アイドルマスター シンデレラガールズ 灰被りの孤独姫   作:レイクール

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少女は初仕事に挑み、最悪の再会を果たす

「結希ちゃんごめんなさい!今日は用事があるので先に失礼します!」

 

「あ、うん」

 

「もうっ!ちょっとぐらい私に興味もってくれてもいいじゃないですか!」

 

「いや、別にどうでもいいだろ。てか用事あるなら帰れよ」

 

オレがそう言うと、食事中のハムスターのように頬を膨らませたかと思うと途端に笑顔になり、また明日です!とか言って教室を去っていく。怒ったり笑ったりと忙しい奴だな。

 

「さてと、それじゃあオレも行きますかね」

 

オレは荷物を持って立ち上がり、ある場所へと向かうことにした。

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

武内さん(武内プロデューサーと呼ぶのが面倒になった)のスカウトにより、オレは正式に346プロに迎えられることになった。そして今日はオレがアイドルとしての初仕事である宣材写真の撮影だ。あと所属するらしいプロダクションの顔合わせも兼ねているらしい。確かプロジェクト名が『シンデレラプロジェクト』だった気がする。オレには眩しすぎるほどにキラキラした名前ですこと。などと思いながら送られてきた書類を握りしめ、ベッドの上で悶えて転がりまわったのは今でも鮮明に記憶に残っている。ていうかあれ昨日の出来事だしな。そりゃ鮮明だわな。

とりあえず歩くこと数分。全く知らないところにいた。

 

「あれ、ここどこだっけ……?」

 

ここで生まれつき持った才能の一つである方向音痴が発動。まさかの知らない場所に行くという珍プレーを生み出した。

武内さんに時間厳守って言われた気がしたんだけど、でその時間まであと十分ぐらいしかないんだけど、気のせいだよな。頼む気のせいだと言ってくれ。

 

「初日から遅刻とか洒落になんねえだろうがぁぁぁぁ!!」

 

焦りと不安を覚えつつ、そう叫んで走り出した。おそらく間に合わないと思いながら。

 

 

 

それから三十分後、走り続けて探した甲斐があったのか、なんとか346プロまで辿り着いた。メールで支持された通り、正面の門からエントランスに入る。するとそこには時計を見ている武内さんの姿があった。武内さんは俺を見るや否や、オレの元へと来る。

 

「香月さん、盛大に遅刻ですよ」

 

「これ、でも……善処、した方、なんだが……」

 

オレはというと、まだ肩で息をしており、足は翌日は筋肉痛確定であろうほど疲労していた。顔合わせの前に帰りたい。だが、そうは問屋が卸さない。武内さんは、疲れ切ったオレの体に鞭を打つかのように歩いていく。付いて来いって事かよ……。こっちは疲れてるのに。

 

「行きますよ香月さん」

 

「だぁー!もう分かったよ行けばいいんだろ行けば!」

 

なんか、幸先の悪いスタートな気がするのは気のせいだろうか。そんな事を思いながら、オレは武内さんについて行った。

 

 

 

 

 

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エレベーターとは何と快適な道具なのだろうか。疲れていても何の労力もいらず、上へと登れる。これを開発した人は天才だ。などとエレベーター開発者を心底心の中で褒めつつ、ある階でエレベーターは止まる。武内さんは無表情のまま、そして無言のまま降りていく。オレもそれについて行く。

346プロの内装は何処もかしこも綺麗に整備されており、何処かの有名な大手企業のオフィス内を思わせるような造りだ。やはりこういうところに勤める人たちはエリートなのだろうか。などと思いを馳せながら武内さんについて行く事数分、着いたのはあるドアの前だった。武内さんはノックもせず入っていくので、それに続いて入る。

その中はソファーや机など数点の家具が置かれているにも関わらず、広々としており、整理整頓が行き届いた開放感がある部屋だった。オレは思わず感嘆の声を漏らす。

 

「ここがシンデレラプロジェクトのプロジェクトルームです」

 

「はぁ!?こんな大層な部屋がプロジェクトルームだと!?」

 

