「で、キリトは何か好きな種類の銃とかは有るのか?」
「え、えっと⋯⋯特には無い、かな」
「了解。⋯⋯じゃあ色々揃ってる大きいマーケットに行くので良し⋯⋯っと。因みに、ステータスのタイプは聞いておいても大丈夫か?」
「多分筋力優先、その次が素早さ──だと思う」
「ん、了解」
キリトと軽いやり取りを交わすが、俺にとって、この行為は特に意味があるものではない。最初からキリトが何を答えるかは予想が付いていたし、既に行く店も決めていた。だが、これを聞いておかなければキリトに怪しまれる可能性がある。ラノベ主人公の勘の良さは、恐らく並大抵の物では無いだろうから。
入り組んだ路地を通り抜け、大通りへと出ると、俺は目の前に見えるきらびやかな店を指差した。
「目的地はあそこ。色々置いてる初心者向けの総合ショップ」
「な⋯⋯なんだか、すごい店だな」
独特な雰囲気に少し気圧されつつ、キリトは苦笑いを浮かべた。確かに、NPCの美女達がゴツい銃を持っている光景を見ていると色々と複雑な気持ちになる。俺もこういった光景に慣れるまでに少し掛かった。
「さて、何を買うか⋯⋯だけど。コンバートしたばかりだと、金がなぁ」
俺が呟くと、思い出したようにキリトは右手を振って自分のウインドウを出し、所持金額を確認する。
「⋯⋯1000クレジット」
案の定、ばりばりの初期金額だった。
まぁ、ここは原作通りだから特に驚くことでもない。
「あのさ、もし良ければ──」
俺がお金を援助する事を提案するかもしれない、と考えたのだろう、キリトは慌てて首を振り、会話の流れを自分が思い浮かぶ他の解決法へと持っていった。
「どこか、手っ取り早く稼げるような場所って無いか? 確か、このゲームにはカジノがあるって聞いたんだけど」
「まあ、無いことは無いな。この店にも⋯⋯っと、ほら」
俺は立ち止まり、俺も初期の頃に纏まったお金を稼がせていただいた例の弾除けゲーム『untouchable!』へと視線を向ける。⋯⋯まぁ、俺は最初からここを目指してきていたのだが。
キリトも歩みを止めると、少し興味深そうにその機体を見つめた。
「⋯⋯これは?」
「あそこのゲートから、ガンマンの銃撃を避けながらどこまで行けるかってゲーム。触れりゃ今までプレイヤーがつぎ込んだお金が全額貰える」
「全額!?」
驚くキリトを余所に、ほら、とガンマンの後ろの看板を指差す。看板にはキャリーオーバーの表示があり、そこには40万を超える数値が載っていた。
⋯⋯ん? 原作よりちょっと多くね?
原作では30万ちょいだったはず⋯⋯。
いや、待てよ。もしかして、俺が一度クリアしてしまったから『俺も行けるんじゃね?』と考えて挑戦するプレイヤーが増えたのか。原作と違う金額だと装備同じにしにくくなるんだけどなぁ。
「す、凄い金額ですね」
「あー⋯⋯うん。難しいから」
クリアしてしまった手前、原作でのシノンのように「だって無理だもん」とは言えず、俺は言葉を曖昧に濁した。
***
⋯⋯聞こえない。
私のアバターはスキル補正もあり視力はいいが、聴力はそこまでいいわけでも無い。感づかれないようにかなり離れて尾行しているこの状況で、向こうの会話が聞こえようはずも無かった。会話はとても大事なコミュニケーションツールである。それが聞こえないということは、楽しそうに談笑している二人の関係を探るにはかなり致命的ではあった。
ただ、会話が聞こえないなりにこの尾行中に気付いた点が有るとすれば──あの女プレイヤーはこのGGOにおいて
街を歩いている時も、興味深げに辺りを見回していたり、景色に圧倒されたり。このゲームをやり込んでいる人間ならばしないような動作を幾つかしていた。
まぁ、その点が分かったところで、何故
それも私に隠して、である。今日の不可解な態度も、私をさっさと厄介払いしたのだろうか、と思うと、冷たい怒りがフツフツと沸いてきた。
まさか、とは思うが現実での知り合い、なんてことも⋯⋯。
弾除けゲーム『untouchable!』をじっと見ながら何やら話し合っている2人を常に視界の端に捉えながら、私は周りに怪しまれない程度に適当な商品を見て回っていた。
クー達が見ているその間に、一人のプレイヤーがそのゲームへと挑戦し、案の定呆気なく失敗していた。
そしてすぐ後に、例の女プレイヤーが弾除けゲームの機体へと近寄った。
⋯⋯まさか、傍から見るだけでも分かるような初心者にあんなインチキゲームをさせるつもりなのか。
しかし、その私の思考は、すぐに驚愕へと塗り替えられることになる。