刻の召喚士   作:jnsto

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第59話「お兄ちゃんと妹」

「、勢いで付いていくと決めたが、お前達にもそのようなことがあったのだな」

「勢いで決めるなよ」

 

とりあえず一緒に旅をすることになったわけだし、シュワルツにもアラハンで何が起こったかを話しておいた。……場の雰囲気に流されて迎合するから行動を共にすることになったんだぞこのたわけが。本人がそれでいいのなら別にいいが。

 

俺達は竜丿墓(ドラゴンベッド)から王都に帰り始めていた。とは言え今はもう夜の10時程。出てくる時に母さんに遅くなることは伝えてあるけど大丈夫だろうか。……まあ大丈夫か。19歳の上級冒険者と30歳位になっている筈の元勇者がいるし。

 

19歳の変態と30歳のおっさんに家まで送られる15才の少歳、と表現すると一気に犯罪臭が漂うが。

 

キィンには俺とラーク、グーギにはココとリティナ、ドォラにはハムリンとガレットが乗っている。シュワルツは乗せようがないから歩きだ。恐らく一番体力は有り余ってるだろうし大丈夫だろ。ゆっくり目に移動してるし。エジプトでラクダに乗る時ってこのくらいのスピードなのかな。

 

「そうだぞスクラップ。確かに私達の目的は打倒アレクサンダーだ。だが。貴様に命を賭す覚悟があるとは言え、私と同じく愛する人の奴隷になるんだ。ちゃんと考えて決めろ」

「ハンニバルさんがそうなった理由の大半を占めている気がしますが……あなたも勢いで奴隷になったようなものではないですか」

「私はちゃんと貞操を捨てる気で臨んでいるからな。小娘やスクラップとは覚悟が違う」

「な、ボ、ボクだって……!」

「……、お前は奴隷に何をさせる気なんだ……まぁ15歳だしな、そう時期ではあるが」

「何もしないから。……お前が俺達について来る本当の目的は、王都の中に入ってちゃんと治療を受けたいってところか?」

 

その身体ではまともに人里に入ることは出来なかっただろう。身体の機能もほとんどが蒸気機関を動かすために使われているとも言っていた。自然治癒力も最小限以下になっているのかもしれない。

 

「、む。よくわかったな。まず身体を癒したい。だが勿論、旅にはついていくつもりだ。旅に出るのは身体が癒えた後でもいいか?」

「ああ。病人連れて旅行する気はないよ。回復薬いるか?」

「、馬鹿を言うなよリッカ。この身体に回復薬などつけてみろ。自分で掻くことすらできず痒みに対して身を悶えるしかない……地獄だ」

「そうか。なら王都で天国を見せてやろう」

 

回復薬屋のおっさんの薬の出番だな。痒くならない回復薬。売れる気しかしない。それを今後も安く仕入れられる可能性があるというだけであのおっさんの補助をした価値はあった。

 

「、布団でも用意してくれるのか?」

「全身にこれでもかっていうくらい回復薬を塗りたくってやるよ」

「あ、それならボクも手伝うよ。回復魔法も一緒にかけられるし」

「私も手伝ってやろう。試しに1カ月に分けてじっくり塗ってみるか」

「、お、お前ら鬼か!」

 

ココのは普通に優しさだと思うが、ハムリンのは完璧に意地悪だな。流石変態。想像しただけで精神が崩壊しそうだ。人間、痛みにはある程度耐えられるものの、痒みには耐え切れないものよ。

 

 

 

 

「ーーココ。その女の人ギルドで見覚えがあるけど……奴隷ってどういうこと?」

「あー……えーと……別に話しても長くなるわけじゃないんだけど、理解がしづらいっていうか……」

 

脅されて奴隷にした。確かにそれだけなのだが面倒な方向に話が向かいそうだな。阻止しなければ。

 

「それはな青小娘、私は自らの意思で愛する人の性奴ーー」

「ーー脅されて仕方なく奴隷にしただけだ。やましいことは何もしていないし、これからするつもりもない!」

 

いきなり出てくるなこの変態がツインテールの中に納豆押し込んで水戸名物にするぞ。

 

「……それはそれで如何なものかとも思いますわ。リッカは甲斐性がありませんのね」

「いや、リッカは甲斐性の塊ですよ」

 

おやおや? 最近ちょっと生意気になってきたなあラーク……?

