アイドルマスター シンデレラガールズ 灰被りの孤独姫   作:レイクール

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……すみませんものすごく期間が空きました。これには理由がいろいろありますが、言い訳になるのでこれが理由だとは言いたくありません。完全に僕が怠ったせいですすみません。

では、久々の本編をお楽しみください。


少女は励み、磨き始める。

翌日、オレは筋肉痛に見舞われると思ったが全く何の支障もなかった足を動かして346プロへと向かっていた。

だが、昨日とは違う点がある。それはオレの横にいる呑気に鼻歌を歌っている能天気な島村だった。

 

「結希ちゃんとレッスン、結希ちゃんとレッスン〜♪」

 

何が嬉しいのか、さっきからずっと同じことを呟いている。

ちらっと島村を見ると、顔をだらしなく緩めており、その顔を見るだけで今どのくらい嬉しいのかが理解できる。というかそんなに嬉しいのか。

オレはどっちかというと乗り気ではなかった。正直言って、運動はあまり好きな方ではない。どちらかというとインドア派で、家庭用ゲーム機やらパソコンやらで時間を潰した方がまだマシだと思う。オレが飼っている犬の散歩は別だが。

そのため、オレはあまり体力がないと思う。でも、これオレがそう感じただけだから一概には言えないんだよな。

でもまあ、平均的な女性の体力よりはあるだろう。

 

「結希ちゃん」

 

「んあ?なんだよ」

 

「そっち違うよ?」

 

ハッとして周りを見ると、島村は隣にはおらず、別の道に入っていた。オレはというと、裏路地に入ろうとしていた。危なかった。また迷うところだった。

悪いと詫びて、島村の横に並ぶ。こうやって他の人がいるのはありがたい。一度行った道だとしてもオレは覚えていないことが多い。というかほとんど覚えていない。

覚える気がない、と言った方がいいかもしれないが。

 

「結希ちゃんって少し抜けてますよね」

 

「お前が言うか?」

 

島村にだけは言われたくなかった。その言葉だけは言われたくなかった。

日頃から覚えておかなければならない事を忘れていたり、体操服を裏表逆で着たりしているのに何を言うか。

 

「まあ、そんな結希ちゃんも可愛いんですけどね〜♪」

 

「……………帰る」

 

「わわわ〜!!待ってくださいよ〜!というかそっちは違う方向ですよ!?」

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

あれから小一時間ほどでプロダクションに到着した。理由は簡単、オレと島村の一悶着のせいだろう。

そんな事はどうでもいい。それよりも現在の状況をどうにかしたい。

 

「ふむ…………」

 

「な、何だ……?」

 

レッスンルームで、一通りレッスンメニューをこなした後、スポーツドリンクを煽っているとトレーナーに凝視されている事に気づいた。顎に手を当て、考え事をしながらこちらを見ている。

なんだよ、そんなに見られたらおちおち休息も取れねえじゃねえかよ。

恨みがましく睨んでいると、トレーナーが近くにある机に置いてあったタブレット端末を手に取りこちらへと歩いてくる。

 

「おい、香月。お前には特別メニューを出す」

 

「特別メニュー、だと?」

 

何だそれは。そんなものが存在するのか。いや、絶対に今ここで決めただろ。第一、そんなものがあるんだったら口頭で伝えればいい。それをせずにタブレット端末を持ってくるという事は、何かの動画を見せてこの振付を覚えてみろ、という無理難題と言う名のレッスンかもしれない。

 

「ここにある動画を見て振付を覚えろ。後で私と一緒に踊ってもらう」

 

おぉふ………。まさかの予想していた事丸かぶりかよ……。

そんな事を思いつつ、タブレット端末に目を向けると、画面に表示されているのは『お○いシンデレラ』という曲らしい。聞いた事あるし、ライブ動画も一度や二度は見た事がある。

だとしても、あれを素人に踊らせるのはどうなんだろうか。

 

