アイドルマスター シンデレラガールズ 灰被りの孤独姫   作:レイクール

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思いつきで出来上がった今作の主人公。
とりあえず皆様が楽しめるような作品にしていきたいと思います。
それでは、本編をお楽しみください。


少女は出会い、物語は始まる

ある所に一人の少女がいた。

少女は幼き頃、世の中で可憐な乙女の頂点のような輝ける存在に夢見て、恋い焦がれた。

少女は、そのためになら努力を厭わなかった。辛く苦しく厳しい事でも耐えて見せた。それが、己が目指す夢の為に必要な事であれば。

だが、その努力と夢は一瞬のうちに運命に奪い去られてしまう。

少女が十歳の頃、小学校に登校している途中で暴走車両に出くわした。そして、不幸にもその少女だけが巻き込まれた。

幸い、そこまで大きな怪我は負わなかった。だが退院後には、事故前にできたことが全くと言っていいほど出来なくなっていた。

少女は信じたくなかった。今まで自分がしてきたことが何だったのか。それが意味や価値がないものだと。

そこから少女の心は徐々に壊れていった。周囲の人々は、その壊れた少女を蜘蛛の子を散らすように去っていった。まるで、今までの努力と夢だけに価値があったかのように。それがなくなった少女には興味がないかのように。

当然、少女の両親は心配した。だが、少女はそうはさせまいと強く自分を偽り振る舞った。壊れゆく心を意地と虚構で紡ぎ合わせた。

そうして、少女は夢見ていたものとは真逆の存在となった。周囲から異端みたく見られ、独りぼっちの少女になってしまった。

孤独に身を落としてから六年後、少女は故郷を離れ、遠き都会へと訪れる。

そこで、少女の錆び付いた時計が動き始める。

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

「憂鬱だ………」

 

オレ、香月(こうづき)結希(ゆき)は机に突っ伏して顔を顰めながらぼそりと呟いた。

故郷の北海道からわざわざ東京まで出てきたのはいいが、右も左も分からず方向音痴なオレにとっては最悪の状況この上ない。当然知り合いなんているはずもないから、誰かに教えてもらうにもオレの性格上教えを請うことが出来る気がしない。

そういう理由があるにも関わらず、まだ問題はある。

一つは周囲から感じる視線。友好的な視線を送るものもいれば、敵対心丸出しの視線を送るものもいる。友好的な視線のほとんどが男で、敵対的なのは女だ。理由はなんとなく察している。どうせオレの見た目のせいだろうとは思う。両親によれば同じ年代でもこんな可愛い女の子はいない、と太鼓判を押されたのだが、あれは親バカなので信じられない。従姉妹にはその容姿の一部でも分けて欲しいと言われた。かく言うそいつも美人なわけだが。というかあれ以上美人になるなら、一周回って人を超えるぞ。

まあそれはいい。長いことこれらとは違った、これよりも酷い目線を数年に渡って受けたことがある。耐性は付いているから問題はない。

問題なのは、オレを憂鬱にさせるもう一つの要因だった。

 

「え、えっと………」

 

オレの隣の席で座って手をモジモジさせながらこちらをチラチラ見てくる茶髪の女だった。たまに「あの」とか「その」とか声を出しては口籠り、手をモジモジさせる。それを続けること三十分。目障りで仕方がない。話しかけるのが話しかけないのかどっちかにしてほしい。

因みに今は入学式、クラス分け、LHRも終了し、放課後だ。放課後といってもまだ昼前だけれど。

流石にもう耐えきれない。オレは痺れを切らし立ち上がろうとした時だった。隣の女が立ち上がり、オレのすぐ隣まで来る。その表情は強張ったものであり、見るからに緊張しているのが分かる。なぜ緊張しているのか理解しかねるが。

 

「あのっ……!」

 

「………何?要件あるなら早く言ってくれない?」

 

「はいぃ、すみませんです………」

 

今まで待たされた分、怒気を込めて無愛想に返す。それに怯えたのか、先ほどモジモジしていた時よりも縮こまる。要件を伝える前にすでに涙目だ。

強く言いすぎたか、と疑問に思っていたが意外に茶髪女は強かったらしい。挫けず口を開いた。

 

 

「と、友達になってください!」

 

 

「……………………は?」

 

思わず素っ頓狂な声が出た。それよりも目の前のこいつはなんて言った。友達になってくださいとか聞こえた気がするんだが、気の所為だよな。いや、絶対にそうだろう。オレみたいな性格破綻者にそんなお声がかかるわけがない。まず、話されることがおかしいはずなんだが。あ、そういやまだオレこいつらに自分のこと明かしてねえや。

 

「えっと………ダメ、ですか?」

 

茶髪女はオレを見据えて目を潤ませる。その姿はさながら道に捨てられている子犬のようだ。オレの良心が痛み、彼女の頭を撫でそうになる衝動を抑えながら出来るだけ冷たく返す。

 

「は、はは……、そ、そそそそんな手には乗らねえぞ」

 

どんな手に乗らないんだと心の中でツッコむ。冷たく返すどころか動揺しまくってんじゃねえかよ。最弱メンタルにもほどがかるだろう。オレは咳払いをして言い直す。

 

「……オレの性格を知らずに友達になりたいとかふざけんな」

 

