IS TSオレっ娘オリ主物(仮題)   作:のんけくん

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能力開花

 結局、鈴音は中国へと帰ってしまった。あの日、彼女がオレに何を伝えたかったのか聞こうとしても曖昧に誤魔化されてしまい、分からないまま鈴音は笑顔で飛行機に乗り去って行った。それまでの彼女の様子は普段と変わらないもので、しかしどこか決意を固めたようでも有った。別れ際に絶対に日本に帰って来ると告げた彼女の凛とした表情からは大人びた女性のソレを感じ取る事が出来た。

 

 だから、オレは頑張って来いとだけ告げて彼女の小さな背を見送った。

 

 そんな鈴音の転校から約一年と数ヶ月が経過した。中学生としての終わりが見え、進路をどうするべきかと散々悩んだ結果。この世界に折角来た以上はやはりISを用いたバトルを一度でいいからやってみたい。可能であれば一夏や鈴音を始めとした原作メンバー達としのぎを削る戦いをしたい。と。常々考えていたIS学園への進路を姉貴に打ち明けた。当初、姉貴はかなり渋った。

 それはもう頑固なもので駄目だ駄目だの一点張り、一時は口もきいてくれなくなるほどであった。一夏からのフォローとアシストのかいあってか口だけは聞いてくれるようにはなったが、それでも姉貴は頑なにオレがIS学園に入学する事を拒んだ。

 

 姉貴の言い分も分からないでもない。ISは今では『スポーツ競技用』だと大衆に認知されているが、実際のところは簡単に沢山の人を殺めてしまう事が出来る『超兵器』なのだ。

 また、『絶対防御』が有るからと言って危険性が全くのゼロであるとは言えない。エネルギーが尽きてしまえば動く事すらままならない上、シールドエネルギーを突破する程の攻撃力や姉貴がかつて用いていた様な『特殊武装』があれば、搭乗者にダメージを貫通させてしまうなんていう事もある。

 

 だがオレはソレを含めて承知で姉貴に懇願した。オレ一人だけが除け者にされるなんて、そんなのは嫌だった。遠く安全な場所で傍観するだけしかできずに折角出来た友と家族を大丈夫だと分かっていても命の危機に晒すなんて真似はしたくなかった。亡国企業(ファントムタスク)とやらにどんな裏と事情が有るのか一夏やマドカ『織斑家』の過去や束博士の考えだとかそんな事はどうでも良い。オレはオレとしてやりたい事をやってやると決意したんだから。

 

 姉貴はそんなオレの熱意に呆れたのか渋々と折れ、その翌日。分厚い辞書(どんき)の様な参考書と様々なIS関連の資料を寄越してくれた。姉貴に感謝すると同時に図説と専門用語びっしりのソレを頭に詰め込む様に必死になって勉強する日々が続いた。後で見かえしたり、後の一夏にも分かり易いように付箋や注釈を書き込み、理解しにくかった部分を追加で大学ノート十数冊分消費した。

 

 そうして月日が経ち、IS学園の入試当日。筆記試験を終えてIS簡易適性試験まで終わらせていざ、実技試験だと意気込んだその時。試験会場がにわかに騒がしくなった。なんでも簡易適性検査用のISを『男』が動かしたとの噂が流れ出したのだ。どういう状況かなんとなく察したオレはこれからの一夏達との今後の学校生活に思いを馳せ、知らず知らずのうちに鼻歌まじりに胸躍らせていた。

 

 噂話でざわつく受験生を試験官が(たしな)めて静めると順番に実際に、ISへ搭乗して技能を測定するIS起動試験を開始し始めた頃には、受験生足る女子生徒達の表情は先ほどまでの浮足立ったソレとは打って変わり、真剣みを帯びたものへと早変わりしていた。オレもその例にもれず、少しばかりの緊張とISを操る事が出来る事への高揚感を抱き自身の番を今か今かと待ち望んだ。

 そうして時が来た。試験官から『打鉄』か『ラファールリヴァイブ』のどちらを選ぶか前もって配られた選択用紙に回答していたオレは迷わず打鉄を選択し、すぐさま換装した。初搭乗時の感想は己の手足が伸びたかのような印象を受けた。感覚を確かめるかのように両の手を握って開いて腕を伸ばし、歩行して生身のソレと同等かそれ以上に動けることを理解して感激した。

 

 アリーナの中央ではオレが選ばなかった深緑色のラファールリヴァイブを身に纏った見慣れた顔をした試験官が既に立っており、ニヤリと不敵な笑みを浮かべてピットから出て来たこちらを眺めていた。距離を取って対面に立つように着地すると試験官は口を開いた。

 

「心の準備は良いか受験生? 機体に不備や疑問点がなければ試験を開始するぞ」

「一つだけ、聞いてもいいでしょうか……どうして姉貴が相手なんだ?」

「フ、簡易適正で前代未聞の測定不能値(Sオーバー)を叩き出した奴の相手だ。私直々に相手をしても構うまい。それとお前の耳にも入っていると思うが、今は色々と厄介な事になっていてな」

