俺とシノンのお隣さんライフ   作:ラビ@その他大勢

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詩乃へのアドバイス

予選が終わった。結果だけ言おう。

俺は予選決勝でマシンガン持ち相手に敗北したものの、何とか本戦出場。一応ノルマは達成した形になった。

シノンも原作通り本戦出場が決定したが、俺と同じく予選決勝では敗北。シュピーゲルは残念ながらもやはり原作通り予選準決勝で敗退。原作とは違って俺が居ることでシュピーゲルにも微妙に影響が出ているのではないだろうか、と少しだけ神頼み気味に期待していたのだが、どうやらそれは叶えられなかったらしい。

問題の準決勝はギリギリ見ることが出来たのだが、やはりシュピーゲルはAGI型の弱点である火力不足感が否めなく、そこをVIT-STR型の相手に突かれた形で敗北していた。

やはり、一点特化ステータス型の限界。BoB予選のような一対一の闘いでは、AGI型のキャラクター達によく見られるような展開だった。

 

「ま、AGI型を2回戦で倒した俺にとやかく言える義理じゃないけど……さ」

 

俺の家の隣――要するに、詩乃の部屋。BoB予選が終わるなりログアウトした俺は、詩乃にあるお願いをするためにここへとやってきていた。置かれた折り畳み式テーブルを前に座り、詩乃が何やら用意をしている間に軽く思案を巡らせる。……その思考はどうしてもシュピーゲルの予選敗退に大半を占められていた。

 

 

 

2回戦の相手は絵に書いたようなAGI型のテンプレ。ひたすら武器や防具を軽くした結果、速度は恐ろしいレベルに昇華していたプレイヤーだった。……そう、速度は。

 

AGI特化型の戦闘スタイルは大体固定されている。速射力と回避力にものを言わせた接近戦。コレだけだ。

シンプルなだけあって難易度もそう高く無く、ほんの少しの努力で初心者でも良いところまで行けるという、前には『AGI万能論』の根幹となっていた戦い方であった……のだが。

 

今じゃそれが通用する敵は少ない。と言うより、それだけで通用する相手はBoB本戦に出られるようなプレイヤーではない、という方が正しいのだが。

 

AGIタイプに対するテンプレ的な対策は幾つかある。

例えば、回避しきれないような弾幕を張ること。

AGI型のメリットを潰し、相手の少ないHPを削ることに注力する方法だ。俺の場合はこれに当たる。

他にも、先程の戦いでもあったように、AGI型の火力不足を狙い、VITでの体力や防御力に任せた突撃を行う方法などがある。これは前者と違ってデメリットを付く戦い方だ。これをしてるのは――そうだな。一番の有名所でゼクシードだろうか。

それに対する対策も有るには有るのだが、それを行えるのは一部の実力者だけ。残念ながら、シュピーゲルはそれが出来るほどプレイヤースキルも無かったというわけだ。

 

 

 

目を瞑って色々と考えていると、トンと言う軽い音と共に目の前のテーブルにコップが置かれた。その中をなみなみと満たしているのは、最近詩乃のマイブームになっているらしい緑茶。

 

「はい、幸人」

「ん、ありがとな」

 

コップを手に取り、軽く喉を潤す。詩乃はそのままテーブルの向かい側に座り、頬杖をついて俺を見た。

 

「で、話って何? まさか明日のBoBで手を抜け、なんて事を言う訳じゃないんでしょ?」

 

冗談めかして言う詩乃だが、ある意味今から俺が頼むことと方向性自体は大差ない。軽く苦笑いを浮かべながら、俺は詩乃の瞳を真っ直ぐに見詰めた。

 

「なあ、詩乃。明日のBoB本戦なんだけどさ――」

 

一度言葉を止め、大きく息を吸う。

 

「俺はゼクシードだけを狙うつもりだ。詩乃もアイツが狙撃圏内に居たら、積極的に狙ってほしい」

 

詩乃は俺の言葉に対し、不可解そうに眉を潜めた。

 

「それは『ゼクシードに勝ちたい』とかそういうこと?」

「違う。ゼクシードを優勝させたくないってだけだ」

「騙されて金を奪われたとかみたいな個人的な恨み?」

「ん? ――ちょっと違うけど、まあそんなもんかな」

 

実際、クーとゼクシードにGGOでの直接の接点は無い。

だが、新川くんの云々を除いても、アニメ版《MMOトゥデイ》でのゼクシードの態度は見ていて結構不快な印象を受けた。だから、ある意味個人的な恨みと言えばそうも取れる。

 

そう考え頷くと、詩乃はそのまま身を乗り出して俺の瞳を覗き込んだ。暫くそうしていたかと思うと、不意に視線を外し、元の位置に戻る。

 

「……ええ。分かった。ゼクシードが狙えるような位置ならなるべく狙ってみる事にする」

 

詩乃の言葉に、お礼の意味を込めて黙って頭を下げようとすると、手で押し止められた。思わず顔を上げると、詩乃の顔には不敵な笑みが浮かべられていた。

 

「……けど、あんたが近くに居ても容赦なく狙うから」

 

相変わらず、曲がった事は余り好きでないらしい。あくまで思考の片隅には置いておくが、敵は敵である、という考え方。

それが余りにも自分の知ってる詩乃らしくて、俺も静かに笑い返す。

 

「ああ、出会ったらあくまで敵同士だからな。俺も負ける気は無いけど……っと。そうだ」

 

あと、礼も兼ねて軽く情報を与えといてやるか。

 

「どうしたの?」

「詩乃。明日のBoB、ヘカート使った方が良いかも」

「……はぁ? いや、アレはまだ慣れてないし、BoBは個人の遭遇戦だから明日使うつもりは無かったんだけど……」

「それともう1つ。狙撃には気を付けろよ」

「? えっと……ええ。分かったわ」

 

不思議そうに、こりんと首をかしげる詩乃。

一応、このアドバイスにはある程度の意味が含まれている。詩乃には本戦で、なるべく長い間生き延びてもらいたいのだ。原作通りに22位で敗退してもらっては、ゼクシード撃破の難易度がぐっと上がってしまう。流石に、俺一人だけであいつを倒しきれる確率がそう高くないことは分かっている。可能性は、少しでも多くしておきたい。

 

 

*****

 

 

不思議な忠告を受けた。

 

幸人と別れた後、私の思考は妙に気になるそちらへと傾いていた。

 

狙撃に気を付けろ。そして――ヘカートを使え。

 

元々、ヘカートを使うつもりは無かった。じゃじゃ馬である彼女を乱戦中に使いこなせる気はしなかったし、そう離れていないところからスタートするBoB本戦ではスナイパーライフルが不利だと思っていたからだ。

だが――もしかしたら、それは違う?

幸人が、私が不利になるようなアドバイスをするような奴では無いことは知っている。

それを考えると、やはり――

 

……少し、作戦を考え直してみようか。

 

散々迷ってその結論に至ったのは、夜の10時のことだった。




クーのステータス

第二回BoB時使用武器
突撃小銃:AK-107(AK-47の後継機)
自動拳銃:ガバメントm1911A1×2
補助:光剣

ステータス
STR-AGI型。

ビルド
近距離戦(100m前後)に特化したスキル構成。
STRはそれなりには余っており、ペイルライダーのような3次元ブーストも出来なくはない。
光剣は練習中。三点バーストまでは防御可能。
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