Road to death —死への道— 作:みんみん
「えーと、とりあえず美味しいもの全部」
「はいよ、お嬢ちゃん。全部で5ガリオン」
「サンキュ」
車内販売で魔女から買ったお菓子類を座席に広げる。
定番のカエルチョコから始まり、かぼちゃパイやスポンジケーキを経て最後を百味ビーンズで終える。
言いたいことはただひとつ。美味い。
赤毛一家の六男、ロナルド・ウィーズリーもちゃっかり一緒に食べてるが、気にすることはあるまい。金庫にぎっしりお金詰まってたし。
というかあっという間に食べてしまった。少なくともあと30分は持たせるつもりだったのに。
後悔したって全く意味はないので、ローブから杖を取り出す。
(『ヴェーディミリアス、現れよ』)
隠れているものを出現させる呪文を無言呪文で行使する。杖先が円を描くように振ると、そこの風景が丸く切り取られたように消え、穴となる。穴に手を突っ込み、中を手で探った。
この呪文は本来、透明になっているものを出現させたりする呪文なのだが、認識次第で色々な使い道がある。
例えば、今わたしがやったように『隠れている異空間を出現させる』と考えれば異空間が現れるのだ。魔法って便利。
もちろん他人がこの空間に干渉出来ないよう『認知不可能呪文』を即座にかけたが。本屋とは本当に役に立つものである。
わたしは異空間からDルートを通じてとあるマグル宅のキッチンの中へお邪魔した。
Dルートとは何かって?darkルートに決まってるじゃないか。とあるマグル宅とは言わずもがな。
とあるマグル宅のキッチンでは、冷蔵庫の前に急に空間の穴が出来、そこから腕が一本出て冷蔵庫を開けて中を探っている様子が見受けられるだろう。そして、豚が悲鳴をあげているのが手に取るようにわかる。
見つけたアイスクリームとスプーンを頂戴し、わたしは異空間を閉じた。
驚いて目を白黒させるロンをスルーし、バケツサイズのアイスクリームを舐める。
食べ終わったらマグル宅の流し台に放り込んでゴミ処理完了だ。
暇だぁ……。
*ロンside
不思議だ……。
それは、一番最初に思ったことだ。
別に魔法が不思議だというわけではなく、相席している女の子が不思議なのだ。
魔法界を救った英雄、ハリエット・ポッターが。
肩までの黒髪に、中性的で整った顔立ち。ボーイッシュとまでは言えないが、女らしくないあっさりとした性格。
何より、その眼。ミッドナイトブルーのその瞳は異常だった。何が、とは説明出来ないが、とにかく異常だ。
人間ではない眼。獣の眼。
僕の頭にはその言葉しか浮かばなかった。
あの眼は本気のヤバい眼だ。本能的に敵を殺し、自分だけのために尽くす眼。
魔法使いの監獄、アズカバンに居るような闇の魔法使いとはまた違う、しかし何処か似ている眼に僕は震えるしかなかった。
しばらくすると車内販売の魔女がやって来てお菓子を売る。
僕にはその時のハリーの眼が普通に戻った気がした。普通の、綺麗な眼に。
だから僕は親睦を深めようと、ハリーと二言三言話しながらお菓子を食べた。
その後ハリーは杖を取り出した。
一瞬杖を向けられたのかとヒヤッとしたが、ハリーはただ魔法を使うだけみたいだ。
杖を一振りし、穴の空いた空間に手を突っ込んで出すと、その手にはバケツサイズのアイスクリームがあった。
驚いてあんぐりと口を開けていると、ハリーは僕の行動を意図的にスルーしながらアイスを食べていた。
ゴミをどうするのかと見ていたら、また別の空間を開いてそこに放り込んでいた。
流石英雄、なのか、彼女の訓練の賜物なのかはわからないが、やはりハリーは不思議な存在だった。
さてさて。
お腹いっぱいだし寝るか。それとも本を読むか……。迷うところだ。
とりあえず異空間から幾つか本を見繕って取り出す。上級者向け呪文集と、魔法用語の解説書。出来れば今年、遅くても来年までにコンプリートしたい。
じゃないと命がヤバい気がする。長年の勘だ、信用出来る。
わたしは杖の振り方を練習しながらぼんやりと窓の外を眺めた。