「男がISを動かしたんだって? ……それ、一夏だろ?」

「そこまで知られているのかっ!?」

「いいや、姉貴の不安そうな顔見てなんとなく分かった。それより、始めようぜ姉貴。初戦がアンタなら気兼ねなく思う存分やれる」

「ほぉ、強気だな。だが、私は毛も生えそろっていないひよっこ風情には負けんぞ!」

「上等ッ!」

 

 背後のブースターを吹かして地面スレスレを飛行し基本装備(プリセット)から取り出し抜刀した刀型近接ブレード『葵』を上段に振りかぶって斬りつける。しかし相手はかのモンドグロッソの優勝者であり、世界最強の名を未だ保持し続けるブリュンヒルデ。最小限の動きで躱され、お返しだとばかりにいつの間にか取り出した近接ブレード『ブレッド・スライサー』がこちらのシールドエネルギーを削らんと間近に迫ってきていた。慌ててブースターを吹かして後退すると甘いと言わんばかりに勢いそのままに矛先を変え、突きの型へと太刀筋が変化する。目と鼻の先をシールドバリアがオレを護る様に展開して姉貴の放った突きと衝突し、刺し殺さんとばかりにバリアに突き立てられた。視覚の端にホログラムで投映されたシールドエネルギーの残量が減少するのが分かった。

 

 空を駆け、試験官(あねき)から逃げ回りつつ思考を巡らせる。やはり、実際に動かしてみると中々勝手がわからないものだ。確かにオレの指示通りにISは動いてくれる。しかし、搭乗時間の差が如実に表れるISを用いた戦闘において熟練者からすればそんな物は誤差の範囲だ。

 先ほど姉貴から簡易適正は前代未聞の測定不能値だった等と言われたが、それは所謂『特典』のおかげであって、決してオレ自身が凄い訳ではない。『反則』がなければオレは見てくれだけは良い、女の皮を被った異物でしかない。ISに関しては教本で得た知識だけの頭でっかちな素人だ。剣術に頼ろうにも一時期は一夏や箒と一緒になって竹刀を振っていたが中学に入ってからは一夏と同じく帰宅部でだらけていた。そのしわ寄せが此処になって来ている。

 

「どうした、威勢がいいのは最初だけかっ? お前は私の静止を振り切ってまでIS学園に入りたかったんじゃないのかッ? ならば私に一太刀浴びせて見せろ!」

 

 個人間秘匿通信(プライベートチャンネル)を通して姉貴の叱咤が飛んで来た。

 ……なにやってんだオレ。姉貴の言う通りだ。オレは、IS学園に入りたい。そう自分で決めたことだ、だってのにみっともなくたった一回の攻撃に恐れをなして敵に背を向けて逃げ回って、情けねぇぞオレ。

 一夏や鈴音達と一緒に居たいんじゃなかったのかよ。自分の事ながら情けなさ過ぎて涙が出るぜ。側が女になろうが、心まで女々しくなってたまるかよっオレは、負けられない。姉貴を倒して、先へと進むッ!

 

「覚悟は決まった様だな。迷いのない、良い顔だ。だが」

「御託は良い、姉貴。勝ちに行くぜ? 逃げるのも小細工も無しだ。真正面からの真っ向勝負で叩き斬る!」

「フ、来いッ咲耶!」

 

 逃げている内にいつの間にか太陽を背に、空高くへと浮かび上がっていたオレは両腕を強く意識して、先ほどよりも大きく振りかぶって眼下に迫った姉貴へと吶喊(とっかん)する。対する姉貴は何故か驚きに目を見開き、(かぶり)を振ってオレと同様に上段へと構えて突っ込んできた。

 一瞬後衝撃と金属の激しいぶつかり合いが生まれ、つばぜり合いになった。険しい顔をしてオレの手にしたブレードを睨み付ける姉貴を不審に思い、自身もソレへとちらりと視線を移した。そこでオレは漸く自身の握った刀が『葵』ではなく全く別のソレへと変貌して居る事に気が付いた。オレが先ほどまで握っていた筈の『刀』は白亜の『大剣』へと変貌し、眩いまでの燐光を放っていた。

 

「『雪片』だとっ!? お前、ソレをどこでッ」

「知らねぇよ! …………いや、待てよ。なるほど、そういう事か。ハッ、随分と都合の良い『能力(ちから)』だ事で」

「何を言っている。咲耶? お前は、一体……」

「嗚呼、姉貴。わりぃが、オレの負けだ。真剣勝負はまた今度にしてくれ。今はもう、頭ん中いっぱいいっぱいだしそれに、雪片(こいつ)のせいでシールドエネルギーも底を尽きそうだ」

 

 ISコアネットワークに登録された武装を現装備武装に上書きして単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)の『完全再現』まで出来るなんざ反則にも程が有る。やろうと思えば四六七機全て、それも軍用機の物まで可能らしい。これは駄目だ、束博士に喧嘩を売っているとしか思えない。折角の試合にケチを付けられたようで気に入らなかった。両腕に握られた『雪片』を『葵』に戻して仕舞い込むと何やら思案顔をする姉貴を放置してピットに戻った。

 あーあ。これからどうなるんだろう、オレ。絶対に目、付けられたよなぁ。友好的なら良いんだけどオレ、解剖とかされたりしないだろうな? あの人ならやりかねないから恐ろしい。楽しい学園ライフが待ってると思ってたのに厄介事が転がり込んでくる予感しかしねぇぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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