「あの……」
「はい、なんでしょうか?」
ジブリールは読んでいた本を閉じ、先程から話しかけて来る方に振り向く。
そこには、先程までゲームをしていた子供教師、ネギ・スプリングフィールドがいたのだ。
「僕たち負けたのですが、ここにいて良いのでしょうか……」
そう。ネギたちはジブリールの出したゲーム、『具象化しりとり』に負けたのだ。
従って、強制的に退室が求められていたのに関わらず……彼らは地下空間に広がるビーチにいた。
「ええ、いいのですよ。ここでなら勉強に必要な教材は揃っておりますから、期限まで好きに勉強してください」
「いえ、それはこちらとしても嬉しい限りなのですが……」
ネギの言い分はこうだ。
ゲームに負けた僕たちが何故ここにいるのか。
『具象化しりとり』で交わされた約束は、負けたら退室するだったのだが、ネギたちは退室どころか、歓迎されてしまったのだ。
ネギはその理由をジブリールに問う。
「ああ、そのことですか。簡単なことですよ」
そう。簡単なことだ。
「この私を一度、二度ならず、三回も殺しにくる人種は初めてだったからですよ」
ネギたちは、ジブリールを『具象化しりとり』で三回も殺しにかかった。
だが、どれも失敗で終わってしまったが、ジブリールにとっては最高の刺激であったのだ。
ジブリールが『具象化しりとり』をやるのはこれが初めてではない。
しかし、ジブリールを殺しにかかることはいつもあるが、大抵の奴は一度目で諦めてしまう。
なんせ、ジブリールの存在自体がありえないからだ。
最上級魔法を直に受けてなお、ノーダメージでいる存在に心が折れないのがおかしい。
「ですので、あの本はお渡しすることはできませんが、ここにいることは許可しましょう。もし、外に出たいときは私を呼んでくれればよいので」
そう言って、ジブリールは本棚を足場にして、階段のように上がり、樹木の隙間に降り立つ。
◇
「ネギ・スプリングフィールド……あの人にそっくりですね」
ジブリールは自室に戻ると写真立てを手にとる。
そこにはジブリールを含めて六人の人たちが映っていた。
魔法世界の英雄。
魔法世界で起きた世界戦争でその終止符を打ったのが、この六人だ。
「中身はやっぱり、母親似ですね」
ネギの母親を知る人物は殆どいない。
それには大きな理由があったからだ。
「彼は……私に何を見せてくれるのでしょうか」
くすと、ジブリールは笑うと写真立てを元の位置に置く。
魔法世界でナギに並ぶ異名を持つジブリールが久しぶりに笑みを浮かべる。
魔法世界でのジブリールの二つ名は……殺戮天使。
絶対に敵に回してはいけない存在。
もし会ってしまったら諦めろ、と呼ばれるぐらい危険人物に指定された程の人物であったこはネギたちはこの時、知るもしなかった。