俺とシノンのお隣さんライフ   作:ラビ@その他大勢

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クーの初戦闘

俺がデパートで買った銃は、ハンドガン《ガバメントM1911A1》一挺。選んだ理由はとても単純で、見た目が個人的に気に入ったからだ。シュピーゲル曰く、この銃は世界的に見てもかなり有名な銃らしく、色々なアニメや漫画で使われているんだとか。もしかしたら、何かのアニメで見たから印象に残っていた……なんてこともあるかもしれない。

 

因みに、防具の値段をかなり削減したものの、金が全然足りなかったのでこれ一挺しか買えなかった。……その上、銃を買うために防具を削減しすぎたため、俺が今着けている防具は薄手の防弾ジャケット一枚のみ。銃と予備弾倉を買ってしまうと、残った金額では対プレイヤー必須アイテムとも言える対光学銃防護フィールド発生器すら買えなかったのだ。

 

――お金ってやっぱり大事なんだなぁ……。

 

なんてしみじみと考えつつ、シュピーゲルに案内されるがまま彼が予め調べておいたという『モンスターが弱いフィールド』へと向かっていると。小さな丘陵を登りきった時、不意に目の前でシュピーゲルが立ち止まった。こちらへと振り向き、ニッコリと微笑む。

 

「着いたよ」

「……漸くか」

 

俺は、丘から下に広がる景色を眺めて小さく頷いた。目の前に広がる茶色い荒れ地には、だがしかしほんの微かに水場があり、その周りには浅く草が生えていた。水場にはダチョウのような体型の鳥型モンスターが三匹ほど集まっており、喉の乾きを潤すためか一心不乱に水に顔を突っ込んでいる。

シュピーゲルは、そんな動物の姿をチラリと一瞥した後、俺の言葉に頷く。

 

「うん。――じゃあ……まずは、あそこで水を飲んでる鳥型モンスター三匹を狩ろうか。肉食だからこっちに攻撃してくるけど、その分経験値も多いし、動きが遅いからかなり狙いやすいと思うよ」

「ほい、了解」

 

群れなのだろうか、三匹ほど固まって無警戒に水を飲んでいる鳥型モンスターに後ろから静かに近付き、彼我の距離が30mくらいの所まで行くと銃の安全装置を2つとも外した。弾倉に弾丸が入ってることを確認しながら一度コッキングし、確りと両手で銃を構える。息を整えながら引き金に指を当てると、照準器を覗き込む俺の視界に収縮を繰り返す緑色の円が表示された。着弾予測円。このまま撃てば、この円の中の何処かに銃弾が当たる、というものだ。

 

深呼吸で鼓動を落ち着けながら、その円が最も小さくなったタイミングで引き金を引く。銃口から放たれた11.43×23mm弾は、夢中になって水を飲んでいた鳥型モンスターの丸い体に見事命中し――少なめに設定されていたらしいそのHPバーを見事に削りきった。

 

「ガグァッ!」

 

――と、近くで仲間が倒れたことに反応した残りの二匹は水を飲むのをやめ、威嚇の鳴き声を上げながらこちらへと振り向いた。俺の姿を確認し、バタバタと走りながら突っ込んでくる。

 

シュピーゲルの言っていた通り、動きはかなり遅かった。軽く右に避けて、すれ違い様に頭に銃撃。ここまでの至近距離だと、システムアシスト有りなら幾ら初心者でも外す方が難しい。命中したのは見事に弱点だったようで、情けない断末魔を上げながらポリゴンが爆散。勇ましく再び突っ込んできた最後の一匹もすぐに後を追うことになった。

 

「これで終了……っと」

 

息を吐いて肩から力を抜くと、後ろからパチパチと手を叩く音がした。勿論、音の主はシュピーゲルだ。

 

「うん、流石にVR慣れしてるだけあって動きは軽いね。……これだけ出来たら、プレイヤーと戦ってみるのも有りかも」

「流石に早くないか?」

「何事も経験だよー?」

 

誰かとゲームをするのがそんなに嬉しいのか、くすくすと心底楽しそうに笑うシュピーゲルを見て、俺は小さく肩を竦めた。

 

――普通にゲームしてる分には良いやつなんだがなぁ……前科があるから信用しきれない……。

 

前科も何も新川くんはこの世界ではまだ何もやっていないのだが、それに突っ込むものは誰もいなかった。

 

 

因みに、プレイヤー戦では特に問題もなく、一日中荒野をさ迷った結果――合計五人ものプレイヤーをキルすることが出来た。初期からこのゲームをやっているシュピーゲルについてきてもらっていたとは言え、取り敢えず本日のプレイ結果は上々と言えるだろう。

 

 

 

 

そして、現在。街の中の小さな酒場にて。俺とシュピーゲルは酒を飲み交わしていた。『酒』と言っても、所詮ゲーム内のアイテムなので酔うことは決してないのだが……未成年でも飲める上、雰囲気を味わうことは出来るのだ。

 

「く、クーは接近戦凄く強いね……」

「……もう近接戦闘はやりたくない」

 

度重なる近接戦闘で完全に疲れきっていた俺は、ぐったりとテーブルに突っ伏した。何故俺がここまで疲労しているのか、と言うと。戦った5人のプレイヤーの内、4人とは意図せず近接戦闘になってしまったのだ。……その上、位置取りが悪いのか戦うのは何故か殆ど俺だけ。その結果、超至近距離の銃弾の回避を数回も連続して行わなければならなくなってしまったために俺の精神が磨り減らされ――こうなっているわけだ。

 

テーブルに突っ伏してぶつぶつと愚痴を漏らす俺に苦笑いを浮かべ、シュピーゲルは小さく肩を竦める。

 

「プレイヤースキルが高いのは良いことだよ」

「……だと、良いんだけどなぁ」

 

俺は小さく溜め息をつき、そうボヤいた。




銃紹介
《ガバメントM1911A1》
装弾数 7発
重量  1.1kg
弾――.45ACP弾
ストッピングパワー(目標を行動不能にする能力)が高いものの、物質貫通力は低い。非常にカスタムしやすい。

登場作品
『暗殺教室』――エアガンとして登場
『緋弾のアリア』――アリアがステンレスとスチールの二丁を使用。
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