いいか、あれは天変地異の類だ。
警戒し、備えて、後は天に祈れ。
それは神に創られた神を滅ぼし殲くす一対の翼。
だが、そんな祈りも空しく、遭遇してしまったら。
琥珀の瞳に死の十字を抱く神々しいまでに美しい少女。
逃げろ。全てを投げ出して、嘆きわけがながら逃げろ。
そうすりゃあ……ああ、そうだな。一秒か二秒は、長生きできる。
その名は―――天撃のジブリール。
◇
ネギたちが立ち去ってから数ヶ月が過ぎた。
丁度、麻帆良学園では修学旅行で中等部はいない。
「今年は海外ではなく、京都ですか」
ジブリールは独自の情報網で今年の修学旅行の行き先を調べ上げていた。
そして、ネギたちが旅立ってから数日が経った時だった。
「ん? おやおや? 珍しいお客が来たもんですね」
「ええ。不甲斐なく、あなたにお願いをしに来てしまいました」
この図書館島の司書であり、英雄の一人であるアルビレオ・イマがジブリールの下に訪れたのだ。
「それで、お願いとは?」
「ええ。急遽ですが、京都に飛んでもらえないでしょうか」
京都。
アルビレオ・イマは確かにそう言った。
「あそこには今、ネギたちが修学旅行で行っている筈でしたね」
「はい」
「ですが、あそこにはあの人もいるはずでは?」
「ええ。ですが予想以上にやばい状況にあります」
「へぇ……」
ジブリールはその言葉に少し興味を持つ。
持っていた本を置き、普段隠している翼を広げる。
「いいでしょう。その願いを聞き入れましょう」
「ありがとうございます」
高魔力が翼に集まる。
そして、突風が起こると同時にジブリールは消えた。
◇
「……身体に直接、拳を入れられたのは……初めてだよ。ネギ・スプリングフィールド」
「ネギッ!!」
ネギと対立していた少年はその拳を叩き込もうとする。
しかし、それはネギには届かず、少女に止められた。
(いつの間に!?)
少年もいきなり現れた少女に目を丸くする。
「おやおや? 塵虫が付いていますよ」
笑みを浮かべた少女から放たれる殺気と同時に少年は弾き飛ばされる。
少年は数度、水に打ち付けられ沈んでしまった。
「あ…ジ…」
「ジッ…ジッ…」
ネギとアスナは目の前に現れた少女が誰なのか知っていた。
「ジブリールさん!!」
二人は図書館島の主の名を叫ぶ。
「お久しぶりですね。アスナのお嬢さんとネギ少年」
先程とは違い、友人と会話するような優しい雰囲気を漂させる。
「何かあると思えば、『リョウメンスクナノカミ』ですか……」
ジブリールはそれ程、多く会話することなく、すぐさま本来の目的の方に向き直る。
「ふむ。ネギ少年としては頑張ったほうですね。褒美にいいものをお見せしましょう」
流石に災害級の物を相手に戦って生きたネギに褒美と、ジブリールはその力の一部を見せる事にした。
「一度しか見せませんので」
ジブリールは白い翼を広げ、上空へと羽ばたく。
「つつっ、次から次へと何や何なんや―――あんた何者や!?」
リョウメンスクナノカミを呼び起こした女と思われる女性はいきなり現れたジブリールに驚く。
「おや~♪ 自己紹介がまだでございました。私、ジブリールと申します。首だけ差し出せば、見逃しますよ」
そう言って、ジブリールは手をかざし―――
「アクタ・エスト・ファーブラ」
魔法世界で作り上げた最強の魔法。
「契約に従い我に応えよ。無と雷と光の神々」
この魔法は私専用に開発された超々高位魔法。
「全てを滅ぼす殲滅の一撃。嘆きの一言を残さぬ殲滅の光!」
その一撃は星の破壊をモチーフに創られた『約束された星の破壊』よりえげつない魔法だ。
「来たれ覇者の力。永遠の休息!」
楽に死ねるんだから、これも良しとしましょう。
「消失する光もて、全ての者を殲滅せよ。新たな生を、愛見える日をまた、会うこと祈ろう」
私が持つ最高に最強の一撃。
「『天撃』!!」
これが、天翼種の力さ♪
頭上の光輪が、複雑にその姿を巨大に、多重に、魔法陣のように変えていく。
翼は光を噴出するかのように形を失い―――両手に、槍のような光柱が揺らめき―――リョウメンスクナノカミがいた場所だけが白く消し飛んだ。
ジブリールが最初から使えた力を現代の魔法で再現した―――『天撃』。
その光の槍の一擲は湖を蒸発させ、リョウメンスクナノカミのいた場所に穴に変えた。
「…………」
その一撃にネギたちは言葉を失う。
ネギの使える中で最強の『雷の暴風』ですら全く効かなかったあの敵が何の抗いもなく消滅してしまったのだから。
消滅を確認したジブリールはネギたちの前に降り立つ。
「少し物足りなかったですが、まあいいでしょう」
久々に魔法を使えたジブリールはニカッと笑った。
「ジブリールさん!! うしろっ…」
ジブリールの後ろに僅かに残っていた水たまりから、少し前に吹き飛ばした少年が現れた。
「衝撃突破『石の槍』」
ネギはジブリールを庇うように抱きつくが、すぐさま引き離し、迫ってきた石の槍を掴む。
「ジブリール。『天翼種』か……」
「その通りですよ。『殺戮天使』さ」
ジブリールの手には桃色の光玉が収束をし始めており、少年がそれに気づいた時には遅かった。
「『ディバインバスター』!!」
光の収束砲が放たれ、少年を呑み込む。
「……成程。流石に分が悪い。今日の所は僕も退くことにするよ」
そう言い残して、少年は水と共に消える。
「現像……逃げましたか」
こうして、修学旅行での一件は終わった。