけど」

「それは許さんぞ小娘」

「なんでハンニバルさんの許しを頂かなければならないんですか?」

「やめいやめい!別に学校に行くなんて俺は一言も言ってないだろ。見舞いが出来ないなら冒険者ギルドに行く。俺1人でな」

 

 

「なんで?リッカ君」

「なんでだ愛する人」

 

なんで左右で腕を掴んでくるの?本当は仲いいの?タイミングも完璧に一緒だったよ?

 

 

「いいか、ギルドっていうのは俺達みたいな男1人に女が2人みたいな構成の新人が顔を出すと絡まれるもんだ。今回は俺だけで登録してくる。ハンニバルはもうギルドカード持ってるからいいとして…ココの登録が俺に出来なかった場合は仕方ないから後で一緒に行こう」

「愛する人は私のことをハムリンと呼んでくれて構わんのだが。まあいい。奴隷のギルド登録は主であれば代筆できた筈だ。問題ないだろう。仕方ない…私たちはどうする小娘?」

「小娘って呼ばないでくださいハムリンさん。じゃあボク達は商店街でも回りましょうか。ギルドで今後討伐依頼を受けるなら回復薬とか必要になると思いますし」

 

回復薬か…確かにココが使える回復魔法だけに頼るわけにはいかないからな。そうしてもらおうか。

 

「ハムリンと呼ぶな!呼んでいいのは愛する人だけだ!ハンニバルと呼べ!!」

「じゃあボクのこともちゃんとココって呼んでください」

 

こいつらを2人にするのは心配だが旅をする仲間になるんだ、ここで慣れていってもらおう。

 

「あー…落ち着け落ち着け。じゃあココの言うとおり回復薬とかも見繕ってきてもらおうか。ハムリン、ココが無駄使いしないように見張っててくれ」

「ん?ああ、昨日の馬鹿みたいな買い物は小娘が原因だったのか」

「馬鹿とは何ですか馬鹿とは!…ボクが原因ですけど…」

「じゃあよろしくな。仲良くやれよ。1時間後に広場に集合な」

 

まあ目的があればちゃんとやるだろ2人とも。真面目な感じはするし。

 

「ああ…わかった…愛する人の命令であればいけ好かない小娘とも上手くやるさ…」

「リッカ君に迷惑をかけるわけにはいかないからね…ボクも上手くやるよ…」

 

…なんだ上手くって。ばれなきゃ嘘じゃないみたいなそういうことか。見えるとこは何もないけど服の中は痣だらけになってたりするのか。勘弁してくれ。そんなドメスティックバイオレンス見たくないぞ俺は。

 

 

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 

 

ギルドの扉を開いた。

 

「あ、リッカ。ちょうど良いところに。助けてくださらない?」

「………………いやちょっと用事がありまして。……帰ります」

「その用事をこなしにここにお出でになってのでは?私少々こまっておりますの。この醜い豚共が醜い鳴き声をぶーぶーぶーぶーお聞かせになるの。ただ依頼を受けに来ただけですのに…流石に私も気分が悪くなってしまって…リッカ、なんとかしてくださらない?」

「あ?なんだてめえは?」

「この女の連れか?」

 

やめろ!近づくんじゃない!さっきフラグを回避してきた筈なのに!なんでこうなる!!抱きつくな!金色の髪を胸にこすりつけるな!前みたいに黒のローブを羽織らず女性騎士の装備だけだから絡んできてる奴以外にも視線が集まってるんだよ!!ていうかあんためちゃくちゃ口悪いな!豚に真珠ならぬ、真珠に豚ってところか!!

 

「この品格もない豚共に貴方からも何か言ってやってくださいな」

「もうちょっとオブラー…優しく表現しましょうよガレットさん……ええと、見た目的には鳥っぽいですよね。かっこいいっすね先輩方!」

 

お洒落な装備だな。鳥の羽をふんだんに使った装備か。ヤンキーみたいだけど、この世界の男共にしてはちゃんと外見に気をつかっている方なんじゃないか?昨日あれだけ騒いだんだ、これ以上敵を増やす気はないぞ俺は!!!

 

「エクセレント!確かに3歩歩いたら物事を忘れそうな貧相な脳みそを持っていそうですわね!」

「違う!俺が言いたかったことはそうじゃない!!!」

 

花が咲いたような笑顔で何いってんだこの人は!?

 

「てめえら…馬鹿にしてんのか?」

 

やばい。この2人組み剣に手を添え始めた。ここはもう、プライドやらなんやらを全て捨てるしかない。

 

「いえ、違います。すみません。頭を下げます。謝罪します。なんならここで土下座しましょうか?」

「リッカ。何処の国に家畜に頭を下げる者がいるのでしょう。少なくとも私の国はいませんでしたわ。地に這うのはこの愚か者達の仕事でしょう?」

「俺が聞いてる限りガレットさんにも何割か悪いところありますからね?!」

「あら、そんなこともわからないでこんな挑発をしているとでも思ってらしたの?」

「余計タチがわるい!!!」

 

 

 

 

「やめねえかてめえら!!!!仕事の邪魔だ!!!!!やるなら他所でやれ!!!!!」

 

お、件のガルディア登場か。よし、収めろ収めろ。俺にはもう無理だ。仕事の邪魔だというならちゃんと仕事をしてくれ。ここを収めるという管理職の業務をな。

 

「ん?てめえは昨日のガキじゃねえか」

「どうも。昨日振りです」

「………おいお前ら。こいつには手をださねえ方がいいぞ。今こいつの元にはハンニバルがいる筈だからな」

 

 

「な…………あの守銭奴と知り合いなのか…」

「…………あの変態科学者と知り合いなのか」

 

「…あいつはギルドでどう思われてるんだ?」

「むしろこのギルドを牛耳ってるな。ギャンブルで負けた奴に片っ端から契約紋描いて配下に置いてる。皆あいつに借金があるんだ。なあ、お前らもそうだろ?ハンニバルに言いつけてやろうか?」

「あ、逃げた。ビックリするぐらい速いな。…でもなんであんた、なんでハンニバルがが俺の元に居るって知ってるんだ?」

「………無理矢理だが…………あいつに奴隷紋(スレイヴ)を描いたからな………」

 

こいつが諸悪の根源か。許さない、絶対にだ。

 

「あんたの仕業か」

「悪い。断れなかった。わかるだろ」

「わかる」

 

「…何かお邪魔みたいですわね?私は向こうで依頼を受けてきますわ。リッカ、助かりましたわ。意外に人脈がありますのね。またいずれお会いしましょう!」

 

………あの人つまらなくなったから逃げたな。顔でわかる。さっきまでの楽しいそうな表情から一変してクールそうな表情を装っている。なんつー性格してるんだ。あれで王女かよ。

 

「リッカとか言ったか。ガレット嬢と知り合いなのか。何者だお前は」

「ただの田舎もんだよ」

 

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