詩乃へのプレゼント
「んー……」
とある休日。近所のデパ地下、ファッション関係の店が並ぶ大通りに、居心地の悪さから忙しなくキョロキョロと辺りを見回す中学生の少年――俺の姿があった。さて、こんな場違いの場所で俺が何をしているのか、というと。
「さて、詩乃に何を贈ろうかな……っと」
――そう、詩乃へのプレゼントの選定である。
詩乃の13歳の誕生日が間近に迫った土曜日。俺は一人、うろうろとデパ地下を徘徊していた。
というのも、詩乃に送るための良いプレゼントが見付からないのだ。去年もその前の年もプレゼントとして贈った長編小説は、反応はそれなりに良かった――が、同じものを贈ってばかりでは誠意が無いと感じられかねない。なので、今年に限っては小説は最終手段だ。
だが、小説以外を贈ると決めたからといって「これだ!」というプレゼントが思い浮かんだ訳ではない。
――と言うわけで、沢山のものが揃っているデパ地下へとやってきた訳だ。
周りの女性率が異常に高いため居心地が悪く、ずっと俯いたまま肩を縮めて歩いていると。不意に、小洒落たアクセサリーショップが俺の視界に飛び込んできた。何となく店に入り、一つ一つのアクセサリーを物色する。
「うぅむ……髪飾り……ネックレス……詩乃に似合いそうなの…」
「お客様、何かプレゼントをお探しでしょうか?」
「うひゃい!?」
突然背後から声を掛けられ、素っ頓狂な声を上げてしまう。俺が慌てて振り向くと、店員さんらしきお姉さんが目を丸くしていた。俺が急に変な声を上げてしまったため、驚いたようだ。
店員さんは気を取り直すようにコホンと咳払いを小さくして、改めて大人っぽく微笑む。
「何かプレゼントをお探しでしょうか?」
「えうっ……その………はい」
あまり年上の女性と話すことがない俺が吃りながらも慌てて頷くと、店員さんは小さく首を傾げた。
「どんな人に贈るんですか?」
「えっと――……大切なおん……じゃなくて、大切な人にです」
「ふふっ。分かりました」
大切な女の子――そう言いかけて慌てて言い直す。そんな俺を見て、店員さんは何かに納得したように暖かく微笑んで頷くと、手近なところにあった銀色のネックレスを手に取る。
「えっと……そうですね――はい、これなんかどうでしょう。銀色は大体どんなものにも合うので、女の子へのプレゼントにはぴったりだと思いますよ。それに、値段もそこまで高くないですし」
そう言って差し出してきた値札を見ると、三千円弱。
――まあ、一応お手頃といえばお手頃な値段ではある。財布の中身を見ると、軍資金は四千円。
――うん、買える。
「あ、それじゃあそれお願いします」
「はい、毎度ありがとうございました」
店員さんに改めてプレゼントを選ぶ手伝いをしてくれたことについてのお礼をしてから、俺はアクセサリーショップを後にした。
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換気のために部屋の窓を開けると、入ってきた穏やかな朝の風が頬をうった。
今日は私――朝田 詩乃の誕生日だ。幸人は今年も小説をくれるのだろうか。――まあ、確かに幸人がくれる小説も面白いのは面白いのだが、そろそろ別のプレゼントも欲しい……なんて。
ふと過った変な思考を頭を振って吹き飛ばす。取り敢えず、貰うまで楽しみにしておこう――そんなことを考えながら、私は小さく微笑んで窓の外に広がる青空を眺めた。
続く。