俺とシノンのお隣さんライフ   作:ラビ@その他大勢

4 / 43
詩乃との帰り道

学校についた私は、通学路の辺りからチリチリと感じていた奇異の視線がいっそう強まったのを感じて顔をしかめた。登校してからというもの、クラスの皆は遠巻きに私を見るだけで、誰も話し掛けようとしてこない。どうしたのか、と聞こうと一歩踏み出すとそそくさと逃げられる始末だった。

隣の席に座る幸人が不快そうに目を瞑り椅子を前後に揺らす。私は本を読む気分にもなれず、ただ窓際の席から頬杖をついて外を眺めていた。

 

 

 

 

学校終了のチャイムが鳴ると同時、私は逃げるように教室を出た。これ以上あんな不快な視線を受けたくなかったのだ。そんな私を見て、慌てた様子で幸人が帰る用意を始めたのを尻目に、目を伏せて心なしかいつもより暗く感じる廊下を歩く。

そのまま振り返らずに学校を出たところで、漸く幸人が隣に並んだ。走ってきたのか、息遣いは少し荒い。

 

――結局、学校ではずっとあの視線を感じていた。クラスメイトは皆が私を避け、遠巻きに奇異の視線を向ける。たまに聞こえたクラスメイトのひそひそ話からは、『人殺し』だの『殺人者』だのが聞こえ、漸くどういう理由で先程まで避けられていたのかが分かった。

 

(私は、間違って……ない)

 

唇を強く噛み締める。私がもし過去に戻ってあの事件をやり直したとしても、全く同じことをする自信がある。母を守るためには、ああするしか無かったのだ。

 

(幸人は――どう思っているの…?)

 

チラリと横目で幸人を確認する。彼だけは、クラスメイトとは違った。休み時間もいつも通り話し掛けてくれたし、彼が話す時にあえて『あの事件』に関する話を避けていることも分かった。

 

幸人は――他の人とは違う。

……でも、だからこそ。彼が何を考えているのかが読めなかった。

……悪いやつじゃないのは分かるけど、と再び彼に目をやる。幸人は、空を眺めながらただ黙々と歩いていた。

 

――聞いてみようか?

そんな考えが頭に過った途端、私は口を開いていた。

 

「――ねぇ、幸人」

「……ん?」

 

幸人がこちらへと顔を向ける。そんな彼に、『あの事件』についてどう考えているのか聞こうと口を開く。

 

 

……だが、私は結局、何も言えなかった。

 

それが何故か、少し考えただけですぐに分かった。

怖かったのだ。幸人までもが私に『殺人者』のレッテルを張り、軽蔑の視線を向けるかもしれないのが。実際、そんなことをしないだろうことは今までの幸人を見ていて分かってはいたが……それも、絶対とは言い難い。もし、幸人まで私を否定したら――そんな風に考えてしまったのだ。

 

声を掛けるなり黙ってしまった私を心配そうに見る幸人に、「何でもない」と首を振って誤魔化すと、私は先程の幸人のように空を見上げる。

私の迷いとは裏腹に、雲一つ無い空は青々と広がっていた。

 

*******

運命の夜。――と言っても、詩乃と一緒に寝る夜、というだけだが。勿論、無意味にサービス回にならないように、お風呂は既に自宅で入っている。

 

「お風呂上がったわよー」

 

彼女の祖父母に向けたのだろう、大きめの声がドアの外から聞こえてからすぐに詩乃が部屋へと入ってきた。先程お風呂から上がったばかりらしく、その体からホクホクと湯気を立てている。詩乃は自分のベッドへと座ると、首に巻いたタオルでまだ少し濡れている髪を拭った。そして、こちらにジト目を向ける。

 

「……で、何でこんな早い時間に来るのよ」

 

そう、今はまだ夜の七時。暗くなるのが遅い夏とはいえ、既に日は暮れている時間帯だった。寝る時間まで、軽く三時間はある。

俺は読んでいた本から顔を上げると、首を傾げた。

 

「確かに……何でだろうな」

 

一応理由はあったが、それは詩乃に話すようなことではない。だからわざとらしく惚けてみせた俺を見て「……はぁ」と詩乃は呆れたようにため息をつくと、

 

「特に用がないなら帰りなさいよ」

 

……わぉ、手厳しい。俺は言い訳を探して視線を宙にさ迷わせる。

 

「……あ、そうだ!! 宿題教えてもらおうかなって」

「……あんたの成績学年トップレベルじゃない。私が教えれることなんて何もないと思うけど」

 

確かに……と自分で納得してしまう。――因みに俺は、小学校のテストでも前世の記憶をフル活用して解いていた。まあ、当たり前に小学校のテストなんか間違えるわけもなく成績は大体が最高評価である。

少し首を捻り、再び言い訳を探す。

 

「えっと……その……ほら……あれだよ、うん」

「あれって何よ」

「……」

 

詩乃の追求に何も言えず、黙って俯いてしまった俺の耳に届いたのは、クスクスという笑い声。顔を上げると、詩乃が手を口に当てて微笑んでいた。

 

「冗談よ。……心配して早く来てくれたんでしょ? ありがと」

 

どうやら詩乃には早めに来た理由がバレていたようだ。流石、と笑って肩を竦めると、俺はリュックからいつもの携帯ゲーム機を2つ取り出す。詩乃に片方を放ると、俺は早速電源ボタンを押してゲームを起動した。中に入れてるカセットは、ここに引っ越して来たばかりの時に詩乃と初めて二人でしたレースゲーム。

 

「今夜は寝かさねーぜ?」

「……寝させないって……。あんた、何のためにここに来たのよ」

 

ニヤリと笑う俺を見て呆れ気味に首を振りながらも、詩乃もゲームを起動させた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。