 

「お前が言うな。ファンクラブの女の子達の誕生日に花束を贈っていたことばらすぞ」

「リ、リッカ!? なんで知ってるんだ!? あ、あれは僕も貰ったからお返しをしているだけであって別に……ていうか既にばらしてるじゃないか!」

「ラーク? ワタシ、それ、知らないけど?」

 

いいぞいいぞーこの調子この調子ーもう俺はいじられたくないぞー全部他にパスしてやるぞー

 

「なんだこの青小娘は。逆ハーレムでも狙っているのか。そこの赤小僧はどうでもいいが、愛する人は私の物だ」

「違います! ボクの物です!!」

「俺は物じゃないです」

 

くるなーもうくるなー俺の話を出すなーまだちょっと頭痛するんだからー

 

「あら、では余り物のラークはわたくしが頂こうかしら?」

「ぼ、僕も物ではありません!」

「……、オレは物に入るのだろうか」

 

もうこれは乱戦だな。いつ飛び火してくるかわかったもんじゃない。このままラークと一緒に王都まで一騎駆けして愛の逃避行でもしようかな。

 

 

 

 

「……ラ、ラークもリッカもワタシの幼馴染だもん!どっちもワタシの物なんだから!!!」

 

「「「「「「…………」」」」」」

 

 

 

 

ーー飛び火どころか爆弾ぶち込んで来たな。まさかリティナから来るとは。暗いから良くわからないけど赤くなってる気がする。まあ思春期だもんな、そういうものにも興味がある年頃だろう。お兄ちゃん、ちゃんとわかってるからな。

 

幼い頃からずっと3人で遊んでたんだ。途中でココが入ってきたとは言え、俺もラークも、リティナからすれば俺達は兄みたいなものだ。俺と違ってラークは本当にリティナの義理の兄だけど。

 

自分のお兄ちゃん達が他人に取られるのであれば、それはもうブラコンの妹にとっては大問題だ。

 

因みにリティナのブラコン具合は半端ない。ココ以外の女の子と遊んでるとこも見たことない。今でこそココとはなんでも話し合える仲になってはいるが、最初は喧嘩しかしてなかった。ずっと"リッカリン返して"や"ラーク取らないで"ばかりだったなあ……だからこんなゆが……厳しめな性格になってしまったんだろうか。

 

まだ15歳。この世界では同じ15歳の俺が言うのもあれだが、まだまだ子供だ。独占欲なんてあって然るべきだろう。……まぁラークは信頼できて大好きな兄。俺は割とどうでもいい部類ぐらいの立ち位置なのだろうが。

 

「この青小娘、敵だな」

「ええ。ボクのライバルですから」

「欲張りですのね。まあ、その方が奪い甲斐がありますが」

「あ、あげないわよ!」

 

アニメでよく見たような身体を綱に見立てた綱引きならラークで好きなだけやってくれ。俺は疲れたから帰って寝る。惰眠を貪る。……あ、この巨人を母さんに説明しなきゃいけなかったな。

 

「……これ、どうするリッカ?」

「とりあえず間に入ると面倒なことになりそうだから無視だ」

 

わーわー騒いでいるが面倒なことにはもう首を突っ込まない。今日は少しやんちゃし過ぎた。色々と反省しないとな。

 

「ーー大体おかしいだろ!今回アラハンから来た勇者と魔法使いは兄妹と聞いているが!」

「ラークは確かに兄だけど血の繋がりなんてないもの!」

「な……義理の妹だと……!」

 

なるほど。男の俺にとって義理の兄という言葉はどうでもいいが、それが義理の妹になると一気にいけない香りが芳醇に漂ってくるな。まるで蜂蜜をかけた温かいホットケーキのような。……これどんな比喩をしても悪い方向にとられそうだな。

 

 

 

 

「俺と出会ったばかりの頃……リティナはまだラークお兄ちゃんって呼んでたよなあ……なぁ?ラークお兄ちゃん?」

「……ねえリティナ!リッカのファーストキスの話なんだけどさ!!」

「ばっやめ……!」

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