俺とシノンのお隣さんライフ   作:ラビ@その他大勢

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お待たせしましたー。


シノンの実力

「……ホントに想像以上だよ」

 

伏射姿勢のまま、驚くべき集中力でドラグノフのスコープを覗き続けるシノンを見つめ、俺は脱力したように息を吐いた。

 

シノンがゆっくりと引き金を引き絞るのと同時、ドラグノフから放たれた7.62mm弾が500m先をカタカタとぎこちなく歩いていた機械人形のセンサー部を撃ち抜く。機械人形は倒れ、ポリゴンの破片を撒き散らして爆散。

そこまでを撃った姿勢のまま微動だにせずにドラグノフのスコープで無感情に眺めていたシノンは、ここでようやくレンズから目を離して体を起こすと、俺に視線を向けた。

 

「さっき、何か言った?」

「いや、何も。……ってか、これで何体目だ? 10機越えた辺りからカウントやめてんだけど俺」

 

別に本人に言うような事でもない。適当に誤魔化して俺が腰に手を当てながら言うと、シノンはウインドウを開き、ストレージ内のマガジン数を数えながら

 

「えーっと……そうね。今のがマガジン4つ目に変えて5回目の射撃だから……」

「撃ったのは35発くらいか。……外れたのは12発ぐらいだけだから……」

「大体23体?」

「……シノンってホントに初心者なんだよな?」

 

スナイパーに必須な『着弾予測円の収縮を抑える』等のスキルを取っていないのに、3分の2程もの弾を当てるシノンの狙撃能力に戦慄する。

まだ500mという中距離だとはいえ、原作で2000m近い狙撃を苦もなく成功させていた実力は紛れもないということだろう。

 

「意外と当たるものなのね」

 

そんなことを手元のドラグノフに向けて呟くシノンに、俺は乾いた笑いを浮かべる他なかった。と言うのも、俺の遠距離射撃能力はそこまで高くない。この前銃マニアの重課金兵である知り合いの女性に借りて撃たせてもらった割りと命中率が高いアサルトライフルでさえ、スキルを使って大体400mまでしか必中させることはできなかったのだ。遠距離射撃があまり得意でないとは言え、もう少し精度は上げておきたい。

……頑張って育成しなきゃシノンに置いてかれるかもなぁ……。

なんてことを考え、俺は深く溜め息をつき混じりに首を振る。

 

「いや、シノンの狙撃適正が高すぎるだけなんだよ。普通スキル無しでこんな命中はさせれねーもん」

「そうなの?」

「そうなの」

 

こりんと首を傾げるシノンに大きく頷いてみせる。命中率が高いのが普通だと思ってもらっては俺が困る。例えば俺の場合だと、30m以内での戦闘中、弾丸の命中率は6割。これでも相当高い方なのだ。

まあ、狙撃と近接戦闘と言うだけでかなり差は出るものなのだが。

 

「残りの弾倉は何本くらいだ?」

「これの次でラストね」

「んー……じゃあそろそろ終わりにするか。まだ初日だしな」

「了解」

 

シノンは頷き、ドラグノフを肩に掛けた。俺も、結局出番の無かったガバメントを腿の辺りに付けてあるホルスターに仕舞うと、グロッケンへと戻る道のりをゆっくりと歩き始めた。

 

 

 

そして、その帰り道の途中。俺とシノンは、何となくとりとめの無い話を交わしながら歩いていた。

PK推奨のGGOの中なのに気を抜きすぎだと思われるかもしれないが、俺たちが行っていた人形狩りは本当に初心者用のチュートリアルみたいなものだ。大したドロップ品や金が無い以上、ここからの帰り道にPK専門のスコードロンと出会うことなどそうそうない。

一応双眼鏡で時々辺りを見回しはするが、狙撃等で殺されて『死に戻り』しても、別に気にならないレベルの出費にしかならない。

だから、意識がどうしても会話に割かれてしまうのは仕方の無いことだと言えた。

 

 

 

砂塵がもうもうと立ち上がる橙色の荒野を歩きながら、双眼鏡片手に交わすのは何てことのないリアルの話。

VR世界でリアルの話をするのはタブーだが、色々話したいこともある。周りに人影も無いし、まさか今この時期に原作で死銃が使っていたような光学迷彩を使えるヤツもいないはずだから、多分大丈夫だろう。

 

「……でも、クー、いつの間にか友達出来てたのね」

「あ、うん? 俺が友達作ってちゃおかしいか?」

「ううん。でも、中学のときは私のせいで友達居なかったでしょ?」

 

隣を歩くシノンの声に少し寂しさが籠ったのが分かって、俺は軽く肩を竦める。

 

「シノンのせいじゃないって。俺はわざと友達作らなかったんだし」

「どういうこと?」

 

シノンがこちらを見つめて小首を傾げる。俺は軽く自嘲的な笑みを浮かべた。過去を思い出すように虚空を仰ぎながら

 

「ぶっちゃけ、話が合う奴が居なかったんだよ。詩乃と一緒に居れればそれだけで良かったしな」

 

世代が違うからなのか、中学校のときの同級生とは全然話が合わなかったのは事実だ。転生者なのだから仕方がないのかもしれないが「そんなのもあったなぁ」と懐かしむ箇所に他人と大きくズレがあり、色々と疲れた覚えがある。

だから、他の同級生とは何となく一線を引いていたところがあったが……別にそれは詩乃のせいではない。

 

「……ふ、ふーん。そう」

「……ん? どうかしたか?」

 

まさかそれが伝わったわけでもないだろうが、突然シノンは俺から顔を背け、ぶっきらぼうに答えた。何故か水色の髪からのぞく耳が真っ赤になっている。

真意を測りかねて俺が首を傾げると、シノンは何かを誤魔化すように首をブンブンと勢いよく横に振る。

そして、話を逸らすように俺へと視線を向けないまま、呟く。

 

「……あ、そう言えば。私にも友達出来たのよ」

「へぇ、どんな奴?」

 

原作では詩乃に新川以外の友達が居た覚えは無いのだが……原作改変が起こってしまったりしたのだろうか。まあ、何にせよ俺にはそうそう関係のあることではないだろう。そう高をくくって何てことのないことのように俺が聞くと、シノンは心無し胸を張って小さく微笑む。

 

「えっと……遠藤さんとか」

 

……あれ? 何か聞き覚えのある嫌な名前が。

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