おいおい本気で言ってんのか。こんなところを新規に結成されたプロジェクトが使っていいのかよ。普通はもっとこぢんまりしたものかと思ったぞ。

 

「はい、そうですが何か?」

 

「………別に文句はねえけど」

 

何か文句でも?みたいな顔で首をかしげる武内さんにそっぽを向きながら返す。ただ、こんな大層な部屋使っていいのかなぁと思っただけだから。まあ使えるなら使おう。

それよりも、この部屋には誰もいない。確か今日は顔合わせも兼ねた招集だったはずだ。とそんな趣旨な事を武内さんに問うと、当然の答えが返ってきた。

 

「香月さんが遅れたせいですよ」

 

「だよな、知ってた」

 

でも仕方ないじゃないか。方向音痴にとっては迷う事は息する事と同じような事なんだよ。まあ、携帯のマップで確認しながら進めばいい話なんだが、いかんせん使い方が分からない。

 

「とにかく、他のメンバーの皆さんは宣材写真の撮影に移っています。香月さんも参りましょう」

 

「へいへい」

 

適当に返事しながらオレは武内さんについて行く。再度エレベーターに乗る事数十秒、とある階に着き、そこからスタジオに向かう。346プロはデカすぎて、プロダクションの中にまで撮影のスタジオがあるという。最初に見たときに無駄にでかいとは思ったが、無駄ではなかったんだな。

そんなこんなで辿り着いたのは撮影の機材がたくさん置かれた部屋だった。そこには、十数人のスタッフがおり、各々何かを確認している。

 

「お、やっと来たのかい?」

 

そう言って近づいてきたのは、中年の小太りした男だった。ここの撮影スタッフの長みたいなものだろう。

 

「他の皆さんは?」

 

「ああ、なんか撮影終わったらみんなで出て行ったよ。その内の一人が『他にももう一人いるらしい』とか言ってたような気がするけど、その子だよね」

 

オレを指差し武内さんに問いかける。武内さんは初対面の時のように困ったように首を掻く。オレとしては、顔合わせはどうでもいいからさっさと撮影済ませて帰って寝たいんだが。走って疲れたから今日はゆっくり休みたいんだが。

 

「香月さんの撮影をお願いします。他の方は私が探してきますので」

 

「あいよ。了解」

 

そう言ってスタジオを出て行く武内さん。おい待て、オレを一人置いてどこかへ行くんじゃねえ。独り離れてるが流石に見知らぬ場所だと逃げ道ねえんだよ。逃げたってどうせ迷子になるから。

 

「よし、それじゃあ始めようか。あそこに立って自由に動いてくれればいいから」

 

指を指された場所を見ると、そこは壁が白い紙っぽいもので覆われていて、機材が取り囲んでいる場所だった。ということはあそこで手を振っている女の人が撮ってくれるということだろうか。

 

「あなたが結希ちゃんね。それじゃあ、そこに立ってくれる?」

 

「あ、はい」

 

常々疑問に思う。どうして女という生き物は他人の名前を初対面なのにちゃん付けで呼ぶのか。島村の時もそうだったし、このカメラマンの時もだ。オレも女だが、さすがに初対面で名前で呼んだりしない。まあ、親しくても呼ばない場合の方が多いが。というか結希ちゃんと呼ばないでほしい。島村は慣れてきたが、他の人に呼ばれると背筋に悪寒が走り、鳥肌が立つ。呼ばれるたびにそんな風になると疲れることこの上ない。

そう心の中で愚痴りつつ、指定された場所に立ち、カメラマンを見据える。

自由に動いていいと言われたが、実際にはどうすればいいのだろう。作り笑いなんて芸達者なことはオレは出来ないし、ましてや面白いことなんて以ての外だ。

そんな風に考えていると、カメラマンはカメラから視線を外して言った。

 

「もっと笑って!」

 

いやだから無理だ。というかここ数年本気で笑っていない気がする。笑うと言われても、口角を釣り上げ目を細めるぐらいしか思いつかないのだが。なのでそれを実践してみることにした。