先ほどのような微かな怒気ではない。確かな敵意と拒絶を込めて茶髪女を見据えて言った。分かっているのだ。友達になると言っておいて、本性を知ったら離れていくことなど。これまで幾度となく経験したのだから。その度に空虚と孤独、悲しみを同時に味わうのはもう御免だ。そんなものを味わうなら、最初から拒絶した方がいいのだ。それがオレがここ数年で出した結論だった。

だが、目の前の少女は違った。オレの言葉にも臆せず、オレを見据えて手を差し伸べる。

 

「それでも、私は友達になりたいです」

 

優しい微笑みを浮かべながら手を差し伸べてくる。どうしてそんな顔ができる。どうして敵意剥き出しの視線を向けても臆さない。どうしてオレに手を差し伸べる。

頭の中ではそんな疑問が渦巻いていた。その刹那、オレの脳裏にはある希望が浮かんだ。否、浮かんでしまった。

こいつなら、こいつならば心を開いてもいいのでは、と。

知らず知らずのうちに徐々に強がりで固めた心が解かれてゆく。

オレは気づけば口を開いていた。

 

「……香月結希」

 

「へ?」

 

「だから、オレの名前だ。あんたは?」

 

「あ、えっと、島村卯月ですっ!」

 

オレの反応が予想外だったのか、一瞬狼狽えたが、茶髪女は顔を緩ませ明るく告げる。島村卯月か。

脳裏にこいつも地元の奴らと同じような奴かもしれないと浮かぶが、その思考を振り切る。そんなこと、そうなってから考えればいいだろう。前もそうしたのだから。

 

「じゃあ、よろしく頼むぜ島村」

 

「は、はいっ!よろしくお願いします、結希ちゃん!」

 

途端、身体中を悪寒が駆け抜ける。自然と鳥肌が立つのがわかる。結希ちゃんって、呼ぶにしても呼ばれるにしても勇気がいるし恥ずかしすぎる。というかそんな呼び方された事があるのは、従姉妹と母親ぐらいだ。

 

「お前、流石にその呼び方は……」

 

「………?」

 

何気ない顔で小首を傾げる茶髪女もとい島村。いや、そんな可愛らしく首傾げられても。というかお前は恥ずかしくはないのか。俺はもちろん恥ずかしい。慣れればいいのだが、いかんせんこいつに名前で呼ばれるのは初めてなのだ。そして初対面。呼ばれるとは思ってないっての。

 

「はぁ……もういいや」

 

考えるのが面倒くさくなったオレは、天井を仰ぎ見て額を押さえる。島村みたいな奴を"天然"と言うんだな。身を以て知る事になるとは思わなかったぞ。

 

「あの、お願いがあるのですが……」

 

「あ?」

 

上目遣いで恐る恐るといった風に聞いてくる島村。先程みたいな緊張はなく、完全に自然体という感じだ。これ以上オレに何か言う事があるのか。想像もできないんだが。

 

「私も、な、名前で呼んでくれませんか?」

 

「………………………………………………………………はい?」

 

思いもしないお願い事にたっぷり黙り込む事数十秒。オレが出した声は素っ頓狂なものだった。いやいやいや、名前呼ぶのが恥ずかしいって思ってた時にそんな事言うか普通。タイミングがジャストすぎるんだが。

まあオレが出した答えは誰もが考え付くような答えであった。

 

「ヤダよ」

 

「えぇ!?」

 

オレの返答に心底驚いたという風に目を見開いて驚愕の声を上げる島村。考えてみろ、お前は今の流れでどうして呼んでもらえると思ったのか。というかどうして呼ばなきゃならんのだ。親しいならまだしも、本日初対面の奴だぞ。普通は呼ばねえよ。

 

「何でですか!?」

 

「何でって言われてもねぇ……」

 

「せ、せめて少しぐらい考えてください!何故即答なんですか!」

 

余程名前で呼んで欲しいのか、必死の形相で島村は迫ってくる。何故即答なのかと言われても、即答しかできない問いかけしてくるからだろう。ていうかそんなに名前で呼んで欲しいのかお前は。

島村に少し考えろと言われたので考えてみる。オレが島村の事を名前で呼んでいるという過程で考えてみるとしよう。

うん、無理。思考三秒足らずで諦めた。想像するだけで悪寒が走る。これはあれだ、無理だ。どう考えてもオレが名前で呼ぶなんてあり得ない。

だが、目の前にいる島村は無理と言っただけではおそらく退かないだろう。退かせるにはそれ相応の返答がいる。こういう時のあしらい方なら従姉妹から教えを得ている。

 

「考えとくよ」

 

そう言ってオレは机を立ち、教室を出る。大体こう答えておけば何とかなるはずだ。だが、島村はその大体に含まれないイレギュラーな存在だったらしい。オレの隣にトテトテと走って来たと思うと、微笑みながらオレに告げた。

 

「諦めませんからね」

 

さながら宿敵またはライバルみたいなやりとりだった。オレたち今日初対面だよな、と疑問に持つほどだった。恐るべし島村卯月。初日でここまで親しくなるとは、もう素質としか思えない。もしくは才能。まあこいつにはそういう才能があってもおかしくはないが。

 

「これからも、よろしくお願いしますね」

 

「はいはい」

 

こうして、オレたちの高校生活は始まった。これから一年後、まさかあんな事が起きるとは今のオレは思ってもいなかった。

 

 

 

 

 

 

 




今回少々暗いですが、次回からは今回よりは明るくやっていきたいと思います。
そして、次回からアニメ沿いになりますので。
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