「よし、休憩は終わりだ。香月以外は基礎レッスン始めるぞ」

 

『えぇ〜…………』

 

「ならレッスン内容を5倍にーーー」

 

『分かりました、すぐに準備しますっ!!』

 

とんだ鬼教官だな、と呆然とオレはそれを眺めていた。それにしても、オレの反論とか聞かないし強制なんだな。

鬼教官とかぬるいもんじゃない、あれは暴君だ。絶対王政の化身だ。あんな奴見た事も話した事もあるのだが、どうも慣れない。

まあ、以前知り合っている奴とは違ってそれがオレ達のプラスになる事だと知っているから愚痴を言う気はないが、流石に反論とか意見とかは聞いて欲しいものである。

 

とりあえず、オレはイヤホンを耳に挿して言われた通りに動画を再生する。

ライブの時の映像だろうか、華やかな衣装を着た十人程度のアイドル達が歌って踊っている映像がそこにはあった。

それを見て思った。完全に次元が違う。もし、オレ達が現在地面に立っているなら、この映像に写っている人たちは銀河の果てといったところだろうか。

映像を見ただけで、それだけレベルの違いを見せつけられるとは思ってはいなかった。オレはのめり込むようにその映像に見入っていた。何度も繰り返し再生しては、その動作一つ一つに格の違いを見せつけられる。

これから、オレが見入る程の曲の踊りを踊ることができる。胸躍り、嬉しい感情が湧き上がることは別に不思議ではない。

だとしてもーーー、

 

「流石にこれは、なぁ………」

 

何度繰り返し見てもこの振付を再現できるような気がしなかった。

振付自体はそこまで難しくはない。だが、この振付を覚え、羞恥心を捨て、体全体を使えるか、となると話は別だ。

一度、動画を止めてオレが『お願いシンデレラ』を踊っているところを想像する。

可愛らしい振付……………この時点でダメだな。

 

いかんせんギブアップが早すぎた。"可愛い"というフレーズを想像しただけでどうにも無理だと思えてしまう。というか本当に無理だ。出来るわけがない。

それにオレは素人だ。別にできなくても問題はないだろう。

だとしても、あのトレーナーが「出来ません」の一言で納得するわけがない。

となると……

 

「仕方ない、か………」

 

オレは天井を仰ぎ、振付を覚えることに全神経を集中させた。

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

「よし、レッスンは終わりだ!ストレッチをしっかりしておけよ!」

 

トレーナーのレッスンを終える掛け声で、プロジェクトの面々は全員床に倒れ込む。肩で息をしたり、胸が上下したりとどれだけレッスンが厳しいものなのか、それを見ればわかる。

まあ、同じプロジェクトのオレだけが全然疲れてないんだけどな。

……この後、オレが目の前の光景になることは目に見えてるけど。

 

「香月、振付は覚えたか?」

 

「……………………………なんとか」

 

「間が長かったが気にしないことにしよう。それじゃあ、やるぞ」

 

トレーナーは、島村達と見本として同じように動いていたにもかかわらず、疲れている様子もなく、まだまだやれるといった感じだ。体力化け物並みかよ。

さて、とオレは立ち上がってトレーナーの横に立つ。

トレーナーはプレイヤーを起動、再生する。

動画で見た通り、すぐさまメロディーは流れ始めた。

そこまで早くもなく、今の俺にとってはちょうどいいテンポだ。

先輩アイドルの振付をそのままコピー、とはいかないがオレにしては結構な再現力だと思う。

だがそれも束の間、動画通り踊っているはずなのに何故か音楽と動きがずれ始める。

 

「そこ!遅れない!」

 

右隣からトレーナーの喝が飛んでくる。というか、横なのに見えんのかよ。

なんて思う暇もなく、置いて行かれないように必死に食らいつく。だが、その努力は虚しく目に見えてずれが分かり始める。

それと同時に妙に息苦しくなる。

その息苦しさが消えることもなく、曲が終わる。最後のポーズを決めた時、オレの体力は限界を迎え、床に倒れる。

 

