そこでは一瞬も気を抜けない攻防が繰り広げられていた。攻防⋯⋯と言っても、基本攻める方と守る方は決まっているのだが。無論、キリトが攻撃し、俺が守る。
俺の剣技はALOでの経験もあり、守ることに特化していた。だからこそ、彼の高速の剣技に何とか食らいついていけている。
相手の体の動きから剣の軌道を予測し、実際に初動を見て確認し、その軌道に合わせるように剣を振るう。秒間何十発もあるものもある銃の連射の回避と比べれば楽な部類であるとは言え、それでも気を抜けば彼の剣が俺のアバターを切り裂くことは容易に想像できた。
時折フェイントのように混ぜてくる直接攻撃もすんでのところでいなし、逆に隙を見つければこちらから打ち込んでいく。まぁ当然のようによけられるのだが。
やがて、こちらへと攻撃を続けるキリトの表情に、焦りが見え始めた。
光剣のエネルギー残量が心許ないのだろう。途中から剣を合わせることを可能な限り避けてきていたが、それでもこんな近距離で戦闘をしていれば必然的に剣を合わせる機会は多い。
キリトの光剣のエネルギー切れを突いて勝利する。これは俺にとっても本来望んでいた決着の付き方では無いのだが、予想していたよりも彼の剣戟は苛烈で──俺は防戦一方になるしかなかったのだ。
原作ではPvPの勘が鈍っている、などとキリト目線で言ってはいたが、これで鈍っているなら全盛期はどんな化物だったんだろうか。やだ怖いこの主人公。
とは言え、エネルギーパックを交換するために下がれば誤魔化しようのない隙は生まれてしまうし、この攻防を続けていてもキリト側が不利なままなのは変わらない。
⋯⋯だが、これで終わりじゃない筈だ。
キリトの透き通った瞳から、些かも衰えない闘志を肌で感じる。このまま行けば俺が明らかに有利なはずなのに、ピリピリとした緊張感が張り詰めていた。
何が来ても、対応してみせる。
そんな心意気で、俺はキリトの動きそのものへと全意識を集中させていった。
そして──ついに光剣のエネルギーが底をつき、刀身が短くなり始めた、その時だった。
***
その瞬間、映像を見ていた誰もがキリトの左手にもう1本の剣を幻視した。私はその幻影の余りのリアルさに数度瞬きを繰り返し、ようやく現実を認識できたほど。それ程までにキリトのその《装備していない二本目の剣を背中から抜き撃ちする》というフェイントモーションは真に迫っていた。
それをなまじ良すぎる反射神経で迎撃しようと動いたクーは大きな隙を晒し──そしてその隙を見逃すキリトでは無い。
短くなり、もう50cm程になった光剣だったがそれでもクーの体力を削りきるには十分すぎた。
肩口からバッサリと斬られ、体力が無くなったクーのアバターが霧散し、やがてステージの空中に勝者を称えるフォントが浮かび上がる。
モニターを見上げていたプレイヤー全員が、目の前で起きた事についていけず、呆然としている中。
第3回BoB予選Fブロック決勝はキリトの勝利で幕を閉じたのだった。