ごめんなさい
仲直り、というものは案外不思議なものだ。
喧嘩が起こった原因が大きければ大きいほど、仲直りしようと思っても中々出来ないが、気づけばいつの間にか隣にいたりする。
でも、今回の事はそう簡単に解決することではない。何となく、そんな予感がしていた。
詩乃を納得させられるだけの言葉を俺が持っていない以上、ただ謝れば良い、と言うわけにもいかない。
別に、詩乃が俺を避けている訳ではないのだ。学校に行く時間はほぼ同じだし、行動圏内が同じだから休日は買い物に行けば三割くらいの確率で遭遇する。詩乃の方も俺を避けようとするどころか、わざわざ俺が謝れるタイミングを作っているような様子だ。
なのに俺が謝れていない、仲直りが出来ていないのは、俺が詩乃に対して勝手に壁を作ってるから。
俺が所々を濁しながらもそこまで説明すると、
「……って言っても、やっぱり謝るしか無いんじゃないかな。僕は二人についてそこまでよく知らないからこんな適当な事しか言えないんだけど」
新川はそう苦笑してコーヒーカップを手に取った。
都内のとある喫茶店。そんなに客が来ない、秘密基地じみた静かなそこで、俺は新川へと詩乃についての相談を持ち掛けていた。勿論これの目的としては、ゼクシードが優勝してしまった後の新川の様子見も兼ねていた。
「でも、説明しなかったから詩乃は怒ったのに、謝ったときにその事について黙ったままだったら仲直り出来なくないか?」
「……うーん、僕は朝田さんが怒ったのはクー……こほん。工藤くんが『関係ない』って言ったからだと思うな」
「確かにそれも有るとは思うんだけどなぁ……。それより前には既に詩乃にふざけるなって言われてるわけだし」
「話を聞いてる感じでは、そうだと思うよ? そう言われたのも、嘘をつこうとしたのが朝田さんに気付かれたからじゃないかな」
「……言われてみれば確かにそうかもしれない」
長い付き合いだし、嘘がバレるっていうのは分かる。俺もそうだが、細かな動作の変化や雰囲気でどうしても分かってしまうのだ。詩乃としては、真面目な話をしている最中に俺が嘘をつくのに気付けば、ふざけるな、と言いたくなるのも当然のことだろう。
少し冷めたコーヒーを一口飲み、椅子に背をもたれさせる。少し古びた木製の椅子が、キィ、と音をたてて軋んだ。
「……まあ、何にせよ謝るしかないか」
「うん、そうだね」
俺の小さな呟きに、新川はにこやかに微笑んだ。……本当に、悪いやつには思えないんだが――さて。
「そう言えば新川、最近GGOには潜ってるのか?」
少し、こちらの話もしておくとしよう。ログイン状況自体は
俺の言葉に、新川は少し表情を陰らせ、乾いた笑みを浮かべた。
「うん、時間有るときはログインしてるよ。AGI特化じゃソロは辛いから何人かで組まないとダメだけど、ね」
――やはり、ゼクシードのインタビューのせいでAGI型の需要は大分減ってきているらしい。
新川が言ったようにAGI特化は他の力を借りなければモンスター狩りやスコードロン戦が出来ない。しかし、言い方が悪いがAGI型がモンスター狩りには役立たずなのだ。火力は取れないし、出来ることと言えばせいぜいが相手の気を引く程度。
体が小さなアバター、かつ背景に紛れるような迷彩服、そして相当の機転と判断力でもあれば対スコードロンもそれなりには出来るのだろうが。
元々AGI型自体の需要は低かったのだが、ゼクシードのAGI特化型否定がそれに拍車をかけた。新川の恨みがゼクシードへ向かってしまっても、仕方ないと言えば仕方ない。
何も言うことが浮かばずに黙った俺を見て、新川は席を立つと
「お互い、色々と苦労してるね」
そう、苦笑した。
今月中にもう一話投稿する気概でおります。どうかご容赦くださりますよう。