「はぁ、はぁ、はぁ………」

 

「ひとまずは終わりだ。お疲れ様」

 

トレーナーは、オレがこんな風になっているのに、全く疲れた気配がない。というか顎に手を当てて何か考え事をしている。

かくいうオレは、そんな姿を横目に見ることしかできずに胸を上下させる。従姉妹に一度「結希の体力って化け物並みだよね」とか言われたのに目の前のトレーナーの方がよっぽど化け物じゃねえか。

疲れ果てたオレの顔を島村は心配そうな顔で覗き込んでくる。

 

「結希ちゃん、大丈夫ですか?」

 

「………………この状態を見て大丈夫だと思うか?」

 

「喋ることができるなら大丈夫ですね!」

 

お前は鬼か。

 

喋る=大丈夫って頭おかしいだろ。というか今一歩も動けないんだけど。上半身を起こすのだってキツイんだよ。流石に分かれよ。

 

「それにしても、結希ちゃんはすごいです!あんなに踊れるなんて知りませんでした!」

 

そりゃそうだろう。だって今日初めて踊ったんですもの。

というか、オレが踊るって言ったって自宅か学校のどっちかしかないだろ。あ、島村を自宅に招いたことがないから学校に限られるか。

学校でいきなり踊りだすとか、(頭が)ヤバい奴じゃないか。オレはそこまで成り下がった気はないぞ。

そんなことを思いつつ恨みがましい視線を島村に投げかけていると、レッスンルームの一つしかない入り口のドアが突然開いた。

そこに立ったいたのが我らがプロデューサーの武内さんだ。

 

「皆さん、お疲れ様です」

 

本当にお疲れだよ。おかげで立つことできねえよ。どうすんだよこれ、回復するまでここにいなきゃいけねえじゃねえか。

どうこう言ったどころで現実を変わることはない。でも、言わずにはいられない。仕方ないじゃない、そういうお年頃だもの。

…………巫山戯るのもここらあたりでやめにしよう。柄じゃない。

 

「初めてのレッスン、お疲れ様でした。これをスケジュール通りにやっていただきますので」

 

……嘘だろ、こんなのがほぼ毎日続くのかよ。筋肉痛で悶える未来しか見えないぞ。

そんなことはつゆ知らず、武内さんはトレーナーと何か話している。

一言二言言葉を交わすと、武内さんは咳払いをしてオレ達に向き直る。

 

「突然ですが、皆さんに重大な発表があります」

 

表情が無表情だがそれは今に始まった事ではないので放っておくとして、重大な発表とはなんだろうか。まだ正式なアイドルとして346プロに所属してからたった二日だ。デビューとかではないにしても、何か仕事でも入ったのだろうか。

まあ、オレには関係ないだろ。

 

「346プロのアイドル達が出演するライブが近々行われるのです。そこで、私たちシンデレラプロジェクトにバックダンサーの指名がきました」

 

『え……………………えぇ!?』

 

オレ以外のメンバーは驚愕の表情を浮かべて驚きの声を上げる。ううむ、そこまで驚くことだろうか。アイドルなのだからそういう依頼が来てもおかしくはないと思うのだが。というかオレはそう思ったんだが、違うのか。

思考を巡らせていると、武内さんの発言のおかしさに気づいた。

 

「ちょっと待ってくれ武内さん。指名ってどういうことだ?」

 

「……今回のバックダンサーの件ですが、とあるアイドルの方が直々に起用したいと名乗り出たのです」

 

そんな独断と偏見が認められるのか、と疑問に思いつつ武内さんの言葉に注目する。

 

「その起用したい方々は、島村卯月さん、渋谷凛さん、本田未央さん、そして香月結希さんの四人です」

 

「………………………………………うぇ?」

 

 

 

 

 

 





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