Road to death —死への道— 作:みんみん
「起きなさい、早く!」
耳元で怒鳴られ、わたしは飛び起きた。目をこすり、声の主を見る。
「ペチュニア、叔母さん?」
「そうよ!なんでうちの庭にいたのか知らないけど出て行ってちょうだい!」
「そんな!」
泣き付こうとしてもペチュニアは出て行け、と怒鳴る。わたしは脱がされていたパーカーを羽織り、ベルトに手を伸ばした。
「何をやっているの?」
「武器の確認だよ、叔母さん。さっき殺人鬼に襲われたばかりなんだ」
ナイフを確認し、足首と背中に痛みを感じながら起き上がる。
しかし、ペチュニアは顔をしかめた。
「武器ですって?そんなものいらないでしょ、平和な世の中よ」
ペチュニアはベルトからナイフを抜き取った。その他怪しまれるものは置いて行ってちょうだい、と言いながら。
首を振って否定し、仕方ないので代わりに何か布を要求する。ペチュニアは怪しみながらも日本の「手拭い」を持って来てくれた。
「ありがとう、もうここには来ないよ。たぶんね」
非情な世の中に嘆きつつ、ダーズリー家の裏庭に出してもらい、真っ暗な中茂みに潜む。手拭いで挫いたらしい足首を固定する。明日の夜まではここに居させてもらおう。そう決意し、目を瞑る。
朝になり、昼が過ぎ、夜になった。
茂みから出てここから離れた場所に行こうとするが、ガチャリという音が聞こえ咄嗟に身を隠した。
裏口から出てきたのは、ペチュニアだった。
彼女は辺りを見回し誰も居ないのを確認すると、裏庭の片隅にしゃがみ込んで何かをしていた。ペチュニアが立ち去ると、わたしはそこに近付く。土を掘ったような跡が見え、そこを掘り返してみた。
埋めてあったのは、昨日ペチュニアに取り上げられたナイフだった。ご近所の目もあり、捨てるわけにはいかなかったのだろう、隠す手段として埋めることを選んだのだ。わたしはそれを取り出し、元あったように土をかぶせた。
これで武器は取り返せた。あとは水と食料と金、それらを入れる袋が必要だ。
そう考えたわたしはダーズリー家に忍び込むことにした。ヘアピンでピッキングして裏口のドアを開け、中に入る。ダーズリー家には6歳くらいのころ、数週間しか居なかったがまだその間取りは覚えている。わたしは躊躇うことなく物置に入った。
ここは少しの間わたしが過ごした部屋だ。ダーズリーはわたしのことを思い出さないためにもまったくここには立ち入っていないのだろう、埃だらけだった。しかし、わたしがいたときから内装がまったく変わっていないため、もしやと思いベッドの下を覗き込んだ。
奥の方に、ビニール袋に包まれた何かがある。音を立てないように気を付けながら引っ張り出すと、それはわたしのリュックサックだった。
これで袋は手に入った。次は食料だ。
キッチンに忍び込み、パンと果物を躊躇いなくリュックサックに放り込んだ。ミルクの大きな瓶を取り出して残りをすべて飲み干し、中を洗ったあと浄化された水を目一杯入れる。これだけなら、我が従兄弟がお腹が空いて食べたとでも錯覚してくれるだろう。
リビングに入り、たくさんある棚のうちひとつの引き出しを開けた。色々な物が入っているがそれらを一旦取り出し、床に置く。引き出しは空になったが、わたしはその中に手を入れて
すべての引き出しから20ポンド札を抜き取り、ポケットにねじ込む。そして2階へ向かった。
従兄弟ダドリーは部屋を2つ持っているので、物置と化した2つ目の部屋に入る。ダドリーが壊したであろうおもちゃや機械類が一杯だ。わたしは機械から使えそうな部品だけ外し、リュックサックに入れる。ダドリーが飽きたらしいパーソナルコンピュータは丸々リュックサックにしまった。水やコンピュータで荷物がかなり重くなってしまったが収穫はある。わたしは満足して窓から飛び降りた。
「よし、しばらくは目立たずコソコソ過ごすとして。新しい服を買って、バイト先を見つけなきゃな。それで生計を立てよう。前のハンバーガーショップではダドリーに見つかっちゃったし、どこか遠くへ行くか」
ひとりごとを呟きながら整備された道を歩く。目的地はロンドンだ。
「ロンドンに着いたら食料食べて、いい店を探そう」
わたしは久しぶりに笑顔だった。