問題児たちと策士の姉弟が異世界からやってくるそうですよ?ネタ切れ中 作:零雫
────〝ノーネーム〟・居住区間、水門前。
六人と一匹は廃墟を抜け、徐々に外観が整った空き家が立ち並ぶ場所にでる。
六人はそのまま居住区を素通りし、水樹と呼ばれる苗を貯水地に設置するのを見に行く。
貯水地には先客がいたらしく、ジンとコミュニティの子供達が清掃道具を持って水路を掃除していた。
「あ、みなさん!水路と貯水地の準備は調っています!」
「ご苦労様ですジン坊っちゃん♪皆も掃除を手伝っていましたか?」
ワイワイと騒ぐ子供達が黒ウサギの元に群がる。
「黒ウサのねーちゃんお帰り!」
「眠たいけどお掃除手伝ったよー」
「ねえねえ、新しい人達って誰!?」
「強いの!?カッコいい!?」
「おなかすいたー」
「YES!とても強くて可愛い人達ですよ!後、最後の子はあとにしましょう」
パチン、と黒ウサギが指を鳴らす。
すると子供達は一糸乱れぬ動きで横一列に並ぶ。
数は二十人前後だろう。
中には猫耳や狐耳の少年少女もいた。
(マジでガキばっかだな。半分は人間以外のガキか?)
(じ、実際に目の当たりにすると想像以上に多いわ。これで六分の一ですって?)
(・・・・・・・・。私、子供嫌いなのに大丈夫かな)
(うーん子供かわいいなぁ、、、)
(おぉ!天使だ!天使がいる!)
五者五様の感想を心の中で呟く。
コホン、と仰々しく咳き込んだ黒ウサギは五人を紹介する。
「右から逆廻十六夜さん、久遠飛鳥さん、春日部耀さん、零さん、無花さんです。皆も知っている通り、コミュニティを支えるのは力のあるギフトプレイヤー達です。ギフトゲームに参加できない者達はギフトプレイヤーの私生活を支え、励まし、時に彼らの為に身を粉にして尽くさねばなりません」
「あら、別にそんなのは必要ないわよ?もっとフランクにしてくれても」
「駄目です。それでは組織は成り立ちません」
飛鳥の申し出を、黒ウサギはこれ以上ない厳しい声音で断じる。
今日一日の中で一番真剣な表情と声だった。
「・・・・・・・・・・・・そう」
「「おぉ、黒うさぎがちゃんとしている!」」
「黒ウサギはいつもちゃんとしています!」
黒ウサギは有無を言わさない気迫で飛鳥を黙らせる。
それは今日までの三年間、たった一人でコミュニティを支えていたものだけが知る厳しさだろう。
飛鳥は同時に思ってしまった。
自分に課せられた責任は、飛鳥が思っていたものより遥かに重いのかもしれないと。
「此処にいるのは子供達の年長組です。ゲームには出られないものの、見ての通り獣のギフトを持っている子もおりますから、何か用事を言い付ける時はこの子達を使ってくださいな。みんなも、それでいいですね?」
「「「「「「「「「「よろしくお願いします!」」」」」」」」」」」
キーン、と耳鳴りがするほどの大声で二十人前後の子供達が叫ぶ。
四人はまるで音波兵器のような感覚を受けた。
「ハハ、元気がいいじゃねえか」
「そ、そうね」
(・・・・・・・・・。本当にやっていけるかな、私)
「みんな、これからよろしくね♪」
ヤハハと笑う十六夜、子供達に笑いかける無花、
複雑そうな顔をする飛鳥と耀、
零は何かに悶えているようだ、、、おいておこう、、、
「さて、自己紹介も終わりましたし!それでは水樹を植えましょう!黒ウサギが台座に根を張らせるので、十六夜さんのギフトカードから出してくれますか?」
「あいよ」
長年水が通っていない水路だが骨格だけは立派に残っている。
しかし所々がひび割れして砂も要所に溜まっていた。
流石に全ての砂利を取り除くのは難しかったのだろう。
耀は石垣に立ちながら物珍しそうに辺りを見回す。
「大きい貯水地だね。ちょっとした湖ぐらいあるよ」
『そやな。門を通ってからあっちこっちに水路があったけど、もしあれに全部水が通ったら壮大やろなあ。けど使ってたのは随分前の事なんちゃうか?どうなんやウサ耳の姉ちゃん』
黒ウサギは苗を抱えたままクルリと振り返る。
「はいな、最後に使ったのは三年前ですよ三毛猫さん。元々は龍の瞳を水珠に加工したギフトが貯水地の台座に設置してあったのですが、それも魔王に取り上げられてしまいました」
十六夜と無花はキラリと瞳を輝かせた。
「「龍の瞳?何それカッコいい超欲しい。何処に行けば手に入る?」」
「さて、何処でしょう。知っていても二人には教えません。ていうか、美月さんってそんなに好奇心旺盛でしたっけ!?この中で一番マトモそうでしたのに!ていうか何で知らないんですか!?」
「黙らっしゃい!」
この二人に教えれば最後、確実に挑みに行くだろう。
流石に龍を相手に一人で挑まれては助けようもない。
黒ウサギは適当にはぐらかし、ジンが話を戻す。
「水路も時々は整備していたのですけど、あくまで最低限です。それにこの水樹じゃまだ貯水池と水路を全て埋めるのは不可能でしょう。ですから居住区の水路は遮断して本拠の屋敷と別館に直通している水路だけを開きます。こちらはみんなで川の水を汲んできたときに時々使っていたので問題ありません」
「あら、数㎞も向こうの川から水を運ぶ方法があるの?」
苗を植えるのに忙しい黒ウサギに代わって、飛鳥の問いに答えたのはジンと子供達だ。
「はい。みんなと一緒にバケツを両手に持って運びました」
「半分くらいはコケてなくなっちゃうんだけどねー」
「黒ウサのお姉ちゃんが箱庭の外で水を汲んでいいなら、貯水池をいっぱいにしてくれるのになあ」
「……そう。大変なのね」
飛鳥がちょっとガッカリしたような顔をした。
もっと画期的で幻想的な方法を想像していたからだろう。
しかしそんな方法があれば黒ウサギ達も水不足で頭を抱えることもなく、水樹の苗一つであれほど大歓喜することもなかったはずだ。
黒ウサギは貯水池の中心にある柱の台座まで大きく跳躍すると、様子を見ていた十六夜に顔を向ける。
「それでは苗の紐を解いて根を張ります!十六夜さんは屋敷への水門を開けてください!」
「あいよ」
十六夜は貯水池に下りて水門を開ける。
黒ウサギが苗の紐を解くと、根を包んでいた布から大波のような水が溢れ返り、激流となって貯水池を埋めて行った。