俺とシノンのお隣さんライフ   作:ラビ@その他大勢

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遠藤への対策 Ⅰ

もしかしてと考え、シノンから詳しく話を聞いている内に俺の中の疑いは確信へと変わっていった。

 

そう、……遠藤さんというのは原作にいた詩乃に嫌がらせをしていた嫌な感じの女子だ、という確信へと。

新川ばかりを警戒して、完全に遠藤達のことを忘れていたことについて実に間抜けな自分を攻めたくなるが、今はそれよりも彼女をどうするかを考えるべきだ、と頭を振って思考を切り替える。

 

この時に、俺の頭に浮かんだ選択肢としては三つ。

一つ目は、遠藤さんとの云々も原作では詩乃の成長に繋がった所が無いでも無いので、彼女を放置する。

二つ目は、遠藤さんの詩乃との接触を完全に絶ちにかかる。

三つ目は、既に渡してしまっていると言う合鍵を何とか詩乃に返してもらい、良心的で友好的な関係を詩乃と遠藤さんの間でつくってもらう、というものなのだが……。

 

一つ目は言語道断。あの郵便局を止められなかった時に、もう詩乃に『辛い思いはさせない』と誓ったのだ。こんなことで詩乃をみすみす傷つけるわけにはいかない。

二つ目は……まあこれが一番妥当だろう。デメリットは詩乃の『話すことが出来る相手』が大幅に減ってしまうことくらいか。

三つ目――これが出来たら苦労はない。だが、原作の性格と今の時期を考えると時間が足りなさすぎる。

現在はGWの真っ最中。5月の初め辺りだ。詩乃と遠藤さんの間にいざこざが起きるのは5月末の土曜日という話だったはずだから……俺が別クラスなのを考えると……うん、無理だな。

 

よって二つ目の『遠藤さんと詩乃の関係を絶つ』方法になるわけだが、問題は方法で――

 

「……でも、どうしたの? 私が遠藤さん達の話を始めた途端に様子が変わったけど」

 

不意に耳に届いた言葉で、俺の意識が思考から隣を歩くシノンへと引き戻される。俺は反射的に何でもないと首を振――りそうになってから、思い直すように口をつぐみ、数秒の思案の後に言葉を変える。

 

「……えぇっと。これ以上ここで真面目なリアルの話をする訳にも行かないからさ。これから、時間あるか?」

「え? まあ、今日はどれだけこれに時間掛けるか分からなかったから時間に余裕はある……けど。本当にどうしたの? ゆき――クー」

 

戸惑いを隠せない様子のシノンに、俺はその華奢な肩を叩くと「ま、色々とな」と軽く笑って見せた。

 

 

*******

 

一瞬の浮遊感覚が訪れ、すぐにそれはなくなった。感じる仮想世界との微妙な重力の差に違和感を感じ、顔を軽く顰めながら私は体を起こす。

そして、溜まったものを吐き出すように深く息を吐いた。つい少し前まで銃を握っていた感覚を確かめるかのように両手を開いたり閉じたりして「何か変な感じ」と呟くと、ベッドに座ったまま何とはなしに室内を見回す。

 

「確か……すぐに来るから待ってろって言ってたわね」

 

ドアのチェーンは閉めてないし、幸人は私の家の合鍵を何故か祖父から渡されていたようだから、わざわざドアを開けにいく必要も無いだろう。……何故祖父が幸人に私の家の鍵を渡しているのかは少しばかり引っ掛かったが、あの頑固な祖父のことだ。どうせ聞いても教えてはくれまい。

長時間同じ体勢でいたので、凝り固まってしまった体を少しでも解すために、うんと伸びをしようと――して私は不意に素肌を撫でた風の感覚に体を震わせた。

何事かと思い、自分の格好に視線を落とすと、その理由は簡単に分かった。アミュスフィアを買った際、幸人に『フルダイブする時はなるべく楽な格好をした方が良い』と言うアドバイスを受けたため、一番楽だと思われる下着姿でGGOを始めたのだった。

そんなことを軽く思い出しながら、私はベッドから立ち上がる。取り敢えず着替える前に、長時間のフルダイブで喉が渇いたため冷蔵庫にある水でも飲もうかとの考えだったのだが――疲労からか頭が回っていなかったのだろうか。私は、肝心なことを見落としていた。幸人が「早く来る」ということ、その意味を。

 

冷蔵庫を開けてペットボトルの水を取り出し、私が渇いた喉を潤していると、不意にガチャリと言う金属音がドアの方向から鳴った。

どうやら幸人が来たらしい。軽く視線をそちらに向けると、ドアが開き、幸人が入ってきた――のだが、彼は何故か玄関で固まってしまう。

私は軽く首を傾げた。自分で言うのも何だが、幸人とは相当長い間柄だ。まさか部屋に入るのに遠慮をしているというわけでもないだろうに。

 

「早く上がりなさいよ。大事な話があるんでしょ?」

 

私の言葉に、ハッとした幸人は顔を端から見ても分かるほどに顔を紅く染め、私から視線を逸らし、呟いた。

 

「詩乃……さん? あの……服は……?」

 

ふ……く……?

 

私は幸人の言う意味が分からず、再び首を傾げそうになって――漸く、今の自分の状態を思い出す。

 

今の私は――完全に下着姿なのだった。

 

「……あ」

 

手に持っていたペットボトルが、音を立てて床に落ちる。私は、顔にカッと血が上るのを感じた。

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