口角を釣り上げ、目を細めて。これで笑ったことになるのだろうか。

などと思っていると、スタジオ内が凍りつく。撮影現場が殺人現場みたいな空気になっている。一体何が、と思うが要因が一つしか見当たらない。

オレの笑顔、だよな………。

 

「ちょ、ちょっと休憩しようか」

 

そう言って慌てた様子で長の元へと駆けて行くカメラマン。うーん、笑顔ってなかなか難しいもんなんだな。

そういう教訓を得たところで、凍りついたスタジオにピンク色の髪のチャラそうなのが入ってきた。

 

「あれ?他のみんなはどこに行ったの?」

 

他のみんな、という事はこの人はシンデレラプロジェクトのメンバーと面識があるのだろう。まあオレには関係ないか。と思っていると目があった。そして、なぜかオレの元まで来る。

 

「…………………」

 

「な、なんだよ……?」

 

凝視。ただただ凝視。オレの顔をじっと見つめた顔と思うと、次はおもむろに体全体を見はじめる。なんだ、一体なんなんだよこの人は。

 

「あんた、名前は?」

 

「お、オレか?香月結希だが……」

 

「ふーん。じゃあ私も名乗っておこうかな。城ヶ崎美嘉だよ、よろしくね☆」

 

ごめんなさい、できればよろしくしたくないです。

こんないかにもギャルですってみたいな人と話した事なんてないし、耐性もない。そして何より面倒くさそう。こういう理由からできればよろしくしたくない。のだが、そんな理由を相手は知る由もなく、長のところへと行った。

で、行ったかと思うと直ぐに戻ってきた。行ったり来たりと忙しい奴だな。

 

「ねえ、えっと……結希ちゃん、笑ってみて。こう、ニコって」

 

いきなりなんだと思っていたが、おそらく今の状況を聞いたのだろう。まあ論より証拠、百聞は一見に如かず、見せた方が早いため、オレは先ほど繰り出した空気冷却用の笑顔をギャルにプレゼントする。すると、血色のよかった顔色が徐々に青ざめて行く。

おい待て、酷いのはわかるがそんなに酷いのか。流石に傷つくぞ。

 

「これは……一大事だね」

 

「悪かったな。笑顔一つもできなくて」

 

「ま、まあそんな事は誰にでもあるよ!そんなことより、カメラマンさんスタンバイお願いします!」

 

勝手に仕切り始めるピンク髪ギャルもとい城ヶ崎。いきなり割り込んできたにも関わらずなぜこんなに仕切っているのか。その時ふと思い出した。昨日、346プロにはどんなアイドルがいるのか疑問に思ったためネットで調べた。その時に"カリスマギャル"城ヶ崎美嘉っていう風に出ていた気がする。

なるほど、なら仕切るのも頷ける。おそらく何か策があるのだろう。と思っていると、城ヶ崎はオレの後ろに回り込み、オレの脇や脇腹辺りをくすぐり始める。

 

「なっ…………!?」

 

途端にこそばゆさがこみ上げてくる。それと同時に笑いも。くすぐったいと笑ってしまうのはどうしてだろうか。それが疑問で仕方がない今日この頃。

 

「ちょ、やめ、あは、あはははひひはは!」

 

くすぐったさに負け、大声で笑い始める。それが楽しくなってきたのか、城ヶ崎は適度なところでやめようとはせず、エンドレスにくすぐってくる。一方、オレは大爆笑。くすぐったくて仕方がない。それと同時に笑いがこみ上げてきてどうしようもない。そんな中、カメラマンはここぞとばかりにシャッターを切っている。先ほどよりはいい絵が撮れているのだろうが、限界が近づくにつれ、徐々に辛くなってくる。

 

「ほらほら、もっと笑え〜♪」

 

「や、やめろっ!こ、これ以上は辛、いって!」

 

「そんな事言っても、お姉さん止めないぞ〜♪」

 

「や、やめ、やめろつってんだろうが!!」

 

オレは流石に耐え切れず、未だくすぐろうとする城ヶ崎の頭に拳骨を落とす。そこそこの威力で落としたため、城ヶ崎は呻きながら頭を押さえている。悪いとも思わないし思う気もないし反省する気もなければ、後悔する気もない。というかオレが悪いんじゃない。悪乗りしすぎたこいつが悪いのだ。

シャッターをひとしきり切り終えたのか、カメラマンはオレを見て普通に何もしなくていいから立ってみてくれ、と言われたため普通に立てる。それをカメラで数枚撮っていく。

撮り終わると、カメラマンは撮った写真と最初に撮ったであろう写真を見せてきた。それを比べてみると全く違う。最初の方は、表情が強張り、無表情と言うよりは怒っているという感じになってしまっている。だが、最後の方は全くそういう感じがなく、表情も少しだけ崩れたものとなっている。あえて言うなら微笑といったところだろう。

 

「じゃあこれで撮影はおしまいね。お疲れ様〜」

 

そう告げて長の元へと駆けていくカメラマン。オレはいきなり手持ち無沙汰になった為、まだ痛みで悶えている城ヶ崎に触れてやることにする。

 

「大丈夫か?」

 

「……あんたがこんな事態にしておいてよくそんな風に言えるね?まあいいや、私も少しやり過ぎたし」

 

「だな。流石にやりすぎだ」

 

おかげで腹筋が崩壊しかけたぞ。息もしづらかったし、腹は痛いしでもういい事なしだ。

今日は厄日なのだろうか。初日から道に迷い遅刻、スタジオの空気を不気味な笑顔で殺し、くすぐらされ腹筋がほぼ崩壊しかけた。こんなに不幸な出来事が重なれば厄日だと思っても仕方がないと思う。

 

「さて、どうするか……」

 

城ヶ崎も放っておいても大丈夫そうなので放っておく事にする。

だが、オレはどうしようもない。確か顔合わせという目的もあったはずなのだが、それを確認しようにも武内さんが他のメンバーを探しに行ってから戻ってきてない。

かといって無闇に探しに行こうとするのは自殺行為だろう。だってほら、方向音痴がこんな巨大な施設の中で勝手に動いてみろ。たちまち迷子になって抜け出せなくなるぞ。

そんな事を思いつつ、どうしようか考えていると、件の武内さんが戻って来る。

 

「こ、香月さん……撮影は……?」

 

肩で息をしているあたり、おそらく走り回って探していたのだろう。

だが、そんな疲労はいざ知らず、撮影がどうなったかを聞いてくる。

ほんと仕事熱心だなこの人。

 

「終わったよ。何もかもな」

 

ああ、本当に何もかも終わった。麻薬みたいな笑顔じゃなくて、その場を凍りつかせる笑顔を繰り出し、そして初対面の人たちの前で大爆笑。そして大先輩に拳骨を落とすと言う無礼を犯す。どう考えても終わってるとしか思えない。

 

「それで、見つけたのか?」

 

「え、ええ、この人達がシンデレラプロジェクトのメンバーの方達です」

 

そう言って武内さんは少しだけ横にずれる。武内さんの巨体で見えなかったが、後ろには十四人ほどの少女がいた。おそらくオレとそこまで年は離れていないだろう。

だが、オレはそこで気付いてしまった。目の前に、一年前に知り合ったお節介でオレの知っている笑顔の中で最も輝いている笑顔を持っている奴が。

 

「皆さん、この方が最後のメンバーの香月結希さんです」

 

出来れば名前は伏せていて欲しかった。伏せればなんとか誤魔化せられると思ったのだが、時すでに遅し。相手もオレの姿を凝視している。

そう、目の前で目を見開いて信じられないといったような顔をした島村卯月の姿が。

 

「ゆ、結希ちゃん………!?」

 

「な、何故お前がここにいる島村!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




香月結希 17歳
身長 161cm
体重 極秘
血液型 O
スリーサイズ 79/58/82
誕生日 4月23日
星座 牡牛座
出身地 北海道
趣味 パソコンでネットサーフィン、犬を愛でる

今更ですがオリ主のプロフィールです。
あと外見ですが、肩まである黒髪、キリッとした目つき、黒色の瞳、とこんな感じでしょうか。

香月結希の笑顔の効果:麻薬症状? その場の時を一時的に止める(new!)

これって大丈夫なのだろうか………。

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